フィギュアスケートのペア競技で三浦璃来とのペア「りくりゅう」として、2026年2月のミラノ・コルティナ冬季オリンピックで日本ペア史上初の金メダルを獲得した木原龍一。彼の活躍の裏には、シングルスケーターからペア競技への転向後に行った徹底的な肉体改造と、科学的なトレーニングメソッドがある。
本記事では、木原龍一が実践するトレーニング法と体づくりの哲学を、具体的なデータと本人の発言をもとに解説する。
ペアスケートに必要な筋力と柔軟性
フィギュアスケートのペア競技は、男性パートナーが女性を高さ数メートルまで持ち上げる「リフト」や、遠心力を活かした「ツイスト」など、極めて高い筋力と技術が求められる。木原龍一がシングルからペアに転向した際、最大の課題がこの身体能力の変革だった。
体重20kg増量の肉体改造
シングル時代の木原の体重は61kg。ペアに転向後、三浦璃来(約45kg)を片手で頭上に差し上げるリフトを安定して行うためには、圧倒的な筋量が必要だった。取り組んだのは徹底的なウエイトトレーニングと食事管理で、結果として体重を約20kg増加させ、81kg前後の体格を作り上げた。
「最初はボディビルダーの食事を参考に、鶏肉とブロッコリーを繰り返していた」と木原は振り返る。その後、公認スポーツ栄養士の指導を受けることで、筋肉合成に必要なタンパク質量を確保しながら、アスリートとしてのパフォーマンスも維持できるバランスの取れた食事管理に移行した。
1日6食の高タンパク食事管理
木原が筋肉量を増やした最大の武器が、1日6回に分けた食事だ。筋タンパク合成の研究によると、タンパク質は一度に大量に摂取するよりも、3〜4時間ごとに分散して摂取する方が筋肥大効果が高いことが示されている。
鶏むね肉・鮭・卵を中心とした高タンパクメニューを毎食に組み込み、練習前後には素早く吸収されるプロテインシェイクを活用。カーボローディングも意識し、高強度トレーニングの前には炭水化物を多めに摂るなど、栄養タイミングにも細心の注意を払った。
リフト強化のためのウエイトトレーニング
「リフトは腕の力だけでやるように見えるが、実際は体幹と脚の力が9割だ」——木原はこう語る。ペア競技のリフトで最も重要なのは、下から力を伝える運動連鎖(キネティックチェーン)だ。
スクワット・デッドリフトで下半身を強化
木原のウエイトトレーニングの柱は、バーベルスクワットとルーマニアンデッドリフトだ。これらの種目は、股関節伸展に関わる大殿筋・ハムストリングを強化し、リフト時の「床からの力」を最大化する。転向初期には自重の1.5倍程度の重量から始め、徐々に強度を高めていった。
下半身の筋力強化に加え、肩甲骨周囲筋(僧帽筋・菱形筋・後部三角筋)も重点的に鍛えた。リフト時のポジション維持と安全なホールドには、腕の力よりも肩甲骨の安定性が鍵を握るためだ。
体幹トレーニングで軸を固める
スケーターとしてのバランス感覚を維持しながら筋量を増やすために、体幹(コア)の強化は欠かせない。木原が特に重点を置くのは、腹横筋・多裂筋・骨盤底筋群といった「インナーユニット」の強化だ。プランク、サイドプランク、デッドバグなどの安定性トレーニングを日課とし、氷上での姿勢制御と着氷時の衝撃吸収能力を高めてきた。
アスリートの体幹トレーニングと競技パフォーマンスの関係については、中井亜美の睡眠・コンディショニング術でも類似のアプローチが紹介されている。
フィギュアスケートと科学的コンディショニング
筋力増強だけでは、フィギュアスケーターとしてのパフォーマンスは成立しない。柔軟性・バランス・爆発的パワーを同時に高める必要がある。
柔軟性維持のためのストレッチ戦略
ウエイトトレーニングで筋量を増やすと、関節可動域が低下するリスクがある。木原はこれを防ぐため、トレーニング後のクールダウンで静的ストレッチを20〜30分かけて丁寧に行う。特に股関節の屈筋群(腸腰筋)と胸椎の回旋可動域は、スケーティング技術に直結するため優先的にケアしている。
また、練習前には動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)を活用。レッグスウィング、ヒップサークル、腕回しといった動作で関節の温度を上げ、神経筋接続を活性化させることで怪我のリスクを下げながら、最大パフォーマンスを引き出す準備を整える。
スポーツ栄養学との融合
公認スポーツ栄養士との定期的な面談を通じ、木原は「競技に特化した食事プラン」を構築してきた。試合前1週間は炭水化物摂取量を段階的に増やす「カーボローディング」、遠征中は腸内環境を整えるプロバイオティクスの活用、リカバリーには分岐鎖アミノ酸(BCAA)を補給するなど、スポーツ科学に基づく栄養戦略を実践している。
他のアスリートの栄養戦略については、ハーランドのプロテイン管理法も参考になる。
(参考)りくりゅう・三浦璃来/木原龍一紹介 – Olympics.com
2026年ミラノ・コルティナ五輪金メダルへの軌跡
木原と三浦は2026年2月17日、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのペア競技で日本ペア史上初の金メダルを獲得した。完璧なリフトの切れ、ツイストリフトの高さ、そして二人が一体となったスケーティングは世界最高水準と評価された。この快挙の裏に積み重なった肉体改造と科学的トレーニングがあることは間違いない。
今日から実践できる木原龍一式トレーニング
木原龍一の体づくりの哲学は、フィギュアスケーターでなくても応用できる。特に「筋力と柔軟性の両立」「食事タイミングの最適化」「体幹の安定性強化」は、あらゆるスポーツのパフォーマンス向上に通じる普遍的なアプローチだ。
実践メニュー例(週3〜4回)
以下は木原のトレーニングから着想を得た、一般アスリート向けの週間プログラムの例だ。
月曜・木曜(下半身・体幹強化):バーベルスクワット4×6、ルーマニアンデッドリフト3×8、プランク3×60秒、デッドバグ3×10回。水曜・土曜(上半身・肩甲骨安定):ベントオーバーロウ4×8、ラットプルダウン3×10、フェイスプル3×15、懸垂3×最大回数。全日:練習後に静的ストレッチ20分。
タンパク質は体重1kg当たり1.6〜2.0g/日を目標に、食事を4〜6回に分けて摂取することで、筋合成を最大化できる。
まとめ:木原龍一のトレーニングから学ぶ3つの原則
- 筋力と柔軟性のバランス——ウエイトトレーニングで筋量を増やしながら、毎日のストレッチで可動域を維持することが競技パフォーマンスを支える。
- 食事管理の科学的アプローチ——1日6食のタンパク質分散摂取と、公認スポーツ栄養士との連携が20kg増量の成功を可能にした。
- 体幹(コア)への投資——インナーユニットの安定性は、すべてのパワー発揮の基盤。筋量増加と並行して体幹強化を継続することが長期的な競技力向上につながる。
よくある質問(FAQ)
木原龍一はなぜ体重を20kg増量したのですか?
ペアスケートでは、女性パートナーをリフトで頭上高く持ち上げる技が必須です。シングル時代の61kgでは、三浦璃来を安定して支えるパワーが不足していたため、ウエイトトレーニングと食事管理で約20kg増量し、81kg前後の体格を作り上げました。
フィギュアスケートのペアに必要なトレーニングは何ですか?
スクワット・デッドリフトによる下半身強化、肩甲骨周囲筋の強化、体幹(コア)安定性トレーニングが主要な要素です。加えて、スケーティングに必要な柔軟性を維持するためのストレッチも欠かせません。
木原龍一が実践した食事管理のポイントは?
1日6食の高タンパク食(鶏むね肉・鮭・卵中心)、公認スポーツ栄養士の指導によるバランス管理、練習前後のプロテイン補給が核心です。筋タンパク合成の研究に基づき、タンパク質を数時間ごとに分散摂取することで筋肥大効果を最大化しています。
木原龍一は2026年に引退しましたか?
はい。2026年4月17日、木原龍一と三浦璃来は同季限りでの現役引退を発表し、引退後はプロとしての活動を続けていく意向を示しました。ミラノ・コルティナ五輪金メダルを最高の結末として、競技生活に幕を下ろしました。
木原龍一のトレーニング法は一般人でも取り入れられますか?
はい。基本となる「スクワット・デッドリフトによる下半身強化」「体幹トレーニング」「タンパク質の分散摂取」はスポーツ種目を問わず有効です。週3〜4回のトレーニングと毎日のストレッチを組み合わせることで、筋力と柔軟性の両立が実現できます。
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