「食べることも練習のうち」——柔道選手にとって、体重管理と栄養補給は競技力に直結する重要なテーマだ。古賀若菜選手(JR東日本)は48kg級という最軽量級で戦いながら、「食べて強くなる」という考え方を体現してきた選手の一人だ。2024年グランドスラム東京優勝、2025年ブダペスト世界選手権銅メダルという実績の背景には、科学に基づいた食事管理が存在する。本記事では、古賀選手の食事法から柔道選手が実践できる栄養戦略を読み解いていく。
なぜ柔道選手は「食べて強くなる」のか
柔道は体重別競技だ。しかし「体重を落とすために食べない」という考え方は、現代のスポーツ科学では完全に否定されている。古賀若菜選手が所属するJR東日本女子柔道部では、元世界選手権女王の福見友子監督のもと、午前中から2時間強の技術練習に加え、午後にも体力強化トレーニングが組み込まれている。こうした高強度の練習を支えるには、十分なエネルギー摂取が不可欠だ。
48kg級の体重管理が抱える課題
48kgという体重は、成人女性として非常に軽量な水準だ。体重制限がある競技特性上、選手は「増えすぎない体重」と「競技に必要な筋肉量」のバランスを取り続ける必要がある。国際柔道連盟(IJF)の研究では、柔道選手の筋肉量と投げ技のパワーに強い相関があることが示されており、単純な減量は競技力を低下させるリスクがある。古賀選手が重視しているのも、筋肉を落とさずに体重を維持する「筋肉量ファースト」の考え方だ。
練習量に見合ったエネルギー補給の重要性
1日2部練習をこなす柔道選手のエネルギー消費量は、一般成人の2倍以上になることも珍しくない。国立スポーツ科学センター(JISS)の指針では、アスリートが練習の質を維持するために、エネルギー不足状態(LEA: Low Energy Availability)を避けることを最優先事項として挙げている。古賀選手クラスのトップ選手であれば、体重管理を気にしながらも、練習の質を落とさない食事量の確保が不可欠となる。
階級を上げた際の食事調整
柔道選手にとって「階級変更」は食事戦略の大きな転換点となる。より重い体重で戦うためには、筋肉量の増加と体重増加を計画的に行う必要があり、安易に「食べる量を増やす」だけでは脂肪が増えてパフォーマンスが落ちる。筆者が分析したところでは、階級変更時に成功した選手に共通するのは、「たんぱく質優先」の増量戦略だ。
筋肉量を増やすたんぱく質摂取の基準
国際スポーツ栄養学会(ISSN)の推奨では、筋肉量を増加させたいアスリートの場合、体重1kgあたり1.6〜2.2gのたんぱく質摂取が有効とされている。48kg選手であれば、1日に約77〜106gのたんぱく質が目標だ。鶏むね肉100gあたり約24gのたんぱく質が含まれており、食事だけでこれを確保するには計画的なメニュー設計が必要になる。
体重増加期に気をつけたい食事の質
増量期だからといって糖質や脂質を無制限に摂取することは逆効果だ。競技前の体重調整をスムーズにするためにも、増量期は「質の高いカロリー」——つまり、ごはん・芋類などの複合糖質と、肉・魚・大豆などのたんぱく質——を中心に構成することが推奨される。脂質は調理に使用するオリーブオイルや、青魚に含まれるオメガ3系脂肪酸を積極的に取り入れると炎症抑制にも役立つ。
プロテイン・炭水化物の最適摂取タイミング
「何を食べるか」と同じくらい重要なのが「いつ食べるか」だ。スポーツ栄養学では「栄養タイミング」と呼ばれるこの概念が、柔道のような高強度競技では特に重要とされている。
練習前の糖質ローディング
練習1〜2時間前には、消化の良い炭水化物(白米・パン・バナナなど)を150〜200kcal分程度摂取することで、練習中のエネルギー切れを防げる。特に午前・午後の2部練習では、昼食を「消化に優れた食材」で構成し、午後の練習開始前に十分なグリコーゲンを確保しておくことが重要だ。お握りや果物を昼食後の補食として取り入れることが有効な手段となる。
練習後30分以内のゴールデンタイム
練習終了後30分以内に、たんぱく質(20〜25g)+糖質(40〜50g)を組み合わせて摂取することで、筋肉の修復と回復が促進される。この「ゴールデンタイム」を活用するために、練習後すぐに食べられるよう、おにぎり+プロテインドリンクのような携帯性の高い補食を準備しておくと効果的だ。古賀選手が所属するような強豪チームでは、栄養士がこのタイミング管理を徹底しているケースが多い。
(参考)スポーツ栄養 – 国立スポーツ科学センター(JISS)
実践できる柔道選手向け食事プラン
ここでは、古賀選手の練習スケジュールをもとに、柔道選手が実践しやすい1日の食事構成の例を紹介する。重要なのは「バランスの取れた食事」という抽象的な目標ではなく、「量・タイミング・質」を具体的に管理することだ。
競技力を支える1日の食事モデル(48kg級選手向け)
朝食(練習開始2時間前):白米1.5杯+卵2個+納豆1パック+味噌汁+野菜。糖質を十分に摂取し、血糖値を安定させた状態で午前練習へ臨む。
午前練習後(補食):バナナ1本+プロテインドリンク(たんぱく質20g程度)。ゴールデンタイムを活用し筋肉修復を促進。
昼食:白米1.5杯+鶏むね肉100g+野菜炒め+豆腐。午後練習のためのエネルギーを蓄える。
午後練習後(夕食):白米2杯+魚or肉150g+根菜の煮物+フルーツ。1日のたんぱく質目標(80〜100g)を達成する。
体重管理と計量前の水分コントロール
計量前日〜当日は水分と塩分の摂取をコントロールするケースがあるが、過度な水抜きはパフォーマンスを著しく低下させる。スポーツ医科学の知見では、体重の2%以上の脱水が判断力・反応速度・筋持久力に悪影響を与えることが知られている。計量後は速やかにスポーツドリンクや経口補水液で水分と電解質を補給し、少量のごはんでグリコーゲンを回復させることが推奨される。
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まとめ:古賀若菜の食事法から学ぶ栄養戦略
- 柔道48kg級での競技力維持には「食べて強くなる」姿勢が不可欠。エネルギー不足は練習の質と筋肉量を同時に低下させる
- たんぱく質は体重1kgあたり1.6〜2.2gを目安に、食事とプロテインで計画的に摂取する
- 練習後30分以内のゴールデンタイムに、たんぱく質と糖質を組み合わせて回復を促進する
- 計量前の過度な水抜きは競技力を大きく損なう。体重管理は日常の食事管理で対応するのが原則
- 階級変更時は「質の高いカロリー」による計画的な増量で、脂肪増加を抑えながら筋肉量を増やす
よくある質問(FAQ)
古賀若菜選手の体重階級はどのくらいですか?
古賀若菜選手は女子柔道48kg級の選手です。JR東日本所属で、2024年グランドスラム東京優勝・2025年ブダペスト世界選手権銅メダルなどの実績を持ちます。
柔道選手の食事で最も重要な栄養素は何ですか?
最も重要なのはたんぱく質と糖質のバランスです。たんぱく質は筋肉の合成と修復に、糖質は高強度練習のエネルギー源として不可欠です。体重1kgあたり1.6〜2.2gのたんぱく質摂取が推奨されています。
柔道の計量前日はどのような食事をすべきですか?
計量前日は消化の良い食事(白米・鶏肉・野菜)を適量摂取しながら、水分量をコントロールするのが基本です。過度な食事制限や水抜きは計量後の競技力に悪影響を及ぼすため、日常の食事管理で体重を維持することが理想です。
プロテインを飲むタイミングとして最適なのはいつですか?
練習終了後30分以内(ゴールデンタイム)が最も効果的です。このタイミングにたんぱく質20〜25gと糖質を合わせて摂ることで、筋肉の修復と成長を促進できます。朝食前や就寝前の摂取も一定の効果があるとされています。
体重を増やさずに筋肉量を増やすことは可能ですか?
長期的には可能ですが、難易度は高いです。「リコンポジション(体組成改善)」と呼ばれるこのアプローチは、たんぱく質摂取を増やしながらカロリーはほぼ維持するという方法で、初心者アスリートや復帰選手に特に有効とされています。トップ選手は一般的に増量期・維持期を明確に分けて管理します。
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