「戦っているときが一番楽しい」——パリ2024オリンピック女子柔道48kg級金メダリスト・角田夏実のこの言葉は、彼女が競技に対して持つ純粋な喜びを表している。2021年から2023年まで世界選手権3連覇を達成し、2024年のパリ五輪でついに頂点に立った角田の武器は、「相手にわかっていても防ぎきれない」と言わしめる巴投げだ。この巴投げを極めるために不可欠だったのが、高度な体幹力の獲得だった。本記事では、角田夏実の体幹トレーニングと練習哲学から、私たちが学べる原則を解説する。
巴投げが要求する体幹力——捨て身技だからこそ体幹が命
角田夏実の代名詞である巴投げは、「捨て身技」に分類される。自分から床に倒れながら足技で相手を投げるこの技は、「しっかりと相手を持ち上げることを意識して、自分が投げにいっているという姿勢を出すことが大切」と角田自身が語る通り、単なる勢いではなく、精密な体の使い方が求められる。
捨て身技に必要な体幹安定性とは
巴投げで一本を取るためには、倒れる瞬間に体軸を崩さず、足の蹴り上げと引き手・釣り手の連動を完璧に合わせる必要がある。この連動を可能にするのが、体幹の深部安定性だ。スポーツ科学では、多関節運動における「体幹のスティフネス(剛性)」が、末端(手足)の速度と精度を決定することが示されている。角田の巴投げが「わかっていても防ぎきれない」とされる理由の一つに、この体幹からの力の伝達効率の高さがある。
寝技との組み合わせが生む「リスクゼロの捨て身技」
「私の場合は寝技を得意にしているので、巴投げが決まらず相手が上から攻めてきたとしても寝技に引き込めるので、捨て身技のリスクがない」と角田は語る。これは体幹力と寝技の掌握が一体化しているからこそ可能な戦略だ。グランドでの体幹制御と立ち技での爆発力を同時に高めることが、角田の圧倒的な強さの秘密の一つとなっている。
(参考)角田夏実選手インタビュー「戦っているときが一番楽しい!」 – JSPO Plus
水泳から始まった体幹づくり——幼少期の基礎体力の重要性
角田夏実は小学1年生から水泳を始め、高学年まで続けた。「体力や筋肉を付けるのに役立ったように思っています」という本人の言葉は、幼少期のクロストレーニングの価値を教えてくれる。
水泳が育てる体幹の基礎
水泳は全身の筋肉を均等に使う運動であり、特に体幹——腹筋・背筋・骨盤底筋群——を常に活性化することで推進力を生み出す。浮力が体を支えてくれる水中環境は、陸上では使えない筋肉に高負荷をかけられる点が特徴だ。角田が小学校高学年まで水泳を続けたことで、柔道に必要な体幹の土台が自然に形成されたと考えられる。
スポーツ科学では、幼少期(ゴールデンエイジ)に多種目のスポーツを経験することが、運動神経の発達と体幹形成に最も効果的であることが示されている。角田の水泳→柔道というキャリアは、この原則の体現例だ。
小学生の頃の「前転・後転」が体幹を目覚めさせた
「低学年の頃はいきなり柔道というのではなく、前転や後転をしたり、ちょっと打ち込みをしたりする程度で、体を動かすことを楽しみながらやっていた」と角田は振り返る。この段階的なアプローチが、体幹と受け身の基礎を楽しみながら身につけることを可能にした。強制的な訓練ではなく、遊びの延長として体を動かすことが、身体能力の基盤となった。
「柔道を楽しめ」——メンタルが体幹パフォーマンスを変える
角田夏実の体幹力が開花した背景には、大学の恩師の「柔道を楽しめ」という言葉がある。「やる練習全てが面白い。興味を持って練習に取り組むようになり、そこから柔道がより楽しくなりました」と角田は語る。
楽しむことでトレーニング効果が高まる理由
スポーツ心理学の研究では、内発的動機(「楽しいからやる」)が高い状態でのトレーニングは、外発的動機(「やらなければならないからやる」)と比較して技術習得速度が速く、体幹の協調的な動きが自然に引き出されやすいことが示されている。「楽しむ」という精神状態は、筋肉の過度な緊張(余分な力み)を防ぎ、体幹から末端への効率的な力の伝達を可能にする。
恐怖と向き合いながらも戦う——精神的強さが体幹を支える
「試合前はめちゃくちゃ怖い。でも『怖くない奴なんていない。逃げないことが大切だ』という漫画のセリフを読んで気持ちを奮い立たせる」と角田は語る。この精神的な準備が、試合本番での体幹の安定性を維持する上で重要な役割を果たしている。過度な緊張は体幹の筋肉をこわばらせ、動作の精度を下げる。恐怖を「管理する」ことで、体幹のパフォーマンスを最大化しているのだ。
角田流体幹トレーニングの哲学を日常に活かす
角田夏実のアプローチには、スポーツを超えた普遍的な体幹強化の原則が含まれている。
幼少期からの多種目経験が体幹を育てる
子どもの頃に水泳・柔道など複数のスポーツを経験した角田のケースは、特定の競技に早期特化するよりも、多様な動作パターンを経験することが長期的な体幹発達に有効であることを示している。大人でも、普段と異なる動作パターンを持つ運動(水泳×ピラティス×チームスポーツなど)を組み合わせることで、体幹の多角的な強化が期待できる。
「楽しむ」ことが最高の体幹トレーニングになる
体幹トレーニングというと、プランクやクランチといった静的・単調なエクササイズを思い浮かべる人が多い。しかし角田が水泳や柔道を「楽しみながら」行うことで体幹を鍛えたように、楽しさを伴う動的な活動こそが、脳と筋肉の協調を最大化する。
アスリートの体幹強化と練習哲学について詳しくは、アスリート特集ページとスポーツ研修で人材を育成する方法もあわせてご覧ください。
ChatGPTで自分の競技に合った体幹強化プログラムを設計する3ステップ
角田夏実の「体幹を軸にした投げ技」は、目的意識を持った体幹トレーニングの積み重ねによって生まれる。ChatGPTを使えば、闇雲に腹筋を繰り返すのではなく、自分の競技特性と弱点に合わせた体幹プログラムを設計できる。
ステップ1 自分の競技と弱点をChatGPTに伝えてトレーニング目的を明確化する
「私は柔道(または自分のスポーツ)の選手です。組手で体勢を崩されやすく、腰が引けてしまうことが課題です。この弱点を改善するための体幹トレーニングの目的と方向性を教えてください」とChatGPTに尋ねる。「体幹の何を鍛えるべきか」という方向性が明確になり、以降の設計が具体的になる。
ステップ2 ChatGPTで週3回・20分の体幹プログラムを作成する
目的が明確になったら「上記の目的に合わせた週3回・1回20分の体幹強化プログラムを作成してください。道具なしで自宅でできるものを優先してください」と依頼する。プランク・デッドバグ・ペイロフプレスなど競技特性に応じたメニューが返ってくる。種目ごとのセット数・キープ時間・インターバルまで具体化される。
ステップ3 4週間後にChatGPTと効果を評価して次のフェーズへ進む
4週間後に「プログラムを4週間やりました。腰が引けやすい場面は減りましたが、左回転でまだ弱さを感じます」のように現状をChatGPTに報告する。次の4週間のプログラムを改善点を踏まえて再設計してもらうことで、PDCAサイクルが回り続け体幹強化が継続的に進む。
まとめ
角田夏実の体幹力は、「楽しみながら続ける」姿勢と幼少期からの多種目経験、そして捨て身技を極めた専門的な鍛錬から生まれた。以下のポイントを体幹強化に役立ててほしい。
- 捨て身技(巴投げ)の精度は体幹の深部安定性が決める——体幹は末端の動きを支える基盤
- 幼少期の水泳が培った体幹の土台が、後の競技力を支えている
- 「楽しむ」という内発的動機がトレーニング効果を最大化する
- 恐怖は管理するもの——精神的な準備が体幹の余計な緊張を防ぐ
- 多種目のクロストレーニングが、競技特化では得られない体幹の多角的な強さを育てる
よくある質問(FAQ)
角田夏実はどんな体幹トレーニングをしているの?
具体的なメニューは非公開ですが、幼少期の水泳による基礎体力づくり、柔道の打ち込みと寝技練習による動的体幹強化、そして巴投げの反復練習を通じた専門的な体幹力を積み上げてきました。
巴投げに体幹力が必要な理由は?
巴投げは自分が倒れながら相手を投げる捨て身技のため、倒れる瞬間に体軸を崩さず足の蹴り上げと引き手を連動させる必要があります。この連動には体幹の深部安定性が不可欠です。
子どもの水泳経験は体幹強化に役立つ?
非常に効果的です。水泳は浮力に逆らいながら全身を使うため、体幹の深層筋が常に活性化されます。幼少期(ゴールデンエイジ)の水泳経験は、後のあらゆる運動の体幹基盤を作ります。
角田夏実が世界3連覇・五輪金メダルを達成できた理由は?
巴投げ×寝技という複合的な戦略、体幹と技術の高い統合、「楽しむ」という内発的動機に基づく継続的な練習、そして恐怖に向き合いながらも逃げないメンタルの強さが複合的に作用しています。
一般人が体幹トレーニングで「楽しむ」を取り入れるには?
プランクなどの単調な静的トレーニングだけでなく、ダンス・水泳・格闘技系スポーツなど「動きの中で体幹を使う」活動を取り入れることが、継続しやすく効果的な体幹強化につながります。
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