2022年北京五輪で金1・銀3のメダルを獲得したスピードスケートの高木美帆。女子1500mの世界記録保持者であり、複数距離でW杯通算勝利数日本最多を更新し続けている。「今季は納得いくレースは1本もできていない」と言い続けながらも世界のトップに立ち続けるその裏側に、絶えざる自己変革がある。本記事では高木選手の公式発言と取材記録をもとに、そのトレーニングの本質を探る。
スピードスケーターの脚力強化:高木美帆の基本設計
スピードスケートの競技特性は、低い重心を保ちながら片足ずつ強力なストロークで氷を押し、最大推進力を生み出すことにある。これを可能にするのが、徹底して鍛え上げられた下半身の筋力と関節安定性だ。
オフシーズンのウエイトトレーニング
オフシーズンのウエイトトレーニングではスクワットやデッドリフトを中心とした下半身強化が実施される。これらはハムストリングス・大腿四頭筋・臀筋群を複合的に鍛える多関節運動であり、スピードスケートの推進力を生む「プッシュオフ動作」の強化に直接対応している。
多国籍チーム環境が引き出す「自分の強み」の発見
高木選手は「チームゴールドでは質の高いトレーニングができているし、いろいろな選手がいるので違う視点を知ることができる。それによって自分の強みも知ることができている」と語る。2024年時点でチームには中国・韓国の選手も加わり、国籍・専門種目の異なる計8名が切磋琢磨している。
出典:スピードスケート・高木美帆、最強の女王であり続けるために|GOETHE
オフシーズンの体幹トレーニング
スピードスケートにおける体幹の役割は、上半身の安定と下半身の推進力を接続する「力の伝達経路」の確保にある。チームゴールドには京都下鴨病院から派遣された理学療法士が帯同し、2024年度は5名体制に拡充されたコンディショニングサポートが選手を支えている。
「疲れた状態での滑り方」を体に覚え込ませるアプローチ
チームゴールドでのトレーニングでは、「基礎や体の使い方などを振り返る時間を十分に取りながら、あえてハードなトレーニングを繰り返し行うことで、効率のいいスケーティングや疲労が溜まってからの滑り方を強制的に体に覚え込ませる」という取り組みが行われている。これは試合終盤で競争相手より先にフォームを崩さないための実戦的なトレーニング設計だ。
持久力と瞬発力の同時向上
高木美帆が「最強のオールラウンダー」と称される理由は、500mから1500mまで複数距離で世界トップクラスの力を持つことにある。「勝ち続けながら変え続ける」という高木選手の哲学は、エムバペのスプリントトレーニングでも示されるように、トップアスリートに共通するアプローチだ。
ブレード変更という「未完成を承知での挑戦」
2024年12月の全日本選手権中には「レース後のわずかな時間を使って、新たな別のブレードもテスト」している。「このブレードを使いこなせたらまだ速くなれるという思いはある」と語り、中途半端な段階でやめることを選んでいない。デュプランティスの棒高跳びトレーニングでも示されているように、技術的細部への継続的な投資が世界記録更新の鍵となる。
試合期の調整:「現状維持は衰退」という哲学
W杯全レース優勝という結果に対しても「今季は納得いくレースは1本もできていないというのが現状。試行錯誤している日々です」と語っている。勝ち続けながらも自己評価の基準を下げない姿勢こそが、複数距離を高いレベルで維持し続ける動力源だ。
まとめ
高木美帆のトレーニングの核心は「勝ちながら変え続ける」という逆説にある。多国籍チームでの練習、理学療法士チームによる継続的なコンディショニング、シーズン中もブレードテストを続ける実験精神——これらが組み合わさって世界最強のオールラウンダーを支えている。
よくある質問(FAQ)
高木美帆はどんなトレーニングをしていますか?
オフシーズンにはスクワット・デッドリフトによる下半身筋力強化と、長距離自転車トレーニングによる有酸素能力の向上を並行して行います。氷上ではストローク練習・スタートダッシュ・インターバルトレーニングを実施し、多国籍チームとのフィードバックによってフォームの精度を継続的に向上させています。
高木美帆はなぜ複数距離で強いのですか?
持久力と瞬発力を同時に高めるトレーニング設計、多様なパートナーとの練習による戦略的な幅の広さ、そして「現状維持は衰退」というブレない自己超越の姿勢が組み合わさった結果です。
スピードスケートに体幹トレーニングは必要ですか?
不可欠です。低い重心を長時間維持しながら片足ずつストロークを行うため、骨盤と脊柱を安定させる体幹の強さがなければ、脚の筋力を効率よく推進力に変換できません。
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