「1on1を毎週やっているのに、部下の行動が変わらない」「上司が何を話せばいいかわからず形骸化している」。こうした1on1の課題を解決するアプローチとして注目されているのが、スポーツのコーチング手法を職場に取り入れる方法です。アスリートを成長させるコーチングの技術は、ビジネスパーソンの育成にも高い効果を発揮します。
スポーツコーチングと職場1on1の共通点
スポーツのコーチング理論と職場での1on1は、根本的な目的が一致しています。「相手の内在的な力を引き出し、自律的な成長を促す」という点で、スポーツコーチングの知見をそのまま職場に応用できます。
| スポーツコーチング | 職場1on1への応用 |
|---|---|
| 選手の目標設定と確認 | 部下の仕事目標と意欲の確認 |
| プレー映像を使った振り返り | 具体的なエピソードに基づいたフィードバック |
| 強みを見つけて伸ばすアプローチ | 部下の強みに着目した業務アサイン |
| 次の試合に向けた課題設定 | 次の週・月に向けた行動目標の設定 |
| 内発的動機の引き出し | 「なぜこの仕事をしたいか」の確認 |
スポーツコーチングと職場1on1の対応関係
「教える」から「引き出す」へのシフト
従来の上司・部下関係では「上司が正解を教え、部下がそれを実行する」ティーチング型が主流でした。スポーツのコーチング手法では、コーチは答えを渡しません。「どうすれば改善できると思う?」「今週一番うまくいった場面はどこ?」と問いを投げかけ、選手・部下自身が考えて答えを見つける支援をします。この「問いかけ型コーチング」は部下の内発的動機と自律性を高め、指示がなくても動ける人材を育成します。
心理的安全性の確保がコーチングの前提
スポーツチームでも職場でも、コーチングが機能するためには「失敗しても責められない」という心理的安全性が不可欠です。アスリートは安心できる環境の中でこそ「思い切ったプレー」に挑戦できます。職場でも同様で、上司が評価・審判として登場する1on1ではなく、「一緒に成長を考えるパートナー」として機能することがスポーツ型1on1の基本姿勢です。
スポーツ型1on1の実践メソッド
具体的にどのように1on1を設計・運営するかを、スポーツコーチングの手法に基づいて解説します。
GROWモデルの活用
スポーツコーチングで広く用いられるGROWモデルは、職場1on1にも最適な枠組みです。Goal(目標)→Reality(現状)→Options(選択肢)→Will(意志・行動決定)の4段階で会話を構成します。まず「今期の目標・今週取り組みたいこと」を確認し、「今の進捗・課題」を共有し、「どんな打ち手があるか」を一緒に考え、「次の1週間で何をするか」を具体的に決めます。このフローを徹底することで1on1が「報告会」ではなく「成長の場」に変わります。
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フィードバックの「SBI手法」
スポーツコーチングで用いられるSBI(Situation・Behavior・Impact)フィードバック手法は、職場1on1でも強力です。「先日の(S:場面)ミーティングで、○○さんが(B:行動)先に資料を配布していたことで(I:影響)参加者の理解が深まったと思います」のように具体的な場面・行動・影響の3点セットでフィードバックを伝えます。抽象的な「頑張っているね」ではなく、具体的なエピソードに基づいたフィードバックが行動変容につながります。
強みベースのアプローチ(ポジティブコーチング)
スポーツの「ポジティブコーチング」は、欠点の修正より強みの拡張に重きを置きます。職場1on1でも、「どの業務が一番得意で楽しいか」「どんな場面でベストパフォーマンスが出るか」を掘り下げることで、部下のエンゲージメントと生産性が高まります。パーソル総研の調査では、強みを活かした業務アサインを受けた社員はエンゲージメントが平均1.6倍高いことが示されています。
導入ステップ:組織での展開方法
スポーツ型1on1を組織全体に展開するための手順を整理します。個人の取り組みから組織文化への定着まで段階的に進めることが成功のポイントです。
管理職向けコーチングスキル研修の先行実施
1on1の質は実施する管理職のスキルに依存します。まず管理職・チームリーダー向けにGROWモデル・SBIフィードバック・傾聴スキルを習得するワークショップを先行実施します。ロールプレイング(スポーツのトレーニング的な反復練習)を取り入れることで、座学で学んだことを実際の1on1で使える形に落とし込めます。
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定期的な振り返りと改善サイクル
1on1導入後3ヶ月をめどに、参加者(上司・部下双方)へのアンケートを実施し、質の改善を図ります。「1on1で何が変わったか」「課題は何か」を定期的に問い続けることで、スポーツのシーズン後のレビューのように継続改善のサイクルが回ります。人事部門がデータを収集・フィードバックすることで、組織全体のコーチング文化の醸成につながります。
まとめ
- スポーツのコーチング手法(GROWモデル・SBIフィードバック・ポジティブコーチング)は職場1on1にそのまま応用できる
- 「答えを教える」ティーチングから「問いで引き出す」コーチングへのシフトが部下の自律性を高める
- 心理的安全性の確保が1on1コーチングの前提条件で、上司がパートナー役として機能することが重要
- 組織全体への展開は、管理職向けコーチングスキル研修を先行実施してから部下との1on1に移行する順序が効果的
- 3ヶ月ごとに参加者アンケートで質を評価し、継続改善のサイクルを回すことで組織のコーチング文化が定着する
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