ハイパフォーマンススポーツとは|企業が学べるHPSCの仕組み

ハイパフォーマンススポーツとは|企業が学べるHPSCの仕組み スポーツウェルビーイング

ハイパフォーマンススポーツとは、日本スポーツ振興センター(JSC)が「世界一を競い合うスポーツ」と定義している、国際大会の頂点を争う競技活動のことです。その強化を担う拠点が、東京都北区西が丘にあるハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)です。

「ハイパフォーマンス」という言葉は社内研修や健康経営の資料でもよく見かけますが、もとの意味や、国がどんな体制で選手を支えているのかまでは知られていません。この記事では、HPSCの仕組み・年報の数字・カンファレンス・求人の探し方を公式資料で確認し、企業の人事や経営企画が自社に持ち帰れる考え方まで整理します。

ハイパフォーマンススポーツとは世界一を競い合うスポーツ

ハイパフォーマンススポーツの2つの定義の比較。JSCは世界一を競い合うスポーツ、国のスポーツ基本計画は卓越性を目指すスポーツ活動と説明し、世界の頂点を争う競技という点で重なる

ハイパフォーマンススポーツは、オリンピックやパラリンピック、世界選手権のように世界の頂点を争う競技活動を指す言葉です。健康づくりや楽しみのためのスポーツと区別して使われます。公的な定義はJSCのものと国のスポーツ基本計画のものの2つがあり、言い回しは違っても指している範囲は重なっています。

JSCは「世界一を競い合うスポーツ」と定義している

HPSCを運営するJSCは、公式サイトの組織紹介で「JSCではハイパフォーマンススポーツを世界一を競い合うスポーツと定義しています」と書いています。あわせて、HPSCはオリンピック競技とパラリンピック競技を一体的に捉える、とも説明しています。

つまり対象は「トップ選手」という個人ではなく、世界一を争う活動そのものです。選手だけでなく、コーチ、医師、研究者、分析スタッフまで含めた取り組み全体を指す言葉だと読めます。

(参考)組織紹介(ハイパフォーマンススポーツセンター) – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

国の計画は「卓越性を目指すスポーツ活動」と説明している

国の第3期スポーツ基本計画(令和4年3月25日、文部科学省)は脚注で、ハイパフォーマンススポーツを「国際競技大会等での活躍を目指すアスリートによる、スポーツの卓越性を目指すスポーツ活動」と説明しています。JSCが「競い合う」と書いているのに対し、国の計画は「卓越性を目指す」と書いている点が違いです。

社内資料でこの言葉を使うときは、どちらの定義を引いたのかを添えておくと、読む人によって意味がずれません。

(参考)スポーツ基本計画(第3期・令和4年3月25日) – 文部科学省

Q. ハイパフォーマンススポーツとは何ですか?

世界一を競い合うスポーツのことです。日本スポーツ振興センター(JSC)がこのように定義しており、国の第3期スポーツ基本計画は「スポーツの卓越性を目指すスポーツ活動」と説明しています。オリンピックやパラリンピックなど国際大会の頂点を争う競技活動を指します。

ハイパフォーマンススポーツセンターはJISSとNTCを束ねる拠点

ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)は、国立スポーツ科学センター(JISS)とナショナルトレーニングセンター(NTC)を一体で運営するための組織です。研究・医療の機能と練習場の機能を1つの敷地に集め、スポーツ医・科学と情報による支援を提供しています。3つの組織の成り立ちを、JSCが公開している沿革から時系列で並べました。

組織 時期 役割
国立スポーツ科学センター(JISS) 平成13年4月 発足 スポーツ医・科学の研究と選手への支援
ナショナルトレーニングセンター(NTC) 平成20年1月 全面供用開始 競技別の専用練習場と宿泊施設を備えたトレーニング拠点
ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC) 平成28年4月 設置(令和元年5月に現名称へ変更) JISSとNTCを一体で運営し、オリンピック競技とパラリンピック競技を合わせて支える

出典:独立行政法人日本スポーツ振興センター「沿革」「組織紹介」をもとに作成。

JISSは医・科学の研究と支援を担う

JISSは平成13年4月に発足した、スポーツ医・科学の専門機関です。JISSスポーツクリニックでの診療やメディカルチェックに加え、栄養相談や心理カウンセリングもここが担っています。3つのなかで最も古く、後から練習拠点が隣に加わった順番になります。

(参考)沿革(ハイパフォーマンススポーツセンター) – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

NTCは競技別の練習拠点として使われている

同じ沿革によると、NTCは平成20年1月に全面供用を開始したトレーニング拠点です。平成21年5月にはネーミングライツが導入され、「味の素ナショナルトレーニングセンター」と呼ばれるようになりました。国の強化拠点の名称に企業が関わっている例です。

HPSCは2つを一体で運営するために設置された

平成28年4月、JISSとNTCをまとめる組織として「ハイパフォーマンスセンター」が設置され、令和元年5月に現在の名称になりました。HPSC年報2025の組織図によると、職員数は348名(2026年3月31日現在)です。研究と練習を別の組織に分けず、1人の選手を同じ敷地の専門職が横断で支える形にしたことが、この再編の要点です。

スポーツ庁が成長産業化の目標として掲げるスポーツ市場規模15兆円の議論が「産業」の話だとすれば、HPSCは「競技力」の側を受け持つ国の基盤にあたります。

(参考)ハイパフォーマンススポーツセンター年報2025 – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

Q. ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)はどこにありますか?

東京都北区西が丘にあります。国立スポーツ科学センター(JISS)とナショナルトレーニングセンター(NTC)が同じ敷地に集まっており、日本スポーツ振興センター(JSC)が管理・運営しています。

HPSC年報で読める3年間の支援実績

HPSCの活動量は、HPSC公式サイトの年報ページで毎年公開される「ハイパフォーマンススポーツセンター年報」で確認できます。年報2024と年報2025の2冊から、同じ定義で比べられる3つの指標を拾い、3年度分を並べました。五輪・パラリンピックの開催年に件数が下がり、翌年に戻るという波が読み取れます。

指標 2023年度 2024年度 2025年度
メディカルチェック実施件数 1,759件 1,172件 1,281件
外来診療の延べ受診件数 14,874件 13,385件 17,252件
栄養講習会の件数(延べ受講者数) 26件(739名) 16件(441名) 23件(789名)

出典:独立行政法人日本スポーツ振興センター「ハイパフォーマンススポーツセンター年報2024」「同 年報2025」の本文記載値をもとに作成。栄養講習会は競技団体の依頼によりHPSC内で開催されたもの。

メディカルチェックは年1,200件前後で実施されている

メディカルチェックの実施件数は、2023年度1,759件、2024年度1,172件、2025年度1,281件でした。年報は2024年度の減少について、制度変更で重複実施がなくなったことと、パリ2024大会の開催を理由に挙げています。件数の増減だけで活動の良し悪しを判断できない、という読み方の注意も年報から分かります。

(参考)ハイパフォーマンススポーツセンター年報2025 – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

外来診療は2025年度に延べ17,252件へ増えた

JISSスポーツクリニックなどの外来診療は、延べ受診件数が2024年度の13,385件から2025年度は17,252件に増えました。内訳ではリハビリが8,781件で最も多く、整形外科の3,916件が続きます。けがをした後に競技へ戻るまでの支援が、診療の中心になっていることが数字に表れています。

栄養講習会は大会の翌年度に受講者が戻っている

競技団体の依頼で開かれた栄養講習会は、2023年度26件(延べ739名)、2024年度16件(延べ441名)、2025年度23件(延べ789名)でした。年報2024は減少の背景としてパリ2024大会の開催年度だったことの影響に触れています。本番の年は学ぶ場が減り、次の4年が始まる年に増える、という並びです。

この波は企業にも当てはめやすい見方です。繁忙期や決算期に研修や健康施策の参加が落ちるのは自然なことで、落ちた年だけを見て施策をやめるより、準備期に厚くする計画を先に決めておくほうが続きます。

(参考)ハイパフォーマンススポーツセンター年報2024 – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

Q. HPSCの年報はどこで読めますか?

HPSC公式サイトの年報ページでPDFが無料公開されています。最新は2025年度の事業をまとめた「ハイパフォーマンススポーツセンター年報2025」で、メディカルチェックや診療の件数、カンファレンスの実施報告、組織図と職員数が載っています。

ハイパフォーマンススポーツ・カンファレンスは企業も参加対象

ハイパフォーマンススポーツ・カンファレンスは、JSCが主催し、HPSCの研究と支援の成果を外部に共有する場です。公式ページの過去開催一覧では2017年の回から記録が残っています。参加対象には競技団体だけでなく「関係者(自治体、関連企業等)」が含まれており、企業の担当者も申し込めます。

2026年は会場開催で参加費は無料

公式ページによると、ハイパフォーマンススポーツ・カンファレンス2026は2026年11月28日(土)〜29日(日)に開催されます。テーマは「分野融合で加速するハイパフォーマンス ~すべては、世界で勝つために~」、参加費は無料です。申込方法と内容の詳細は、2026年10月11日時点で「決まり次第お知らせ」とされています。

過去の規模は年報で確認できます。2025年度は会場開催2日間で365名(延べ人数、招待者を含む)、2024年度は216名(実人数、招待者を含む)が参加しました。数え方が「延べ」と「実人数」で違うため、この2つの数字を並べて増減を語ることはできません。

(参考)ハイパフォーマンススポーツ・カンファレンス – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

終了後は年報の実施報告で内容を追える

開催日を過ぎてからこの記事を読んだ場合は、翌年度に公開される年報の実施報告を見るのが近道です。年報2025には、2025年度のテーマが「ハイパフォーマンススポーツ研究に基づく支援のメソッド化に向けて」だったことや、一部セッションで同時通訳が行われたことが記録されています。次回の日程は同じ公式ページで更新されます。

選手のデータをどう読み、現場の判断につなげるかという話題は、スポーツアナリストの仕事内容と重なる部分が多く、分析職を目指す人の情報源にもなります。

(参考)ハイパフォーマンススポーツセンター年報2025 – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

Q. ハイパフォーマンススポーツ・カンファレンスの参加費はいくらですか?

2026年の開催は参加費無料です。主催は日本スポーツ振興センター(JSC)で、参加対象には競技団体の関係者に加えて自治体や関連企業も含まれています。申込方法は公式ページで案内されます。

HPSCの求人はJSCの採用情報に掲載される

HPSCで働きたい場合に見る場所は、HPSCのサイトではなくJSC(日本スポーツ振興センター)の採用情報ページです。HPSC単独の採用ページは無く、勤務地が「ハイパフォーマンススポーツセンター」の募集がJSCの求人のなかに並びます。探し方と契約の形を先に知っておくと、募集が出たときに迷いません。

募集は契約職員や契約研究員などの区分ごとに出る

JSCの採用情報は、事務系の契約職員、研究系・技術系の契約研究員(医師を含む)、非常勤専門職員といった区分で掲載されます。2026年10月11日時点では、勤務地にHPSCを含む事務系の契約職員の募集が出ている一方、契約研究員と非常勤専門職員は「現在募集はありません」と表示されていました。

専門職の募集は通年ではなく、欠員や事業の開始に合わせて出ます。希望する区分のページを定期的に確認するのが現実的な探し方です。必要とされる学位や資格は区分ごとに違うので、スポーツ業界の年収の実態とあわせて条件を見比べておくと判断しやすくなります。

あわせて読みたいスポーツ業界就職に役立つ資格おすすめ8選2026年版›

(参考)非常勤職員採用(採用情報) – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

契約は年度ごとで雇用期間は最長4年が上限

2026年10月時点で公開されている契約職員(事務)の募集要項には、契約は年度ごとに更新し「雇用期間は最長4年を限度とします」と書かれています。期間の定めのない雇用を前提にした求人ではない、という点は応募前に押さえておきたいところです。

企業の採用担当から見ると、HPSCで数年間の実務を積んだ人材が、任期を終えて民間に出てくる構造だとも読めます。データ分析、栄養、リハビリなどの経験者を採りたい企業にとっては、中途採用の候補になる層です。

(参考)契約職員(事務)募集要項 – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

Q. HPSCの採用情報はどこに掲載されますか?

日本スポーツ振興センター(JSC)の採用情報ページに掲載されます。HPSC単独の採用ページは無く、勤務地がハイパフォーマンススポーツセンターの募集が、契約職員や契約研究員などの区分ごとに並びます。

企業がHPSCの仕組みから持ち帰れる3つの視点

ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)の3つの機能と企業での置き換えの対応。メディカルチェックは健診・ストレスチェック、分野をまたぐ支援は関係者の情報共有、成果の発信は手順書での横展開にあたる

HPSCは選手のための組織ですが、支え方の設計は企業の健康施策や人材育成にもそのまま置き換えられます。ここでは、公式資料に書かれた機能を、企業の担当部署に対応させて3つに整理しました。

支援の前に状態を測る

HPSCの支援は、メディカルチェックで状態を把握するところから始まります。年1,200件前後の検査が、その後の診療や栄養、トレーニングの支援の起点です。企業でいえば、健康診断やストレスチェックの結果を、施策を選ぶ前の材料として使う順番にあたります。

測定と施策が別々の担当で切れていると、結果は配られるだけで終わります。「誰が結果を読み、どの施策につなぐか」を先に決めておくことが、HPSCの流れから学べる最初の点です。ウェルビーイング施策の設計でも、現状把握を飛ばした施策が続かない理由として同じ順番が問われます。

(参考)ハイパフォーマンススポーツセンター年報2025 – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

専門職が分野をまたいで1人を支える

HPSCのスポーツクリニックには内科、整形外科、リハビリ、栄養相談、心理カウンセリングといった部門がそろっており、2025年度の外来診療では延べ17,252件を受けています。2026年のカンファレンスのテーマが「分野融合」であるとおり、分野ごとに別々に助言するのではなく、1人の選手について情報を持ち寄る形が目指されています。

企業では、産業医、保健師、人事、現場の上司がそれぞれ別の情報を持っています。不調の社員1人について、この4者が同じ場で話す機会を月1回でも設けると、HPSCに近い支え方になります。

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(参考)ハイパフォーマンススポーツセンター年報2025 – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

得た知見を現場の外へ返す

HPSCは「ハイパフォーマンスからライフパフォーマンスへ」をパーパスに掲げ、得た知見を社会へ還元することを使命だとしています。スポーツ庁の「持続可能な国際競技力向上プラン」も、HPSCが熱中症や脳震盪など「あらゆる人々の日常生活にも関わる」研究の成果を分かりやすく発信する、と定めています。HPSCも、大塚ホールディングスとの共同プロジェクト(2016〜2022年度)の成果をもとに、2023年に「アスリートのためのトータルコンディショニングガイドライン」を発刊しました。

後継の共同プロジェクトは大塚製薬と進められており、目的には国民のライフパフォーマンス向上が含まれています。企業でも、一部の部署で試してうまくいった健康施策や研修を、手順書にして他部署へ配るところまでを1つの仕事として計画に入れておくと、取り組みが担当者の異動で消えません。

(参考)パーパス(存在意義)/ JISSプラン2034 – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

(参考)地域・大学等との連携・協働(ハイパフォーマンススポーツセンター) – 独立行政法人日本スポーツ振興センター

(参考)持続可能な国際競技力向上プラン(令和8年5月改定) – スポーツ庁

まとめ

ハイパフォーマンススポーツは「世界一を競い合うスポーツ」を指し、その強化を支える国の拠点がHPSCです。要点を振り返ります。

  • 定義はJSCの「世界一を競い合うスポーツ」と、国のスポーツ基本計画の「スポーツの卓越性を目指すスポーツ活動」の2つがある
  • HPSCはJISS(平成13年4月発足)とNTC(平成20年1月全面供用開始)を一体で運営する組織で、職員数は348名(2026年3月31日現在)
  • 年報では、メディカルチェックや診療の件数が五輪・パラリンピックの開催年に下がり、翌年度に戻る波が読める
  • カンファレンスは企業も参加対象で、求人はJSCの採用情報に区分ごとに掲載される

まずは年報2025の目次を開き、自社の健康施策や研修に近い章を1つ読んでみてください。測る、分野をまたいで支える、外へ返すという3つの順番が、自社のどこで切れているかが見えてきます。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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