スポーツの熱中症対策で会社が用意する物は、飲み物・食べ物・体を冷やすグッズの3種類に分けて考えると漏れがなくなります。飲み物は食塩相当量が100mlあたり0.1〜0.2gのスポーツドリンクを15〜20分ごとに150〜250ml、というのが日本スポーツ協会の示す目安です。
社内運動会の朝、総務の担当者がクーラーボックスに水のペットボトルだけを詰めている。よくある光景ですが、水だけでは汗で失われる塩分を補えませんし、体を冷やす手段も足りません。
この記事では、日本スポーツ協会・環境省・厚生労働省・消費者庁の資料をもとに、社内イベントや企業の部活動で何を・どれだけ備えるかを整理します。
スポーツの熱中症対策で会社が備える物は飲み物・食べ物・冷却グッズ

会社が主催するスポーツ活動では、参加者が自由に水分と塩分をとれる環境と、体を冷やせる場所を主催側が先に整えておく必要があります。日本スポーツ協会のガイドブックも、スポーツドリンクなど水分・塩分を補給できる飲料を用意し、飲水休憩をとる工夫を主催側に求めています。
備品の中身は、厚生労働省が2026年3月に策定した「職場における熱中症防止のためのガイドライン」が参考になります。飲料水・スポーツドリンク・経口補水液・塩飴の備え付け、氷やアイススラリー、冷たいおしぼり、日よけテント、体温計と体重計、JIS規格に適合したWBGT指数計などが挙げられています。作業中の労働者を想定した文書ですが、社内イベントの準備リストを作るときの物差しとして借りられます。
暑さによる被害は年々大きくなっています。厚生労働省の確定値では、2025年の職場における熱中症の死傷者数(死亡と休業4日以上の合計)は1,803人で、統計を取り始めた2005年以降で最多でした。消防庁の集計でも、2025年5月〜9月の熱中症による救急搬送は全国で100,510人と、調査を始めた2008年以降で最も多くなっています。どちらもスポーツ行事に限った数字ではありませんが、準備を前年どおりで済ませにくい状況だといえます。
従業員の運動機会づくりを健康施策としてどう位置づけるかは、ウェルビーイング経営の解説でまとめています。
(参考)スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック 第6版(令和7年6月発行) – 公益財団法人日本スポーツ協会
(参考)職場における熱中症防止のためのガイドライン(令和8年3月策定) – 厚生労働省
(参考)2025年(令和7年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値) – 厚生労働省
(参考)令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況 – 総務省消防庁
Q. スポーツの熱中症対策グッズは何を用意すればよいですか?
スポーツドリンクと水、氷、塩飴、日よけテント、WBGT計、体重計に加えて、手を冷やすバケツや霧吹きと扇風機を用意します。厚生労働省のガイドラインは、飲料・塩飴・氷・アイススラリー・体温計・体重計などを備える物として挙げています。
熱中症対策の飲み物は3つの公的機関の目安を比べて決める
運動中の飲み物は、食塩0.1〜0.2%を含むスポーツドリンクをこまめに飲むのが基本です。ただし飲む間隔と1回の量は、日本スポーツ協会・環境省・厚生労働省で書き方が少しずつ違います。3つの資料から該当箇所を拾って並べました。
| 機関と資料 | 飲む間隔 | 1回の量 | 塩分の目安 |
|---|---|---|---|
| 日本スポーツ協会(ガイドブック第6版) | 15〜20分ごと | 150〜250ml | 食塩0.1〜0.2%、糖質4〜8%程度 |
| 環境省(マニュアル2022) | 休憩は30分に1回以上 | 体重減少が2%以内になる量 | 食塩水0.1〜0.2%程度、ナトリウム100mlあたり40〜80mg |
| 厚生労働省(職場のガイドライン) | 20〜30分ごと | カップ1〜2杯程度 | 食塩水0.1〜0.2%、ナトリウム100mlあたり40〜80mg |
運動・作業中の水分と塩分の補給目安の比較。出典:日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」第6版、環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」、厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」(令和8年3月)をもとに作成
日本スポーツ協会の目安|15〜20分ごとに150〜250ml
日本スポーツ協会は、暑い環境で運動するときの飲み方として、15〜20分ごとに150〜250mlを、飲みやすい温度で、電解質と糖質を含んだ飲料でとることを勧めています。3つのなかで最も間隔が短く、量まで具体的です。
社内運動会なら、競技が1つ終わるたびに紙コップ1杯を配る運用に置き換えられます。参加者50人で2時間の行事なら、1人あたり150〜250mlを6〜8回、合計でおよそ45〜100リットルが必要になる計算です。500mlのペットボトルを人数分だけ用意する準備では足りないことが分かります。
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環境省の目安|休憩は30分に1回以上で体重減少は2%以内
環境省のマニュアルは、休憩を30分に1回以上とり、運動前後の体重減少が2%以内に収まるよう水分をとることを目安にしています。体重60kgの人なら、運動後に1.2kg以上減っていれば飲む量が足りていません。
受付に体重計を1台置き、開始前と終了後に量ってもらうだけで、足りていたかどうかを本人が確かめられます。同じマニュアルは、スポーツ飲料のなかには500mlあたり30g以上の糖分を含むものがあるとして、飲みすぎにも注意を促しています。
厚生労働省の目安|20〜30分ごとにカップ1〜2杯
厚生労働省のガイドラインは、作業中の労働者に向けて、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度をとることが望ましいとしています。あわせて、とり過ぎへの注意と、塩分や糖分を制限されている人は主治医や産業医に相談させることも書かれています。
社内イベントでは、高血圧や糖尿病の治療中の参加者が一定数いる前提で準備するのが現実的です。案内メールに「塩分・糖分の制限がある方は事前に主治医へご相談ください」と1行入れておくと、当日の判断に迷いません。職場の作業に関する法令上の対応は熱中症対策の義務化の解説で整理しています。
(参考)スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック 第6版(令和7年6月発行) – 公益財団法人日本スポーツ協会
(参考)職場における熱中症防止のためのガイドライン(令和8年3月策定) – 厚生労働省
Q. スポーツ中の熱中症対策に適した飲み物は何ですか?
食塩0.1〜0.2%と糖質を含むスポーツドリンクが適しています。日本スポーツ協会は、暑い環境での運動時に15〜20分ごとに150〜250mlを補給することを勧めています。
経口補水液は緊急用|運動中のドリンクはスポーツドリンクを選ぶ
運動中に定期的に飲むドリンクはスポーツドリンクで、経口補水液は体調を崩した人が出たときのために備えておく物です。見た目は似ていますが、消費者庁によると経口補水液にはスポーツドリンクの約3〜4倍のナトリウムやカリウムが含まれています。
経口補水液は2023年5月に特別用途食品の許可区分が新設され、許可を受けていない飲料は「経口補水液」と表示できなくなりました。消費者庁は見直しの理由のひとつに、脱水でない状態で大量にとるとナトリウムのとり過ぎにつながるおそれを挙げています。既存の商品は2025年5月末までに対応を終えることとされました。
厚生労働省のパンフレットも、経口補水液は塩分濃度が高いため定期的な摂取用には向かないと明記しています。一方で、同省のガイドラインは備え付ける飲料の1つに経口補水液を挙げ、異常が見られた人への対応でも使うとしています。
つまり、クーラーボックスの中身は「全員に配るスポーツドリンクと水」と「救護担当が管理する経口補水液」に分けておくのが筋です。箱を分けて、経口補水液には「体調不良者用」と書いた紙を貼っておけば、参加者が取り違えることも防げます。
(参考)「特別用途食品の表示許可等について」の一部改正の概要(令和5年5月19日) – 消費者庁
(参考)職場における熱中症防止のためのガイドラインを参考に熱中症を効果的に防止しましょう! – 厚生労働省
Q. 経口補水液を運動中の水分補給に使ってもよいですか?
定期的な水分補給には向きません。厚生労働省は、経口補水液は塩分濃度が高いため定期的な摂取用には向かないとしており、体調不良者が出たときの備えとして用意するのが適切です。
熱中症対策の食べ物は朝食と塩飴|ゼリー飲料は成分表示で選ぶ
食べ物で公的資料がはっきり書いているのは、朝食を抜かないことと、塩飴を備えることの2点です。検索の多いゼリー飲料については、運動時の補給手段として取り上げた記述は、今回確認した日本スポーツ協会・環境省・厚生労働省の資料には見当たりませんでした。
朝食を抜いた参加者は運動量を落とす
厚生労働省のガイドラインは、朝食の未摂取を睡眠不足や前日の飲酒と並べて、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあるものとしています。日本スポーツ協会のガイドブックにあるトレーニング前の体調チェックにも「朝食を抜いた」という項目が入っています。
休日開催の社内イベントは、朝食をとらずに集合する人が出やすい条件です。受付で「朝食をとったか・よく眠れたか・前日に深酒をしていないか」の3つを口頭で尋ね、当てはまる人は出場種目を減らす。これだけで、当日いちばん危ない人を先に見つけられます。
塩飴とゼリー飲料は食塩相当量が分かる物を置く
塩飴は、厚生労働省のガイドラインが飲料と並べて備え付けを求めている食べ物です。同じ箇所に、配備する物は糖分と塩分の含有量がとる人に分かるものが望ましい、とも書かれています。
ゼリー飲料を置く場合も、この考え方がそのまま使えます。パッケージの栄養成分表示で食塩相当量を確かめ、塩分をほとんど含まないエネルギー補給用の商品だけにならないよう選んでください。ゼリー飲料はあくまで補助で、水分と塩分の中心はスポーツドリンクに置くのが、公的資料の範囲で言える堅い組み立てです。
(参考)職場における熱中症防止のためのガイドライン(令和8年3月策定) – 厚生労働省
(参考)スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック 第6版(令和7年6月発行) – 公益財団法人日本スポーツ協会
冷却グッズは霧吹き・手の冷却・アイススラリーを場面で使い分ける

体を冷やすグッズは、運動前・休憩中・異常時で役割が変わります。日本スポーツ協会は2025年のガイドブック改訂で、身体冷却を「スポーツ活動中の熱中症予防5ヶ条」の1つに加えました。体の外から冷やす方法と内から冷やす方法を組み合わせることが勧められています。
霧吹きは扇風機とセットで休憩中に使う
霧吹きは単体で使う物ではなく、風を送る手段と組み合わせる道具です。日本スポーツ協会の冷却方法の一覧では、送風の欄に「霧吹き/水噴射との組み合わせ可能、屋外でも使用可能」と書かれています。
休憩テントに霧吹き数本と大型の扇風機を置き、肌に水を吹きかけてから風に当たる流れを作りましょう。厚生労働省のガイドラインも、体調に異常がある人への対応としてミストファンや、濡れタオルを当てて扇風機で風を送る方法を挙げています。
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手のひらと前腕は15℃前後の水で冷やす
費用をかけずに始められるのが、手のひらと前腕を水に浸ける方法です。日本スポーツ協会によると、冷たすぎず血管が縮まない15℃前後の水で冷やすと、冷えた血液が全身をめぐって体が冷却されます。
用意するのはバケツと水、温度計だけです。氷水にしてしまうと冷たすぎるので、水道水に氷を少し足して15℃前後に保つのがコツになります。競技の合間に数人が同時に使えるよう、バケツは2〜3個並べておくと回転が良くなります。
アイススラリーは体の内側から冷やす
アイススラリーは、細かい氷と飲料が混ざったシャーベット状の飲み物です。日本スポーツ協会は、スポーツ飲料で作れば水分・電解質・糖質の補給と冷却を同時にできる方法として紹介しています。
クーラーボックスで持ち運べる市販品を、運動前と休憩中に配る使い方が現実的です。暑さに体を慣らしておく準備については、暑熱順化の進め方もあわせて確認しておくと、当日の負担が変わります。
(参考)スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック 第6版(令和7年6月発行) – 公益財団法人日本スポーツ協会
(参考)職場における熱中症防止のためのガイドライン(令和8年3月策定) – 厚生労働省
Q. スポーツの熱中症対策に霧吹きは効果がありますか?
霧吹きは扇風機などの送風と組み合わせて使う冷却手段です。日本スポーツ協会のガイドブックは、送風について霧吹きや水噴射と組み合わせられ、屋外でも使えると記載しています。
社内スポーツイベントは中止の基準と救護の手順を先に決める
飲み物やグッズをそろえても、暑さが限度を超えた日は中止するしかありません。備品の準備と同じ時期に、判断の基準と担当者を決めておくことが欠かせません。
WBGT計で測り運動指針に当てはめる
中止の判断には、気温ではなく暑さ指数(WBGT)を使います。日本スポーツ協会の熱中症予防運動指針は、WBGT31以上を「運動は原則中止」、28〜31を「厳重警戒(激しい運動は中止)」としています。
WBGT計は、厚生労働省のガイドラインがJIS規格に適合した製品を準備するよう求めています。黒球の付いていない簡易型では、正しく測れない場合があるためです。測定や通知を自動化したい場合は、熱中症対策サービスの比較が参考になります。
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中止を決める人と冷却の手順を紙に書いて貼る
環境省のマニュアルは、イベントの主催者に対して、中止する基準と判断する責任者を明示すること、冷たい飲料の補給場所と涼しい休息場所を確保して示すことを求めています。
倒れた人が出たときの冷却の順番も決めておきましょう。日本スポーツ協会は、重い熱中症が疑われる場合、氷水や冷水に浸ける方法が最も効果的で、一般のスポーツ現場ではホースで全身に水をかけ続ける方法が次に勧められるとしています。会場の水道の位置とホースの有無を下見で確かめ、救急要請の担当者と一緒に休憩テントへ掲示しておくと、当日あわてずに動けます。
(参考)スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック 第6版(令和7年6月発行) – 公益財団法人日本スポーツ協会
(参考)職場における熱中症防止のためのガイドライン(令和8年3月策定) – 厚生労働省
まとめ|スポーツの熱中症対策は備品リストから始める
会社が主催するスポーツ活動の熱中症対策を、備える物の観点で振り返ります。
- 飲み物は食塩0.1〜0.2%のスポーツドリンクを、15〜20分ごとに150〜250mlが目安
- 経口補水液は体調不良者用に分けて保管し、全員に配る飲み物にはしない
- 食べ物は朝食の確認と塩飴。ゼリー飲料は食塩相当量を見て補助として置く
- 冷却グッズは霧吹きと扇風機、手を浸けるバケツ、アイススラリーを場面で使い分ける
- WBGT計と中止基準、救護の手順は備品と同じタイミングで決める
次の社内イベントが決まったら、まず参加人数と所要時間から飲み物の必要量を計算し、冒頭の一覧を使って備品の発注リストを作ってみてください。数字に置き換えると、足りない物がすぐに見えてきます。
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