「スポーツ市場ってどれくらいの規模なんだろう?」「これから伸びる分野はどこ?」——新規事業やマーケティングを考えるとき、こうした疑問にぶつかる方は多いと思います。この記事では、日本のスポーツ市場の規模の推移と、これから成長が期待される分野を公的データから整理します。自社がどこに参入できそうか、判断の材料になるはずです。
スポーツ市場の規模はいまどれくらいなのか
まずは全体像から押さえましょう。スポーツ市場の規模は、ここ10年で着実に拡大してきました。ただし一本調子ではなく、コロナ禍での落ち込みと回復という波があります。数字の流れを知ると、市場の体力が見えてきます。
2015年の8.7兆円から2019年に10.2兆円へ拡大した
スポーツ庁と経済産業省の「スポーツ未来開拓会議」のとりまとめによると、スポーツ市場規模は2015年の8.7兆円から、コロナ禍前の2019年には10.2兆円まで拡大しました。年率にすると4.2%の成長で、同時期の名目GDP成長率0.9%を大きく上回っています。つまりスポーツは、経済全体の伸びを超えるスピードで成長してきた分野ということです。
背景には、スタジアム・アリーナの整備やデジタル配信の拡大で「みる」スポーツの価値が高まったことがあります。市場が伸びている事実は、参入を考える企業にとって追い風になります。
(参考)スポーツ未来開拓会議とりまとめ(2025年4月) – スポーツ庁・経済産業省
コロナ禍での落ち込みと回復が示す市場の底力
2020年はコロナ禍でスポーツ活動が大きく制限され、市場規模は8.9兆円まで落ち込みました。ところが翌2021年には10.0兆円と、ほぼコロナ前の水準まで回復しています。これは、スポーツへの需要が一時的に抑えられても、制約がなくなれば戻ってくる「底堅さ」を持っていることを示しています。
実際、プロ野球・サッカー・バスケットボールといった主要プロスポーツの来場者数は、2024年以降いずれも過去最高を更新しました。需要が回復するスピードが速い市場は、投資先として見たときの安心材料になります。
これから成長が期待されるスポーツ市場の分野
市場全体が伸びていても、どの分野に張るかで結果は変わります。会議のとりまとめでは、これまで成長を支えてきた分野と、これから伸びしろのある分野が分けて整理されています。ここを押さえると、ねらい目が見えてきます。
「みる」スポーツは引き続き拡大が見込まれる
2015〜2019年の成長をけん引したのは、主に「みる」スポーツ、つまりスポーツ興行やスポーツ関連メディアでした。見応えのあるスタジアム・アリーナの整備が各地で進み、デジタル配信も拡大していることから、今後もこの分野の市場拡大が期待されています。さらに、さまざまなリーグでプロ化が進み、チケット価格の多様化やスポーツホスピタリティ(特別な観戦体験の提供)が広がることで、観戦一回あたりの付加価値が高まっていきます。観戦体験を高める商品やサービスを提供できる企業にとっては、関わる入り口が増えていく分野と言えます。
「する」スポーツとスポーツツーリズムに伸びしろがある
一方で、健康増進につながる「する」スポーツやスポーツツーリズムは、これまで相対的に伸び悩んできた分野です。裏を返せば、ここに開拓の余地が大きく残っているということです。会議でも、ヘルスケアやデジタルヘルス関連産業の市場が大きく成長すると見込まれるなか、運動・スポーツに加えて睡眠や栄養などライフスタイル全般が融合することで市場が広がると指摘されています。
たとえばウェアラブル端末で日々のコンディションを測り、運動プログラムを提案するサービスは、まさにこの融合領域です。健康やデジタルの強みを持つ企業ほど、参入のチャンスがあります。
企業がスポーツ市場で機会をつかむための視点
最後に、ここまでのデータをビジネスにどうつなげるかを考えます。市場の数字を「自社の動き」に落とし込む視点を持つことが大切です。
他産業との連携で新しい価値をつくる
スポーツ団体は、コンテンツやスタジアム、選手のデータ、観客情報など、多様なリソースを持っています。これらを自社の技術やサービスと掛け合わせると、新しい財・サービスが生まれる可能性があります。実際、IT・マーケティング・ヘルスケア・観光など、さまざまな分野の企業がスポーツビジネスに関心を寄せています。
たとえば飲食チェーンがスタジアムと組んで地域限定メニューを展開すれば、集客とブランド発信を同時に進められます。スポーツを「自社の事業を広げる接点」として捉えると、市場の成長を自社の成長に変えやすくなります。
(参考)スポーツの成長産業化(第3期スポーツ基本計画) – スポーツ庁
従業員のスポーツ実施という身近な切り口もある
大きな新規事業でなくても、スポーツ市場に関わる方法はあります。働き盛りの20〜40代はスポーツ実施率が低い一方、潜在的に「やりたい」と思っている人は多いというデータがあります。企業が従業員向けにスポーツの機会を用意すると、実施率がぐっと上がる傾向も示されています。
社内のスポーツ支援は健康経営につながり、結果的にスポーツ関連商品やサービスの需要も押し上げます。市場の拡大を外から眺めるだけでなく、自社の従業員施策という身近なところから関わってみる、という入り方も十分に有効です。
まとめ:スポーツ市場は成長分野を見極めて関わる
要点を整理します。
- スポーツ市場規模は2015年8.7兆円から2019年10.2兆円へ、年率4.2%で成長してきた
- コロナ禍で8.9兆円まで落ち込んだが、2021年に10.0兆円へ回復し底堅さを見せた
- 「みる」スポーツは引き続き拡大、「する」スポーツやスポーツツーリズムに伸びしろが大きい
- ヘルスケアやデジタルとの融合領域に企業のチャンスがある
- 新規事業だけでなく、従業員のスポーツ支援という身近な関わり方も有効
市場全体の数字を眺めたうえで、自社が勝負しやすい分野はどこかを見極めることが、スポーツ市場で機会をつかむ第一歩になります。
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