「スポーツに投資したいが、経営的な効果をどう測ればいいかわからない」「スポンサーシップや協賛の経済的な価値をどう示すか悩んでいる」——スポーツビジネスに関わる経営企画・マーケティング担当者の方から、こうした相談がよく寄せられます。スポーツの価値は「感動」「ブランドイメージ」といった定性的なものだけではなく、経済効果として定量化する手法も確立されてきています。
この記事では、スポーツの経済的価値をどう測定するか——その指標・手法・一次情報をもとに解説します。スポンサーシップROI、スポーツイベントの地域経済効果、健康経営における投資対効果まで、経営的な視点でスポーツの価値を語るための基礎知識をまとめました。
スポーツの経済効果を測定する3つの視点
スポーツの経済的価値は、測定の「視点」によって大きく異なります。スポンサー企業にとっての価値・開催地域にとっての価値・雇用する企業(健康経営)にとっての価値——それぞれ異なる指標と測定方法が必要です。
| 視点 | 主な測定対象 | 代表的な指標 |
|---|---|---|
| スポンサー企業 | ブランド露出・認知度向上 | 広告換算価値・ROI |
| 地域・自治体 | 来訪者消費・雇用創出 | 経済波及効果・観光消費額 |
| 雇用企業(健康経営) | 生産性・医療費・欠勤率 | SROI・プレゼンティーズム指標 |
表:スポーツの経済的価値を測定する3つの視点と主な指標
スポンサー企業視点:広告換算価値とROI
スポーツスポンサーシップの経済的価値は、「そのブランド露出を広告で代替した場合のコスト(AVE:Advertising Value Equivalency)」で計算するのが最も一般的な手法です。テレビ放映時間・看板露出・SNSインプレッションなどを積み上げて試算します。ただし、AVEはブランド好意度・購買意欲への影響を含まないため、近年はNPS(純推奨者スコア)・ブランド認知度調査・購買行動データとの組み合わせが推奨されています。
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地域・自治体視点:経済波及効果と観光消費
スポーツイベント・大会の経済効果は、来訪者が地域で消費する「直接効果」と、それが他産業に波及する「間接効果」「誘発効果」の合計で測定されます。産業連関分析を用いるのが一般的で、観光庁や地方自治体が大規模スポーツイベント後にこの手法で経済効果を公表しています。日本政策投資銀行(DBJ)のスポーツ産業レポートでも、国内スポーツイベントの経済効果試算が公開されており、参考データとして活用できます。
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雇用企業(健康経営)視点:SROI と投資対効果
企業が社員のスポーツ・運動を支援する場合の経済的価値は、「SROI(Social Return on Investment:社会的投資収益率)」や「医療費削減額・プレゼンティーズム改善額」で測定します。経済産業省の健康投資管理会計ガイドラインでは、健康投資の費用対効果を定量化するための枠組みが提供されており、施策ごとに「投資額」「削減できた医療費・欠勤コスト」を比較する形式が示されています。
スポーツ産業全体の経済規模と成長性
スポーツの経済的価値を語るには、産業全体の規模感を押さえておくことが重要です。第3期スポーツ基本計画では、日本のスポーツ市場規模を2025年までに15.2兆円に拡大する目標が掲げられています。スポーツ庁の発表では市場は着実に成長しており、スポーツを「成長産業」として位置づける政策的な裏付けがあります。
スポーツ市場の構成要素と成長ドライバー
国内スポーツ市場は「スポーツ用品・施設」「プロスポーツ観戦」「スポーツツーリズム」「スポーツ健康サービス」「スポーツメディア・デジタル」の5分野で構成されています。近年の成長ドライバーは「スポーツ×デジタル(配信・データ活用)」「スポーツツーリズム(インバウンド)」「スポーツウェルネス(健康需要)」の3つです。企業がスポーツ投資の意思決定をする際には、こうした市場トレンドを把握したうえで自社のポジションを設定することが求められます。
(参考)第3期スポーツ基本計画 – スポーツ庁(文部科学省)
スポーツ価値測定の実務的なアプローチ
「測定したいが何から始めればいいかわからない」という状態から抜け出すには、まず「目的(何のためにスポーツに投資するのか)」を明確にし、それに対応する指標を設定することが先決です。
測定指標の設定と測定サイクルの設計
スポンサーシップなら「ブランド認知度・好意度の変化」「SNS言及数・リーチ」、地域活性化なら「来訪者数・消費額・メディア掲載換算」、健康経営なら「欠勤率・医療費・健診結果・プレゼンティーズム」が主な指標です。四半期・半期単位での測定と、施策後の短期効果測定を組み合わせることで、PDCAサイクルを回しやすくなります。
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まとめ
スポーツの経済的価値は、スポンサー・地域・健康経営の3視点からそれぞれ異なる指標で測定できます。本記事のポイントを振り返ります。
- スポンサー価値はAVE(広告換算)+ブランド調査で多面的に測定する
- イベント地域経済効果は産業連関分析(直接・間接・誘発効果の合計)で算出する
- 健康経営投資の対効果はSROI・医療費削減額・プレゼンティーズム改善で測定する
- 日本のスポーツ市場は15.2兆円目標のもとで成長中。デジタル・ツーリズム・ウェルネスが牽引
- 測定指標は「投資目的」から逆算し、四半期サイクルでPDCAを回す
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