コンピュータビジョンによる自動判定|VARの仕組みと応用

コンピュータビジョンによるスポーツの自動判定技術のイメージ スポーツDX

試合終盤の際どい判定に会場がざわつき、SNSでは賛否が飛び交う。DX推進やスポーツ運営に携わる担当者であれば、判定の公平性と観戦体験の両立に頭を悩ませた経験があるはずです。

この記事では、コンピュータビジョン技術がスポーツの自動判定にどう使われているのか、代表的な3つの技術を比較しながら、企業活動やイベント運営に応用する視点を解説します。

スポーツをビジネスに使うなら、どこから手をつけるべきか

「自社の場合どこから始めればいいか分からない」という段階のご相談を受け付けています。

当てはまる課題を4つから1つ選んでいただくと、最初に決めることよくある失敗をお送りします。

LINEで相談する

いただいた情報の取り扱いはプライバシーポリシーをご確認ください。

自動判定技術の仕組み|コンピュータビジョンとは

コンピュータビジョンとは、カメラで撮影した映像をAIが解析し、人・ボール・ライン等の位置関係を数値として把握する技術です。スポーツの自動判定では、複数台のカメラで選手やボールの動きを追跡し、人間の目では判断が難しい一瞬の位置関係を客観的なデータとして提示します。

従来は審判の目視のみで判定していた場面に、映像とデータという「もう一つの証拠」を加えることで、判定の透明性を高める狙いがあります。同時に、判定にかかる時間や試合の中断が観戦体験を損なわないよう、処理速度の向上も技術開発の重要なテーマになっています。

スポーツ庁は第3期スポーツ基本計画の中でスポーツ界のDX推進を掲げ、テクノロジーを活用した新たな価値創出を後押ししています。

(参考)スポーツ界におけるDXの推進(第3期スポーツ基本計画) – スポーツ庁

代表的な自動判定技術3つを比較|仕組みと活用競技

コンピュータビジョンを応用した自動判定技術は競技によって仕組みが異なります。代表的な3つを比較しました。

技術名 主な活用競技・導入時期 仕組みの特徴
VAR(ビデオアシスタントレフェリー) サッカー・Jリーグ(2020年に全306試合へ導入) 別会場の映像審判が主審の判定を映像で確認し、必要に応じて助言する仕組み
半自動オフサイド判定(SAOT) サッカー・FIFAワールドカップ2022年大会から導入 複数カメラとボール内センサーで選手・ボールの位置を自動追跡し、判定を短時間で提示
ホークアイ テニス4大大会・野球(NPBのリクエスト制度)など 複数台のカメラでボールの軌道を再現し、選手・監督のチャレンジ(判定要求)に対応

Human Soar編集部が各競技団体の公開情報(2026年時点)をもとに集計・作成。

VAR|人の判断を映像で補助する仕組み

VARは完全自動化ではなく、別会場の映像審判が主審の判断を映像で確認し、明確な誤りがあった場合のみ助言する仕組みです。日本ではJリーグが2020年にJ1全306試合へ導入し、その後も対象大会を拡大しています。人間の判断を残しながら透明性を高める設計が特徴です。

半自動オフサイド判定(SAOT)|自動追跡で判定時間を短縮

SAOTは複数の追跡カメラとボール内蔵センサーを組み合わせ、選手とボールの位置関係を自動で算出します。FIFAワールドカップ2022年大会から導入され、従来数分かかっていたオフサイド判定を大幅に短縮しました。観戦体験を損なわない速度を重視した設計が特徴です。

ホークアイ|チャレンジ制度と組み合わせる仕組み

ホークアイは複数台のカメラでボールの軌道を再現する技術で、テニスの4大大会や野球のリクエスト(チャレンジ)制度など、選手・監督側から判定確認を求める運用と相性が良いのが特徴です。判定の主導権を人間側に残しつつ、必要な場面でのみ活用する設計になっています。

自社活動へ応用する際の判断フロー

自動判定技術そのものはプロスポーツ向けですが、その設計思想は企業のイベント運営や品質管理にも応用できます。Human Soarでは以下の4ステップで整理しています。

1判断の対象を特定:人の目だけでは判断がぶれやすい業務・場面を洗い出す
2自動化の度合いを決める:VAR型(人の判断を補助)かSAOT型(自動算出)かを選ぶ
3導入形式の検討:常時稼働型かホークアイのようなチャレンジ型かを検討する
4体験への影響を検証:導入によって処理時間や当事者の納得感がどう変化するかを確認する

特にステップ2の選択は、透明性と処理速度のどちらを優先するかで結論が変わります。プロスポーツの現場でも、完全自動化ではなく人の判断を残す設計が主流になっている点は、自社に応用する際の参考になります。

DX推進・スポーツ運営担当者が押さえておきたい視点

自動判定技術を実際の運営やDX推進に活かす際、審判支援の他技術との関係と、スポーツDX全体の位置づけを押さえておくと検討がスムーズになります。

審判支援技術の他の応用領域

コンピュータビジョンによる審判支援は、サッカーのオフサイド判定以外にもハンドの検出など細かい判定領域に応用が広がっています。具体的な技術の中身を知りたい場合は、以下の記事も参考になります。

あわせて読みたいAIコンピュータビジョンによる審判支援|事例と課題

スポーツDX全体の中での位置づけ

自動判定技術は、スポーツDXという大きな枠組みの中の一領域です。運営全体のDXを検討する際は、判定支援だけでなく観戦体験・チケッティング・データ活用など全体像を押さえておくことで、投資の優先順位をつけやすくなります。

あわせて読みたいスポーツDXとは|3階層構造・事例・課題を解説

今週から始められる検討の3ステップ

  • ステップ1:自社の運営・品質管理業務の中で「人の目だけでは判断がぶれやすい場面」を1つ選ぶ
  • ステップ2:VAR型(人の判断を補助)とSAOT型(自動算出)のどちらが自社の場面に近いかを整理する
  • ステップ3:小規模な実証(一部業務・一部イベントのみ)で導入し、処理時間や当事者の納得感の変化を記録する

いきなり全業務に自動判定の発想を導入するのではなく、判断がぶれやすい一領域に絞って試すことで、投資対効果を見極めやすくなります。

よくある質問

自動判定技術を導入すれば誤審はゼロになりますか

完全にゼロにはなりません。VARやSAOTも最終的な判断や運用は人間が担っており、技術はあくまで判断材料を補強する役割です。技術導入後も、誰がどう最終判断するかという運用設計が重要になります。

プロスポーツ以外の場面でも活用できますか

品質検査や接客対応の評価など、人の目による判断がばらつきやすい業務であれば応用の余地があります。まずは判断の対象を絞り、小規模な実証から始めることをおすすめします。

まとめ

  • コンピュータビジョンによる自動判定は、カメラ映像をAIが解析し客観的なデータとして提示する技術
  • VARは人の判断を映像で補助する仕組み、SAOTは自動追跡で判定時間を短縮する仕組みという違いがある
  • ホークアイのようなチャレンジ型は、判定の主導権を人間側に残しながら必要な場面でのみ活用する設計
  • 自社への応用は「判断対象の特定→自動化の度合い→導入形式→体験への影響検証」の4ステップで検討すると進めやすい
  • 完全自動化を目指すより、人の判断を残しつつ判断材料を補強する設計がプロスポーツでも主流になっている

ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ

お問い合わせはこちら →
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業にてメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。
現在は独立し、About The New株式会社を設立。教育コンテンツの研究・開発を行い、スポーツの知見を活かした人材育成プログラムを提供している。

コメント

タイトルとURLをコピーしました