マラソン大会運営の仕事とは|経済効果790億円を支える3社の役割

マラソン大会運営の仕事と経済効果790億円を解説する図解 スポーツビジネス

ゴールテープを切ったランナーの背後で、記録計測の機材を回収し、翌年の会場交渉をもう始めているスタッフがいる。大会当日の熱気だけを見ていると、マラソンやロードレースは「1年に1回のお祭り」に見えるが、実際には企画・集客・当日運営・計測・協賛営業までを1年サイクルで回す事業として、専門の企業が担っている。

この記事では、「大会・イベント主催」という業種がどんな仕事で成り立っているのかを、実際にこの業種で活動する企業3社の公式情報をもとに整理する。マラソン大会が生む経済効果の実際の数字や、企業がこの業種とどう付き合えるかも合わせて解説する。

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「大会・イベント主催」とはどんな業種か|市場拡大を後押しする国の方針

「大会・イベント主催」は、マラソンや駅伝、トライアスロンといった市民参加型のスポーツイベントを企画・運営し、大会事務局として自治体や実行委員会をサポートする業種を指す。参加者の募集・エントリー管理から、コース設営、当日の運営スタッフ配置、記録計測、完走証の発行、協賛企業の営業まで、業務の幅は非常に広い。

この業種が近年注目されている背景には、国の政策的な後押しがある。スポーツ庁は第3期スポーツ基本計画のなかで、スポーツ市場規模を5.5兆円から2025年までに15兆円へ拡大するという目標を掲げ、その手段としてスポーツツーリズムや大会・イベントを通じた地域活性化を重視している。マラソン大会のような大規模イベントは、参加者の遠征消費や観戦客の来訪を生み出すため、この成長戦略の中核を担う存在になっている。

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(参考)スポーツの成長産業化(第3期スポーツ基本計画) – スポーツ庁

大会運営の仕事を分解すると|企画集客・当日運営・協賛広報の3層構造

「大会運営」とひとくくりに語られがちだが、実務は大きく3つの機能に分かれている。どの企業も、この3層のうち自社が強い部分に特化したり、一括で受託したりする形で事業を組み立てている。

企画・集客大会コンセプトの設計、コース・会場の手配、参加者エントリーサイトの構築・集客
当日運営・計測当日のスタッフ・ボランティア配置、交通規制対応、記録計測、完走証発行
協賛・広報スポンサー企業の営業・活用提案、メディア対応、大会後の報告・評価

大会運営を構成する3つの機能。1社がすべてを担うケースと、機能ごとに分業されるケースの両方がある。

企画・集客|参加者と向き合う最初の窓口

企画・集客のフェーズでは、大会のコンセプトを決め、開催地の自治体や警察との調整、参加者向けのエントリーサイトの構築までを担う。エントリー数がそのまま大会の収益規模を左右するため、集客のノウハウを持つ企業ほど大規模な大会を任されやすい。

当日運営・計測|数万人を安全に走らせる現場力

当日は数千人から数万人規模のランナーを、交通規制がかかった公道でトラブルなく走らせる必要がある。給水所の配置、医療スタッフの手配、そしてゴール後の記録計測・完走証発行までを短時間でこなす現場力が問われる。この分野は長年の運営実績がそのまま信頼につながりやすい。

協賛・広報|大会の収益基盤をつくる仕事

参加費だけでは大会の運営費をカバーできないケースが多く、スポンサー企業からの協賛金や物品提供が収益の柱になる。大会事務局は、スポンサー企業に対して看板設置やブース出展、ノベルティ配布といった具体的な露出機会を提案し、継続的な協賛関係を維持する役割も担っている。

この業種で実際に活動する企業3社

「大会・イベント主催」という業種を、実際に事業として展開している企業を3社紹介する。いずれも公式サイトで確認できる事業内容・実績をもとに整理した。

企業名 事業内容 特徴
株式会社アールビーズ メディア事業・イベント事業・デジタルサービス事業 「RUNNET」運営、受託大会数約440大会
株式会社ランナーズ・ウェルネス マラソン大会の企画・運営、大会事務局受託 湘南国際マラソン・横浜マラソンの大会事務局
株式会社スポーツワン スポーツイベント・企業対抗運動会・レースの企画運営 年間約3,000件の開催実績

3社とも公式サイトで公開されている事業内容・実績をもとに作成(2026年8月時点)。

株式会社アールビーズ|ランニング情報サイト「RUNNET」を運営する老舗

株式会社アールビーズは1975年創業、東京都渋谷区に本社を置く企業で、資本金は1億円、従業員数は173名(2026年1月1日時点)。1997年に開設したランニング情報ポータル「RUNNET」は累計会員数490万人(2026年6月時点、姉妹サービス「e-moshicom」含む)に達し、年間約1,600大会のエントリー募集を取り扱っている。

事業内容はメディア事業(出版・WEB)、イベント事業、デジタルサービス事業、スポーツタウン事業、企業ソリューション事業の5本柱。大会の計測・運営を受託する大会数は約440大会にのぼり、公式サイトではマラソン大会の企画運営取扱数で国内No.1をうたっている。

(参考)株式会社アールビーズ 会社概要

株式会社ランナーズ・ウェルネス|湘南国際マラソン・横浜マラソンの大会事務局

株式会社ランナーズ・ウェルネスは、ランニング大会の「企画・運営、営業、広報、記録、ボランティア管理、報告、評価」までを一貫して手がける企業。2007年から参加者2万人を超える「湘南国際マラソン」の運営に携わり、「横浜マラソン」の大会事務局も担っている。

自社企画・運営の大会として「チャレンジ富士五湖」(山梨県富士吉田市)や「24時間グリーンチャリティリレーマラソンin東京ゆめのしま」(東京都江東区)など、地域に根づいた大会を継続的に運営している点が特徴だ。自治体からの委託大会では、開催地域の経済・教育・福祉の推進にまで踏み込んだサポートを行うとしている。

(参考)株式会社ランナーズ・ウェルネス マラソン等のスポーツ大会企画・運営

株式会社スポーツワン|年間約3,000件のイベントを開催するスポーツマーケティング会社

株式会社スポーツワンは2001年設立、神奈川県横浜市港北区に本社を置く企業で、代表取締役CEOは武田利也氏。事業内容はスポーツポータルサイトの企画運営、スポーツイベント・企業対抗運動会・レースの企画運営、ランニング・駅伝・トライアスロンイベントの企画運営、スポーツ施設の企画設計・施工・運営・コンサルティングと幅広い。

公式サイトによれば、年間約3,000件のスポーツイベントを開催しており、この開催件数を国内No.1としている。企業の周年イベントや社内運動会といった法人向けの需要にも対応しており、「スポーツをすることが好きな方々」という個人参加型のイベントから、企業案件まで幅広くカバーしている。

(参考)株式会社スポーツワン 会社概要

マラソン大会が生む経済効果790億円の内実

大会運営という業種の存在感を測る上で分かりやすいのが、大会1つが生み出す経済効果の大きさだ。一般財団法人東京マラソン財団は、2026年3月1日に開催した「東京マラソン2026」について経済波及効果調査を実施し、2026年4月22日に結果を公表している。

それによると、日本国内における経済波及効果は約790億円、東京都内における経済波及効果は約565億円にのぼる。前年の東京マラソン2025(国内約787億円、都内約562億円)からもわずかに増加しており、大会の参加者数拡大や、外国籍ランナーの参加増加による訪日消費の押し上げが要因の一つとされている。

1つの大会がこれだけの経済波及効果を生み出す背景には、参加者本人の費用だけでなく、同行する家族・応援者の交通費・宿泊費・飲食費、さらには沿道の観戦客の消費まで含めて計算される仕組みがある。大会運営会社が担う集客規模の拡大や、外国籍ランナー向けの受け入れ体制整備が、そのまま地域経済への波及効果の大きさに直結していることがわかる。

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(参考)東京マラソン2026[3月1日(日)開催]の経済波及効果について – 一般財団法人東京マラソン財団

企業がこの業種と付き合う視点|協賛・連携で得られる機会

大会運営会社は、単に「大会を開く会社」ではなく、企業にとっての協賛・マーケティング接点でもある。中小企業の経営者や広報担当者にとっては、この業種を「取引先候補」として見る視点も持っておきたい。

協賛の形は看板設置や物品提供だけではない。ランナーへのサンプリング、ブース出展による直接接客、大会後の参加者データを活用したフォロー施策など、大会運営会社側が提案してくれるメニューは大会ごとに異なる。地域の中小企業であれば、地元開催の大会に協賛することで、地域住民への認知度向上や採用広報につなげている例も見られる。

大会運営会社を選ぶ際は、単純な参加者数の規模だけでなく、自社の商圏・ターゲット層と大会の参加者属性が合っているかを確認することが重要だ。全国区の大規模大会は露出量が大きい一方、協賛費も高額になりやすく、地域に根づいた中規模大会の方が費用対効果に優れる場合もある。

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よくある質問

大会運営会社に協賛したい場合、どこに相談すればいいですか

まずは協賛したい大会の公式サイトにある「協賛・スポンサー募集」ページを確認し、大会事務局(運営会社)に直接問い合わせるのが基本の流れになる。今回紹介したアールビーズやランナーズ・ウェルネスのように、複数大会の事務局を兼任している企業も多いため、1社との関係構築が複数大会への展開につながることもある。

大会運営会社で働くにはどんなスキルが求められますか

企画・集客職では営業力とWebマーケティングの知識、当日運営・計測職では現場のオペレーション管理能力、協賛・広報職では法人営業とプレゼン力が重視される傾向にある。いずれの職種でも、数千人規模の人・機材・スケジュールを同時に動かす調整力が共通して求められる。

マラソン大会以外にも同じ業種の企業はありますか

本記事で紹介した3社はいずれもランニング・マラソン系の大会運営を主力としているが、業種としての「大会・イベント主催」には、トライアスロンや自転車イベント、企業対抗運動会などを専門に手がける企業も含まれる。競技の種類によって計測方式や安全対策のノウハウが異なるため、企業ごとに得意分野が分かれている。

まとめ

「大会・イベント主催」という業種は、企画・集客、当日運営・計測、協賛・広報という3つの機能が組み合わさって成立している。株式会社アールビーズ、株式会社ランナーズ・ウェルネス、株式会社スポーツワンは、それぞれ強みとする機能や大会規模は異なるものの、いずれも公式サイトで確認できる実績を積み重ねてきた企業だ。

東京マラソン財団の発表によれば、東京マラソン2026だけで国内約790億円、東京都内約565億円の経済波及効果が生まれている。1つの大会がこれだけの規模の経済効果を生み出せるのは、大会運営会社が長年蓄積してきた集客力・現場運営力・協賛営業力があってこそだ。企業にとっても、この業種は単なる「イベント業者」ではなく、地域や生活者との新しい接点をつくれる協賛先候補として捉える価値がある。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業にてメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。
現在は独立し、About The New株式会社を設立。教育コンテンツの研究・開発を行い、スポーツの知見を活かした人材育成プログラムを提供している。

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