月曜の朝、SNS担当者としてクラブの投稿分析画面を開くと、先週アップした試合ハイライトの再生数が思ったほど伸びていない。そんな数字を前に、次の投稿ネタに迷うマーケティング担当者は少なくありません。
実はフォロワー数を大きく伸ばしているクラブには、思いつきの投稿ではなく再現できる「型」があります。この記事では、Jリーグ・Bリーグで実際に成果を出している3クラブの運用を比較し、自社のSNS運用に応用できる診断フローと実践ステップまで整理しました。
SNSでファンが増えるのは偶然ではなく仕組みがある
SNSでファンが増えている企業や団体は、勘や思いつきではなく「誰に・どのプラットフォームで・何を届けるか」を設計してから投稿しています。日本国内ではX(旧Twitter)やInstagramの利用率が年々高まり、50代でも4割以上が利用するなど、ファン層の年代を問わずSNS上での接点づくりが有効になっている状況があります。
つまりSNS運用は「頑張って毎日投稿する」ことが目的ではなく、ターゲットが実際にいるプラットフォームで、クラブらしい情報を継続的に届ける設計そのものが成果を左右します。次章では、実際に成果を出している3クラブの設計を比較します。
3クラブの投稿戦略を並べてわかった勝ちパターン
Jリーグの鹿島アントラーズ、Bリーグの千葉ジェッツふなばし、同じくBリーグの琉球ゴールデンキングス。この3クラブは規模もリーグも異なりますが、SNS運用の方向性がそれぞれ明確に異なります。公式発表・報道をもとに、施策と成果を一覧にしました。
| クラブ | SNS総フォロワー | 主な施策 |
|---|---|---|
| 鹿島アントラーズ(Jリーグ) | 296万3922人(2026年7月31日時点) | 海外向けTikTok・Instagramを新設しグローバル配信を強化 |
| 千葉ジェッツふなばし(Bリーグ) | 120万人超(Bリーグクラブ最多) | X・Instagram・YouTube・TikTok全チャネル20万人超+AI運用支援ツール活用 |
| 琉球ゴールデンキングス(Bリーグ) | 23万人超 | 地元企業とのコラボ企画と選手の日常発信で距離を縮める |
Human Soarが各クラブの公式発表・報道資料をもとに集計(2026年8月時点)
鹿島アントラーズ|グローバル配信でフォロワーをJクラブ最多に
鹿島アントラーズは2026年4月に海外向けのTikTok・Instagramアカウントを新設し、わずか3か月あまりで海外向けTikTok単体で179万3944人のフォロワーを獲得しました。この結果、クラブ公式SNSの総フォロワー数は296万3922人(2026年7月31日時点)となり、Jリーグ全60クラブの中で最多になっています。
背景には、AFCチャンピオンズリーグエリートへの参戦でアジア・世界を意識した戦いが増えたことがあります。国内で培った発信基盤をそのまま海外向けに横展開したことが、短期間でのフォロワー急増につながりました。海外戦略を検討するなら「まず国内で型を固め、それを翻訳・多言語化して展開する」という順番が参考になります。
千葉ジェッツふなばし|全チャネル型運用とAI活用で「見つかる」導線を作る
千葉ジェッツふなばしは、X・Instagram・YouTube・TikTokの4チャネルすべてで20万人以上のフォロワーを獲得し、Bリーグ「ソーシャルメディア最優秀クラブ」を4年連続6回受賞しています。特定の1チャネルに依存せず、ファンがどのSNSを使っていても接点を持てるようにしている点が特徴です。
また、Instagram運用にAI活用ツールを導入し、投稿の企画・分析を効率化しています。限られた人員でも複数チャネルを回せる体制を整えたことで、2025-26シーズンには入場者数平均1万人という成果にもつながりました。マスコットキャラクター単独のアカウントもBリーグ最多フォロワーを獲得しており、選手だけに発信を頼らない設計も参考になります。
琉球ゴールデンキングス|地域コラボと選手の素顔で距離を縮める
琉球ゴールデンキングスは、地元の人気企業とのコラボ企画や、選手の素顔が見える発信を軸に、23万人超のフォロワーを獲得しています。フォロワー数だけを見れば他の2クラブより少ないものの、地域内での認知・親近感の作り方という点で独自の強みを持っています。
地方拠点のクラブや企業がいきなり全国区・海外区を狙うのは現実的ではありません。まずは自社の商圏・地域コミュニティで「顔が見える発信」を積み重ね、地域企業とのコラボで露出を広げるという段階的な戦略が、琉球の事例からは読み取れます。
自社のSNS運用タイプを見極める診断フロー
3クラブの型をそのまま真似ても、自社の予算・人員・ターゲットに合わなければ空回りします。そこでHuman Soarでは、次の3つの問いに答えることで、自社に近いタイプを判断できる診断フローを整理しました。
Q1 海外・全国区のファンを増やしたいか、それとも地域内の関係を深めたいか
Q2 SNS運用の専任担当者を複数人確保できるか、1人か兼任か
Q3 発信の主役を「クラブ・企業ブランド」にしたいか「選手・社員個人」にしたいか
この3問への答え方によって、自社が目指すべき運用タイプは次の3つに分かれます。それぞれの向き・不向きをH3で説明します。
タイプ①グローバル特化型|全国区・海外区を狙う組織向け
Q1で「海外・全国区」、Q2で「複数人確保できる」と答えた場合に向いているのがこのタイプです。鹿島アントラーズのように、国内で確立した発信の型を多言語化して展開する体制が必要になります。翻訳・字幕対応・海外プラットフォームの運用知見など、専門人員への投資が前提になる点は事前に見積もっておく必要があります。
タイプ②マルチプラットフォーム型|複数チャネルで接点を広げたい企業向け
Q2で「1人か兼任」と答えつつも複数チャネルを運用したい場合は、千葉ジェッツのようにAIツールなどで効率化しながら全チャネルに薄く広く接点を作るタイプが向いています。人手不足を前提に、投稿の企画・分析を仕組み化することが成功の条件になります。
タイプ③地域密着型|限られた予算で確実に関係を深めたい組織向け
Q1で「地域内の関係を深めたい」、Q3で「個人の発信を主役にしたい」と答えた場合は、琉球ゴールデンキングスのように地域企業とのコラボと個人の発信を軸にするタイプが現実的です。フォロワー数の絶対値よりも、地域内でのエンゲージメント(コメント・来場・購買)を成果指標に置くことがポイントです。
予算と人員が少なくても始められる3つのステップ
診断で自社のタイプが見えても、いきなり大きな体制を組む必要はありません。実際に多くのクラブ・企業が、次の3ステップで運用を立ち上げています。それぞれH3で具体的に説明します。
①週1本の看板コンテンツを固定する
毎日違う内容を投稿しようとすると、ネタ切れで運用が止まりがちです。まずは「週1本、必ずこの形式を出す」という看板コンテンツを1つ決めます。例えば選手インタビューの1分動画、練習の裏側カットなど、ファンが毎週楽しみにできる型を作ることが継続の土台になります。
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②主役になる個人・キャラクターを1つ決める
千葉ジェッツのマスコット「ジャンボくん」のように、クラブ・企業アカウントとは別に「個人・キャラクターの顔が見えるアカウント」を育てると、フォロワーとの心理的な距離が縮まります。社員個人や自社のマスコットなど、無理なく続けられる「顔」を1つ選ぶことがポイントです。
③月1回は地域・パートナー企業とのコラボ企画を入れる
琉球ゴールデンキングスの事例のように、自社単独ではなく地域企業やパートナーとのコラボ企画を月1回程度組み込むと、双方のフォロワーに情報が広がり、新規層へのリーチが自然に増えます。コラボ先にとってもメリットがある企画にすることが、継続的な協力を得るコツです。
運用でつまずきやすい落とし穴と対策
SNS運用を始めた組織の多くが同じところでつまずきます。ここでは代表的な2つの落とし穴と、その対策を紹介します。あらかじめ知っておくことで、遠回りを避けられます。
1つ目は「フォロワー数だけを目標にしてしまう」ことです。数字は追いやすい指標ですが、来場・購買・問い合わせといった実際の成果につながっているかを定期的に確認しないと、フォロワーは増えても事業への貢献が見えなくなります。2つ目は「継続担当者が1人に依存してしまう」ことです。担当者の異動・退職で運用が止まる事態を避けるため、投稿のテンプレート化やマニュアル化を早い段階から進めておくことが重要です。
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よくある質問
SNS運用は何人体制で始めるのが現実的ですか
1人の兼任担当からでも始められます。千葉ジェッツのようにAIツールで投稿企画・分析を効率化すれば、少人数でも複数チャネルを運用できます。まずは看板コンテンツ1本に絞って続けることを優先してください。
フォロワー数が伸びない場合、何から見直すべきですか
投稿頻度よりも「誰に何を届けているか」の設計を見直すことが先です。診断フローのQ1〜Q3に立ち返り、ターゲットと発信の主役がずれていないかを確認してください。
地方の中小規模の組織でも真似できる事例はありますか
琉球ゴールデンキングスの地域密着型が参考になります。全国区を狙わず、地元企業とのコラボと個人の発信を軸にすることで、限られた予算でも関係性を深められます。
まとめ
- SNSでファンを増やしているクラブは、思いつきではなく「誰に・どのチャネルで・何を届けるか」を設計している
- 鹿島アントラーズはグローバル特化型、千葉ジェッツはマルチプラットフォーム×AI活用型、琉球ゴールデンキングスは地域密着型と、それぞれ異なる勝ちパターンを持つ
- 自社に合ったタイプは、ターゲット・人員体制・発信の主役という3つの問いで診断できる
- 始める際は看板コンテンツの固定・顔の見える発信・月1回のコラボ企画という3ステップが現実的
- フォロワー数だけを目標にせず、来場・購買などの成果指標とセットで運用を続けることが重要
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