青木アリエのオフシーズン|陸上400mの冬期練習の過ごし方

青木アリエ選手のオフシーズンと冬期練習の過ごし方を解説する記事のアイキャッチ スポーツアスリート

試合が近づくと調子が上がる選手がいる一方で、試合の2週間前から不安になる選手もいます。陸上女子400mの青木アリエ選手は後者です。大会特有のピリピリした空気が苦手だと本人が語っています。

だからこそ、試合のない冬が一番好きだと言い切れる。この感覚は弱さの表明ではなく、自分の性質を把握したうえでの時期の使い分けです。この記事では、青木選手が語った過去最長4週間のオフの過ごし方と、冬に積んだものが記録にどうつながったのかをたどり、国の機関が示すセルフコンディショニングの考え方と重ね合わせます。

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のんびり自分のペースでできる冬期練習が一番好き|青木アリエの言葉

青木アリエ選手は2004年6月2日生まれ、静岡県出身の400mランナーで、日本体育大学に在籍し、大塚光雄コーチのもとで競技を続けています。400mを始めたのは高校1年の冬合宿の後という、遅めのスタートでした。

その青木選手が、のんびり自分のペースでできる冬期練習が一番好き、と語っています。理由ははっきりしていて、試合の2週間前から不安になるタイプであり、大会のピリピリした雰囲気が苦手だからです。競技者の言葉としては珍しい部類に入ります。

ただ、この言葉を後ろ向きだと受け取ると本質を外します。試合が苦手だと自覚しているからこそ、試合のない時期に何をどれだけ積めるかが自分にとって決定的だと分かっている。時期ごとに自分の使い方を変える設計が、この一言に凝縮されています。

(参考)青木アリエ「のんびり自分のペースでできる冬期練習が一番好き(笑)」 – web Sportiva(集英社)

オフ期と冬期練習と試合期で過ごし方が変わる

青木選手の1年は、性質の異なる3つの時期に分かれています。同じ「練習していない日」でも、オフ期と冬期では意味がまったく違います。

青木アリエ選手のオフ期と冬期練習と試合期の過ごし方を比較した図解

図:青木アリエ選手の1年を3つの時期で比べた過ごし方

オフ期|陸上の道具を見えないところに隠した4週間

2025年のオフは、日体大陸上部にとって過去最長の4週間でした。オフの長さは毎年3年生が決めるという部の慣行があり、その学年がもう一度気持ちを作り直そうと判断した結果です。青木選手はこの期間、スパイクをはじめとする陸上の道具を目に見えないところに全部隠し、ネイルや私服、旅行など普段できないことに時間を使いました。ただし筋トレだけは好きなので続けています。そして4週間が過ぎるころ、ちょっとずつ走りたいなという気持ちが戻ってきたといいます。

(参考)青木アリエが語る過去最長4週間のオフの過ごし方 – web Sportiva(集英社)

冬期練習|試合がないから自分のペースで積める

オフが明けると冬期練習に入ります。ここが青木選手にとって一番心地よい時期です。試合の日程に追われないため、自分の判断で強度や量を調整でき、苦手な緊張感にさらされずに積み上げに集中できます。大学2年に上がる直前の冬期には、関東インカレで1位と2位になった先輩を目標に据えて練習し、学内選考会で54秒77を出して高校2年時の自己ベストを更新しました。目標を人に置くという、シンプルで具体的なやり方です。

試合期|2週間前から不安が出てくる自分を知っている

試合期の青木選手は、2週間前から不安が出てきます。それを踏まえて、本人は大きな目標を先に掲げないようにしています。プレッシャーにならない程度に、目の前の試合の結果を見ながら少しずつ目標を明確にしていく、という進め方です。自分の性質に合わせて目標設定の仕方まで変えている点が、この選手の特徴でしょう。

冬に積んだ筋力が51秒71という記録につながった

冬期練習が好きだという感覚は、記録の伸び方にも表れています。青木選手の歩みを追うと、伸びた年の手前には必ず冬があります。

400mの初レースは高校1年の11月で1分01秒48でした。高校2年で56秒台に入り、インターハイ6位まで到達します。大学入学後の年次ベストは2023年が1分00秒20、2024年が53秒03、そして2025年が51秒71です。とくに2025年5月の静岡国際陸上で出した51秒71は、冬期練習で好きだというウエイトトレーニングに取り組み筋力を上げたことが背景にあると報じられています。

この51秒71という数字については、正確に押さえておきたい点があります。丹野麻美選手が2008年に出した日本記録51秒75を0秒04上回るタイムですが、当時の青木選手はペルー国籍だったため日本記録としては認定されていません。日本女子学生新記録としては公認されています。なお2026年の年次ベストは53秒60で、記録は単純な右肩上がりではありません。冬の積み上げがそのまま毎年の更新を約束するわけではなく、条件が整った年に結果として表れる、という受け止め方が実態に近いといえます。

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(参考)青木アリエ 選手プロフィール – 公益財団法人日本陸上競技連盟

冬期練習の記事10本のうち公的資料を引いたものは0本だった

冬期練習の情報がネット上でどう提供されているかを確かめるため、筆者は「陸上 400m 冬季練習」「オフシーズン トレーニング 陸上 冬期」の検索上位から実際に本文を読めた10本を集め、6つの論点について言及の有無を数えました。

陸上の冬期練習に関する検索上位10本を論点別に集計した棒グラフ

図:「陸上 400m 冬季練習」「オフシーズン トレーニング 陸上 冬期」の検索上位のうち本文を読めた10本を筆者が2026年8月に調査・分類

冬期練習という分野は、実務的な情報がよく整備されていました。差が出たのは根拠と全体像の部分です。

公的資料を引いた記事は10本中0本だった

10本すべてが指導者や選手個人の経験則で書かれており、公的機関の資料を参照した記事は1本もありませんでした。あるコラムは、そこには大した根拠はありませんと自ら断り書きをしていたほどです。経験則が悪いわけではありませんが、読者が自分に当てはめてよいかを判断する材料がない状態です。

年間計画のなかでの位置づけを書いたのは10本中4本

期分けの考え方に触れ、冬が1年のどこに位置するのかを説明した記事は4本でした。とくに練習メニューを紹介するタイプの記事にこの視点が乏しく、何をやるかは分かっても、なぜ今それをやるのかが伝わりにくくなっています。

目的と実践手順は10本中8本が扱っている

冬に何を仕込む時期なのかという目的の説明は8本、具体的な手順の提示も8本にありました。この2点については情報が十分にあるので、あえて重ねる必要はないと判断しています。

自分で決めるという姿勢を公的な指針も後押ししている

青木選手の話で一貫しているのは、他人の正解ではなく自分の性質に合わせて時期を使い分けているという点です。この姿勢は、国の機関が示す方向性とも重なります。

独立行政法人日本スポーツ振興センターのハイパフォーマンススポーツセンターが公開する「アスリートのためのトータルコンディショニングガイドライン」は、アスリートによるセルフコンディショニングをコンセプトに掲げています。ハイパフォーマンス領域のノウハウがライフパフォーマンス領域に応用・展開されることで、国民の健康保持・増進に寄与することを目指すとも明記されており、選手自身が判断するための知識を国の側が整えようとしていることが分かります。

安全面についても土台が用意されています。スポーツ庁は令和8年1月27日に「運動・スポーツにおける安全対策の評価・改善のためのガイドライン(試行版)」の取りまとめを公表しました。特定の競技に限定せず、実施者、指導者、主催者、運営者、施設の設置・管理運営者という立場別に必要な取組を整理し、立場ごとのチェックリストも公開しています。冬期は量を積む時期だけに、誰が何を点検するのかを決めておく意味は大きいでしょう。

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(参考)アスリートのためのトータルコンディショニングガイドライン – 独立行政法人日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター

(参考)スポーツの事故防止について(運動・スポーツにおける安全対策の評価・改善のためのガイドライン試行版) – スポーツ庁

冬をどう使うか決める3つの問い

青木選手の過ごし方をそのまま真似しても、性質が違えば合いません。代わりに、冬に入る前に自分へ問いかける3つの質問として整理します。

自分は試合が近いと上がるタイプか下がるタイプか

まずここを言葉にします。青木選手は2週間前から不安になると自覚しているからこそ、冬に比重を置く設計ができています。試合が近いほど集中できるタイプなら、逆に冬の使い方は別の形になるはずです。過去の記録と、そのときの気分を並べて確かめてみてください。

いつまで完全に離れるかを先に決めているか

青木選手のオフは4週間で、道具を視界から外すという徹底の仕方でした。重要なのは長さそのものではなく、期間を先に決めて、その間は迷わないことです。オフの長さは所属チームの方針や本人の状態によって決まるものなので、4週間という数字を一般的な基準として扱わないでください。

冬に追いかける具体的な目標を人や数字で置けているか

青木選手は関東インカレで1位と2位だった先輩を目標に据えて冬を過ごし、選考会で自己ベストを更新しました。漠然と量を積むのではなく、追いかける対象がはっきりしていたことが効いています。人でも記録でも構わないので、冬に入る前に一つ決めておくと迷いが減ります。

この3つの問いは、企業の人材育成にも置き換えられます。繁忙期に力を発揮する人と、閑散期に仕込んで成果を出す人では、育成の設計を変えるべきです。全員に同じタイミングで研修を当てるのではなく、本人がどちらのタイプかを確認し、完全に離れる期間を認め、追いかける対象を一つ決めてもらう。この順で設計するほうが定着します。

よくある質問

青木アリエ選手のオフシーズンと冬期練習について、検索されることの多い疑問をまとめました。

青木アリエ選手の所属と自己ベストを教えてください

日本体育大学に在籍する400mランナーで、2004年6月2日生まれ、静岡県出身です。400mの自己ベストは2025年5月の静岡国際陸上で出した51秒71です。

51秒71は日本記録ですか

日本記録ではありません。丹野麻美選手が2008年に出した51秒75を0秒04上回るタイムですが、当時ペルー国籍だったため日本記録としては認定されていません。日本女子学生新記録としては公認されています。

2025年の世界陸上には出場したのですか

東京2025世界陸上の混合4×400mリレー代表に選出されましたが、予選・決勝ともに出走はしていません。この経験が、その後の過去最長4週間のオフにつながっています。

オフは4週間取るのが望ましいのですか

4週間は日体大陸上部でその年の3年生が決めた期間であり、一般的な基準ではありません。所属チームの方針や本人の状態によって適切な長さは変わります。

まとめ

青木アリエ選手のオフシーズンと冬期練習から読み取れることを整理します。

  • 試合の2週間前から不安になる性質を自覚したうえで、試合のない冬期練習に比重を置いている
  • 2025年のオフは部として過去最長の4週間で、道具を視界から外しつつ筋トレだけは継続した
  • 冬期のウエイトトレーニングを背景に、2025年5月の静岡国際陸上で51秒71を記録した
  • 51秒71は日本記録ではなく、日本女子学生新記録として公認されたタイムである
  • 検索上位10本のうち公的資料を引いた記事は0本、年間計画での位置づけを書いた記事は4本にとどまる

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業にてメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。
現在は独立し、About The New株式会社を設立。教育コンテンツの研究・開発を行い、スポーツの知見を活かした人材育成プログラムを提供している。

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