「ウェルビーイングを高めたい」という経営方針は広まっていますが、「実際にどう測ればいいのか分からない」という人事・経営企画担当者は多いと思います。ウェルビーイングは主観的な幸福感を扱うため、数値化が難しいと感じるかもしれませんが、国際標準や国内で実績のある指標があります。この記事では、ウェルビーイングの測定に使える指標と手法を体系的に解説します。
ウェルビーイング指標の国際標準と分類
ウェルビーイングの測定には、国際機関・研究機関が開発した標準的な指標があります。主観的指標と客観的指標を組み合わせることで、より実態に近い把握が可能です。
| 指標の種類 | 主な指標・ツール | 特徴 |
|---|---|---|
| 主観的ウェルビーイング | PERMA(Seligman)、WHO-5幸福感指数 | 本人の感じ方・感情を直接測定 |
| 職場ウェルビーイング | ISO 45003、ユトレヒト活動尺度(UWES) | 仕事のエンゲージメントと心理的安全 |
| 客観的健康指標 | 健康診断結果、欠勤率、医療費 | 数値で経年比較がしやすい |
| 国内基準 | 内閣府Well-beingダッシュボード、健康経営度調査 | 政府認定・国内比較が可能 |
表:ウェルビーイング測定に使われる主な指標の分類
PERMAモデル:5つの要素で幸福を測る
PERMAはポジティブ心理学者マーティン・セリグマンが提唱したフレームワークで、Positive Emotion(ポジティブ感情)、Engagement(没頭)、Relationships(人間関係)、Meaning(意味・目的)、Accomplishment(達成)の5要素でウェルビーイングを捉えます。企業では、各要素を5段階評価のアンケートで測定し、要素ごとに施策を打つことができます。「どの要素が低いか」が可視化されるため、課題に応じた介入ができるのが強みです。
WHO-5幸福感指数:シンプルで使いやすい国際指標
WHO-5(WHO Well-Being Index)は世界保健機関(WHO)が開発した5問のアンケートです。「気分が良い日が多かった」「落ち着いてリラックスできた」など5項目を6段階で評価し、合計25点満点のスコアを出します。13点以下はうつのリスクが高いとされる閾値があり、スクリーニングとして活用できます。設問が少なくシンプルなため、毎月・四半期ごとの定点観測に向いています。
ISO 45003:職場の心理的健康リスクを管理する国際規格
ISO 45003は2021年に発効した「職場における心理的健康と安全のマネジメント」に関する国際規格です。職場のリスク要因(過度な作業量・役割の曖昧さ・ハラスメント等)を特定・評価し、管理するプロセスを定めています。健康経営や人的資本開示を推進する企業では、このフレームワークを参照してウェルビーイング施策の体系化に活用しています。
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(参考)幸福度・Well-beingに関する研究・指標の整理 – 内閣府
国内で活用できる測定ツールと評価軸
日本国内では、政府主導のウェルビーイング指標と、民間の測定サービスが両輪で整備されています。自社の目的に合わせて選択することが大切です。
内閣府のWell-beingダッシュボードを参照する
内閣府は「満足度・生活の質に関する調査」をもとに、日本版Well-beingダッシュボードを公表しています。生活の満足度・仕事・健康・家族・社会とのつながり・安全など11領域のスコアが国全体・地域別に示されており、自社従業員の結果と比較したり、施策の方向性の参考にしたりすることができます。国際比較(OECDのBetter Life指標)との整合性も取られており、グローバルな文脈で自社の水準を把握できます。
健康経営度調査の設問を活用する
経済産業省の「健康経営度調査」は健康経営優良法人認定の評価基準でもありますが、設問そのものがウェルビーイング施策のチェックリストとして使えます。「プレゼンティーズム(出勤しているが作業効率が低い状態)の測定実施率」「アブセンティーズム(欠勤・休職率)」「ワーク・エンゲイジメントの測定」など、健康経営の実施・効果を数値化する指標が網羅されています。
企業での数値化・可視化の実践ステップ
測定の仕組みを社内に導入するには、段階的なアプローチが有効です。最初から複雑なシステムを入れるのではなく、シンプルな設問から始めて精度を上げていくことが継続のコツです。
Step 1:ベースライン調査(初回サーベイ)
WHO-5やPERMAをベースにした10〜20問のアンケートを全従業員に実施し、現状のウェルビーイングスコアを把握します。「現在のウェルビーイングスコア(ベースライン)」を持つことで、施策前後の比較ができるようになります。匿名性を担保し、集計は部署・年代・職種別にクロス集計すると課題が見えやすくなります。
Step 2:定点観測と施策との連携
四半期ごとまたは半期ごとにサーベイを継続し、スコアの推移をトラッキングします。施策(ジム法人契約・ストレスチェック・社内運動プログラム等)の導入タイミングと照合することで、「どの施策がスコアを改善したか」の因果を探ることができます。社内ダッシュボードや人事システムで可視化すると経営報告にも使いやすくなります。
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まとめ
ウェルビーイングの指標化・測定は、施策の効果検証と経営への説明責任のために不可欠です。
- PERMA・WHO-5・ISO 45003など、目的に応じた国際標準指標を活用することで測定の信頼性が高まります
- 内閣府のWell-beingダッシュボードや経済産業省の健康経営度調査は、国内比較の基準として活用できます
- 主観的指標(サーベイ)と客観的指標(健康診断・欠勤率)を組み合わせることが重要です
- まずベースライン調査から始め、四半期ごとの定点観測と施策とのひもづけで改善サイクルを回しましょう
- 人事システムへの組み込みと可視化が、継続的な取り組みと経営報告をスムーズにします
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