「メンタルヘルスチェックが義務化されると聞いたけど、うちの会社はどう対応すればいいの?」と不安を感じている人事・総務担当者の方は多いのではないでしょうか。厚生労働省は近年、職場のメンタルヘルス対策の強化を積極的に推進しており、既存のストレスチェック制度との連動を見据えた新たな枠組みが検討されています。この記事では、義務化の背景・厚労省の最新方針・中小企業が今から整えるべき体制を、一次情報をもとにわかりやすく解説します。
メンタルヘルスチェック義務化の背景と厚労省の方針
職場のメンタルヘルス問題は年々深刻さを増しており、厚生労働省は事業者に対して一層の対策強化を求めています。2015年に50人以上の事業場を対象としたストレスチェック制度が義務化されて以降、政府はその実効性を高めながら対象範囲の拡大を検討してきました。
厚労省は「小規模事業場におけるストレスチェック制度の実施促進」に向けた指針を策定しており、義務化対象を50人未満の事業場にも拡大する方向で議論が進んでいます。2026年時点では法改正の具体的な施行日は未確定ですが、労働安全衛生法の改正や省令レベルでの対応が視野に入っています。人事担当者としては「義務化されてから動く」のではなく、今のうちに体制を整えておくことが得策です。
厚労省は現在、事業場の規模にかかわらず全労働者がメンタルヘルスケアを受けられる環境の整備を目指しています。これは「4つのケア」(セルフケア・ラインによるケア・事業場内産業保健スタッフ等によるケア・事業場外資源によるケア)を基本方針とするメンタルヘルス指針と一体的に推進されています。
(参考)ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策 – 厚生労働省
現行のストレスチェック制度との違いと関係性
「メンタルヘルスチェック」と「ストレスチェック」は混同されがちですが、制度上の位置づけは異なります。義務化議論を正しく理解するために、まず現行制度との関係を整理しておきましょう。
ストレスチェックとメンタルヘルスチェックの違い
| 項目 | ストレスチェック | メンタルヘルスチェック(広義) |
|---|---|---|
| 法的義務 | 50人以上で義務 | 現時点では努力義務・拡大検討中 |
| 対象 | 全労働者(年1回) | 全事業場・全労働者を想定 |
| 実施者 | 医師・保健師・一定の研修修了者 | 産業医・保健師等 |
| 結果の取り扱い | 本人同意なしに事業者へ提供不可 | 同様のプライバシー保護が前提 |
表:ストレスチェックとメンタルヘルスチェックの主な違い
法的義務の面では、ストレスチェックは従業員50人以上の事業場に法律で義務づけられていますが、メンタルヘルスチェック(広義)は現時点で努力義務にとどまっており、政府が義務化範囲の拡大を検討している段階です。この違いを正確に理解しておくことで、自社が現在どの義務の対象にあるかを判断できます。
対象範囲については、ストレスチェックが全労働者に年1回の実施を求めているのに対し、新たなメンタルヘルスチェックは全事業場・全労働者を対象とすることが想定されています。50人未満の中小企業も将来的に対象に含まれる可能性があるため、今から体制を整えておくことが重要です。
実施者については、いずれも医師・保健師等の専門職が担うことが原則となっています。外部の産業保健機関や社会保険労務士を活用することで、専門的な実施体制を比較的低コストで確保できます。
結果の取り扱いは両制度とも厳格なプライバシー保護が前提となっており、本人の同意なしに事業者が結果を受け取ることは禁止されています。情報共有の範囲と手順を就業規則・社内規程に事前に明記し、担当者間での認識を統一しておくことが実務上のポイントです。
2つを統合的に運用するメリット
多くの企業ではストレスチェックを「法令対応の義務作業」として単独で実施しています。しかし、メンタルヘルスケアを組織全体のウェルビーイング戦略と連動させると、データの活用幅が広がり、早期発見・早期対応の精度が高まります。たとえば、ストレスチェックの集団分析結果を職場改善計画に反映し、健康経営の取り組みとして対外的に発信することで、採用力強化にもつながります。
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企業が今から整えるべき5つの実施体制
義務化の対象・時期が確定する前でも、今から体制づくりを進めることで企業リスクを最小化できます。準備しておくべき5つの要素を整理しました。
① 実施担当者の選定
産業医・保健師・社会保険労務士との連携体制を構築するのが最初のステップです。担当者ごとに「実施計画の策定」「集団分析の解釈」「高ストレス者面談の調整」といった役割を明文化しておくことで、義務化後にスムーズな運用体制が整えられます。外部の産業保健機関と事前に契約しておくことも、小規模事業場にとって有効な選択肢です。
② 実施計画書の作成
実施時期・実施方法(紙/Web)・集計方法・フィードバックの手順を文書化した計画書を用意します。従業員への事前周知スケジュールや受検促進策(就業時間内での実施保障など)も盛り込むことで、受検率の確保と義務化要件への対応が同時に進められます。
③ プライバシー保護規程の整備
チェック結果の取り扱い・開示範囲・保管期限を社内規程に明記します。「本人の同意なしに事業者へ提供しない」原則は現行ストレスチェックと同様ですが、義務化後の対象拡大を見据えた規程の見直しと、従業員向け説明文書の整備が欠かせません。情報漏えいリスクを排除するシステム上のアクセス制限も合わせて検討しましょう。
④ 相談窓口の設置
社内相談窓口と外部EAP(従業員支援プログラム)の双方を整備します。チェック後に「高ストレス者」と判定された従業員が気軽に相談できる環境をつくることが、義務化の本来の目的である早期ケアにつながります。外部EAPを導入することで、社内での相談しにくさという心理的ハードルも下げられます。
⑤ 職場環境改善プロセスの確立
集団分析の結果を職場環境改善計画(アクションプラン)に落とし込む仕組みを整えます。部署ごとの課題を特定し、管理職と連携して改善策を実行・評価するPDCAサイクルを確立することで、メンタルヘルス対策が「やりっぱなし」にならない体制が構築できます。改善結果を翌年の集団分析と比較することで、施策の効果も可視化できます。
中小企業・50人未満の事業場はどう対応するか
現行法では50人未満の事業場にはストレスチェックの義務はありませんが、厚労省は小規模事業場向けの実施マニュアルを公開し、自発的な取り組みを支援しています。費用面の課題がある事業場には、産業保健総合支援センター(産保センター)が無料相談・支援を提供しています。
厚労省は小規模事業場(50人未満)でも実施しやすいよう、簡易版の調査票や実施手順を整備しています。産保センターの地域窓口を通じて、コストをかけずにストレスチェックを導入できるケースも増えています。義務化が50人未満にも拡大した際に速やかに対応できるよう、今のうちに産保センターとの連携体制を確認しておくとよいでしょう。
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(参考)小規模事業場におけるストレスチェック制度実施マニュアル – 厚生労働省
メンタルヘルスチェックと健康経営の接続
メンタルヘルスチェックへの取り組みは、経済産業省が推進する「健康経営」の評価指標にも直結します。健康経営優良法人の認定基準には「メンタルヘルス対策の実施」が含まれており、チェック制度を整備することでブランド価値の向上にもつながります。
健康経営優良法人の認定を目指す企業にとって、メンタルヘルスチェックの体制整備は必須要件の一つです。単なる義務対応にとどまらず、ストレス要因の特定→職場環境改善→従業員満足度向上→生産性向上というサイクルを回すことで、投資対効果(ROI)を最大化できます。経済産業省の健康投資管理会計ガイドラインでは、こうした取り組みの費用対効果を定量的に評価する手法も提供されています。
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まとめ
メンタルヘルスチェックの義務化に向けた厚労省の動向と、企業が今から取り組むべき体制づくりを解説しました。
- 厚労省は50人未満の事業場へのストレスチェック義務化拡大を検討中で、義務化前から備えることが重要です
- ストレスチェック(義務)とメンタルヘルスチェック(広義)は異なる概念だが、統合的に運用することで効果が高まります
- 実施担当者・計画書・プライバシー保護規程・相談窓口・環境改善プロセスの5点が体制の基本です
- 50人未満の事業場は産業保健総合支援センターの無料支援を活用できます
- 健康経営優良法人の認定とメンタルヘルス対策は連動させることで投資対効果が高まります
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