変化の激しい事業環境で意思決定を続ける経営層にとって、「結果が出ない時期にどう自分を立て直すか」は永遠の課題です。トップアスリートは、勝敗という誰の目にも明らかな結果に日常的にさらされながら、目標設定・逆境対応・フィードバックの活用という思考習慣を磨いてきた存在です。この習慣を経営層向けの研修に取り入れる動きが、国内外で広がっています。
人事研修担当者にとって重要なのは、「アスリートの精神論を聞く講演」で終わらせず、経営判断に使える思考の型として研修を設計することです。この記事では、国内外で実際に提供されているアスリート思考研修の内容と、経営に活きる3つの領域を解説します。
アスリート思考研修が経営層向けに広がっている背景
日本マンパワーが提供するトップアスリート研修では、アスリートが行っている思考や行動の習慣を一般化し、受講者がビジネスや人生で活用できる学びとして提供しています。継続して結果を出し続けるアスリートの成果は、一時的な能力の高さだけでなく、習慣化された思考・行動に裏付けられており、アスリートとビジネスパーソンに共通する「プロフェッショナルとしてのスタンス」があるという考え方が背景にあります。経営層は日々の意思決定において、精神論ではなく再現可能な思考の型を求めており、これがアスリート思考研修へのニーズにつながっています。
国内外で提供されているアスリート思考研修の比較
アスリートの経験を活かした研修・支援プログラムは、対象や提供形態によって特徴が異なります。導入を検討する際は、自社が求める階層・目的に合ったプログラムを見極めることが重要です。
| プログラム | 提供主体 | 特徴 |
|---|---|---|
| トップアスリート研修 | 株式会社日本マンパワー | アスリートの思考・行動習慣を一般化し、ビジネスに転用できる学びとして提供 |
| メンタルスキル向上研修 | NTTプレシジョンメディシン株式会社 | プロチーム支援経験を持つ講師が担当、新入社員〜経営層まで階層別に設計 |
| Athlete365 Career+ | Adecco Group(IOCと共同運営) | 2005年からIOCと共同実施、世界50,000人以上のアスリートを支援した実績を基盤に構築 |
各社公式サイトの公開情報をもとにHuman Soarが比較表として整理
国内の研修サービスは「思考の一般化」と「階層別設計」が軸になっている
日本マンパワーとNTTプレシジョンメディシンの研修に共通するのは、アスリート個人の体験談で終わらせず、思考習慣を抽象化してビジネスの文脈に転用できる形に整えている点です。NTTプレシジョンメディシンの研修が新入社員から経営層まで階層別に設計されているように、経営層向けに導入する際も、対象階層に合わせた事例選定とワークの難易度調整が欠かせません。
Adecco×IOCの枠組みは「キャリア移行支援」という別の切り口を持つ
Athlete365 Career+は、IOCにキャリア教育・キャリアトランジション支援を提供する世界で唯一の人材会社としてAdecco Groupが構築したプログラムです。日本国内の研修サービスが「アスリート思考をビジネスに転用する」ことに主眼を置くのに対し、こちらは「アスリート自身のキャリア移行」を支援する枠組みである点が異なります。経営層向け研修を検討する企業にとっては、講師派遣・研修コンテンツ型のサービスと、アスリート社員自身のキャリア支援を目的としたサービスを混同しないことが重要です。
(参考)アスリートプログラム – Adecco Group Japan
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アスリート思考が経営判断に活きる3つの領域
各社の研修内容を横断的に見ると、経営判断に転用しやすいアスリート思考は大きく3つの領域に整理できます。
目標設定|長期目標を日々の行動指標に逆算する力
アスリートは大会という数年先の目標から逆算し、シーズン・月・週単位の行動指標に落とし込む訓練を日常的に行っています。経営層にとっても、中期経営計画を四半期・月次の意思決定にどう接続するかは共通の課題であり、この逆算思考はそのまま応用できます。
逆境対応|結果が出ない期間を前提に立て直す型を持つ
スランプや怪我など、結果が出ない期間を経験してきたアスリートは、感情に流されず心理状態を立て直す一定の型を持っています。経営判断でも、業績の低迷期にこそ冷静な意思決定が求められるため、この立て直しの型を研修の中で言語化し、経営層自身の言葉に置き換える作業が効果的です。
フィードバック活用|結果と行動を切り分けて振り返る習慣
アスリートは試合の勝敗という結果と、そこに至った個別のプレー・判断を切り分けて振り返る習慣を持っています。経営層も、事業の成否という結果だけで意思決定プロセスを評価してしまうと学びが浅くなります。結果と行動を分けて振り返る型を研修で体験させることで、日々の経営判断の質を継続的に改善できます。
研修を導入する際に押さえておきたいポイント
アスリート思考研修を経営層向けに導入する際は、講演形式で終わらせず、自社の実際の意思決定事例をワークに組み込むことが重要です。アスリートの体験談を聞くだけでは一過性の刺激で終わりやすく、目標設定・逆境対応・フィードバック活用の3領域それぞれについて、自社の過去の意思決定を題材に振り返るワークを組み合わせることで、研修後も継続的に使える思考の型として定着させられます。
よくある質問
アスリート思考研修は経営層以外にも効果がありますか
効果があります。NTTプレシジョンメディシンの研修が新入社員から経営層まで階層別に設計されているように、目標設定・逆境対応・フィードバック活用という3領域は、階層を問わず業務に応用できる思考習慣です。ただし経営層向けには、より大きな意思決定の文脈に合わせた事例選定が必要です。
研修の効果はどのように測定すればいいですか
研修直後のアンケートだけでなく、研修後の実際の意思決定プロセスに変化が見られたかを、3〜6か月後に振り返る仕組みを組み込むことが有効です。目標設定・逆境対応・フィードバック活用の3領域について、研修前後で自己評価を比較する簡易的なチェックシートを使う方法もあります。
まとめ
- アスリートは目標設定・逆境対応・フィードバック活用という思考習慣を日常的に磨いている
- 国内の研修サービスは思考の一般化と階層別設計を軸に、ビジネスへの転用を図っている
- Adecco×IOCのAthlete365 Career+は研修型ではなく、アスリート自身のキャリア移行支援という別の枠組み
- 経営判断に活きる領域は目標設定・逆境対応・フィードバック活用の3つに整理できる
- 講演形式で終わらせず、自社の意思決定事例をワークに組み込むことで研修効果が定着しやすい
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