離職率を改善する施策|企業がスポーツで定着率を上げる進め方

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離職率の改善は、打ち手を並べるより先に「自社の離職がどの理由で起きているか」を数えるところから決まります。離職防止の施策は、その切り分けができて初めて選べます。厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、離職率14.2%のうち10.7ポイントが「個人的理由」で、事業所側の理由は0.8ポイントにとどまりました。つまり、待遇や制度の見直しだけでは届かない領域が大半なんですよね。

この記事では、離職率の改善に必要な手順を、数え方・産業別の相場・原因の切り分け・打ち手の選び方の順に整理します。スポーツ・運動の施策が、どの原因にどう効くのかもあわせて解説するので、自社の定着施策を組み立てる材料にしてもらえると思います。

離職率の改善は「数える」ところから始まる

離職防止の施策を決める4段階の進め方を示した図解。離職率を数える・原因を切り分ける・打ち手を選ぶ・効果を測る

施策選びの順番は、①離職率を数える → ②原因を切り分ける → ③打ち手を選ぶ → ④効果を測る、の4段階です。この順番を飛ばすと、他社で効いた施策をそのまま持ち込んで、自社では動かないという結果になりがちです。

施策を先に選ぶと効かない打ち手に予算が流れる

離職防止の取り組みでよくあるのが、まず福利厚生のメニューを増やすところから入ってしまうパターンです。制度は増えたのに離職は止まらない、という状態になると、次に何を足せばいいのかも見えなくなってしまいます。

先に数えておくと、施策の候補は自然に絞れます。たとえば入社1年以内の離職が多いのか、5年目前後で抜けていくのかで、打つべき手はまったく別物になります。数えるのは面倒に見えますが、結果的にいちばん早い道なんですよね。

離職の4分の3は「個人的理由」が占める

厚生労働省の令和6年雇用動向調査によると、離職理由別の離職率は「個人的理由」(結婚・出産・育児・介護・看護およびその他の個人的理由の合計)が10.7%、「事業所側の理由」(経営上の都合・出向・出向元への復帰の合計)が0.8%でした。前年と比べると個人的理由は0.7ポイント、事業所側の理由は0.1ポイント低下しています。

全体の離職率14.2%に対して個人的理由が10.7ポイントなので、構成比としては約4分の3(10.7÷14.2=75.4%)になります。ここが、人間関係・働きがい・心身のコンディションといった「お金以外の理由」に手を打つ必要がある根拠です。

性別で見ると、個人的理由による離職率は男性8.8%、女性12.9%で、前年と比べて男性は0.6ポイント、女性は0.8ポイント低下しました。事業所側の理由は男性1.0%、女性0.6%です。男女で差が出るテーマなので、施策も一律にせず対象を分けて考えたほうが当たります。

(参考)令和6年雇用動向調査結果の概要 4 離職理由別離職率の推移 – 厚生労働省

Q. 離職防止の施策は何から始めればよいですか?

自社の離職率を数え、どの層がいつ辞めているかを把握するところから始めます。施策の候補を並べるのは、その後です。厚生労働省の令和6年雇用動向調査では離職の約4分の3が個人的理由によるもので、待遇の見直しだけでは届かない範囲が大きいことが分かります。原因を切り分けないまま制度だけを増やすと、効かない打ち手に予算を使うことになります。

産業別の離職率で自社の位置を確かめる

自社の離職率が高いのか低いのかは、単独の数字だけでは判断できません。同じ産業の水準と比べて初めて意味が出ます。下の表は、厚生労働省の令和6年雇用動向調査から一般労働者の入職率・離職率・入職超過率を産業別に取り出し、産業計(11.5%)との差をHuman Soarで計算したものです。

産業別の入職率・離職率一覧(一般労働者・令和6年)
産業 入職率 離職率 入職超過率 産業計との差
産業計 11.8% 11.5% 0.3 —
サービス業(他に分類されないもの) 19.4% 19.0% 0.4 +7.5
宿泊業,飲食サービス業 21.2% 18.1% 3.1 +6.6
生活関連サービス業,娯楽業 17.0% 16.9% 0.1 +5.4
医療,福祉 13.1% 13.1% 0.0 +1.6
不動産業,物品賃貸業 11.3% 12.6% -1.3 +1.1
卸売業,小売業 10.3% 10.7% -0.4 -0.8
学術研究,専門・技術サービス業 11.1% 10.3% 0.8 -1.2
情報通信業 11.0% 9.8% 1.2 -1.7
建設業 11.7% 9.7% 2.0 -1.8
鉱業,採石業,砂利採取業 7.1% 9.1% -2.0 -2.4
運輸業,郵便業 8.9% 9.1% -0.2 -2.4
教育,学習支援業 9.1% 8.8% 0.3 -2.7
製造業 8.3% 8.8% -0.5 -2.7
電気・ガス・熱供給・水道業 8.1% 7.8% 0.3 -3.7
金融業,保険業 8.4% 7.4% 1.0 -4.1
複合サービス事業 5.5% 7.0% -1.5 -4.5

出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」表4-2(一般労働者・令和6年)。「産業計との差」は同表の離職率から産業計11.5%を引いてHuman Soarが算出(単位:ポイント)。入職超過率は原典の値。

離職率が高い産業ほど入職率も高い

表を離職率の高い順に並べると、上位はサービス業(他に分類されないもの)19.0%、宿泊業・飲食サービス業18.1%、生活関連サービス業・娯楽業16.9%でした。ただしこの3業種は入職率も19.4%・21.2%・17.0%と高く、入職超過率はいずれもプラスです。人が抜けている以上に入ってきている状態なので、「離職率が高い=組織が壊れている」とは限りません。

逆に鉱業・採石業・砂利採取業は離職率9.1%と低い一方、入職率が7.1%で入職超過率は-2.0ポイントです。離職率だけを見て安心せず、入職とセットで読むのが実務上の要点になります。

産業計との差を自社の目標ラインにする

離職防止のKPIを置くときは、「離職率を◯%下げる」という絶対値より、産業計や同業の水準との差で設定するほうが現実的です。たとえば医療・福祉であれば産業計より1.6ポイント高い13.1%が相場なので、そこを基準に自社の位置を測ります。

差がプラス側に大きいなら、まず入職と離職の両方を押さえる必要があります。差がほぼゼロなら、全社一律の施策より、特定の職種や年次に絞った打ち手のほうが効きます。スポーツ福利厚生の効果の記事では、この投資対効果の見方をさらに詳しく整理しています。

離職率の算出方法|分母と期間をそろえて数える

離職率は定義が1つに決まっていないため、そろえずに比較すると数字が動いてしまいます。公的統計と自社の数字を突き合わせるなら、厚生労働省の雇用動向調査と同じ数え方に寄せておくのが無難です。

年間離職率は「年初の常用労働者数」を分母にする

雇用動向調査の離職率は、年初(1月1日現在)の常用労働者数に対する年間離職者数の割合として算出されています。令和6年は常用労働者50,645.8千人に対して離職者7,195.3千人で、離職率14.2%、入職率14.8%、入職超過率0.6ポイントでした。

自社で数えるときも、分母を「期首の在籍者数」に固定し、期中入社・期中退社の扱いを決めておきます。ここがぶれると、採用を増やした年だけ離職率が下がって見える、といったことが起こります。

(参考)令和6年雇用動向調査結果の概要 1 入職と離職の推移 – 厚生労働省

新卒3年と中途1年で切ると打ち手が変わる

全社の年間離職率は経営報告には使えますが、施策を決めるには粗すぎます。実務で見るなら、新卒入社3年以内、中途入社1年以内、管理職層、といった単位に切り分けます。

切ってみると、たとえば「全社では平均並みだが中途入社1年以内だけ突出して高い」といった形が見えてきます。そうなればオンボーディングの設計が先で、全社向けの福利厚生は後回し、という判断ができます。

離職の原因を3つに切り分けて打ち手を決める

個人的理由が離職の大半を占めるといっても、その中身は一様ではありません。実務では、人間関係・働きがい・心身のコンディションの3つに切り分けると、打ち手と対応づけやすくなります。

人間関係|相談できる相手がいるか

孤立は離職の引き金になりやすい要因です。上司との関係だけでなく、部署をまたいだ横のつながりがあるかどうかで、困ったときの逃げ道の数が変わります。

この領域に効くのは、評価制度よりも接点の設計です。心理的安全性をスポーツで高める職場づくりでも触れているとおり、発言しても大丈夫だと感じられる場があるかどうかが、定着の土台になります。

働きがい|成長と貢献の実感があるか

評価されていない、成長している気がしない、という感覚は、待遇を少し上げても消えません。ここは仕事の任せ方とフィードバックの頻度で変わる領域です。

従業員を費用ではなく資本として捉え、育成に投じた分を開示していく考え方は、人的資本投資の戦略で整理しています。離職防止の施策も、この枠組みの中に置くと社内で説明しやすくなります。

心身のコンディション|働き続けられる状態か

疲労やメンタル不調が続くと、本人の意欲とは関係なく働き続けられなくなります。休職から復帰できずに退職に至るケースも、統計上は「個人的理由」に分類されます。

ここがスポーツ・運動の施策がもっとも直接的に効く領域です。ワークエンゲージメントを高めるスポーツ施策の記事とあわせて読むと、コンディションと働きがいのつながりが見えてきます。

あわせて読みたい職場のウェルビーイングにスポーツが効く理由|研究と実践›

Q. 離職率はどうやって計算しますか?

年初の在籍者数を分母、その1年間の離職者数を分子にして算出します。厚生労働省の雇用動向調査も同じ考え方で、令和6年は常用労働者50,645.8千人に対し離職者7,195.3千人で離職率14.2%でした。施策を決めるときは、全社の数字に加えて新卒入社3年以内・中途入社1年以内など対象を切った離職率も出しておくと、どこに手を打つかが決まります。

スポーツを離職防止の施策に組み込む3つの効き方

スポーツや運動の取り組みが離職防止に効くのは、前の章で切り分けた3つの原因すべてに、別々の経路で届くからです。エンゲージメント、コミュニケーション、心身の健康の順に見ていきます。

エンゲージメントの向上

会社が運動の機会を用意してくれると、「自分の健康を気にかけてくれている」という実感が生まれます。この実感は、職場への愛着や信頼につながるんですよね。エンゲージメントが高い人ほど、安易に辞めにくくなります。

また、目標に向かって取り組み達成する経験は、前向きな気持ちを育てます。仕事以外の場面での成功体験が、職場全体への満足感に波及していくわけです。

コミュニケーションの活性化

一緒に体を動かす経験は、部署や役職を超えたつながりを作ります。普段は接点のない人と話すきっかけになり、社内の風通しが良くなるんですよね。孤立感は離職の大きな要因なので、これは見逃せないポイントです。

困ったときに相談できる相手がいる職場は、心理的な安心感があります。スポーツを通じて生まれたつながりが、日々の業務の支え合いにもつながっていきます。

心身の健康とストレス軽減

適度な運動は、ストレスの軽減や気分の安定に役立ちます。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、身体活動がメンタルヘルスの不調リスクを下げることに触れられています。心身の不調による離職や休職を防ぐ意味でも、運動の習慣化は有効です。

(参考)健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(概要) – 厚生労働省

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Q. 運動やスポーツの施策は、どの離職要因に効きますか?

人間関係・働きがい・心身のコンディションの3つすべてに、別々の経路で効きます。一緒に体を動かすことで部署を超えた接点が生まれ、達成体験が働きがいを補い、運動習慣がストレスと不調を減らします。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、身体活動がメンタルヘルスの不調リスクを下げることに触れられています。

施策を続ける仕組みと効果測定の設計

制度を作るだけでは、なかなか定着につながりません。参加のハードルを下げること、続く仕掛けを置くこと、そして効果を数字で追うことの3点を、最初から設計に入れておきます。

運動が苦手な人でも入れる入口を作る

まずは、運動が苦手な人でも参加しやすい入口を用意することが大切です。ウォーキングや軽い運動など、ハードルの低いものから始めると、自然に輪が広がります。一部の運動好きだけで盛り上がると、かえって温度差が生まれてしまいますからね。

続けるためには、参加状況の見える化や、部署対抗といった楽しさの仕掛けが効きます。経済産業省が推進する「健康経営」の考え方を踏まえ、経営層が意義を理解して後押しすると、施策が根づきやすくなります。

(参考)健康経営 – 経済産業省

社内ウォーキングイベントで設計を具体化する

イメージしやすいように、具体例を挙げてみます。たとえば、月に一度、部署横断のチームで参加する「社内ウォーキングイベント」を開いたとします。歩数を競うだけでなく、終わったあとに軽く交流の時間を設ける、といった形ですね。

このイベントの狙いは、健康増進と人間関係づくりを同時に進めることです。新入社員が先輩と自然に話せたり、他部署の人と顔見知りになれたりすると、職場への安心感が高まります。こうした積み重ねが、結果として定着率の改善につながっていきます。

効果測定は離職率だけで見ない

離職率は結果指標なので、動くまでに1年以上かかります。施策を続ける判断には、もっと早く動く先行指標を組み合わせます。参加率、参加者の部署の分散、イベント後のアンケート、休職日数、エンゲージメントサーベイのスコアなどが候補です。

数え方を決めるときは、対象・集計期間・分母を必ずセットで記録しておきます。1年後に「効いたのか」を判断するのは、施策そのものではなく、このときの記録の質です。

Q. 離職防止の施策の効果は、どう測ればよいですか?

離職率だけで判断せず、先に動く指標と組み合わせて測ります。離職率は結果指標のため、施策の影響が出るまでに1年以上かかるからです。参加率、参加者が所属する部署の広がり、休職日数、エンゲージメントサーベイのスコアなどを毎月記録し、対象・集計期間・分母をセットで残しておくと、後から効果を検証できます。

まとめ

離職防止の施策は、打ち手のカタログから選ぶものではなく、自社の数字から逆算して決めるものです。最後に要点を整理します。

  • 令和6年の離職率は14.2%で、そのうち10.7ポイント(約4分の3)が個人的理由による離職
  • 自社の水準は産業計と比べて判断する。一般労働者の産業計は離職率11.5%
  • 離職率は分母と期間をそろえ、新卒3年・中途1年など対象を切って見る
  • 原因は人間関係・働きがい・心身のコンディションの3つに切り分けて打ち手を決める
  • スポーツ・運動の施策はこの3つすべてに効くが、効果測定は先行指標とセットで設計する

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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