週の半分がオンラインミーティングで埋まり、気づけば夕方には肩がこわばっている。そんな日が続いても、体温計のように「今日は平熱より高い」とひと目でわかる指標がないまま、なんとなく不調をやり過ごしている人は少なくありません。近年は、心拍と心拍のあいだのわずかな間隔のゆらぎ「心拍変動(HRV)」を測ることで、自律神経の状態を数値として可視化できる製品が増えてきました。
この記事では、心拍変動を測れる国内外の4製品を公式サイトの情報にもとづいて紹介し、測定方式ごとの違いや、もともとアスリートのコンディション管理から生まれた指標が企業の健康経営にまで広がっている背景を解説します。
「心拍変動(HRV)を測る」とは何か|自律神経が映す体のコンディション
心拍変動(Heart Rate Variability、HRV)とは、心臓の拍動と拍動のあいだの間隔が、ミリ秒単位でどれだけ揺らいでいるかを示す指標です。休息時やリラックスしているときは副交感神経が優位になり間隔の揺らぎが大きくなる一方、ストレスや疲労が蓄積しているときは交感神経が優位になり、間隔がより一定のリズムに近づく傾向があります。
体温や血圧のように数値化しにくかった「自律神経の調子」を、日々の記録として追えるようになった点が、この指標が注目される理由です。労働の現場でも、メンタル不調の早期発見や健康経営の指標として、心拍変動を含む生体データの活用が広がりつつあります。厚生労働省は2025年5月に公布した改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった労働者50人未満の事業場にも、令和10年4月1日からストレスチェックの実施を義務化する方針を示しており、心身のコンディションを客観的なデータで把握する仕組みへの関心は、政策面からも後押しされています。
(参考)ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策 – 厚生労働省
国内外の4製品で比べる心拍変動の測り方|公式サイトで確認した特徴
心拍変動を測る方法は、スマートフォンのカメラを使うものから、医療機関や企業の測定会で使われる専門機器まで幅広くあります。ここでは、公式サイトで機能を確認できた国内外4製品を一覧にまとめました。
| 製品名 | 提供元 | 測定方法 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| カルテコ | 株式会社カルテコ | スマホカメラ(顔) | 約10秒で自律神経・疲労度・ストレスをスコア化。月330円 |
| TAS9VIEW | バイオロジックヘルス株式会社 | 指センサー | 自律神経と血管年齢を約2分30秒で分析。研究・医療機関で採用実績 |
| 疲労・ストレス測定システム | 株式会社日立システムズ | ハンディ機器(指) | 心電・脈波を2〜3分で計測しクラウドでレポート生成 |
| Polar H10 | Polar Electro | 胸部装着ECGセンサー | 最大400時間駆動。スポーツ研究分野で精度の基準として利用 |
各社公式サイトの情報をもとに作成(2026年時点)。価格・仕様は変動する場合があるため最新情報は公式サイトでご確認ください。
カルテコ|スマホカメラで自律神経を測る国産アプリ
カルテコは、株式会社カルテコが提供するスマートフォンアプリです。公式サイトによると、スマホのカメラに顔を約10秒映すだけで心拍変動を計測し、疲労度・ストレス(緊張度)・呼吸数・脈拍数をスコア化できます。人だけでなく、犬や猫の自律神経を測る機能も備えています。
利用は7日間無料で、以降は月330円(税込)で継続できる料金体系です。専用センサーを購入する必要がなく、手元のスマホだけで毎日の変化を記録できる手軽さが特徴です。
(参考)健康を自撮りしよう「カルテコ」 – 株式会社カルテコ
TAS9VIEW|指センサーで自律神経と血管年齢を分析する国内機器
TAS9VIEW(タスナインビュー)は、バイオロジックヘルス株式会社が製造・販売する自律神経バランス分析器です。公式サイトによると、指にセンサーを装着するだけで自律神経のバランス(HRV分析)と末梢血管の状態(血管年齢分析)を測定でき、標準的な計測時間は約2分30秒です。
本体にメモリーを搭載しているためパソコンがなくても測定・保存が可能で、研究分野から治療・投薬、心理療法、スポーツの現場まで幅広い分野で活用されています。メーカー本体価格は88万円(税別)で、医療機関や企業の健康測定会など、専門性の高い用途を想定した機器です。
(参考)ストレス測定器「自律神経バランス分析器TAS9 VIEW」 – バイオロジックヘルス株式会社
疲労・ストレス測定システム|日立システムズの健康経営向けクラウド型
疲労・ストレス測定システムは、株式会社日立システムズが株式会社疲労科学研究所と共同開発したクラウド型のサービスです。公式サイトによると、専用のハンディ機器(一般医療機器のバイタルモニターVM302)の左右の穴に指を入れるだけで、心電と脈波を同時に計測し、標準計測時間は2〜3分としています。
取得したデータはクラウド上の解析サーバーで処理され、自律神経機能年齢や交感・副交感神経のバランスがレポートとして出力されます。健康経営に取り組む企業や自治体、教育機関などへの導入を想定しており、測定履歴をCSV形式でエクスポートできる管理機能も備えています。
(参考)疲労・ストレス測定システム – 株式会社日立システムズ
Polar H10|スポーツ現場で使われる胸部装着型センサーの定番
Polar H10は、フィンランドのPolar Electroが手がける胸部装着型の心拍センサーです。公式サイトでは、心電(ECG)方式による高精度な計測が特長として紹介されており、医療・スポーツ研究の現場で「精度を検証する際の基準」として使われていると説明されています。
バッテリーは最大400時間駆動し、BluetoothとANT+の両方に対応しているため、さまざまなスポーツウォッチやトレーニングアプリと組み合わせて利用できます。日本国内でも正規販売代理店を通じて入手可能で、インターバルトレーニングなど心拍の変化が速い場面での精度を重視するアスリート・指導者に選ばれています。
(参考)Polar H10 Heart Rate Sensor – Polar Electro
心拍変動の測り方を分類する3つの軸|装着型・据置型・非接触型
4製品を比較すると、心拍変動の測り方は大きく3つのタイプに分けられることが見えてきます。どのタイプが自分の目的に合うかを考える手がかりとして、測定方法の違いを3つのタイプに整理しました。
紹介した4製品の測定方式をもとに3つのタイプに分類(2026年時点)。
装着型|指輪や胸ベルトで計測し続けるタイプ
Polar H10のように体に装着し続けるタイプは、運動中や睡眠中など、継続的な変化を追いたい場合に向いています。装着している間はほぼ自動で計測が続くため、記録の抜け漏れが少ないのが利点です。一方で、機器の充電やベルトの装着といった手間が発生する点は考慮が必要です。
据置型|医療機関や企業の測定会で使う専門機器タイプ
TAS9VIEWや疲労・ストレス測定システムのような据置型は、専門スタッフが立ち会う測定会や健診の場で使われることが多いタイプです。1回あたりの測定精度や、血管年齢分析のような付加機能が充実している一方、日常的に個人が自宅で使うというより、企業・医療機関が定期的な測定機会として導入する用途に向いています。
非接触型|スマホカメラで手軽にスポットチェックするタイプ
カルテコのようにスマホのカメラだけで完結するタイプは、専用機器を用意する初期コストがかからず、思い立ったときにすぐ測れる手軽さが最大の利点です。継続のハードルが低い分、装着型ほど連続したデータは取得しにくいため、「毎日決まった時間に測る」といった自分なりのルールを決めて習慣化することが活用のポイントになります。
アスリートから企業へ広がるHRV活用の背景
心拍変動という指標は、もともとスポーツの現場でアスリートのコンディション管理のために使われてきた歴史があります。それが今、ビジネスパーソンの健康管理や企業の健康経営にまで応用の場を広げています。
アスリートのコンディション管理から始まった指標
心拍変動は、トレーニングの負荷が体に蓄積しているか、回復が十分に進んでいるかを見極める指標として、スポーツ現場で先行して活用されてきました。練習量や試合の頻度をGPSセンサーなどで客観的に記録する動きと同様に、心拍変動もまた「感覚」ではなく「数値」でコンディションを管理するための手段のひとつです。
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企業の健康経営に広がる背景|労働安全衛生法の改正
アスリート発の指標が一般のビジネスパーソンにも広がった背景には、腕時計型・指輪型のウェアラブル端末が普及し、専門知識がなくても日々の回復度を確認できるようになったことがあります。加えて、厚生労働省が2025年5月に公布した改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった労働者50人未満の事業場にも令和10年4月1日からストレスチェックの実施が義務化される方針が示され、企業が従業員の心身のコンディションを客観的なデータで把握する必要性は今後さらに高まっていくと見込まれます。
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自分に合った心拍変動の測り方を選ぶ3つの視点
ここまで見てきた4製品と3つの分類軸を踏まえると、自分に合った測り方を選ぶ際に押さえておきたい視点は大きく3つに整理できます。
継続のしやすさで選ぶ
心拍変動は1回だけ測っても、その日の体調の一部しか分かりません。数週間から数か月単位で傾向を追ってはじめて、「いつもと違う」変化に気づけるようになります。装着の手間や料金の負担が小さく、日常のなかで無理なく続けられるかどうかを、まず確認しておきたいポイントです。
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精度と用途で選ぶ
個人の体調管理であれば非接触型や装着型の手軽さで十分なケースが多い一方、研究目的や医療的な判断の材料として使う場合は、据置型のような専門機器のほうが適しています。何のために測るのかという目的に応じて、求める精度のレベルを見極めることが大切です。
データの活かし方で選ぶ
測った数値をどう活かすかも製品選びの重要な視点です。個人でスコアの推移を眺めるだけでよいのか、家族や職場でデータを共有したいのか、あるいは組織単位でレポートを集計し健康経営の施策に反映したいのかによって、向いている製品は変わってきます。
よくある質問
ここまでの内容を踏まえて、心拍変動を測りはじめる際によく寄せられる疑問をまとめました。
心拍変動はどのくらいの頻度で測ればいいですか
心拍変動は日によって自然に変動する指標のため、1回の数値だけで良し悪しを判断するのは適切ではありません。可能であれば毎日、同じ時間帯(起床直後など)に測定し、数週間単位の傾向として捉えることをおすすめします。
数値が低い日はどう対応すればいいですか
数値が普段より低い日は、体が回復のためにより多くの時間を必要としているサインの可能性があります。無理にトレーニングや残業を詰め込まず、睡眠や休息を優先する判断材料として活用するとよいでしょう。
医療機器と非医療機器はどう違いますか
今回紹介した製品のうち、日立システムズの疲労・ストレス測定システムで使われるバイタルモニターVM302は一般医療機器として届出されています。一方でカルテコのようなアプリは、あくまで健康管理を目的としたサービスであり、医療機器としての診断を目的としたものではない点に注意が必要です。用途に応じて、どちらのタイプかを確認してから選ぶことをおすすめします。
まとめ
心拍変動(HRV)は、体温のように数値で自律神経のコンディションを可視化できる指標であり、測り方には大きく分けて装着型・据置型・非接触型の3つのタイプがあります。
- カルテコはスマホカメラで手軽に自律神経を測れる国産アプリ
- TAS9VIEWと日立システムズの測定システムは医療機関・企業向けの専門機器
- Polar H10はスポーツ現場で精度の基準として使われる胸部装着型センサー
- もともとアスリートのコンディション管理から生まれた指標が、法改正も後押しとなり企業の健康経営にも広がっている
- 製品選びは継続のしやすさ・精度と用途・データの活かし方の3つの視点で検討するとよい
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