週末の大会運営を終えたあと、事務局に残るのはベテラン職員1人という競技団体は少なくありません。「この人がいなくなったら運営が回らない」と分かっていながら、日々の業務に追われて後任育成が後回しになっている組織運営担当者も多いはずです。
この記事では、スポーツ団体に人材育成計画が必要とされる背景、計画に組み込みたい要素、そして組織規模に合わせたアプローチの立て方を整理します。
人材育成計画が必要とされる背景
スポーツ庁は「スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け>」のなかで、団体が適切な組織運営を行うための原則・規範を示しており、令和5年11月には改定も行われています。組織運営の適正化が求められる流れのなかで、属人的な運営から脱却し、誰が担当しても一定の水準で業務を回せる体制づくりが競技団体にも求められるようになってきました。
特にボランティアや兼業スタッフに支えられている団体では、特定の個人に業務が集中しやすく、その人が離れると運営そのものが立ち行かなくなるリスクを抱えています。人材育成計画は、このリスクを前もって減らすための仕組みです。
(参考)スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け> – スポーツ庁
育成計画に組み込みたい3つの要素
人材育成計画といっても、いきなり分厚い制度を作る必要はありません。まずは次の3つの要素を押さえることから始められます。
役割ごとに必要なスキルを言語化する
大会運営、広報、会計、選手対応など、団体内の役割ごとに「何ができれば一人前か」を短い箇条書きでよいので書き出します。感覚で引き継いでいた業務を言語化するだけで、育成の出発点が明確になります。
OJTと研修を年間スケジュールに組み込む
大会シーズンの前後など、業務の繁閑に合わせてOJTのタイミングをあらかじめ年間予定に組み込んでおきます。繁忙期に「教える余裕がない」となる前に、計画段階で時間を確保しておくことがポイントです。
1つの役割に複数人が対応できる体制をつくる
特定の1人しかできない業務をなくすため、主担当と副担当を必ず2人体制にします。副担当が実務の一部を担うことで、自然にOJTが進み、後継者不足のリスクも同時に減らせます。
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組織規模別に見る計画づくりのアプローチ
団体の規模によって、現実的に取れる育成計画のアプローチは変わります。無理のない範囲から始めることが継続のコツです。
| 組織規模 | 現実的なアプローチ |
|---|---|
| 小規模団体(事務局1〜2名) | 業務マニュアルの整備を最優先し、副担当を1つの業務から試験的に置く |
| 中規模団体(事務局数名〜十数名) | 役割ごとのスキル一覧を作り、年1回の面談で育成状況を確認する |
| 大規模団体(専従職員多数) | 階層別の研修体系を整備し、次世代の事務局長候補を計画的に育成する |
団体の一般的な体制規模を目安にHuman Soarが整理したアプローチ例です。
小規模団体はまず業務マニュアル化から始める
人手が足りない小規模団体では、育成の仕組みを新設するより先に、既存業務をマニュアル化することが最も効果的です。マニュアルがあるだけで、新しく関わる人への引き継ぎ負担が大きく減ります。
中規模団体は年1回の育成面談を仕組み化する
ある程度の人数がいる団体では、役割ごとのスキル一覧をもとに、年1回のペースでスタッフと育成状況を確認する面談を制度化すると、育成が特定の担当者任せにならずに済みます。
大規模団体は次世代リーダー候補の計画的育成を行う
専従職員が多い団体では、階層別の研修体系を整えたうえで、将来の事務局長やマネージャー候補を意図的に育てる仕組みが必要になります。アスリートのキャリア支援と同じように、長期的な視点での人材育成計画が組織の持続性を左右します。
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計画づくりで陥りやすい注意点
人材育成計画を作る際によくあるのが、制度だけを整えて実際の運用が続かないケースです。育成担当者を決めても、その人自身の業務量が増えるだけで形骸化してしまうことがあります。育成にかかる時間をあらかじめ業務時間の一部として認め、育成担当者の負担を組織として把握しておくことが、計画を続けるうえで欠かせません。
もう一つ陥りやすいのが、育成計画を一度作って満足してしまい、実際の大会シーズンが終わったあとに振り返りをしないパターンです。計画は作った時点がゴールではなく、シーズンごとに「どこがうまくいき、どこが滞ったか」を短時間でも棚卸しすることで、翌年の計画がより実態に合ったものになります。
育成計画を今週から動かすアクションプラン
まず着手しやすい3つのステップを紹介します。
まとめ
- スポーツ団体ガバナンスコードの浸透により、属人的な運営からの脱却が求められている
- 育成計画には役割の言語化・年間OJT設計・複数人体制の3要素を組み込むとよい
- 組織規模に応じてマニュアル化・育成面談・次世代リーダー育成とアプローチを変える
- 制度を作るだけでなく、育成にかかる時間を業務として認めることが継続の鍵になる
- まずは最もリスクの高い業務を1つ選び、副担当をつけるところから始めるとよい
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