プレゼンティーイズムは、運動不足という「複数の原因に共通する入口」を断つことで効率よく改善できます。ある調査では従業員のプレゼンティーイズム損失割合は平均36.6%にのぼるとされ、健康関連コストの多くを占める要因として注目されています。
この記事では、プレゼンティーイズムの意味と原因を整理したうえで、スポーツや運動を使って改善する具体的な方法を解説します。健康経営や人事の担当者の方が、明日から検討できる進め方まで紹介しますね。
プレゼンティーイズムとは?企業の生産性損失を知る
プレゼンティーイズムとは、出勤はしているものの、心身の不調などが原因で本来の力を発揮できず、生産性が下がっている状態のことです。欠勤として表に出ないぶん、見過ごされやすいのが特徴です。
健康経営の分野では、この損失が企業の健康関連コストのなかで大きな割合を占めると指摘されています。まずは似た言葉との違いと、なぜ見えにくいのかを押さえましょう。
アブセンティーイズムとの違い
アブセンティーイズムは、病気や体調不良で欠勤・休職している状態を指します。休んでいるぶん、勤怠データで把握しやすい損失です。
これに対してプレゼンティーイズムは「出社しているのに力を出せていない」状態なので、数字に表れにくいんですよね。実は企業の損失としてはプレゼンティーイズムのほうが大きいとされ、見えない損失をどう減らすかが課題になっています。
なぜ損失が見えにくいのか
本人も「少し疲れているだけ」と捉えていることが多く、不調が表面化しにくいのが理由です。肩こりや睡眠不足、軽い気分の落ち込みなどは、欠勤するほどではなくても集中力や判断力をじわじわ下げます。
経済産業省は、健康への投資の効果を会計的に「見える化」する考え方を示しています。損失を数値で捉える枠組みを持つことで、対策の効果も評価しやすくなります。
Q. プレゼンティーイズムとは何ですか?
出勤しているものの、心身の不調により本来のパフォーマンスを発揮できていない状態を指します。欠勤として表に出ないため、アブセンティーイズムより損失が見えにくいとされています。
(参考)データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン – 厚生労働省保険局
プレゼンティーイズムが生まれる主な原因
対策を考える前に、何が生産性を下げているのかを整理しておきましょう。原因は一つではなく、体・心・環境が絡み合っています。代表的な3つの原因と影響を一覧で見てみます。
| 原因 | 具体例 | 生産性への影響 |
|---|---|---|
| 身体の不調 | 肩こり、腰痛、睡眠不足 | 集中力・持続力の低下 |
| メンタルの不調 | ストレス、軽い気分の落ち込み | 意欲・判断力の低下 |
| 運動不足 | 座りっぱなし、活動量の低下 | 疲れやすさ・体調の崩れ |
表:プレゼンティーイズムを生む主な3つの原因と影響
身体の不調
肩こりや腰痛、睡眠不足といった身体の不調は、欠勤するほどではなくても集中力を確実に削ります。長時間のデスクワークが続く職場では、こうした不調を抱えたまま働いている人が少なくありません。
体の状態は仕事のパフォーマンスに直結します。日々のコンディションを整える習慣があるかどうかで、午後の生産性は大きく変わってきますよね。
メンタルの不調
強いストレスや軽い気分の落ち込みは、意欲や判断のスピードを下げます。本人が自覚しにくいぶん、周囲も気づきにくく、対策が後回しになりがちです。
運動には気分を切り替える効果があり、メンタル面のケアと相性が良いことが分かっています。心の状態を整える手段として、体を動かす習慣は有効です。
運動不足
座りっぱなしの働き方が続くと、活動量が落ちて疲れやすくなり、体調を崩しやすくなります。運動不足はそれ自体が身体・メンタル両方の不調の入口になります。
裏を返せば、運動習慣をつくることは複数の原因にまとめてアプローチできるということです。だからこそスポーツ・運動は改善策として注目されています。
Q. プレゼンティーイズムの主な原因は何ですか?
身体の不調・メンタルの不調・運動不足の3つが代表的な原因です。運動不足は身体・メンタル双方の不調の入口になりやすいため、運動習慣づくりが複数の原因へのアプローチとして注目されています。
スポーツ・運動でプレゼンティーイズムを改善する仕組み
では、運動はどのようにプレゼンティーイズムの改善につながるのでしょうか。体への効果と、続けるための仕組みづくりの両面から見ていきます。
運動が心身に与える効果
適度な運動は血流を促し、肩こりや疲労感をやわらげ、睡眠の質を高めます。さらに気分をリフレッシュさせる効果もあり、ストレスの軽減にもつながります。
厚生労働省も身体活動・運動の推進を健康づくりの柱に位置づけ、日常的に体を動かすことの重要性を示しています。体とメンタルの両方に効くからこそ、見えない損失を減らす手段になり得るんですよね。
継続できる仕組みづくり
効果を得るには、一度きりのイベントではなく「続く」ことが欠かせません。個人の意志に頼るのではなく、業務の合間に体を動かせる時間や、仲間と取り組める仕掛けを用意することが大切です。
心の健康を「不調か健康か」の二択でなく連続的に捉える考え方も、継続の設計に役立ちます。詳しくはこちらの記事も参考になります。
あわせて読みたいメンタルヘルス・コンティニュアムとは?心の健康の捉え方›
実際、アドバンテッジリスクマネジメント社が272社・28万8,388人を対象に実施した調査(2020年11月〜2021年12月・WHO-HPQ〈世界保健機関の健康と労働パフォーマンスに関する質問紙〉を使用)によれば、従業員のプレゼンティーイズム損失割合は平均36.6%でした。業種別では情報通信が38.3%と高く、高ストレス者は非ストレス者と比べて約1.3倍のプレゼンティーイズムが発生しているという結果も示されています。
(参考)プレゼンティーイズムの測定・分析・改善方法を徹底解説 – 株式会社アドバンテッジリスクマネジメント(アドバンテッジJOURNAL、2023年10月公表・2026年3月更新)
Q. スポーツ・運動はプレゼンティーイズムの改善にどの程度効果がありますか?
適度な運動は血流を促し、疲労感や睡眠の質を改善するほか、ストレス軽減にもつながります。生活習慣の中でも運動習慣の改善は、プレゼンティーイズム損失を左右する要因の一つとされています。
自社に合うプレゼンティーイズム改善施策の選び方
どの運動施策から手をつければよいか迷う場合は、次の3ステップで絞り込むと判断しやすくなります。Human Soarでは、施策選定を「把握」「原因特定」「強度選定」の順で進める判断フローとして整理しています。
この3ステップを踏むことで、「とりあえず人気の施策を導入する」のではなく、自社の実データに基づいた優先順位をつけられます。特に3ステップ目の強度選定を誤ると、義務感による離脱が起きやすくなるため注意が必要です。
低強度から始める施策が向いている組織の特徴
デスクワーク中心で運動習慣がほぼ無い従業員が多い組織では、ストレッチやウォーキングなど、日常の業務に組み込みやすい低強度の施策から始めるのが安全です。強度の高い施策をいきなり導入すると、体力差のある従業員が参加をためらい、施策自体が形骸化しやすくなります。
中強度の施策が向いている組織の特徴
すでに社内運動会やウォーキングイベントなどの実績がある組織では、週1回のオンライン運動プログラムや部活動的なスポーツサークルなど、継続性を意識した中強度の施策に段階を上げやすくなります。過去の参加率データを踏まえて強度を調整すると、離脱を防ぎやすくなります。
企業がスポーツ施策を導入する進め方
ここからは、実際に企業が運動・スポーツ施策を取り入れるときの具体的な進め方を紹介します。大がかりな制度でなくても、小さく始めて効果を測ることができます。
| 施策 | コスト目安 | 始めやすさ | 向いている企業規模 |
|---|---|---|---|
| 始業前ストレッチ | ほぼ0円 | 非常に高い | 小規模〜大規模 |
| 昼休みウォーキング | ほぼ0円 | 高い | 小規模〜大規模 |
| 週1回オンライン運動プログラム | 数万円〜(講師費) | 中程度 | 中規模〜大規模 |
| 社内運動会・スポーツイベント | 数十万円〜 | やや低い(企画負荷大) | 中規模〜大規模 |
| スポーツクラブ・ジム利用補助 | 従業員1人あたり月数千円 | 中程度(制度設計が必要) | 中規模〜大規模 |
表:代表的な運動関連施策5種の比較(出典:各施策の一般的な実施形態をもとにHuman Soarが独自に整理・集計)
小さく始める運動プログラムの例
たとえば、始業前の数分間のストレッチ、昼休みのウォーキング、週1回のオンライン運動プログラムなどは、設備投資が少なく始めやすい例です。ある企業では、希望者向けに昼の散歩を呼びかけただけで、参加者の午後の集中度が上がったという声が出た、といった取り組みもあります。
ポイントは、業務に組み込みやすい形にすることです。「わざわざ時間を取る」のではなく「仕事の流れのなかで自然に体を動かせる」設計にすると、参加のハードルが下がります。
効果を測る指標
施策の効果は、感覚ではなく指標で確認しましょう。健康診断の数値、簡単なアンケートによる体調や集中度の自己評価、欠勤率の変化などが目安になります。
プレゼンティーイズムの改善は、既存の取り組みと組み合わせると効果が高まります。具体的な改善策はこちらの記事でも掘り下げています。
あわせて読みたいプレゼンティーイズムの改善策|企業ができる対策›
運動・スポーツ施策は、企業のウェルビーイング施策全体の中に位置づけることで効果が定着しやすくなります。設計の全体像はウェルビーイングとは?施策が失敗する理由と設計法でも解説しています。
Q. スポーツ施策の効果はどのように測定すればよいですか?
健康診断の数値、アンケートによる体調・集中度の自己評価、欠勤率の変化などを指標に使います。初期の変化は2〜3ヶ月で現れやすく、行動として定着するまでには半年〜1年ほどを見込むとよいでしょう。
スポーツ施策を導入する際の注意点
良かれと思って始めた施策が、かえって負担になっては本末転倒です。導入時に気をつけたい2つのポイントを押さえておきましょう。
強制せず参加しやすくする
運動を義務化すると、苦手な人にとってはストレスの原因になりかねません。参加は任意にしたうえで、誰でも気軽に加われる雰囲気づくりを優先しましょう。
体力や年齢に差があっても楽しめるよう、強度の低いメニューから用意すると参加の裾野が広がります。「やらされ感」をなくすことが、結果的に継続率を高めます。
続く仕組みにする
盛り上がったイベントも、一度きりでは効果が定着しません。担当者だけが頑張る運用ではなく、習慣として回り続ける仕組みにすることが大切です。
参加状況をゆるやかに共有したり、小さな達成を認め合ったりする工夫があると、自然と続けたくなります。無理なく続く設計こそが、見えない損失を着実に減らしていきます。
Q. スポーツ施策を導入する際に気をつけることは何ですか?
運動を義務化せず、誰でも参加しやすい強度・頻度から始めることが重要です。イベントを一度きりで終わらせず、習慣として続く仕組みに落とし込むことが定着のカギになります。
まとめ:スポーツでプレゼンティーイズムを改善する
プレゼンティーイズムは見えにくい損失ですが、運動・スポーツで着実に改善できます。要点を振り返ります。
- プレゼンティーイズムは「出社しているのに力を出せない」状態で、損失が見えにくい
- 主な原因は身体の不調・メンタルの不調・運動不足の3つ
- 運動は心身の両方に効き、複数の原因にまとめてアプローチできる
- 小さく始めて、健康数値やアンケートで効果を測るのが進め方の基本
- 強制せず、参加しやすく続く仕組みにすることが成功のカギ
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