「食や栄養にこだわれない選手はトップに上がれない」——久保建英選手を中学時代からサポートしてきた木場克己トレーナーはそう断言している。
久保選手は魚が嫌いだった。しかしトップを目指す過程で、「無理して食べています」という姿勢に変わった。この変化が示すのは、単なる好き嫌いの克服ではない。「何を食べるかを自分でコントロールする力」が、競技パフォーマンスを支えるという本質的な原則だ。この記事では、久保選手のケースを通じて、アスリートと一般人に共通する「食事管理の本質」を解説する。
久保建英の食事管理の実態
木場克己トレーナーへのインタビュー(かまぼこ.com)に基づく事実を整理する。
「魚が嫌い」でも「無理して食べる」
木場克己トレーナーが久保選手を指導していた中学時代、久保選手は魚が嫌いだったという。しかし食の重要性を理解してからは、苦手でも「無理して食べています」という姿勢を持つようになった。
「食や栄養にこだわれない選手はトップに上がれない」
出典:木場克己トレーナーインタビュー(かまぼこ.com)
栄養士との連携によるダブルサポート
木場トレーナーは体幹バランストレーニング「KOBAトレ」の考案者として知られ、多くのトップアスリートを指導してきた。そのサポート体制では、トレーニング指導と並行して栄養士との連携が重要な役割を担う。選手の状態・目標・練習強度に合わせた食事設計が行われており、「好き嫌い」は食事設計の対象外とされる。
出典:木場克己トレーナーインタビュー(かまぼこ.com)
なぜ「嫌いでも食べる」のか
久保選手が魚を「無理して食べる」のは、根性論ではない。栄養的な必然性がある。
魚(特に青魚)にはEPA・DHAといったオメガ3脂肪酸が豊富だ。これらは炎症を抑制し、筋肉の修復を促進し、脳機能にも関わる。サッカー選手のように毎日練習を重ねる身体において、抗炎症作用のある栄養素は回復速度に直接影響する。「嫌いだから食べない」という選択は、「回復が遅くなってもいい」という選択と同義になる。
また、木場トレーナーの言葉にある「こだわれない選手はトップに上がれない」は、食事管理が競技力に直結するという実績に裏打ちされている。KOBAトレのクライアントには日本代表レベルの選手が複数おり、その指導の中で「食をコントロールできない選手は伸び悩む」という経験則が積み上げられている。
食事管理が競技パフォーマンスに与える科学的根拠
スポーツ栄養学の観点から、食事の「好き嫌いを超えた管理」がなぜ重要かを整理する。
魚に含まれるオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、筋肉の合成促進・炎症抑制・認知機能維持の三方向に働く(Smith et al., 2011; Mickleborough, 2013)。特にサッカーのように判断スピードが求められる競技では、脳の健康維持が直接的なパフォーマンスに影響する。
また、食事管理の「自己規律」はアスリートの心理的特性の一部とされている。スポーツ心理学では、食事・睡眠・練習の自己管理能力が高い選手ほど、競技での自己効力感も高い傾向があることが示されている。「食べたいものを食べる」という衝動に打ち勝つ経験が、競技場での衝動制御にも転移する可能性がある。
一般人とトップアスリートの食事への向き合い方の違い
久保選手の食事管理を理解するには、一般的な食事観との比較が有効だ。多くの人が「好きか嫌いか・おいしいかどうか」を基準に食事を選ぶのに対し、トップアスリートは「必要な栄養素があるかどうか」を軸に選択する。この違いが、長期的なパフォーマンスの差を生む。
一般的なアプローチでは苦手な食材は避け、専門家のサポートもなく、食事は楽しみの一つとして捉えられる。久保選手のアプローチはその逆だ。栄養上必要なものを優先し、苦手でも「無理して食べる」。トレーナーと栄養士のダブルサポートを受け、食事をトレーニングと同列のパフォーマンス管理手段として扱う。
| 観点 | 一般的なアプローチ | 久保建英のアプローチ |
|---|---|---|
| 食の基準 | 好きか嫌いか・おいしいかどうか | 必要な栄養素があるかどうか |
| 苦手な食材 | 避ける | 無理しても食べる |
| 専門家の活用 | なし | トレーナーと栄養士のダブルサポート |
| 食事の位置づけ | 楽しみの一つ | トレーニングと同列のパフォーマンス管理手段 |
今日から食事管理を変える3ステップ
久保選手の食事への向き合い方は、アスリートでなくても実践できる。3つのステップで始められる。
ステップ1:「苦手な栄養食材」を1つ特定する
自分が避けている食材の中に、栄養的に重要なものがないか調べる。魚・青菜・豆類・発酵食品などは苦手な人が多いが、栄養価が高い。1つだけ選んで、週3回食べることを目標にする。
ステップ2:「食べる理由」を言語化する
「なぜこれを食べるのか」を明確にする。「DHA補給のため」「筋肉修復のため」と理由が明確なほど、継続しやすい。好き嫌いの感情より、目的が優先されるようになる。
ステップ3:専門家の知識を一つ取り入れる
栄養士・スポーツ栄養の書籍・信頼できる情報源から、自分のパフォーマンス目標に合った食事の基本を学ぶ。「なんとなくヘルシー」より「目的ベースの食事設計」に変えることが、久保選手が実践したアプローチだ。
「食の好き嫌い」はコントロール可能な変数だ
久保建英選手のケースが示すのは、トップアスリートへの道において「食事への意志」が競技力の一部だということだ。
好きなものを食べることは誰でもできる。しかしパフォーマンスに必要なものを選んで食べる力は、習慣と意識によって後天的に身につけられる。「嫌いでも無理して食べる」という一見地味な行動が、長期的なパフォーマンスの土台を作る。これはトップアスリートだけでなく、健康・仕事・学習を最大化したいすべての人に応用できる原則だ。
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