中学校の体育館で新入生が初めて部活動見学に並ぶ日から、高校の体育館で先輩たちがインターハイ予選の組み合わせ表を貼り出す日、そして大学のキャンパスで新入部員がUNIVAS CUPの案内メールを受け取る日まで。同じ「部活動」という言葉でも、その運営を支える組織は学校段階が変わるたびに入れ替わっています。
スポーツ業界の中でも学校・大学スポーツは、中学は日本中学校体育連盟(中体連)、高校は全国高等学校体育連盟(全国高体連)、大学はUNIVAS(大学スポーツ協会)という、段階ごとに異なる統括団体が支えるという珍しい構造を持っています。この記事では、3つの統括団体それぞれの役割と特徴、部活動を取り巻く数字の実態、そしてこの業界に関わる仕事や企業の接点までを、公式情報と一次データをもとに整理します。
学校段階で移り変わる統括団体|中体連・高体連・UNIVASの継投構造
学校スポーツの多くの競技団体は、種目ごとに縦割りで発展してきました。ところが学校段階を横断して大会運営やルールを取りまとめる組織は、実は中学と高校にしか長く存在していませんでした。大学スポーツにはこうした競技横断的な統括組織が2019年まで存在せず、大学ごと・部活ごとの自主運営に委ねられていたのです。
進学のタイミングで、部活動を支える主管団体は2度切り替わる。
| 団体名 | 対象 | 設立 | 主な事業 |
|---|---|---|---|
| 日本中学校体育連盟 | 中学校運動部 | 1955年発足/2011年公益財団法人化 | 全国中学校体育大会(夏季16競技・冬季4競技)の開催 |
| 全国高等学校体育連盟 | 高校運動部 | 1948年創設/2012年公益財団法人化 | 全国高等学校総合体育大会(インターハイ)の主催 |
| UNIVAS | 大学運動部 | 2019年3月1日設立 | 競技横断型大会「UNIVAS CUP」の運営、学生の学業・安全支援 |
3団体の設立年・主な事業を、各団体の公式情報から比較して整理した。
中学校期を束ねる公益財団法人日本中学校体育連盟
日本中体連は1955年に「全国中学校体育連盟」として発足し、1989年に文部大臣認可の財団法人、2011年に公益財団法人となりました。会員は都道府県中学校体育連盟のほか、競技部長19名、OB会員71名、特別賛助会員17社、一般賛助会員113社で構成されており、主な事業は夏季16競技・冬季4競技の全国中学校体育大会の開催と、加盟校・部員数の調査研究です。
(参考)日本中体連について – 公益財団法人日本中学校体育連盟
高校期を束ねるインターハイの主催者・全国高体連
全国高体連は1948年に創設され、1963年に第1回インターハイを開催、2012年に公益財団法人へ移行しました。事務局は東京都千代田区にあり、47都道府県それぞれに設置された都道府県高等学校体育連盟と連携して大会を運営しています。近畿総体2026や南関東総体2027など、開催地は数年先まで決まっている点も特徴です。
大学期を統括する新参のUNIVAS|設立からわずか7年
大学スポーツには長らく中体連・高体連にあたる競技横断的な統括組織が存在せず、大学ごと・競技団体ごとの自主運営が続いていました。この課題を受けて文部科学省・スポーツ庁が主導し、2019年3月1日に一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)が設立されています。学業充実・安全安心・大学スポーツの認知拡大を3本柱に掲げ、加盟大学の一覧は公式サイトで確認できます。
(参考)一般社団法人 大学スポーツ協会(UNIVAS) 設立概要 – スポーツ庁
中学・高校の部活動離れが進む現状|加入率33.0%と地域移行の実態
統括団体を取り巻く環境は、この数年で大きく変わりつつあります。笹川スポーツ財団の調査によると、中学生の運動部活動加入率は男子64.1%、女子49.8%にとどまっており、かつてのように大半の生徒が当然のように運動部へ入る時代ではなくなっています。1年間で家庭が支払う運動部の費用も平均50,857円にのぼり、保護者の送迎や食事の用意といった負担も加入のハードルになっています。
さらに、休日の運動部活動を地域のクラブなどへ移す「地域展開・地域移行」に取り組む市区町村は33.0%まで広がりました。自治体側の最大の課題は「指導者確保」で67.5%、次いで「財源確保」が39.7%という結果です。中体連・高体連が長年担ってきた「学校単位での大会運営」という役割は、今後は地域の受け皿づくりを誰が担うのかという、統括団体だけでは完結しない調整業務へと広がりつつあると考えられます。
地域移行を阻む主な要因は、費用・指導者・財源の3つに集約される。
(参考)運動部活動と部活動の地域展開・地域移行の現状 – 公益財団法人笹川スポーツ財団
学校・大学スポーツに関わる仕事|統括団体と大学キャリアの入口
学校・大学スポーツは学生や教員だけの世界ではなく、統括団体の事務局員、大会運営スタッフ、地域移行のコーディネーターなど、多様な仕事が存在する業界でもあります。ここでは代表的な2つの入口を紹介します。
統括団体・大学の事務局で働くという選択肢
中体連・高体連・UNIVASはいずれも財団法人・社団法人として職員を採用しており、大会運営、加盟校・加盟大学との連絡調整、広報誌の編集、協賛企業対応などが主な業務になります。UNIVASは公式サイトで職員募集ページを常設しており、大学スポーツの成長とともに採用ニーズも広がっている分野です。学校法人側でも、大学の学生支援部門や体育会本部でこうした統括団体との窓口を担う職員が置かれています。
部活動の地域移行を支えるコーディネーターという新しい仕事
地域展開・地域移行が進むなかで新たに生まれているのが、学校と地域クラブ・自治体をつなぐコーディネーター職です。指導者確保や受け皿の調整という自治体の課題に対応する専門人材として、スポーツ推進部局や総合型地域スポーツクラブでの採用が増えています。学校単位で完結していた部活動の運営ノウハウを地域全体に広げる、いわば統括団体の役割を地域レベルで担う仕事といえます。
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企業が学校・大学スポーツ市場と関わるには|協賛と人材活用の接点
学校・大学スポーツは営利事業ではありませんが、企業が協賛や人材活用を通じて関わる接点は年々広がっています。ここではUNIVASの事例と、大学スポーツ経験者の採用という2つの角度から紹介します。
UNIVASのパートナープログラムに見るスポンサーシップの実際
UNIVASは公式サイト上でGOLD PARTNER・ACADEMIC PARTNER・SILVER PARTNER・OFFICIAL SPONSORという段階別のパートナー制度を公開しています。GOLD PARTNERにはMS&ADインシュアランスグループ、SILVER PARTNERには日本郵政や第一三共ヘルスケア、ベネッセi-キャリア、エイジェックが名を連ね、OFFICIAL SPONSORには花王やタニタ、セコムなど生活・健康関連企業が並んでいます。学生の安全対策や体組成測定セミナーの共催など、単なる広告出稿ではなく学生支援と一体になった協賛が特徴です。
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学生アスリート採用に見る大学スポーツ人材の活用
UNIVASは学業とスポーツを両立する「デュアルキャリアプログラム」を運営し、就職活動セミナーや企業向けの学生紹介の場も提供しています。学生時代に大会運営やチーム運営に関わった経験を持つ人材は、社会人になってからも組織運営力や目標管理力を評価されやすく、企業の新卒採用でも大学スポーツ経験者を意識した採用基準を持つケースが見られます。統括団体の仕組みを理解しておくことは、こうした人材の経験を正しく評価するうえでも役立ちます。
よくある質問
学校・大学スポーツの統括団体について、記事の内容を踏まえてよく聞かれる質問に答えます。
中体連・高体連・UNIVASに加盟するにはどうすればいいですか
中体連・高体連は都道府県ごとの中学校・高等学校体育連盟を通じて、学校単位で加盟する仕組みです。UNIVASは大学・競技団体単位での入会申込制で、公式サイトから申込書類を確認できます。個人の学生が直接申し込む窓口ではなく、所属する学校・大学・競技団体を通じて手続きする点は3団体共通です。
学校・大学スポーツの統括団体で働くにはどんなキャリアがありますか
各団体の職員採用のほか、都道府県連盟の事務局、地域移行のコーディネーター、大学の学生支援部門など複数の入口があります。スポーツ経験だけでなく、大会運営や広報、渉外の実務スキルが求められる点は一般的な組織運営の仕事と共通しています。
企業が学校・大学スポーツにスポンサーとして関わるメリットは何ですか
UNIVASのパートナー制度のように、学生の安全対策や学習支援と結びついた協賛は、単なる広告露出以上に企業の社会的信頼につながりやすい特徴があります。また大学スポーツ経験者との接点を早期に持てることも、採用活動の観点でのメリットです。
まとめ
学校・大学スポーツ業界は、中学は中体連、高校は全国高体連、大学はUNIVASという3つの統括団体が段階ごとにバトンをつなぐ構造を持っています。
- 大学スポーツの統括組織UNIVASは2019年設立と歴史が浅く、中体連・高体連に比べて発展途上の段階にある
- 中学生の運動部加入率は男子64.1%・女子49.8%にとどまり、部活動の地域移行も33.0%の市区町村まで広がっている
- 統括団体の仕事は事務局員だけでなく、地域移行コーディネーターという新しい職種にも広がっている
- 企業はUNIVASのパートナー制度や学生アスリート採用を通じて、学校・大学スポーツと接点を持てる
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