「粘り強さ」「協調性」「自己管理力」といった非認知能力は、採用面接や人事評価で重視されるようになった一方、「どう測るか」が曖昧なまま感覚的に評価している企業も少なくありません。学力テストのように明確な正答があるわけではないため、測定方法そのものへの理解が後回しになりがちです。
この記事では、非認知能力を実際にどう測定するか、代表的な手法とそれぞれが測れる範囲を整理したうえで、採用・人材開発の現場でどう使い分けるかを、人事担当者向けに解説します。
企業が非認知能力を測りたがる理由と人的資本開示との関係
非認知能力への関心が高まっている背景には、人的資本開示の制度化があります。経済産業省・内閣官房・金融庁が公表する「人的資本可視化指針(改訂版)」は、企業が経営戦略と連動した人材戦略を策定し、重要なスキルを持つ人材の確保・育成に向けた投資を行うことを求めています。
スキルという言葉には、資格や語学力のような数値化しやすい認知的スキルだけでなく、粘り強さや協調性のような非認知的な特性も含まれます。人的資本を「見える化」して投資家や求職者に説明する必要が出てきたことで、これまで感覚的に語られてきた非認知能力を、何らかの形で測定・言語化する必要性が高まっているのです。
(参考)人的資本可視化指針(改訂版) – 内閣官房・金融庁・経済産業省
代表的な測定手法とそれぞれが測れる範囲
非認知能力の測定手法は1つではなく、それぞれ測れる範囲や向いている場面が異なります。採用・人材開発の現場でよく使われる代表的な4つの手法を、Human Soarが独自に整理しました。
| 手法 | 測れるもの | 向いている場面 |
|---|---|---|
| グリット・スケール | 目標に対する情熱と粘り強さ(GRIT) | 長期プロジェクトへの適性を見たい採用選考 |
| ビッグファイブ性格検査 | 誠実性・協調性など5つの性格特性 | チーム配置や職種適性の参考 |
| 総合適性検査(SPI3等) | 認知能力と非認知能力を組み合わせたスコア | 大量応募者の一次スクリーニング |
| 構造化面接・行動評価 | 過去の行動から推定される実践的な特性 | 最終選考・昇進評価 |
※GRIT研究(ダックワース氏ら)およびビッグファイブ理論、内閣府経済社会総合研究所の分析等をもとに、Human Soarが代表的な測定手法と用途を独自に整理。
スコア単体では「ミスマッチ」を判断しきれない
内閣府経済社会総合研究所が総合適性検査のデータを用いて行った分析では、雇用者の能力スコアと企業が求める特性との間の「ミスマッチ」が、入社後の上司評価や離職に影響を与えることが示されています。裏を返せば、スコアそのものよりも「自社が求める特性との一致度」を見なければ、測定結果を採用判断に活かせないということです。
複数の手法を組み合わせて精度を補う
グリット・スケールやビッグファイブは自己申告に基づく検査であるため、本人の自己認識のズレや、良く見せようとする回答の影響を受けやすいという限界があります。構造化面接など行動ベースの評価と組み合わせることで、自己申告だけに頼らない精度を確保できます。
(参考)認知能力・非認知能力スコアを用いた人材活用(経済分析第199号) – 内閣府経済社会総合研究所
※前掲の4手法を、Human Soarが人材活用の場面別に独自に整理。
スポーツ経験者の評価に使うときの注意点
アスリート出身者の採用や、社内でのスポーツ経験者の評価では、「体育会系だから粘り強い」といった経験則だけで非認知能力を判断してしまうケースが見られます。しかし前述の測定手法を使わずに印象だけで評価すると、実際の特性とのズレが生じやすくなります。
競技経験は「参考情報」であり測定結果の代わりにはならない
競技経験がGRITや自己管理力の高さを示唆すること自体は、スポーツ心理学の知見とも整合します。ただし競技種目や在籍期間によって身につく特性は異なるため、経験の有無だけで判断せず、測定手法を通じて実際の特性を確認する工程を挟むことが望ましいです。
評価者の主観を測定データで補正する
面接官がスポーツ経験に好印象を持ちやすい場合、無意識のうちに評価が甘くなることがあります。測定手法によるスコアを面接評価と並べて確認することで、評価者の主観による偏りを補正しやすくなります。
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評価結果を育成計画に落とし込む手順
測定は目的ではなく手段です。測定したスコアを個々の育成計画にどう反映するかまで設計して、初めて投資対効果のある取り組みになります。
弱みの補強ではなく強みの配置転換から考える
非認知能力のスコアが低い項目を無理に鍛えようとするより、スコアが高い項目を活かせる業務・役割に配置する方が、短期間で成果につながりやすいというのが実務上の知見です。粘り強さが高いメンバーには長期案件を、協調性が高いメンバーには部門横断のプロジェクトを任せるといった判断がしやすくなります。
エグゼクティブ層の育成にも同じ測定の考え方を使う
非認知能力の測定は新卒・中途採用だけでなく、管理職・経営層の育成計画にも応用できます。経験に基づく思考法を体系的に学ぶ研修と組み合わせることで、測定結果を実際の行動変容につなげやすくなります。
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よくある質問
非認知能力の測定は新卒採用にも使えますか
使えます。むしろ職務経験が少ない新卒採用では、認知能力だけでは見えにくい特性を補う情報として、非認知能力の測定が特に有効に働きます。
測定結果はどのくらいの頻度で見直すべきですか
採用時だけでなく、配置転換や昇進のタイミングなど、人材活用の節目ごとに見直すのが実践的です。非認知能力は経験によって変化しうるため、一度の測定結果を固定的に扱わないことが重要です。
まとめ
- 非認知能力への関心の高まりは、人的資本可視化指針による情報開示の制度化と結びついている
- グリット・スケール、ビッグファイブ、総合適性検査、構造化面接にはそれぞれ測れる範囲と向く場面の違いがある
- スコア単体ではなく「自社が求める特性との一致度」を見なければ、採用判断には活かしにくい
- スポーツ経験者の評価では、経験の有無だけで判断せず測定手法で実際の特性を確認する工程を挟む
- 測定結果は弱みの補強よりも強みを活かす配置転換に使う方が、短期間で成果につながりやすい
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