プロ野球やBリーグ、Jリーグのチームを企業が保有する動きは、単なる広告宣伝やブランドイメージ向上だけを目的にしたものではなくなっています。スポーツ庁と経済産業省は、スポーツ市場規模を2030年までに15兆円に拡大する目標を掲げており、チーム保有やスポンサーシップは、成長産業への投資という側面を強めています。この記事では、フランチャイズ経営が企業価値に与える影響と、投資判断の視点を整理します。
フランチャイズ経営が企業価値に与える影響
日本政策投資銀行(DBJ)が2020年に公表した「スポーツの価値算定モデル調査」では、スポーツチームの価値を「財務価値」「潜在的財務価値」「社会的価値」の3つに分けて可視化する枠組みを提示しています。親会社やスポンサーの情報発信力・ブランド力に加え、地域貢献による社会的価値までを含めて評価する点が特徴です。
この枠組みが示すのは、チーム保有の効果を単年度の広告費対効果だけで測るのは不十分だということです。ブランド価値の蓄積や地域社会との関係構築は、財務諸表に直接表れない「潜在的財務価値」として、中長期の企業価値に影響を与えます。
(参考)スポーツの価値算定モデル調査 – 株式会社日本政策投資銀行
収益構造の特徴
実際に企業がプロスポーツチームを保有した事例を見ると、収益構造への波及の仕方にはいくつかの共通パターンがあります。公表されている情報をもとに、主な企業とチーム保有の目的を整理しました。
| 親会社 | 保有チーム | 主な狙い |
|---|---|---|
| DeNA | 横浜DeNAベイスターズ | 球場を核とした街づくり・IT企業としての認知拡大 |
| 楽天グループ | 東北楽天ゴールデンイーグルス | 地域密着によるブランド浸透・経済圏との連携 |
| ソフトバンク | 福岡ソフトバンクホークス | 通信ブランドの全国的な認知向上 |
※各社の公表情報をもとに、Human Soarが保有目的の傾向を独自に整理。
球場・アリーナを核とした複合開発型
DeNAのように、球場そのものを収益拠点として捉え、周辺エリアの開発と一体で価値を高める手法は、単なる興行収入にとどまらない収益構造を生み出しています。指定管理者制度の活用や球場の通年活用は、スタジアム・アリーナ改革の政策とも連動する動きです。
地域経済圏との連携によるブランド浸透型
楽天のように、自社の経済圏サービス(通販・金融・通信など)とチームのファンベースを結びつける手法は、チーム単体の収益だけでなく、グループ全体の顧客接点拡大につながります。地域に根ざしたチームは、全国区の知名度を持つ企業にとって、特定地域での関係構築を加速させる装置として機能します。
※DBJの3分類(財務価値・潜在的財務価値・社会的価値)を踏まえ、Human Soarが投資判断のチェックポイントとして4指標に独自に整理。
投資事例から見る判断のポイント
スポーツ庁・経済産業省が2025年4月にまとめた「スポーツ未来開拓会議」のとりまとめでは、スタジアム・アリーナを核とした収益モデルの多様化が、今後のスポーツ産業成長の鍵として位置づけられています。企業がチーム保有やスポンサーシップを検討する際は、この政策的な追い風も踏まえた投資判断が可能になっています。
短期の広告効果ではなく中長期のブランド蓄積で評価する
チーム保有やスポンサー契約の効果を、初年度の露出量だけで評価すると、投資判断を誤りやすくなります。DBJの枠組みが示すように、ブランド価値や地域社会との関係は、数年単位で蓄積されて初めて企業価値に反映されるという前提で評価設計をする必要があります。
データ活用による収益多様化の余地を確認する
近年はスタジアム来場者データやファンの行動データを活用し、チーム運営そのものをデータドリブンに高度化する動きも進んでいます。データ活用の巧拙が、今後のチーム保有における収益多様化の余地を左右する要素になりつつあります。
あわせて読みたい2026年スポーツAI分析市場の規模と成長性›
(参考)スポーツ未来開拓会議~今後のスポーツの成長産業化を見据えた、当面の取組等についてのとりまとめ~ – スポーツ庁・経済産業省
よくある質問
中小企業でもスポーツチームとの連携で企業価値向上を狙えますか
チームを保有せずとも、地域のクラブチームへのスポンサーシップという形で、同様の地域ブランディング効果を得ることは可能です。投資規模に応じて、保有・スポンサー・地域イベント協賛など複数の関与レベルを選べます。
チーム保有の効果測定はどのように行うべきですか
広告換算値だけでなく、DBJの枠組みのように財務価値・潜在的財務価値・社会的価値を分けて捉え、複数年にわたる指標(認知度調査、地域内取引の変化など)を組み合わせて評価するのが実務的です。
まとめ
- スポーツ庁・経済産業省は2030年までにスポーツ市場を15兆円へ拡大する目標を掲げ、チーム保有・スポンサーシップを成長分野への投資と位置づけている
- 日本政策投資銀行の枠組みでは、チーム価値を「財務価値」「潜在的財務価値」「社会的価値」に分けて評価する
- 収益構造は「球場を核とした複合開発型」「地域経済圏と連携したブランド浸透型」など、親会社の事業特性によって異なるパターンが見られる
- 効果測定は短期の広告露出量だけでなく、中長期のブランド蓄積を前提に設計する必要がある
- データ活用によるチーム運営の高度化が、今後の収益多様化の余地を左右する
FREE DOCUMENT
関連する資料を無料でダウンロード
ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ
お問い合わせはこちら →




コメント