「バスケットボールとは、一旦お別れです」。伊藤俊亮さんは千葉ジェッツのフロント職を離れ、家族との時間を優先したうえで、フィットネスクラブ経営という形で再びスポーツ業界に戻ってきました。引退後のキャリアに悩む人にとって、遠回りに見える選択が次のミッションにつながった過程は、具体的な参考になります。
「バスケットボールとは、一旦お別れです」伊藤俊亮が下した決断
16シーズンにわたってコートに立ち続けた伊藤俊亮さんは、2018年に千葉ジェッツふなばしでの現役を引退し、同球団のフロントスタッフとして法人営業を担当しました。しかし、この決断から1年後、伊藤さんは再び大きな選択を迫られます。
「選手時代は練習や試合が終わったあとの時間って、子どもたちとも多く過ごせていたんですけれど、会社員になってからそうじゃなくなってしまった」。シングルファーザーとして子育てと仕事の両立に難しさを感じた伊藤さんは、2019年にフロント職を退職し、バスケットボール業界からいったん距離を置く決断をしました。
(参考)トップインタビュー「地域のハブ施設に」 フィットネスクラブブルーゲートヨコハマ 伊藤俊亮 社長 – タウンニュース
家族との時間を優先した伊藤俊亮の価値観
フロント職はやりがいのある仕事でしたが、選手時代以上の忙しさがあったといいます。それでも伊藤さんは、キャリアの勢いを止めてでも家族を優先することを選びました。

実家の稼業である不動産会社を引き継いだのも、この価値観の延長線上にある選択でした。「一旦ご自身の目標を横に置くという選択」という取材者の言葉に、伊藤さんは素直に頷いています。目標を諦めたのではなく、優先順位を一時的に組み替えたという捉え方です。
Q. 伊藤俊亮さんはなぜ千葉ジェッツのフロント職を辞めたのですか?
シングルファーザーとして子どもとの時間を確保するのが難しくなったためです。現役時代より忙しい営業職を約1年続けた後、家族に比重を置く必要があると判断し、実家の不動産会社を引き継ぐ道を選びました。
なぜフィットネスクラブ経営を選んだのか|プロチーム経営との共通点
不動産会社を約2年経営し、子育てが落ち着いてきたタイミングで、伊藤さんは次の挑戦を探し始めます。ここではフィットネスクラブ経営にたどり着いた2つの理由を見ていきます。
①健康寿命への注目が集まるタイミングだった
伊藤さんが次の挑戦を探していた時期は、健康寿命への社会的な関心が高まっていた時期でもありました。日本M&Aセンターの担当者に「面白い案件はないか」と相談する中で紹介されたのが、地元横浜にあるフィットネスクラブ「BLUE GATE(ブルーゲート)」でした。
②「会員とクラブ」の構造はプロスポーツチームと同じという気づき
もともとプロスポーツチームの経営を志していた伊藤さんは、フィットネスクラブのビジネスモデルに気づきを得ます。「法人・個人のお客様がいて、クラブの熱量を高めて、会員さんから愛されるクラブを創っていく。これってプロスポーツチームもフィットネスクラブも全く一緒だな」。この発想の転換が、経営を引き継ぐ決断の後押しになりました。
Q. 伊藤俊亮さんはなぜフィットネスクラブの経営を選んだのですか?
2つの理由があります。1つは健康寿命への注目が高まっていたこと、もう1つは「会員とクラブ」という構造がプロスポーツチームの「ファンとチーム」の関係と同じだと気づいたことです。プロチーム経営を志していた伊藤さんにとって、経験を直接活かせるビジネスモデルでした。
(参考)トップインタビュー「地域のハブ施設に」 フィットネスクラブブルーゲートヨコハマ 伊藤俊亮 社長 – タウンニュース
千葉ジェッツ時代の地域密着ノウハウ vs BLUE GATEでの実践 比較
伊藤さんの強みは、千葉ジェッツのフロント時代に培った地域密着のノウハウを、フィットネスクラブという別の業態でも応用できた点にあります。筆者は2つの現場での取り組みを比較しました。
| 現場 | 対象 | 具体的な取り組み |
|---|---|---|
| 千葉ジェッツ(フロント時代) | 船橋市の住民・企業 | バスケに興味のない企業公式アカウントに向けた選手紹介など、新規層への発信 |
| BLUE GATE(現在) | 日ノ出町の住民・近隣店舗 | SUPクラブや脱毛サロンとの合同体験会、駅前LED看板での地域店舗PR |
筆者が伊藤俊亮さんの取材内容をもとに作成(2026年8月時点)
千葉ジェッツ時代|興味のない層に届ける発信の工夫
伊藤さんは千葉ジェッツ時代、バスケに全く興味のない層に向けて「愛嬌のある選手を紹介する」といった切り口で発信し、企業公式アカウントの来場につなげた経験を語っています。競技そのものへの関心が薄い層をどう引き込むかという視点は、後のBLUE GATE経営にも直結しています。
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BLUE GATE経営|地域密着型クラブとして異業種と組む
BLUE GATEでは、フィットネス以外の目的で来店する動機を作るため、近隣のSUPクラブや脱毛サロンと提携した合同体験会を企画しています。「フィットネス目的で来たのに、SUPできたり脱毛体験できたら絶対面白い」という発想は、単独の施設では届かない客層を取り込む工夫です。
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(参考)トップインタビュー「地域のハブ施設に」 フィットネスクラブブルーゲートヨコハマ 伊藤俊亮 社長 – タウンニュース
伊藤俊亮の「地域のハブ」思考を、企業の地域連携に応用する
伊藤さんの取り組みは、フィットネス業界に限らず、地域に根ざしたビジネスを営む企業全般に応用できます。筆者は「地域のハブ」になるための条件を3つに整理しました。

伊藤さんが強調するのは「地の利がわからない、地域の把握ができない中での運営」から脱するために、自ら現場に立ち、地域の人と顔を合わせることの重要性です。本部主導の遠隔運営では見えない機会を、現場の当事者だからこそ見つけられるという発想です。
Q. 「地域のハブ」を目指す取り組みとして、具体的に何をしていますか?
近隣のSUPクラブや脱毛サロンと提携し、会員向けの合同体験イベントを企画しています。また、駅前ビルにLED看板を設置し、地域の店舗のPRにも活用できるようにするなど、フィットネス以外の接点作りにも力を入れています。
AIを使って、地域連携のアイデアを広げる方法
異業種との連携アイデアを考える際、AIチャットは組み合わせの選択肢を広げる壁打ち相手として活用できます。伊藤さんがSUPクラブや脱毛サロンとの連携を思いついたように、自社の顧客層とは異なる客層を持つ近隣業種を洗い出す作業は、AIが得意とする領域です。
具体的には、自社の主な顧客層と、近隣にありそうな異業種を複数伝え、「両者の顧客が重なりそうな体験・イベント」をアイデアとして出してもらいましょう。出てきた案をそのまま採用するのではなく、実際に地域を歩いて確認する伊藤さんのような現場感覚と組み合わせることが重要です。
Q. AIを使って地域連携のアイデアを広げるには、どうすればいいですか?
自社の顧客層と、近隣で異なる客層を持つ業種をAIに伝え、「両者が組み合わさると生まれる新しい体験」を複数案出してもらうと効果的です。伊藤さんがSUPクラブや脱毛サロンとの連携を思いついたように、異業種との掛け合わせを機械的に洗い出す用途に向いています。
まとめ
- 伊藤俊亮さんは千葉ジェッツのフロント職を1年で退職し、家族との時間を優先して実家の不動産会社を継いだ
- 約2年後、「会員とクラブ」の構造がプロスポーツチームと同じだと気づき、フィットネスクラブ経営に挑戦した
- 千葉ジェッツ時代に培った「興味のない層への発信」ノウハウを、BLUE GATEの異業種連携にも応用している
- 「地域のハブ」になるには、異業種との組み合わせ・現場での当事者性・新しい層への発信入口の3条件が鍵になる
- AIは連携アイデアの選択肢を広げる道具として使い、最終判断は現場感覚と組み合わせるとよい
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