新入社員研修資料の作り方|スポーツ事例で伝わる4フェーズ

新入社員 研修資料の作り方とスポーツ事例の活用を示すアイキャッチ画像 スポーツ研修

新入社員研修の資料は、1枚目に「チームワーク・協調性」を置くと伝わり方が変わります。企業が正社員に最も求める力がこれで58.6%、ところが本人が伸ばしたいと答えた割合は13.2%しかありません。この45.4ポイントの差を埋めるところから組み立てるのが近道です。

研修資料づくりで時間を取られるのは、スライドの見た目ではなく「何を最初に納得してもらうか」の設計です。ここが決まらないまま作り始めると、情報は正しいのに刺さらない資料になります。以下では、公的統計で主張を固めてから、スポーツの場面を使って具体化するまでの手順を追っていきます。

新入社員研修資料は企業が最も求める力から書き始める

新入社員研修の資料は、チームワーク・協調性を最初の主張に据えると構成が決まります。企業が最も重要と考える能力の1位がこれであり、しかも働き手本人の優先順位とは大きくずれているからです。厚生労働省の令和6年度「能力開発基本調査」は、企業に聞いた設問と働き手本人に聞いた設問で同じ能力名を使っています。この2つを突き合わせると、研修資料が埋めるべき溝がそのまま数字で見えてきます。

能力・スキル 企業が最重要とする割合 本人が自信ありとする割合 本人が伸ばしたいとする割合
チームワーク、協調性・周囲との協働力 58.6% 52.5% 13.2%
職種に特有の実践的スキル 36.9% 24.3% 17.6%
コミュニケーション能力・説得力 34.6% 28.9% 26.8%
課題解決スキル(分析・思考・創造力等) 31.5% 20.0% 34.1%
マネジメント能力・リーダーシップ 29.4% 13.7% 40.3%
語学(外国語)力 1.9% 2.3% 24.3%

出典:厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」の企業調査(最も重要と考える能力・スキル)と個人調査(自信のある能力・スキル/向上させたい能力・スキル)を、Human Soarが同じ能力名で突き合わせて作成。企業調査の対象は7,454企業(有効回答率57.2%)、個人調査は21,334人(同42.2%)。いずれも複数回答(3つまで)で、企業の値は管理職を除く50歳未満の正社員、本人の値は正社員について聞いたものです。

チームワークを最重要とする企業は58.6%で2位以下を大きく引き離す

企業が「発展にとって最も重要」と考える能力を3つまで挙げてもらうと、50歳未満の正社員では「チームワーク、協調性・周囲との協働力」が58.6%で1位でした。2位の「職種に特有の実践的スキル」は36.9%ですから、21.7ポイントの開きがあります。

この数字は、新入社員研修の資料で真っ先に扱うべきテーマが何かを教えてくれます。専門知識やITスキルの説明を先に置きたくなりますが、企業側の期待はそこに集中していません。

本人が伸ばしたい力の上位にチームワークは入っていない

同じ調査の個人調査で、正社員に「向上させたい能力・スキル」を聞くと、チームワーク・協調性は13.2%にとどまります。企業側の58.6%との差は45.4ポイントです。自信があるかどうかを聞いた設問では52.5%が自信ありと答えているので、多くの人はすでに足りていると感じていて、伸ばす対象として意識していないことになります。

ここが研修資料の出発点です。「協調性は大事です」と書いても、受け手はすでに持っているつもりでいます。企業が何をもってチームワークと呼んでいるのかを具体的に示さないと、資料は素通りします。

マネジメント力は逆に本人のほうが10.9ポイント高い

反対の向きにずれている項目もあります。マネジメント能力・リーダーシップは企業が29.4%なのに対し、本人が伸ばしたいと答えた割合は40.3%でした。本人のほうが10.9ポイント高い数字です。語学力にいたっては企業1.9%に対して本人24.3%と、10倍以上の差がつきます。

新入社員研修の資料でマネジメントや語学の話に紙幅を割くと、受講者の関心には合っても会社が求めている中身からは離れます。伸ばしたい気持ちがある分野は自己啓発の支援に回し、資料の中心は会社側の期待が集まる場所に置くほうが、限られた時間を有効に使えます。

あわせて読みたい人的資本投資とは?スポーツを活かした事例と効果を出す戦略›

Q. 新入社員研修の資料は何から作り始めればよいですか?

最初に決めるのは「1枚目に置く主張」です。厚生労働省の令和6年度能力開発基本調査では、企業が正社員に最も求める能力はチームワーク・協調性で58.6%でした。この力を資料の結論として先に宣言し、残りのページをその裏づけに充てると、構成が短時間で固まります。

(参考)令和6年度「能力開発基本調査」の結果を公表します – 厚生労働省

(参考)令和6年度「能力開発基本調査」調査結果の概要 – 厚生労働省

研修資料に載せる数字は公的統計から取る

資料の説得力は、数字の出どころを言えるかどうかで決まります。新入社員研修まわりの数字は厚生労働省の能力開発基本調査にほぼそろっているので、ここから引くのが早道です。同じ調査の事業所調査を読むと、新入社員向けの研修が日本の企業でどれくらい当たり前になっているかも分かります。研修の必要性を社内で説明する場面でも、そのまま使える数字です。

OFF-JTを実施した事業所は73.8%で対象は新入社員が最多

正社員または正社員以外にOFF-JTを実施した事業所は73.8%でした。実施した対象を職層別に見ると、新入社員が59.8%で最も高く、中堅社員57.1%、管理職層51.0%と続きます。

さらに、実施したOFF-JTの内容としては「新規採用者など初任層を対象とする研修」が75.4%で最多でした。2位の「新たに中堅社員となった者を対象とする研修」は47.5%ですから、企業の教育投資が新入社員に集中している様子がはっきり読み取れます。

計画的なOJTも新入社員が54.7%で最も高い

座学だけでなく、現場での計画的なOJTでも同じ傾向が出ています。正社員に計画的なOJTを実施した事業所は61.1%で、職層別では新入社員が54.7%、中堅社員37.5%、管理職層24.8%でした。

研修資料を作るときは、この「座学と現場の両方が新入社員に集中している」という前提を頭に入れておくと配分を決めやすくなります。資料ですべてを教え切ろうとせず、現場のOJTに引き継ぐ部分を明示しておくと、受け入れ側の負担も軽くなります。

研修を自社でまかなう事業所は75.2%に達する

OFF-JTの教育訓練機関として、正社員向けに「自社」を挙げた事業所は75.2%で最多でした。次いで民間教育訓練機関が42.0%、親会社・グループ会社が25.7%と続きます。

つまり研修資料は外部から買うものではなく、社内の誰かが作っているケースが圧倒的に多いということです。作り方の型を社内に残しておく価値はここにあります。スポーツ研修で新入社員を育成する方法のように外部プログラムを組み合わせる場合でも、目的の言語化までを自社で済ませておくと打ち合わせが早く終わります。

Q. 新入社員研修を実施している事業所はどれくらいありますか?

厚生労働省の令和6年度能力開発基本調査では、OFF-JTを実施した事業所は73.8%でした。対象を職層別に見ると新入社員が59.8%で最も高く、中堅社員57.1%、管理職層51.0%と続きます。新入社員向けの研修は、いま最も広く行われている研修です。

(参考)令和6年度「能力開発基本調査」調査結果の概要 – 厚生労働省

スポーツの現場が研修資料の素材として使いやすい理由

チームワークや役割分担は、言葉で説明すると抽象的になりがちです。スポーツの場面に置き換えると、同じ話が目に見える動きとして伝わります。国も働く世代のスポーツ実施を後押ししていて、スポーツ庁は従業員のスポーツ活動に積極的な団体を「スポーツエールカンパニー」として認定しています。社内で題材にすることへの心理的なハードルは、以前より下がっています。

スポーツエールカンパニーは2026年認定で1,635団体に達した

スポーツ庁が2026年1月30日に公表した「スポーツエールカンパニー2026」では、過去最多の1,635団体が認定されました。通算5回以上の認定を受けるシルバー・ブロンズ認定の団体が500団体を超え、従業員のスポーツ実施率が70%以上の「+(プラス)認定」も過去最多になっています。

この年からは大学も認定対象に加わり、大阪大学と芝浦工業大学の2校が認定されました。国の機関としてはスポーツ庁自身が初めて認定を取得しています。研修資料でスポーツを扱う根拠として、こうした制度の存在は説明しやすい材料になります。

競技の役割分担は職場の分担にそのまま翻訳できる

チーム競技では、点を取る人と守る人、つなぐ人の役割がはっきり分かれています。誰か1人が全部やろうとすると、かえってチームは弱くなります。この構造は、配属先での仕事の分担とほぼ同じ形をしています。

新入社員が最初につまずくのは「自分の役割がどこまでか分からない」という点です。競技の場面を挟むと、役割を狭く決めることが手抜きではなく戦術だと伝わりやすくなります。

勝敗という共通のものさしが議論を短くする

スポーツには勝敗という、誰の目にも同じ結果が残ります。だから「何がよかったか」の議論が具体的になり、振り返りが短い時間で終わります。職場の振り返りが長引くのは、成果のものさしが人によって違うからです。

研修資料でスポーツの振り返り場面を見せておくと、配属後の1on1で「今週の目標は何だったか」を最初に確認する習慣が定着しやすくなります。

あわせて読みたいスポーツ体験で新入社員研修を変える|主体性・協働力の早期育成›

(参考)「スポーツエールカンパニー2026」過去最多の1,635団体を認定 – スポーツ庁

(参考)スポーツエールカンパニー – スポーツ庁

4つのフェーズで新入社員研修資料を組み立てる

素材がそろったら、次の4つのフェーズを順番になぞると資料の骨格が固まります。順番を入れ替えると、データは載っているのに行動につながらない資料になりやすいので、そのまま進めるのがおすすめです。ここでは各フェーズで具体的に何を書くのかを見ていきます。

新入社員 研修資料をスポーツ事例で組み立てる4つのフェーズを示した図解

フェーズ① 目的を1枚目に置く

1枚目には「この研修で身につけてほしい力は何か」を1文で書きます。ここで使うのが、企業が最も重視する力であるチームワーク・協調性の58.6%という数字です。

注意したいのは、目的を精神論で書かないことです。「協調性を身につけよう」ではなく「配属先で自分の役割を自分で言えるようになる」のように、達成したかどうかを本人が判断できる言い方に直しておきます。

フェーズ② 公的データで裏づける

主張のすぐ後ろに、出どころを言える数字を置きます。1枚に1つのデータだけを載せ、そのページで言いたいことを見出しに書くのが基本です。

数字は多ければよいものではありません。新入社員向けOFF-JTの実施率59.8%のように、受講者が「自分だけの話ではない」と分かる数字を2〜3個選べば十分です。出典はページの下に小さく入れておくと、後から社内で使い回すときに確認の手間が省けます。

フェーズ③ スポーツ事例で翻訳する

データで示した抽象的な話を、競技の場面に置き換えます。役割分担、声かけ、試合後の振り返りといった具体的な動きを1つずつ取り上げ、それが職場のどの場面に当たるかを並べて書きます。

ここで大事なのは、競技名や選手名を主役にしないことです。あくまで動きの構造を借りているだけなので、スポーツに詳しくない受講者が置いていかれない書き方にします。企業向けスポーツ研修プログラムの設計方法で扱う目的別の組み立て方も、この翻訳の精度を上げるときに役立ちます。

フェーズ④ 初週の行動に落とす

最後のページには、配属初週にやることを3つだけ書きます。数を絞るのは、研修直後に覚えていられる量に限りがあるからです。

「毎朝、今日の担当範囲を口に出して確認する」「1日の終わりに困ったことを1つメモする」のように、翌日から実行できる粒度まで下げます。ここまで落として初めて、資料は読み物から道具に変わります。

Q. 研修資料にスポーツの事例を入れると軽く見られませんか?

事例を置く位置を決めておけば、その心配は小さくなります。1枚目には公的統計にもとづく主張を置き、スポーツの場面は主張を具体化する3番目のフェーズで使う順番が安全です。逆に事例から始めると、根拠の弱い精神論に見えやすくなります。

資料を作る前に知っておきたい現場のつまずき

資料の出来がよくても、運用でつまずくことがあります。厚生労働省の調査では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所は79.9%にのぼりました。何に詰まっているのかが先に分かっていれば、資料の側であらかじめ手を打てます。回答の上位3つを順に見ていきます。

指導する人材が不足している(59.5%)

最も多かった問題は「指導する人材が不足している」で59.5%でした。受け入れ側に教える余力がない状態で新入社員を配属すると、研修で学んだことがそのまま置き去りになります。

資料の側でできるのは、受講者本人が自分で確認できるチェック項目を入れておくことです。指導役がそばにいなくても本人が進み具合を測れる形にしておくと、現場の負担が減ります。

人材を育成しても辞めてしまう(54.7%)

次に多いのが「人材を育成しても辞めてしまう」で54.7%です。早期離職は研修の中身だけで防げるものではありませんが、入社直後に「この会社が自分に何を期待しているか」が伝わっているかどうかは効いてきます。

期待を数字と具体行動で示す資料は、そのまま期待値のすり合わせの道具になります。アスリート思考をビジネスに活かす研修で扱う目標設定と振り返りの型は、配属後の面談にも流用できます。

人材育成を行う時間がない(47.4%)

3つ目は「人材育成を行う時間がない」で47.4%でした。研修の時間そのものを増やすのは現実的でないことが多いので、資料の密度を上げるほうに投資します。

具体的には、説明を読み上げるだけのページを削り、受講者が手を動かすページを残します。ページ数を減らすことは、内容を減らすことと同じではありません。

Q. 新入社員研修の資料は社内で作るべきですか?

自社で作る事業所が多数派です。厚生労働省の令和6年度能力開発基本調査では、正社員向けOFF-JTの教育訓練機関として「自社」を挙げた事業所が75.2%で最多、民間教育訓練機関は42.0%でした。骨格は社内で作り、専門性が要る部分だけ外部に頼む形が現実的です。

(参考)令和6年度「能力開発基本調査」調査結果の概要 – 厚生労働省

まとめ|主張・根拠・翻訳・行動の順で資料を組む

新入社員研修の資料は、作る順番を決めてしまえば短時間で形になります。最後に要点を振り返ります。

  • 企業が正社員に最も求める力はチームワーク・協調性で58.6%。本人が伸ばしたいと答えた13.2%との差は45.4ポイントある
  • OFF-JTを実施した事業所は73.8%、対象は新入社員が59.8%で最多。教育投資は初任層に集中している
  • 研修を自社でまかなう事業所は75.2%。資料の作り方の型を社内に残す価値は大きい
  • スポーツ庁のスポーツエールカンパニーは2026年認定で1,635団体。スポーツを題材にする土台はできている
  • 目的を1枚目に置く、公的データで裏づける、スポーツ事例で翻訳する、初週の行動に落とす、の4フェーズで組み立てる

ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ

お問い合わせはこちら →
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました