変化の激しい事業環境で、従来型のトップダウン式リーダーシップだけでは組織がうまく機能しないと感じている管理職・組織開発担当者は多いのではないでしょうか。
この記事では、状況に応じて対応を変える「アダプティブリーダーシップ」の基本概念を、スポーツ現場の実践例を交えながら紹介し、企業組織への応用ステップまでを解説します。
アダプティブリーダーシップの基本概念
アダプティブリーダーシップとは、決まった正解のない複雑な課題に対して、状況を見極めながらチームとともに解決策を模索していくリーダーシップのスタイルです。従来の「技術的問題(既知の手順で解決できる課題)」への対応とは異なり、「適応課題(価値観や行動変容が必要な課題)」に向き合う際に特に有効とされています。
リーダーが一方的に答えを示すのではなく、チームメンバー自身が課題に向き合い、学習しながら変化していくプロセスを支援する点が特徴です。そのため、リーダーには権威に頼らず対話を重視する姿勢が求められます。
この考え方は、ハーバード大学のロナルド・ハイフェッツらが提唱したリーダーシップ理論として知られ、変化の激しい業界に身を置く組織ほど有効性が高いとされています。スポーツの現場は、まさに毎試合ごとに状況が変わる典型的な環境といえます。
スポーツ現場に見る実践例
スポーツの現場は、アダプティブリーダーシップの考え方が色濃く表れる場面の一つです。ここでは3つの観点から実践例を紹介します。
①試合中の状況判断とキャプテンシー
試合展開が刻一刻と変わるなかで、監督の指示を待つだけでなく、キャプテンやリーダー的な選手が状況を判断してチームを動かす場面は多くのスポーツで見られます。決まった正解がない状況下で、チーム自身が考えて動く力を育てることは、アダプティブリーダーシップの実践そのものといえます。
②世代交代期のチームマネジメント
主力選手の世代交代期には、これまで機能していた戦術やチーム文化が通用しなくなることがあります。こうした局面では、監督やコーチが一方的に新しいやり方を押し付けるのではなく、選手たちと対話しながら新しいチーム文化を作り上げていくプロセスが求められます。
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③具体例:低迷期からの立て直しに見るリーダーシップ
あるスポーツチームでは、成績低迷期に監督が選手個々との対話の機会を増やし、戦術面だけでなくチームの目標設定そのものを選手主体で見直すプロセスを取り入れました。結果として、選手の当事者意識が高まり、チーム全体のパフォーマンス向上につながったといわれています。
このように、リーダーが答えを与えるのではなく、チームとともに課題を再定義していくプロセスは、企業組織における変革期のマネジメントにも通じるものがあります。
企業組織への応用ステップ
スポーツ現場の実践例を踏まえ、企業組織でアダプティブリーダーシップを取り入れる際の応用ステップを紹介します。
①技術的問題と適応課題を切り分ける
まず、直面している課題が「既存の手順で解決できる技術的問題」なのか、「価値観や行動変容が必要な適応課題」なのかを見極めることが出発点になります。適応課題に技術的な解決策だけを当てはめても、根本的な解決にはつながりにくいためです。
例えば「離職率が高い」という課題に対して、単に制度を新設するだけで終わらせるのではなく、なぜ社員が定着しないのかという価値観・行動レベルの背景まで掘り下げる視点が求められます。
②心理的安全性のある対話の場を作る
適応課題に向き合うには、メンバーが安心して意見を言える環境が欠かせません。厚生労働省の令和5年労働安全衛生調査では、仕事や職業生活に強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者の割合が8割を超えるという結果が出ており、対話しやすい職場環境の整備は多くの組織にとって共通の課題といえます。
(参考)令和5年 労働安全衛生調査(実態調査) – 厚生労働省
③小さな実験を繰り返しながら進める
適応課題への対応は、一度の施策で完結するものではありません。小さな取り組みを試し、チームの反応を見ながら軌道修正していく姿勢が、スポーツチームの試合中の状況判断にも通じるアダプティブリーダーシップの実践といえます。
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すぐ使えるアクションプラン:管理職が明日から試せる3ステップ
アダプティブリーダーシップを日常のマネジメントに取り入れるための、明日から実践できる3ステップを紹介します。
まとめ
- アダプティブリーダーシップは、正解のない適応課題に対してチームとともに解決策を模索するスタイル
- スポーツ現場のキャプテンシーや世代交代期のマネジメントに実践例が多く見られる
- 企業組織への応用は、課題の切り分けと心理的安全性のある対話の場づくりが出発点になる
- 小さな実験を繰り返しながら進める姿勢が定着のカギを握る
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