スポーツメディア企業の生存戦略|149万部時代の転換点

スポーツメディア企業の生存戦略|新聞・雑誌業界の収益構造 スポーツマーケティング

朝刊のスポーツ面を開くと、見開きいっぱいに大谷翔平や高校野球の記事が並んでいる。ページをめくる手が止まらない読者がいる一方で、この一部を含む発行部数そのものは、静かに、しかし確実に減り続けている。

2025年10月時点で、日本新聞協会に加盟するスポーツ紙13紙の発行部数は149万4416部。前年からさらに10.9%減り、紙媒体が主戦場だった時代は明らかに転換点を迎えている。

それでも、スポーツニッポン新聞社や株式会社文藝春秋のようなスポーツメディア企業は消えていない。むしろ事業のかたちを変えながら、読者との接点を作り直している。本記事では、実在する主要3社の取り組みを軸に、スポーツメディア業界の構造と、企業がこの業界と付き合ううえで押さえておきたい実務のポイントを整理する。

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  1. スポーツメディア業界とは|発行部数149万部時代が示す構造転換
    1. 2023年191万部|紙媒体がまだ主戦場だった時代
    2. 2024年167万部|過去最大12.4%減で見えた潮目
    3. 2025年149万部|減少率は鈍化も反転の兆しなし
  2. 主要3社の比較にみるスポーツメディア企業の実像
    1. スポーツニッポン新聞社|「愉しさ製造業」への転換
    2. 株式会社文藝春秋|Number誌が体現する専門特化戦略
    3. 株式会社デイリースポーツ|地域密着で読者との距離を縮める
  3. スポーツメディア企業を支える3つの収益源|紙・広告・派生事業
    1. 購読料・部数収入|縮小しても消えない基盤
    2. 広告収入|紙とデジタルの二正面展開
    3. 派生事業|本業の外に置いた収益の芽
  4. 企業がスポーツメディアと組む活用ステップ
    1. 媒体特性の見極め|商圏とターゲット層を照らし合わせる
    2. 連携形態の選定|広告出稿だけが選択肢ではない
    3. 効果測定の設計|掲載後ではなく掲載前に決める
  5. スポーツメディアと連携する企業が押さえておきたい注意点
    1. 一媒体依存を避ける|複数メディアへの分散
    2. 編集独立性を尊重する|スポンサードとPRの線引き
    3. 予算規模に応じた媒体選びをする|全国紙だけが正解ではない
  6. よくある質問
    1. スポーツメディア企業への広告出稿は中小企業でも可能ですか
    2. 紙媒体の発行部数が減っても広告効果はあるのでしょうか
    3. スポーツメディアとタイアップする際の費用相場はどれくらいですか
  7. まとめ

スポーツメディア業界とは|発行部数149万部時代が示す構造転換

スポーツメディア業界とは、スポーツニュース・専門情報を主に扱う新聞社、出版社、放送局、Webメディアなどの総称である。本記事では特に、新聞・雑誌という紙媒体を出自に持つ企業に焦点を当てる。

この業界の規模感を最もシンプルに示すのが、日本新聞協会が毎年10月に公表している発行部数調査だ。加盟104紙のうちスポーツ紙は13紙あり、その合計部数は年々目に見えて減っている。

調査年(10月時点) スポーツ紙13紙 合計発行部数 前年比 1紙あたり平均部数
2023年 191万6,357部 約14.7万部
2024年 167万7,822部 -12.4% 約12.9万部
2025年 149万4,416部 -10.9% 約11.5万部

日本新聞協会「新聞の発行部数と普及度」の公表値をもとに、Human Soarが2年間の推移と1紙あたり平均部数を算出(2023年10月〜2025年10月)。

2023年191万部|紙媒体がまだ主戦場だった時代

2023年10月時点でスポーツ紙13紙の合計は191万6,357部あった。1紙あたりに均すと約14.7万部で、駅売りやコンビニ販売を含めた紙の流通網がまだ機能していた時期にあたる。

この年はスポーツ紙全体の減少率が10.9%で、一般紙(7.0%減)より落ち込みが大きかった。速報性という紙媒体最大の強みが、スマートフォンのニュースアプリに奪われ始めていたことがうかがえる。

2024年167万部|過去最大12.4%減で見えた潮目

2024年10月時点の合計は167万7,822部で、前年から23万8,535部減った。減少率12.4%は、それまでの調査でも最大級の落ち込みだった。

1紙あたり平均部数も約12.9万部まで下がり、紙面制作コストを支える購読料収入が縮小局面に入ったことを示している。この年を境に、各社は本業の紙媒体以外の収益源を本格的に模索し始めている。

2025年149万部|減少率は鈍化も反転の兆しなし

2025年10月時点の合計は149万4,416部。前年比10.9%減で、2024年の12.4%減からは若干鈍化したものの、依然として二桁の減少が続いている。

2023年からの2年間で見ると、合計部数は約22.0%減った計算になる。5年前後で紙媒体の規模が5分の4になるペースであり、各社にとって紙媒体だけに依存しない事業モデルへの転換は選択肢ではなく必須の課題になっている。

(参考)総発行部数6.6%減 2486万8122部 2025年10月調べ – 日本新聞協会

主要3社の比較にみるスポーツメディア企業の実像

紙媒体の縮小が続く中で、実際のスポーツメディア企業はどのような事業を展開しているのか。ここでは、各社公式サイトで確認できる情報をもとに、スポーツニッポン新聞社・株式会社文藝春秋・株式会社デイリースポーツの3社を比較する。

企業名 創業・創刊 主な媒体 規模
スポーツニッポン新聞社 1949年2月創刊 スポーツニッポン/Sponichi Annex 従業員614名(2026年2月現在)
株式会社文藝春秋 1923年創業/Number誌1980年創刊 Sports Graphic Number/Number Web 社員351名(2023年7月時点)
株式会社デイリースポーツ 1948年8月創刊 デイリースポーツ(神戸新聞社グループ) 従業員206名(2018年4月時点)

各社公式サイトの会社概要ページをもとにHuman Soarが作成(2026年8月時点で確認できる最新情報)。

スポーツニッポン新聞社|「愉しさ製造業」への転換

スポーツニッポン新聞社は1949年2月、大阪で「スポーツニッポン」を創刊した。現在は毎日新聞グループホールディングス傘下の事業会社で、紙媒体に加えてWeb版「Sponichi Annex」を運営している。

同社は創刊75年を迎えた2024年2月に「4つの誓い」を打ち出し、「あなたの楽しいをもっと愉しく」というミッションのもと、自らを「愉しさ製造業」と位置づけた。新聞発行という枠を超え、スポーツ・エンターテインメントに関わるサービス事業全般へ軸足を広げる意思表示と読める。

あわせて読みたいスポーツコンテンツマーケティング入門|ファンを顧客に

(参考)代表挨拶 – スポーツニッポン新聞社

株式会社文藝春秋|Number誌が体現する専門特化戦略

株式会社文藝春秋は大正12年(1923年)、作家・菊池寛が雑誌「文藝春秋」を創刊したことに始まる出版社だ。「週刊文春」「CREA」など幅広いジャンルを手がける一方、スポーツ分野では昭和55年(1980年)に「Sports Graphic Number」を創刊している。

資本金1億4,400万円、社員351名(2023年7月時点)という体制で、Number誌はスポーツ専門誌として45年以上の実績を積み重ねてきた。ジャンルを絞り込み、読み応えのある長文コンテンツで読者との関係を維持する戦略は、幅広いテーマを扱う新聞社とは異なるポジションを示している。

(参考)企業情報 – 株式会社文藝春秋

株式会社デイリースポーツ|地域密着で読者との距離を縮める

株式会社デイリースポーツは1948年8月、神戸で創刊されたスポーツ紙で、現在は神戸新聞社グループの一員として発行を続けている。本社を神戸に置きながら、東京・大阪・広島・高松に事業所を構える体制だ。

従業員206名(2018年4月時点)、資本金1000万円という規模は、スポニチや文藝春秋と比べて小さい。だが、地域の新聞社グループの一員として地元球団やイベントとの距離が近く、全国紙とは違う切り口の取材網を持てる点が強みになっている。

(参考)会社概要 – 株式会社デイリースポーツ

スポーツメディア企業を支える3つの収益源|紙・広告・派生事業

3社の会社概要を見比べると、いずれも紙媒体の発行だけに頼らず、複数の収益源を組み合わせていることがわかる。Human Soarでは、公開情報から読み取れる収益構造を次の3つの軸に整理した。

①購読料・部数収入紙媒体の販売・購読料。縮小基調だが、依然として固定読者層からの安定収入源
②広告収入紙面広告に加え、Sponichi AnnexやNumber Webなどデジタル媒体の広告枠
③派生事業書籍・ムック等の関連出版物、イベント主催、デジタル会員サービスなど本業から派生した事業

購読料・部数収入|縮小しても消えない基盤

発行部数は減っているものの、購読料収入は各社にとって今も編集体制を支える基盤である。スポーツニッポン新聞社のように東京・大阪の体制を維持できているのは、この基盤収入があってこそだ。

広告収入|紙とデジタルの二正面展開

広告収入は紙面広告とデジタル広告の両方にまたがる。文藝春秋の「Number Web」やスポーツニッポン新聞社の「Sponichi Annex」のように、紙媒体で培ったブランドをそのままデジタル広告の集客力に転用している点が共通している。

派生事業|本業の外に置いた収益の芽

書籍化やイベント主催といった派生事業は、紙媒体の発行部数に左右されにくい収益の芽になる。文藝春秋が単行本・文庫・電子書籍まで事業を広げているのは、この派生事業を長年育ててきた結果といえる。

企業がスポーツメディアと組む活用ステップ

ここまで見てきたスポーツメディア企業は、報道機関であると同時に、企業にとってはスポンサー先・広告出稿先にもなり得る存在だ。実際に連携を検討する場合、どのような順番で動けばよいのか整理する。

1媒体特性の見極め:全国紙か地域紙か、専門誌かデジタル中心か。自社の商圏・ターゲット層と重なる媒体を選ぶ
2連携形態の選定:純広告出稿、タイアップ記事、イベント協賛など、目的に応じて形式を選ぶ
3効果測定の設計:掲載後の想起率・送客数・応募数など、事前に測る指標を決めておく

媒体特性の見極め|商圏とターゲット層を照らし合わせる

全国紙のスポーツニッポン新聞社と、地域密着のデイリースポーツでは読者の分布がまったく異なる。自社の商圏が全国か特定地域かによって、適した媒体は変わってくる。

連携形態の選定|広告出稿だけが選択肢ではない

純広告のほか、記事タイアップ、イベント協賛、採用広報での露出など、連携の形は複数ある。予算規模と目的に応じて、単発の広告出稿ではなく複数の形式を組み合わせる企業も増えている。

効果測定の設計|掲載後ではなく掲載前に決める

効果測定の指標は、掲載が終わってから考えるのでは遅い。想起率・自社サイトへの送客数・採用応募数など、目的に沿った指標を掲載前に決めておくことで、次回の連携判断に使えるデータが残る。

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スポーツメディアと連携する企業が押さえておきたい注意点

スポーツメディア企業との連携は効果的な一方、進め方を誤ると期待した成果につながらないこともある。ここでは3つの注意点を挙げる。

一媒体依存を避ける|複数メディアへの分散

1つの媒体だけに広告予算や露出を集中させると、その媒体の部数減少や方針転換の影響を直接受けてしまう。全国紙・専門誌・デジタルメディアなど、性格の異なる複数の媒体に分散しておくと、リスクを抑えやすい。

編集独立性を尊重する|スポンサードとPRの線引き

報道機関としての性格を持つスポーツメディアでは、広告主の意向がそのまま記事内容に反映されるわけではない。タイアップ記事であることを明示するなど、編集と広告の線引きを尊重した進め方が、読者からの信頼を損なわないために欠かせない。

予算規模に応じた媒体選びをする|全国紙だけが正解ではない

知名度の高い全国紙への出稿は目立つが、予算規模によっては地域密着のデイリースポーツのような媒体の方が費用対効果が高い場合もある。自社の商圏と予算に見合った媒体を選ぶことが、遠回りに見えて近道になる。

よくある質問

スポーツメディア企業への広告出稿は中小企業でも可能ですか

可能です。全国紙への出稿はハードルが高くても、地域密着型のスポーツ紙や専門誌のデジタル版であれば、比較的小さな予算から出稿できる枠が用意されていることが多いです。まずは各社の広告営業窓口に相談し、想定予算と目的を伝えることから始めるとよいでしょう。

紙媒体の発行部数が減っても広告効果はあるのでしょうか

紙面単体の効果は縮小傾向にありますが、各社ともWeb版・SNSアカウントを併用しており、紙とデジタルを組み合わせた露出設計が一般的になっています。出稿を検討する際は、紙面だけでなくデジタル面での配信・掲載期間も含めて確認するとよいでしょう。

スポーツメディアとタイアップする際の費用相場はどれくらいですか

媒体の規模や連携形態(純広告・タイアップ記事・イベント協賛)によって幅が大きいため、一律の相場を示すことは困難です。複数社から見積もりを取り、自社の目的(認知拡大・採用広報・送客など)に対する費用対効果で比較検討することをおすすめします。

まとめ

スポーツメディア業界は、紙媒体の発行部数が2年間で約22%減るという厳しい状況の中にある。それでも、スポーツニッポン新聞社・株式会社文藝春秋・株式会社デイリースポーツの3社は、それぞれ異なる戦略で読者との接点を維持し続けている。

  • スポーツ紙13紙の発行部数は2025年10月時点で149万4,416部。2023年から2年間で約22%減少している
  • 各社は購読料収入・広告収入・派生事業という3つの収益源を組み合わせて事業を継続している
  • 企業がスポーツメディアと連携する際は、媒体特性の見極め→連携形態の選定→効果測定の設計、という順で検討するとよい
  • 一媒体依存を避け、編集独立性を尊重し、予算規模に応じた媒体選びをすることが、連携を成功させるポイントになる

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

Human Soar では、スポーツビジネス/ウェルビーイング/研修/教育の4領域を中心に、公的統計や一次データにもとづく記事と調査レポートを執筆・監修しています(記事935本、資料7本/2026年8月時点)。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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