アスリートの個別化スポーツ栄養|食事プラン設計ガイド

アスリートの個別化スポーツ栄養・食事プラン設計のイメージ スポーツ栄養学

「同じ練習メニューをこなしているのに、選手によって疲労の抜け方がまるで違う」。栄養サポートに関わる担当者なら、一度は感じたことがあるはずです。体格・競技特性・トレーニング内容が異なる選手に、画一的な食事指導をしても効果は限定的です。

この記事では、アスリート本人や栄養サポート担当者が、個別化されたスポーツ栄養の食事プランをどう設計すればよいかを、スポーツ庁の一次情報をもとに具体的な手順として整理します。

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個別化栄養が注目される理由

スポーツ栄養の基本は、主食・主菜・副菜・乳製品・果物をそろえたバランスの良い食事です。しかし「どの時期に」「どの栄養素を」「どのタイミングで」「どれだけ摂るか」は、競技や体格、トレーニング内容によって大きく異なります。一般的には1日のエネルギーの50〜70%を炭水化物から摂るのが目安とされますが、この目安をそのまま全選手に当てはめると、体格の小さい選手では過剰に、大きい選手では不足するといったズレが生じます。

スポーツ庁のハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)では、公認スポーツ栄養士による個別栄養相談の診療事業が行われており、選手のライフステージを通じて本人と家族の健康管理に携わる体制が整えられています。専門職による個別対応が、トップレベルの現場ではすでに標準になりつつあります。

(参考)食事で「ささえる」公認スポーツ栄養士とは? – スポーツ庁 Web広報マガジン

食事プラン設計のポイント|練習フェーズ別に考える

個別化といっても、ゼロから設計するのではなく、まず「練習フェーズ」という軸で大枠を決めてから、個人差を調整していくのが実務的な進め方です。フェーズごとに重視すべき栄養素とエネルギー配分の目安を整理すると、以下のようになります。

練習フェーズ エネルギー配分の考え方 重点栄養素
オフシーズン 総摂取量をやや抑え体組成を整える たんぱく質・ビタミンD
走り込み・強化期 炭水化物比率を高め練習負荷に対応 炭水化物・鉄・カルシウム
試合期 試合当日に合わせグリコーゲンを最大化 炭水化物・電解質・水分

Human Soarが練習フェーズ別の栄養設計の考え方を整理した表

この表はあくまで大枠の目安であり、個人の体格・発汗量・消化吸収の特性によって最適解は変わります。表をベースに、次章の3ステップで個人ごとの調整を行っていきます。

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個人ごとの調整|3ステップで食事プランに落とし込む

フェーズ別の大枠が決まったら、次は選手一人ひとりの状態に合わせて調整します。Human Soarでは、この調整作業を次の3ステップに整理しています。

1コンディションの把握:体重・体組成の変化、疲労感、睡眠の質を定期的に記録する
2目標設定:フェーズ別の大枠をベースに、増量・減量・現状維持のどれを目指すか明確にする
3メニューへの落とし込み:実際に用意できる食材・調理環境を踏まえた具体的な献立に変換する

コンディションの把握|数値と主観の両方を記録する

体重や体組成のような数値データだけでなく、「食欲がない」「胃もたれしやすい」といった主観的な体調も記録に残します。数値だけでは見えない消化吸収の個人差を把握することが、無理のないプラン設計につながります。

目標設定|フェーズの大枠から個人目標へ落とす

前章の表で示したフェーズ別の大枠をベースに、その選手が今伸ばしたい能力(持久力、瞬発力、体重管理など)に応じて目標を具体化します。目標があいまいなまま食事量だけを増減させると、狙った効果が得られません。

メニューへの落とし込み|継続できる現実的な献立にする

理想的な栄養バランスを示しても、実際に用意できなければ意味がありません。自炊が難しい選手には市販品やコンビニ食品の組み合わせ例を提示するなど、継続可能な形に落とし込むことが、栄養サポート担当者の腕の見せどころです。

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導入事例|専門職を交えたチームでの運用

実業団やジュニア世代のチームでは、公認スポーツ栄養士が定期的に選手面談を行い、上記のような個別プランを継続的に更新している例が見られます。栄養サポート担当者が単独で全選手を細かく管理するのは負担が大きいため、優先度の高い選手(成長期のジュニア選手や、体重管理が競技力に直結する選手)から個別化を始め、段階的に対象を広げる進め方が現実的です。

よくある質問

栄養の専門知識がない指導者でも個別化はできますか

専門的な数値設計は栄養士に任せるとしても、指導者は「コンディションの把握」を日々の練習の中で担うことができます。体調の変化に気づいて栄養士につなぐ役割を担うだけでも、個別化の精度は大きく上がります。

ジュニア選手にも同じ考え方を適用できますか

成長期のジュニア選手は、競技のための栄養だけでなく成長そのものを支える栄養も必要になるため、大人の選手以上に個別の配慮が求められます。体重管理を目的にした極端な食事制限は避け、専門職の関与のもとで進めることが重要です。

まとめ

  • スポーツ栄養の基本は変わらないが、必要量は競技・体格・トレーニング内容で大きく異なる
  • まず「オフシーズン・走り込み期・試合期」のフェーズ別大枠を決め、そこから個人調整に入る
  • 個人調整は「コンディションの把握→目標設定→メニューへの落とし込み」の3ステップで行う
  • 数値データだけでなく主観的な体調も記録し、無理のないプランに落とし込む
  • 専門職を全選手に均等配分するのではなく、優先度の高い選手から個別化を始めるのが現実的

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

Human Soar では、スポーツビジネス/ウェルビーイング/研修/教育の4領域を中心に、公的統計や一次データにもとづく記事と調査レポートを執筆・監修しています(記事935本、資料7本/2026年8月時点)。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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