新国立競技場やBリーグの新設アリーナなど、大型スポーツ施設のニュースが相次いでいます。結論から言うと、これらの施設整備はゼネコン・設計事務所という伝統的な建設業の枠組みに加えて、PPP/PFIという官民連携の仕組みが不可欠になっており、企業が関わる方法も従来の建設請負とは変わりつつあります。本記事では、主要10社の役割と、企業がこの市場と関わる視点を解説します。
スタジアム・アリーナ整備はなぜPPP/PFIが前提になったのか
スポーツ庁は「スタジアム・アリーナ改革指針」でPPP(官民連携)・PFI(民間資金活用)の活用を推奨しており、地方公共団体・民間事業者に専門的知見や国内外の先進事例情報を提供しています。国は2025年までにスタジアム・アリーナ20拠点を選定する目標を掲げ、商業施設や他の公共施設との複合化を前提とした整備を進めてきました。単なる競技施設の建設ではなく、地域の中核を担う複合施設として設計することが標準になっています。
Q. スタジアム・アリーナ整備でPPP/PFIが推奨されるのはなぜですか?
行政単独では調達しにくい民間資金・運営ノウハウを取り込み、商業施設等との複合化によって収益性を高めるためです。スポーツ庁は改革指針でPPP・PFIの活用を推奨し、専門的知見や先進事例の情報提供を行っています。
(参考)スポーツ庁が「スタジアム・アリーナ改革指針」、PPP/PFIを推奨 – 新・公民連携最前線
施設整備を支える3つの職能|設計・施工・企画運営の役割分担
スポーツ施設の整備には、意匠・構造を担う設計事務所、実際に建てるゼネコン、そしてPPP/PFIの枠組みを整える企画運営の3つの職能が関わります。ここではHuman Soarが独自にその役割分担を図解しました。

設計事務所|意匠・構造設計を担う
設計事務所は建築物の意匠(デザイン)と構造計算を担当し、競技特性に応じた観客動線や視認性を設計に落とし込みます。新国立競技場の入札でも、日本設計や建築家の伊東豊雄氏など設計側の専門家がプロジェクトの中核を担いました。
ゼネコン|大規模施設の施工を担う
ゼネコン(総合建設会社)は設計図をもとに実際の建設工事を担当します。大型施設ほど設計事務所とゼネコンが共同企業体(JV)を組んで入札に参加するケースが一般的で、新国立競技場の入札では大成建設が単独提案したA案が採用された一方、日本設計・竹中工務店・清水建設・大林組の3社JVと伊東豊雄氏が共同でB案を提案するなど、複数の大手企業が組む形も珍しくありません。
企画運営|PPP/PFIの枠組みを整える
企画運営を担う主体は、公共施設の整備・運営にPPP(官民連携)やPFI(民間資金活用)の枠組みを組み込み、建設後の収益モデルまで見据えた事業スキームを設計します。設計・施工の技術力だけでなく、稼働後の集客戦略や資金調達計画まで含めて全体を統括する役割を担います。
国内主要10社の一覧比較|スポーツ施設建設・設計を担う企業
ゼネコン各社と設計事務所を中心に、実績のある10社を一覧にしました。そのあとで各社の特徴をH3で個別に解説します。
| 企業 | 職能 | 代表的な実績 |
|---|---|---|
| 大成建設 | ゼネコン | 新国立競技場、エディオンピースウイング広島、豊田スタジアム |
| 竹中工務店 | ゼネコン | 沖縄アリーナ、佐賀アリーナ、横浜武道館 |
| 鹿島建設 | ゼネコン | スーパーゼネコンとして大型施設の実績多数 |
| 大林組 | ゼネコン | 新国立競技場B案JVに参加した実績 |
| 清水建設 | ゼネコン | 新国立競技場B案JVに参加した実績 |
| 日本設計 | 設計事務所 | 新国立競技場B案の設計提案 |
| 梓設計 | 設計事務所 | 竹中工務店と組むアリーナ設計に強み |
| 日建設計 | 設計事務所 | 国内最大級の設計事務所、スタジアム実績多数 |
| 佐藤総合計画 | 設計事務所 | 公共・スポーツ施設設計の実績を持つ |
| 隈研吾建築都市設計事務所 | 意匠設計 | 新国立競技場のデザイン監修で知られる |
各社公式発表・報道情報をもとにHuman Soarが作成(2026年9月時点)。
大成建設|国内スタジアム建設の最多実績を持つゼネコン
大成建設株式会社は、新国立競技場をはじめ、エディオンピースウイング広島、豊田スタジアム、駅前不動産スタジアムなど、JリーグやBリーグのホームスタジアム・アリーナで数多くの施工実績を持ちます。新国立競技場の入札では、単独提案のA案が僅差で採用されました。
竹中工務店・梓設計|アリーナ建築で強みを発揮するコンビ
竹中工務店と梓設計の組み合わせは、沖縄アリーナ、佐賀アリーナといったバスケットボール施設や横浜武道館など、アリーナ・武道施設の建築で高い評価を得ています。設計事務所とゼネコンが継続的に組むことで、専門的なノウハウが蓄積されている好例です。
鹿島建設・大林組・清水建設|スーパーゼネコンとしての総合力
鹿島建設、大林組、清水建設はいずれもスーパーゼネコンと呼ばれる最大手建設会社で、大型スポーツ施設の建設に必要な資金力・技術力・工程管理能力を備えています。新国立競技場の入札では、大林組・清水建設が日本設計・竹中工務店とのJVでB案を提案しました。
日本設計・梓設計・日建設計・佐藤総合計画|設計事務所の専門性
日本設計、日建設計、佐藤総合計画はいずれも国内有数の設計事務所で、意匠・構造設計の専門性を活かしてスタジアム・アリーナのプロジェクトに参加しています。ゼネコンが施工力を担う一方、設計事務所は施設の使いやすさ・観戦体験・複合施設としての機能性を作り込む役割を担います。
隈研吾建築都市設計事務所|デザイン監修で施設の象徴性を高める
隈研吾建築都市設計事務所は、新国立競技場のデザイン監修を担当したことで広く知られています。木材を多用した意匠は、施設の環境配慮イメージと地域のシンボル性を両立させる設計思想を象徴しています。
Q. スタジアム・アリーナの設計と施工は同じ企業が行うのですか?
必ずしも同じ企業ではありません。設計事務所が意匠・構造設計を担当し、ゼネコンが施工を担うのが一般的で、両者が共同企業体(JV)を組んで入札に参加するケースも多く見られます。
(参考)スポーツ施設 – 大成建設 Technology & Solution
企業がスポーツ施設建設市場と関わる2つの視点
Human Soarの読者である企業の経営者・施設担当者にとって、スポーツ施設建設は建設業だけの話ではなく、PPP/PFI事業への出資や、竣工後の運営参画という形で関わる道もあります。
PPP/PFI事業への出資・コンソーシアム参加
大型施設のPFI事業では、建設会社だけでなく金融機関や運営会社が出資者としてコンソーシアムに参加します。自治体の公募情報を早期に把握し、専門分野を持つ企業同士でチームを組めれば、建設業以外の企業にも参入の道があります。
竣工後の施設運営・テナント出店としての関わり
複合型施設として設計されたスタジアム・アリーナには、飲食・物販・オフィスなどのテナントスペースが組み込まれることが増えています。建設段階から運営を見据えた企業であれば、竣工後のテナント出店という形でこの市場に関わることができます。
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Q. 建設業以外の企業がスタジアム・アリーナ整備に関わる方法はありますか?
PFI事業のコンソーシアムへの出資者として参加する方法や、竣工後の複合施設にテナントとして出店する方法があります。建設段階から運営を見据えて関わることで、建設業以外の企業にも参入の道が開かれています。
まとめ|スポーツ施設建設は官民連携が前提の複合プロジェクトに
スポーツ施設建設・設計は、ゼネコン・設計事務所の伝統的な役割分担に加えて、PPP/PFIという官民連携の枠組みが不可欠な複合プロジェクトになっています。ポイントを振り返ります。
- スポーツ庁はスタジアム・アリーナ整備でPPP/PFIの活用を推奨し、複合施設化を前提とした整備を進めている
- 施設整備は設計・施工・企画運営という3つの職能が分担して進める
- 大成建設、竹中工務店をはじめとするゼネコンと、日本設計、日建設計などの設計事務所が主要プレイヤーである
- 隈研吾建築都市設計事務所のようなデザイン監修が施設の象徴性を高める役割を担う
- 企業はPFI事業への出資や、竣工後のテナント出店という形でこの市場に関われる
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