アダプトゲンとは|アスリートの疲労回復と企業の健康活用

アダプトゲンとはアスリートの疲労回復と企業の健康活用を示すアイキャッチ画像 スポーツ栄養学

アダプトゲンは、ストレスへの適応を助けるとされるハーブ由来成分の総称で、アスリートのリカバリー分野で関心が高まっています。ただし科学的な評価はまだ確立段階にあり、企業が健康施策として扱う際は効果を断定せず、エビデンスの状況を正しく伝えることが前提になります。本記事では代表的な成分と、企業が注意すべきポイントを整理しました。

アダプトゲンとは|ストレス適応を助けるとされるハーブ由来成分

アダプトゲンとは、ハーブ医学の分野で「生理的なプロセスを安定させ、体内の恒常性(ホメオスタシス)を助ける」とされる植物由来の成分を指す言葉です。アシュワガンダやロディオラなど、伝統医学で使われてきたハーブが代表例として挙げられます。

厚生労働省が運営する統合医療情報サイトeJIMでは、健康食品に用いられる素材について、科学論文をもとにした有効性・安全性情報を提供しています。また、消費者庁委託事業として国立健康・栄養研究所が運営する素材情報データベースでは、健康食品の素材ごとに報告されている有効性情報を掲載基準に沿って収集・要約していますが、有効性そのものへの評価は行っていません。アダプトゲンという概念自体、定義が曖昧で、どの物質が該当するかを明確に判断することは難しいとされています。

Q. アダプトゲンには科学的な効果が証明されていますか?

現時点では薬理学的・臨床的に確立された概念ではありません。国立健康・栄養研究所の素材情報データベースも、報告されている有効性情報を収集・要約するのみで、効果そのものへの評価は行っていません。

(参考)素材情報データベース「健康食品」の安全性・有効性情報 – 国立健康・栄養研究所(消費者庁委託事業)

(参考)「統合医療」情報をエビデンスに基づいて紹介 eJIM – 厚生労働省

アダプトゲンに分類される代表的な3つの成分

アダプトゲンとして紹介されることが多い成分は数多くありますが、ここでは特に言及頻度の高い3つを取り上げます。いずれも伝統的な用途はあるものの、科学的な評価の状況は成分ごとに異なります。

成分 由来 科学的評価の状況
アシュワガンダ インド伝統医学(アーユルヴェーダ) 鎮静作用の報告あり。医薬品との相互作用に注意喚起
ロディオラ(紅景天) 北方の寒冷地域の伝統薬用植物 疲労感に関する研究報告があるが、確立した評価は無し
高麗人参 東アジアの伝統医学 健康食品として流通実績が長く、研究報告数も比較的多い

集計:国立健康・栄養研究所「素材情報データベース」の公開情報をもとにHuman Soarが整理(2026年9月時点)

アシュワガンダ|鎮静作用の報告と相互作用への注意

アシュワガンダはアーユルヴェーダで用いられてきたハーブで、鎮静作用が報告されています。国立健康・栄養研究所の素材情報データベースでは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬との相互作用の可能性が指摘されており、服薬中の従業員に紹介する場合は特に注意が必要です。

ロディオラ(紅景天)|疲労感に関する研究報告

ロディオラは寒冷地域で伝統的に用いられてきた植物で、疲労感の軽減に関する研究報告が見られます。ただし研究の規模や質にはばらつきがあり、確立した評価には至っていません。

高麗人参|流通実績が長く研究報告数も多い

高麗人参は健康食品として古くから流通しており、他の2成分と比べて研究報告の蓄積も多い成分です。それでも「疲労回復に効く」と断定した表示は、根拠が不十分であれば景品表示法違反のリスクがある点は変わりません。

アスリートがアダプトゲンをリカバリーに取り入れる際の考え方

トップアスリートのリカバリー戦略では、睡眠・栄養・メンタルケアを土台にしたうえで、サプリメントを補助的な位置づけで検討するのが一般的な考え方です。アダプトゲンも例外ではなく、基本のコンディショニングを整えたうえでの選択肢の一つとして扱われています。

あわせて読みたい休息は「停滞」ではなく「投資」である。戦略的リカバリー術›

アスリートがアダプトゲンを取り入れる場合も、まず睡眠の質を優先的に見直すケースが多く見られます。一流アスリートのコンディショニングでは、サプリメントよりも先に睡眠・栄養・メンタルの基本設計を固める順序が重視されています。

Q. アスリートはアダプトゲンをどう位置づけて使っていますか?

睡眠・栄養・メンタルケアといった基本のコンディショニングを整えたうえで、補助的な選択肢の一つとして検討するのが一般的です。アダプトゲン単体でリカバリーを完結させる考え方はしません。

健康経営に関する国の制度を見ると、経済産業省の健康経営優良法人認定は令和6年度に約2万4,000件の申請があり、スポーツ庁のスポーツエールカンパニーは2017年度の217社から、2026年には1,635社まで認定数が拡大しました。アダプトゲンのようなサプリメント情報も、こうした健康経営の枠組みのなかで、正確さを保ちながら紹介することが求められます。

企業の健康施策にアダプトゲンを取り入れる2つの視点

企業がアダプトゲンを健康経営や福利厚生の文脈で扱う場合、情報提供と商品選定という2つの視点を分けて考える必要があります。

視点①情報提供|ストレスケアの選択肢として紹介する

社内報や健康セミナーでアダプトゲンを紹介する場合は、「効果が証明された成分」ではなく「伝統的に用いられ、研究が進められている成分」という位置づけで伝えることが重要です。断定的な表現を避けることで、健康増進法上のリスクを避けられます。

視点②商品選定|福利厚生の健康関連商品に含める場合の注意

アダプトゲンを含むサプリメントを福利厚生の商品ラインナップに加える場合は、医薬品との相互作用リスクがある成分が含まれていないか、服薬中の従業員への注意喚起文が同封されているかを確認する必要があります。

あわせて読みたい一流アスリートのコンディショニング完全ガイド›

アダプトゲン活用で企業が注意すべき3つのポイント

健康施策としてアダプトゲンを扱う際は、法規制とエビデンスの伝え方に関わる3つのポイントを押さえておく必要があります。

アダプトゲンを企業が紹介する際の適切な説明と避けるべき説明の比較図解
断定的な表示を避け、エビデンスの状況を正しく伝える

注意点①健康増進法・景品表示法に触れない説明をする

「疲労が回復する」「ストレスが解消する」といった断定的な効果効能の表示は、健康増進法や景品表示法(優良誤認)に抵触するおそれがあります。社内資料であっても、外部に公開される可能性がある文書では表現に注意が必要です。

注意点②医薬品との相互作用に注意する

アシュワガンダのように、抗不安薬や睡眠薬との相互作用が報告されている成分もあります。持病で服薬中の従業員がいることを前提に、注意喚起の文言を必ず添えることが欠かせません。

注意点③エビデンスレベルを正しく伝える

「研究段階である」「確立した評価はまだ無い」という現状を正直に伝えることが、後々のトラブルを防ぐうえで最も重要です。過度な期待を持たせる伝え方は、健康施策全体の信頼性を損なうリスクがあります。

Q. 企業がアダプトゲンを紹介するときに気をつけることは何ですか?

断定的な効果効能を表示しないことと、医薬品との相互作用の可能性を明記することです。エビデンスがまだ確立段階であることも、あわせて正直に伝える必要があります。

アダプトゲン導入前に確認したいチェックリスト

社内での紹介や福利厚生商品への導入を検討する際は、以下の項目を事前に確認しておくと、後々のトラブルを避けられます。

確認項目 確認内容
表示文言 断定的な効果効能表示になっていないか
相互作用の注意喚起 服薬中の従業員への注意文言があるか
情報源の明記 研究段階である旨を伝えているか

集計:健康食品を福利厚生に取り入れる際の確認項目をHuman Soarが整理

睡眠面からのリカバリー施策を検討したい場合はスポーツ・運動で睡眠の質を高める企業施策も参考になります。栄養面の基礎知識はスポーツ栄養学とは|マクロ栄養素・水分補給・資格を解説で整理しています。リカバリー全般の考え方は八村塁のNBAリカバリー法|82試合を戦う体の整え方も参考になります。

アダプトゲンを企業の健康施策に活かすためのポイント

アダプトゲンは、アスリートのリカバリー分野で関心を集める成分ですが、科学的な評価はまだ確立段階にあります。最後に、この記事の要点を振り返ります。

  • アダプトゲンはストレス適応を助けるとされるハーブ由来成分の総称で、定義自体があいまい
  • アシュワガンダ・ロディオラ・高麗人参は代表例だが、科学的評価の状況は成分ごとに異なる
  • アスリートは睡眠・栄養・メンタルの基本を整えたうえで補助的に検討している
  • 企業が紹介する場合は、健康増進法・景品表示法に触れない表現を徹底する
  • 医薬品との相互作用リスクを明記し、エビデンスレベルを正直に伝えることが重要

Q. アダプトゲンは誰でも安心して利用できますか?

服薬中の方や持病のある方は、医師や薬剤師への相談が推奨されます。特にアシュワガンダは抗不安薬・睡眠薬との相互作用が報告されており、一律に安全とは言えません。

ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ

お問い合わせはこちら →
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました