高知ユナイテッドSCのスポンサー170社|金額は非公開、ふるさと納税で胸に名前が載る

高知ユナイテッドSCのスポンサー170社とふるさと納税による支援 スポーツビジネス

高知ユナイテッドSCのスポンサーを調べていて、他のクラブと決定的に違う点が2つ見つかりました。

ひとつは、協賛の金額がどこにも書かれていないこと。もうひとつは、ふるさと納税で「胸スポンサー」になれるという仕組みがあることです。そしてこの2つは、2026年6月にクラブが乗り越えたある出来事とつながっています。

高知ユナイテッドSCのスポンサー・パートナーは、延べ172枠・実数170社

高知ユナイテッドSCの区分別のパートナー掲載数

クラブ公式サイトのパートナーページを2026年9月23日に取得して数えました。区分は6つです。

Top Partner 5、Main Partner 7、Official Partner 60、法人サポータークラブのDIAMOND 2、PLATINAUM 9、GOLD 89。合計で延べ172枠になります。

ここから法人格の表記ゆれを揃えて重ねると、重複は2件でした。四万十川物産と高知通信機が、Official PartnerとGOLDの両方に載っています。除くと実数170社です。近い名前で別会社かどうか迷う組み合わせはありませんでした。

この連載で調べてきたJ3・JFL規模のクラブと比べると、決して少なくありません。ガイナーレ鳥取やカマタマーレ讃岐と同じ規模感で、上の区分が薄く下の区分が厚いという形も共通しています。170社のうち89社、半分以上がいちばん下のGOLDに入っています。

Q. ロゴで載る区分と名前だけの区分がありますか。

あります。Top・Main・Official Partnerと法人サポータークラブのDIAMOND・PLATINAUMまでがロゴ掲載で、合計83社。GOLDの89社は企業名のテキストのみです。ただしクラブは各区分の違いを文章で説明していないので、掲出以外にどんな差があるのかはページからは分かりません。

(参考)Partner – 高知ユナイテッドスポーツクラブ

最上位区分に高知県と高知県競馬組合が入っている

顔ぶれで目を引くのは、いちばん上の2区分です。

Top Partnerの筆頭は「高知家」

Top Partner 5社のうち、先頭にあるのは「高知家」です。高知県が県全体をひとつの家族に見立てて展開しているプロモーションで、実質的に高知県が最上位パートナーに入っていることになります。残る4社は旭食品、高知銀行、CASIO、アスレタ。アスレタはユニフォームサプライヤーです。

Main Partnerには高知県競馬組合

Main Partner 7社は高知新聞社、セントラルグループ、明治安田 高知支社、エースワン、丸中運送、内田脳神経外科、高知県競馬組合。高知県競馬組合は高知県と高知市などでつくる一部事務組合で、こちらも公的な団体です。最上位付近の12社のうち2つが県に関わる組織という構成になります。

Official Partnerには上場企業も

Official Partner 60社には、技研製作所、ニッポン高度紙工業、四国銀行、高知トヨタ、ミタニ建設工業、龍馬学園などが並びます。この中の技研製作所は、後で出てくるスタジアムの名前とも関係してきます。

Q. 自治体がスポンサーに入るのは普通のことですか。

クラブによってかなり違います。この連載ではFC岐阜が岐阜県と42市町村すべてをパートナーに入れ、鹿児島ユナイテッドFCが県と市を最上位区分に置いていました。一方でファジアーノ岡山は一覧に自治体が見当たらず、徳島ヴォルティスは板野町が1つ入っているだけでした。高知ユナイテッドSCは前者に近く、県の存在感がかなり大きいタイプです。

(参考)Partner – 高知ユナイテッドスポーツクラブ

協賛の金額は、どこにも公開されていない

ここが今回いちばん特徴的な点です。

クラブのサイトには、パートナーの一覧はあっても協賛金額や特典を案内するページがありません。区分ごとの会費も、申し込み方法も、問い合わせ先の明示もない。分かるのは「どの企業がどの区分にいるか」だけです。

これは連載で調べてきたクラブのなかでは少数派です。

本連載で確認した協賛金額の公開状況
クラブ 金額の公開 公表されている下限
ファジアーノ岡山 法人会員5階層を公開(上位2区分は要問合せ) 年5万円
徳島ヴォルティス 法人会員4階層を公開(ロゴ掲載は要問合せ) 年5万5000円(税込)
鹿児島ユナイテッドFC 階層別の金額を公開 年6万6000円(税込)
千葉ジェッツ 階層別の金額を公開 年15万円(税別)
高知ユナイテッドSC 公開なし(一覧のみ) —

出典:各クラブの公式サイトより筆者作成(2026年9月時点)。掲載条件はシーズンによって変わる

金額を出さない設計には理屈もあります。相手ごとに条件を組むなら、表に載せた瞬間に交渉の余地が狭まる。ただ検討する企業の側から見れば、いくらから始められるのかが分からないということでもあります。

そして高知ユナイテッドSCの場合、金額が公開されている支援の入口が、まったく別のところにありました。ふるさと納税です。これは後ほど詳しく見ます。

Q. 協賛金は経費としてどう扱われますか。

国税庁は、不特定多数への宣伝的効果を意図した費用は広告宣伝費、特定の取引先などを接待・供応する費用は交際費等にあたるという区分を示しています。高知ユナイテッドSCの場合は特典の一覧が公開されていないため、契約前に「何が付いてくるのか」を書面で確認しておく必要があります。区分が曖昧なまま進めると、処理の判断材料そのものが手元に残りません。実際の扱いは顧問税理士に確認してください。

(参考)No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分 – 国税庁

2024年度の売上は2億円、スポンサー収入は8100万円だった

金額が公開されていない以上、規模は決算から見るしかありません。

ただしここにも制約があります。Jリーグが開示した2025年度の決算一覧で、高知ユナイテッドSCの欄は「2026年6月期」とだけ書かれ、数値が入っていません。決算期が6月に変わったためです。数値で見られるのは、その前の2024年度になります。

高知ユナイテッドSCの2024年度決算とJ3平均
項目 高知ユナイテッドSC J3平均
売上高 2億円 8億6500万円
スポンサー収入 8100万円 4億8400万円
入場料収入 2000万円 8600万円
物販収入 1700万円 6900万円
Jリーグ配分金 0円 2400万円
アカデミー関連収入 3400万円 5800万円
トップチーム人件費 6400万円 2億6500万円
販売費および一般管理費 5300万円 2億8000万円
営業利益 ▲3100万円 ▲6700万円
当期純利益 3800万円 ▲6100万円

出典:公益社団法人日本プロサッカーリーグ「2024年度 J3 クラブ決算一覧」より筆者作成。高知ユナイテッドSCは当時JFL所属のため「参考」欄に掲載されており、対象期間は2024年2月から2025年1月。J3平均は同資料の平均欄で、J3の20クラブが対象

売上高2億円はJ3平均の23.1%、スポンサー収入8100万円は同16.7%です。当時はJFL所属だったのでJリーグ配分金は0円でした。

当期純利益が3800万円の黒字になっているのは、特別利益を7500万円計上したためです。本業の営業損益は▲3100万円でした。

そして貸借対照表を見ると、純資産が▲8200万円。債務超過の状態です。利益剰余金は▲1億3200万円、資本金は5000万円でした。

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Q. なぜJ3の資料にJFLのクラブが載っているのですか。

高知ユナイテッドSCは2025シーズンからJ3に参入したため、その前年度の決算がJリーグの資料に「参考 JFL」として掲載されました。同じ扱いで栃木シティも並んでいます。J3平均の計算対象には入っていないので、表の右列と直接比べる際はその前提で読んでください。

(参考)2024年度 J3 クラブ決算一覧(PDF) – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ

スポンサー1社あたりは約48万円。この連載で最も低い

本連載で調べたクラブのスポンサー1社あたり単純平均

スポンサー収入8100万円を実数170社で割ると、単純平均で1社あたり約48万円になります。

この連載で調べた19クラブのなかで、これが最も低い数字です。これまでの最低はガイナーレ鳥取の約69万円、次いでカマタマーレ讃岐の約72万円でした。J1のFC東京が約3621万円ですから、75分の1という開きになります。

ただし2つ注意が必要です。ひとつは、スポンサー収入がJFL時代の2024年度の数字で、パートナー一覧は2026年9月時点だということ。もうひとつは、後で見るとおり2025年度に営業収益が倍増していることです。いまの1社あたりは、この48万円よりかなり高いはずです。

それでも構造は変わりません。小口を数多く集めるタイプのクラブであることは、170社のうち89社がいちばん下の区分にいるという分布からも読み取れます。

Q. 1社あたりが低いのは悪いことですか。

単体では良し悪しを判断できません。少額でも社数が多ければ、1社が抜けたときの影響は小さくなります。問題になるのは、総額が費用に届いていない場合です。高知ユナイテッドSCはまさにそこで苦しんできたクラブで、その経過は次の2つの見出しで見ていきます。

(参考)2024年度 J3 クラブ決算一覧(PDF) – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ

J3初年度で営業収益は4億円に倍増。それでも赤字だった

2025年度の数字は、クラブ自身が株主総会の報告として公開しています。

高知ユナイテッドSCの2期比較(クラブ公表)
項目 2024年度(JFL) 2025年度(J3初年度)
営業収益 2億円 4億円
営業費用 2億3200万円 4億4700万円
経常利益 ▲3600万円 ▲4100万円
当期純利益 3800万円 ▲4100万円
総資産 3600万円 6400万円
純資産 ▲8200万円 ▲5100万円

出典:2025年度は高知ユナイテッドスポーツクラブ「2025年度決算概要および株主総会決議事項のお知らせ」(2026年3月31日)、2024年度は公益社団法人日本プロサッカーリーグ「2024年度 J3 クラブ決算一覧」より筆者作成。2024年度の営業費用は売上原価と販管費の合計で、クラブ自身が示す前年比からの逆算値とは分類の違いで小差がある

クラブの説明によれば、J3昇格でスポンサー収入・物販収入・入場料収入・自治体からの事業委託収入などが増え、営業収益は前年比で2億円増えて4億円になりました。

一方で費用も増えています。トップチームの人件費、遠征費、ホームゲーム関連費用。営業費用は4億4700万円で、クラブはこれを前年比2億1300万円の増加と説明しています。収入の伸びを費用の伸びが上回り、経常損益は▲4100万円でした。

純資産については、クラブは「7200万円の増資を行ったことにより3000万円改善して▲5100万円となった」と説明しています。それでも債務超過は続いていました。

Q. 収入が倍になったのに赤字が増えたのはなぜですか。

カテゴリーが上がると費用が先に増えるためです。クラブの事業報告では、トップチーム人件費、遠征費、ホームゲーム関連費用の増加が挙げられています。加えて2024年度は債務免除益7300万円という特別利益があり、これが当期純利益を押し上げていました。2025年度はそれがないぶん、損益の姿がそのまま出ています。

(参考)2025年度決算概要および株主総会決議事項のお知らせ – 高知ユナイテッドスポーツクラブ

2026年6月、クラブライセンスは継続審議から交付に変わった

ここまでの数字が、そのまま制度上の問題になりました。

クラブは2026年3月31日の株主総会報告で、対処すべき課題としてこう書いています。「財務面においては、早急な債務超過解消が最重要課題であります」。そして解決策として、事業収入の増強に加えて増資の実施と企業版ふるさと納税の活用を挙げました。

2026年5月26日、Jリーグの理事会は2026/27シーズンのJ3クラブライセンスについて、財務基準に関して追加で確認が必要な事項があるとして継続審議としました。クラブはこの日、「現時点では、債務超過解消には至っておりませんが、6月末の決算では解消見込みであると考えております」とコメントしています。

そして2026年6月18日、財務基準をクリアしたとしてJ3クラブライセンスの交付が決定しました。

交付を受けての代表取締役のコメントには、支援への謝辞として「株主・スポンサーの皆様をはじめ、企業版ふるさと納税、およびクラウドファンディング型ふるさと納税など、関係者の皆様の多大なご尽力ご支援」という言葉が並びます。

つまりこのクラブでは、スポンサーを集めることが、そのままリーグに参加し続けられるかどうかに直結していたということです。会社概要によれば資本金は2026年3月25日現在で9000万円。2024年度末の5000万円から増えています。

Q. 2025シーズンの成績は影響しましたか。

クラブ自身の事業報告によれば、7月26日時点で20チーム中8位まで順位を上げたものの、6月の監督のパワーハラスメント問題と短期間での監督交代が続き、以後成績が低迷して10勝20敗8分けの18位で終えたとしています。J3残留は確保しました。入場料や物販は順位と無関係ではないので、収入面にも影響したと見るのが自然ですが、クラブは内訳を公表していないため、いくら分かは分かりません。

(参考)2026/27シーズン J3クラブライセンス交付のお知らせ – 高知ユナイテッドスポーツクラブ

ふるさと納税で「胸スポンサー」になれる仕組みがある

金額が公開されている支援の入口は、クラブではなく高知県のページにありました。

高知県は、ふるさと納税制度を使ったクラウドファンディング(GCF)で高知ユナイテッドSCを支援するプロジェクトを実施しています。うたい文句は「あなたも胸スポンサーに!」。

高知県のクラウドファンディング型ふるさと納税(高知ユナイテッドSC応援プロジェクト)
項目 2025年 2026年
受付期間 2025年4月25日〜7月23日 2026年4月24日〜6月17日
目標金額 3000万円 3000万円
結果 1858万4000円(達成率61.9%) 公表を確認できず
支援人数 467人 —
県の追加支援 寄附と同額を県が追加(上限3000万円) 記載を確認できず
記念品 12種類(8000円〜25万円) ポスター名入れ権・横断幕・大型ビジョンクレジットほか

出典:高知県「高知ユナイテッドSC応援プロジェクト」および同チラシ、ふるさとチョイスの当該プロジェクトページ、高知ユナイテッドスポーツクラブの記念品発送案内より筆者作成

この仕組みで注目したいのは高知県による同額の追加支援です。2025年のチラシには「5万円全額が高知ユナイテッドSC強化費に活用されます! かつ、寄附額と同額を高知県から追加支援します(合計10万円)」と明記されていました。上限は3000万円です。

2025年の寄附は1858万4000円でしたから、県の追加支援を合わせると最大で3716万8000円がクラブに向かった計算になります。これは2024年度のスポンサー収入8100万円の半分近い規模です。

記念品の顔ぶれも、実質的にはスポンサー特典です。2026年分ではポスターへの名入れ権、スタジアムの横断幕、ホームゲームの大型ビジョンへのクレジット、一日社長体験、ゴルフコンペ参加権などが用意されていました。企業の協賛メニューに相当するものが、個人向けのふるさと納税として並んでいることになります。

Q. 企業が支援する場合はどうなりますか。

クラブが挙げているもうひとつの手段が企業版ふるさと納税です。これは自治体の地方創生事業に企業が寄附する制度で、個人向けとは別枠になります。クラブは2026年3月の株主総会報告で、増資と並ぶ債務超過解消の手段としてこれを挙げ、6月のライセンス交付時のコメントでも謝辞に含めています。ただし寄附した企業名や金額はクラブのパートナー一覧には現れないため、外からは追えません。

(参考)【クラウドファンディング型ふるさと納税募集中!】高知ユナイテッドSC応援プロジェクト – 高知県

(参考)高知ユナイテッドSC クラウドファンディング型ふるさと納税 チラシ(PDF) – 高知県

ホームスタジアムの名前は、Official Partnerの技研製作所になった

本連載で確認した自治体のスタジアム・アリーナ命名権の年額

2026年1月1日から、高知ユナイテッドSCのホームである高知県立春野総合運動公園陸上競技場は「GIKENスタジアム」になりました。

ネーミングライツ・パートナーは株式会社技研製作所。契約金額は1787万5000円で、年額550万円(消費税および地方消費税を含む)。使用期間は令和8年1月1日から令和11年3月31日までの3年3か月です。

この技研製作所は、先に見たとおり高知ユナイテッドSCのOfficial Partnerでもあります。連載では、ファジアーノ岡山のJFEスチール、宇都宮ブレックスの栃木銀行が同じ構図でした。クラブに協賛しつつ、自治体からスタジアムの名前も買うという形です。

高知県のネーミングライツは2025年8月に募集が始まった新しい制度で、最低希望金額は各施設500万円/年でした。対象は春野総合運動公園陸上競技場、県民文化ホール、のいち動物公園の3施設。このうち決まったのは2施設で、県民文化ホールは新来島高知重工が年額1100万円で「新来島高知重工ホール」となりました。

年額550万円という金額は、この連載で確認してきた自治体の命名権のなかでは最も低い水準です。新潟県のデンカビッグスワンスタジアムが年4730万円、岡山県のJFE晴れの国スタジアムが年3000万円でしたから、その数分の1にあたります。施設の規模と市場の大きさがそのまま出た形です。

Q. いま高知ユナイテッドSCに協賛を検討するなら、何を確認すべきですか。

金額も特典も公開されていないため、問い合わせから始めることになります。そのうえで確認しておきたいのは3点です。区分ごとに何が付くのか(ロゴか名前か、掲出先はどこか)、契約期間と更新の条件、そして支援の形としてふるさと納税や企業版ふるさと納税と比べてどちらが自社に合うか。クラブが債務超過を解消したのは2026年6月のことなので、財務の見通しについても率直に聞いてよい場面だと思います。

(参考)ネーミングライツ・パートナーと愛称の決定について – 高知県

(参考)ネーミングライツ・パートナー募集 – 高知県

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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