デロードとは|アスリートの回復週を企業に移す3ステップ

デロードとは何かを解説する記事のアイキャッチ。アスリートの回復週を企業の休息設計に移す3ステップを示す スポーツ科学

デロードとは、トレーニングの負荷を意図的に落として回復させる期間のことです。3〜6週に1回、5〜7日ほど量を落とすのが一般的な組み方で、完全に止めるのではなく動きは続けたまま負荷だけを下げます。日本では部活動のガイドラインが週2日以上の休養日を定めており、回復を制度として数値で決めた数少ない例になっています。

繁忙期を越えるたびに現場の集中力が落ちていく、という感覚を持っている人は多いはずです。走り方が少し縦に揺れ始めた選手と同じで、本人はまだ「いつも通りやれている」つもりでも、判断の速さと正確さは先に落ちています。ここでは、アスリートが当たり前に組み込んでいる回復週の考え方を、企業の休息設計にどう移すかを整理します。

デロードとは|負荷を意図的に落として回復させる期間

デロードは、鍛えるのをやめる期間ではなく次に積み上げるための準備期間です。負荷を積み続けると、体は刺激に反応する余力を失い、同じメニューをこなしても伸びなくなります。この考え方はスポーツ科学が扱う6つの領域のうち、トレーニング科学とコンディショニングの重なる部分に位置します。

通常期・デロード・完全休養で体に起きることの違い
期間の種類 体に起きること 向いている場面
通常期 刺激が入り、疲労も同時に溜まっていく 疲労が翌日までに抜けている間
デロード 刺激を最小限に残したまま疲労だけが抜ける 疲労が抜けきらない日が続き始めたとき
完全休養 疲労は抜けるが、動きの感覚と体力も落ち始める ケガや発熱など、動くこと自体が危険なとき

Human Soarが、厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023の考え方と、現場で使われている負荷設計の区分をもとに整理したもの

通常期|負荷を積み上げて体に刺激を入れる週

通常期は、量か強度のどちらかを前の週より増やしていく期間です。刺激が入るのと同じ量だけ疲労も溜まりますが、翌日までに抜けているうちは問題になりません。仕事でいえば、新しい案件を増やしても週末で戻る状態がこれにあたります。

厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023は、成人に対して週23メッツ・時以上の身体活動と、週2〜3日の筋力トレーニングを推奨しています。ただし「毎週同じ量を続ける」とは書かれていません。積み上げと回復を交互に置く前提は、公的なガイドの側にも含まれています。

デロード|動きは続けたまま負荷だけを下げる週

デロードは、種目や動きはそのまま残し、回数・時間・重さのどれかを落とす週です。動きを続けるのは、間隔が空きすぎると感覚が戻るまでに時間がかかるからです。走るのをやめずに距離だけ半分にする、という調整がいちばん近い形です。

判断が難しいのは「疲れているかどうか」を本人が正しく言えない点です。疲労は自覚より先に、判断の速さや動きの精度に出ます。だからこそ、感覚ではなく期間で先に決めてしまうのがデロードの実務的な価値になります。

完全休養|体を動かさずに止める期間

完全休養は、ケガや発熱など、動くこと自体が体に悪い場面で選ぶ選択肢です。疲労は確実に抜けますが、動きの感覚と体力も同時に落ちます。2週間以上動かない期間が続くと、戻すのに同じくらいの時間がかかります。

企業の休暇制度は、この「完全休養」に寄っています。休むか働くかの2択しかないため、負荷を落としながら動き続ける中間の設計が抜け落ちがちです。

Q. デロードとディロードは同じ意味ですか?

同じものを指します。英語の deload をカタカナにするときに「デロード」と「ディロード」の2通りが使われているだけで、意味の違いはありません。検索するときはどちらでも同じ情報にたどり着けます。

(参考)健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(概要) – 厚生労働省

デロードの頻度と期間|3〜6週に1回・5〜7日が目安

頻度は3〜6週に1回、期間は5〜7日が標準的な組み方です。数字そのものより大事なのは、疲労が抜けなくなってから入れるのではなく、抜けなくなる前に置くという順番のほうです。以下では頻度・期間・見極め方の3点に分けて説明します。

頻度|3〜6週に1回を先にカレンダーへ置く

デロードを含む4週サイクルの負荷設計。1週目の導入から3週目のピークを経て4週目に負荷を落とす流れを示した図

4週を1サイクルにする組み方がいちばん扱いやすく、第1週で導入、第2週で量を積み、第3週で強度を上げ、第4週で落とす形になります。負荷の山が3週続いた直後に落とす週が来るので、疲労が二重に積み上がる状態を避けられます。

仕事に置き換えると、月末の締めや四半期の決算といった山が毎月・毎四半期の同じ場所に来ます。その直後の1週間を先に押さえておけば、頻度は自動的に決まります。

期間|5〜7日で戻す

期間は5〜7日を上限に考えます。それより短いと疲労が抜けきらず、2週間を超えると今度は体力と感覚が落ち始めるためです。1週間という単位は、仕事のカレンダーとも噛み合うので運用しやすくなります。

長期の休みを1回だけ取るより、短い回復週をこまめに置くほうが結果的に戻りが早くなります。一流アスリートのコンディショニングでも、オフを年に1回まとめて取る形は主流ではありません。

見極め|疲労は主観ではなく同じ設問で測る

「疲れているか」を毎回その場の感覚で判断すると、忙しい時期ほど過小評価されます。厚生労働省の職業性ストレス簡易調査票には「ひどく疲れた」「へとへとだ」「だるい」という疲労感の3項目があり、誰でも無料で使えます。同じ3問を毎週同じ曜日に聞くだけでも、変化の向きは見えます。

数字そのものの高さより、前の週からの動き方を見るのが実務的です。3週連続で上がり続けていれば、それが落とす週を入れる合図になります。

Q. デロードはどのくらいの頻度で必要ですか?

負荷を積み上げている期間なら3〜6週に1回が目安です。週単位で負荷が一定の働き方なら、繁忙期の直後に1回置くだけでも効果があります。頻度は固定するより、負荷の山の位置に合わせて決めるほうが続きます。

(参考)職業性ストレス簡易調査票(80項目版) – 厚生労働省 こころの耳

デロードのやり方|量と強度と頻度のどれを落とすか

落とす対象は量・強度・頻度の3つで、どれを落とすかで戻り方が変わります。すべてを同時に落とすと完全休養に近づいてしまうため、1つか2つに絞るのが基本です。次の表は3つの落とし方と目安をまとめたものです。

デロードで落とす対象と、実務で使われている目安
落とす対象 よく使われる目安 向いている場面
量(時間・回数) 通常の4〜6割まで減らす いちばん疲労が溜まっている標準的な場面
強度(負荷の重さ・速さ) 通常の7〜8割に抑える 筋力や感覚の維持を優先したいとき
頻度(週あたりの日数) 週1〜2日減らす 時間そのものが確保できないとき

Human Soarが、現場で広く使われている調整幅を整理したもの。公的なガイドラインに数値の定めはないため、目安として扱う

量を落とす|最も戻りが早い標準の選択

量を落とすのが最もよく使われる方法です。回数や時間を通常の4〜6割まで減らし、動きの種類と強度は変えません。刺激の質が保たれるので、翌週に戻したときの違和感が少なくて済みます。

仕事なら、打ち合わせの本数と会議時間を半分にして、担当する案件そのものは変えない形が近くなります。業務の種類を入れ替えると、覚え直すコストのほうが大きくなります。

強度を落とす|維持を優先するときの選択

強度を落とす方法は、量は保ったまま重さや速さだけを7〜8割に抑えます。動く総時間が変わらないので、生活のリズムを崩さずに済むのが利点です。一方で、拘束時間は減らないため、時間に追われている状況では効きにくくなります。

企業では、締め切りの厳しさを緩めるが出社日数は変えない、という調整がこれにあたります。判断の重さを一時的に下げる設計だと考えると当てはめやすくなります。

頻度を落とす|時間が取れないときの選択

頻度を落とすのは、週あたりの日数そのものを1〜2日減らす方法です。まとまった休みが取れるので回復量は大きくなりますが、間隔が空く分だけ感覚が鈍ります。落とす週の翌週に、量を戻す前の助走を1〜2日置くと戻りが安定します。

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(参考)部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月) – 文部科学省

日本の公的ガイドラインは休養日を週2日と定めている

回復を数値で定めた日本の公的文書は、部活動の分野に存在します。文部科学省が令和7年12月に示したガイドラインは、週2日以上の休養日と週11時間程度という活動時間の上限を基準として掲げています。企業向けの制度にはここまで具体的な数値の定めがないため、回復の設計を考えるうえで参照する価値があります。

週2日以上の休養日と週11時間という上限

ガイドラインは、1日の活動時間を平日2時間程度・休日3時間程度とし、週当たりの活動時間を11時間程度の範囲内と定めています。この数値は、公益財団法人日本体育協会が平成29年12月に示した「休養日を少なくとも1週間に1〜2日設け、週当たりの活動時間の上限を16時間未満とすることが望ましい」という研究の整理を踏まえて設定されたものです。

あわせて、過度の練習がスポーツ障害や外傷のリスクを高め、必ずしも体力・運動能力・技術の向上につながらないことも明記されています。量を増やせば成果が増えるという前提を、国の文書が否定している点は重要です。

長期休業中のオフシーズンを設ける

同じガイドラインは、長期休業中に一定期間のオフシーズンを設定することも求めています。週単位の休養日だけでなく、年単位で負荷を落とす期間を置くという二層の設計になっているわけです。これはそのままデロードとオフシーズンの関係にあたります。

企業に置き換えると、週の休日とは別に、年に1〜2回まとまった低負荷期間を置くという設計になります。繁忙期の周期がはっきりしている業種ほど、この二層構造は組みやすくなります。

Q. デロードに公的な裏づけはありますか?

国が数値で休養を定めているのは部活動の分野です。文部科学省のガイドラインは週2日以上の休養日と週11時間程度という上限を示し、長期休業中にオフシーズンを設けるよう求めています。一般の働き方についてはここまで具体的な数値の定めはありません。

(参考)部活動改革ポータルサイト – スポーツ庁

勤務間インターバルを入れている企業は6.9%にとどまる

回復を制度にしている企業は、いまのところ少数です。厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、勤務間インターバル制度を導入している企業は6.9%にとどまります。次の表は、同じ調査の3つの表から休息に関わる指標を企業規模別に取り出して並べ直したものです。

企業規模別に見た、休息に関わる3つの指標
休息に関わる制度 全企業 1,000人以上 30〜99人
勤務間インターバル制度を導入している 6.9% 20.1% 6.1%
リフレッシュ休暇制度がある 15.4% 44.4% 10.4%
年次有給休暇の取得率 66.9% 69.0% 64.9%

出典:厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況」第5表・第7表・第12表。Human Soarが企業規模別に3つの表を突き合わせて再集計した

勤務間インターバルは規模で3倍以上の開きがある

導入率は全企業で6.9%、1,000人以上で20.1%、30〜99人で6.1%と、規模によって3倍以上の差があります。導入企業の1企業平均勤務間隔時間は10時間51分でした。制度として終業から始業までの間隔を確保している企業は、まだ全体の1割に届いていません。

前年調査の5.7%からは1.2ポイント上がっています。上向きではあるものの、回復を仕組みで担保している企業は例外的だと考えたほうが実態に近くなります。

リフレッシュ休暇は規模で4倍の開きがある

リフレッシュ休暇制度がある企業は全体で15.4%です。1,000人以上では44.4%に達する一方、30〜99人では10.4%にとどまり、4倍以上の開きがあります。特別休暇制度そのものは60.3%の企業にありますが、その中身は夏季休暇41.5%と病気休暇28.4%が中心です。

つまり、多くの企業が持っているのは「季節で決まった休み」と「体調を崩したときの休み」であって、負荷の山に合わせて置く回復期間ではありません。デロードにあたる枠がそもそも制度として存在していない状態です。

有給の取得率は66.9%と過去最高|次は取る時期を決める

年次有給休暇の取得率は66.9%で、昭和59年以降で最も高い水準です。取得日数も12.1日と過去最多でした。取れる量は増えているので、次の論点はいつ取るかを設計に組み込めるかに移ります。

取得率を上げる施策は進んだ一方、繁忙期の直後に休みが来るように配置する発想はまだ一般的ではありません。年次有給休暇の計画的付与制度を持つ企業は40.8%あり、この枠組みは回復週の配置にそのまま使えます。

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Q. デロードを職場に取り入れる効果は何ですか?

繁忙期の後に回復が入る前提で計画を組めるようになることが最大の効果です。休む時期が先に決まっていると、担当者は仕事の前倒しや引き継ぎを設計できます。疲労が抜けないまま次の山に入る状態を避けられます。

(参考)令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況(労働時間制度) – 厚生労働省

アスリートの回復週を企業に移す3ステップ

制度を新しく作らなくても、既存のカレンダーと休暇制度の組み合わせで回復週は置けます。順番は山を書き出す、落とす週を先に押さえる、落とした週に測るの3つです。順番を入れ替えると、忙しい時期に押し出されて実行されなくなります。

①負荷の山を12か月分書き出す

デロードを職場に導入する3ステップ。負荷の山を書き出し、落とす週を先に押さえ、回復の指標を測る流れの図

最初にやるのは、部署ごとに1年分の負荷の山を書き出すことです。月次の締め、四半期の決算、繁忙シーズン、大型案件の納期と、山の位置は部署によって違います。全社で同じ週に休ませようとすると、どこかの部署が必ず動けなくなります。

山は「忙しい週」ではなく「判断の量が多い週」で拾うと精度が上がります。作業量が同じでも、意思決定が集中する週のほうが疲労は深く残ります。

②山の直後を落とす週として先に押さえる

書き出した山の直後1週間を、落とす週としてカレンダーに先に入れます。年次有給休暇の計画的付与制度を使えば、労使協定で日を指定して配置できます。40.8%の企業がすでにこの制度を持っているので、新設せずに運用を変えるだけで済む場合があります。

落とす週は全休にしません。会議を半分にする、新規の着手を止める、締め切りを翌週に寄せる、といった量の削減にとどめます。職場コンディショニングの考え方と同じで、動きを止めずに負荷だけ下げるのが要点です。

③落とした週に疲労と活力を測る

落とす週の前後で、同じ設問を同じ形式で測ります。職業性ストレス簡易調査票の疲労3項目と、活気の3項目(活気がわいてくる・元気がいっぱいだ・生き生きする)を使えば、費用をかけずに前後比較ができます。個人名を出さず、部署単位の平均だけを見ます。

1回の測定では判断できません。3サイクル分ほど続けて、落とす週の翌週に数値が戻るかどうかを見ます。戻らない場合は、落とす幅が足りないか、山の位置を取り違えている可能性があります。

Q. デロード中は完全に休んだほうがいいですか?

完全に止めるより、量を落として動き続けるほうが戻りが早くなります。トレーニングでも仕事でも、間隔が空きすぎると感覚と段取りを取り戻すのに時間がかかります。軽い負荷を残すのがデロードの考え方です。

まとめ

デロードは、休むかどうかの判断を個人の感覚から外して、あらかじめカレンダーに置いてしまう考え方です。要点は次の5つになります。

  • デロードは負荷を意図的に落とす期間で、3〜6週に1回・5〜7日が目安。完全に止めるのではなく動きは続ける
  • 落とす対象は量・強度・頻度の3つ。量を4〜6割まで落とすのが最も戻りが早い
  • 文部科学省のガイドラインは週2日以上の休養日と週11時間程度の上限を定め、長期休業中のオフシーズン設定も求めている
  • 勤務間インターバル制度の導入は6.9%、リフレッシュ休暇は15.4%。回復を制度にしている企業はまだ少数
  • 年次有給休暇の計画的付与制度(40.8%の企業が保有)を使えば、新しい制度を作らずに回復週を配置できる

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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