ツエーゲン金沢のパートナーメニューを開いて、少し驚きました。「クラブパートナーには、年間30万円からなることが可能です」とはっきり書いてあるのです。
そして数えると、パートナー315社に後援会の法人77社を加えて実数387社。さらにホームスタジアムの命名権は年額3,111万円でした。
ツエーゲン金沢のスポンサー・パートナーは、8区分・延べ315枠

クラブ公式サイトの「パートナー一覧」を2026年9月24日に取得して集計しました。ツエーゲン金沢は協賛企業を「パートナー」と呼んでいます。以下、区分名はクラブの表記に合わせます。
区分は8つ。ユニフォームパートナー10、トップパートナー25、ゴールドパートナー22、シルバーパートナー53、ブロンズパートナー149、アシストパートナー43、地域連携パートナー1(NTTドコモ)、サプライヤー12。合計で延べ315枠です。
サプライヤー欄には26枠が表示されていましたが、うち14枠はユニフォームパートナー10社のロゴの再掲と、クラブ自身のページへ飛ぶリンクでした。実体は12社と判断して除きました。
そして法人格の表記ゆれを揃えて重ねても、重複はゼロでした。同じ企業が2つの区分に載っている例が1件もありません。近い名前で迷ったのは米沢電気と米沢電商、大鉄工業と大同工業の組み合わせだけで、どちらも別法人として分けています。
この連載では、上位区分とサポートカンパニーの重複が10件あった川崎フロンターレ、区分をまたぐ企業が31社あったヴァンラーレ八戸などを見てきました。1社1区分が徹底されているのは金沢だけです。
Q. ブロンズパートナー149枠はどんな企業ですか。
石川県内の中小企業が中心です。建設業、製造業、飲食店、動物病院、税理士事務所、社会保険労務士法人などが並びます。全区分がロゴ画像での掲載で、企業名テキストだけの区分はありません。下位までロゴを出す設計という点は、ブラウブリッツ秋田(ブロンズ123枠)と共通しています。
料金は「年間30万円から」。後援会は3プランを公開している
金額をここまで書いているクラブは、この連載では2例目です。
| プログラム | 金額 | 対象 |
|---|---|---|
| クラブパートナー(4カテゴリー) | 年間30万円から | 法人 |
| 後援会 | 10万円/5万円/3万円の3プラン | 法人・個人 |
| 挑戦の芽 基金 | 法人1口10,000円/個人1口3,000円 | 法人・個人 |
出典:ツエーゲン金沢「パートナーメニュー」「後援会」「挑戦の芽 基金」より筆者作成。挑戦の芽 基金の対象期間は2026年4月1日から2027年3月31日まで
クラブパートナーは年間30万円から。カテゴリーはトップ、ゴールド、シルバー、ブロンズの4つで、この30万円がどのカテゴリーの下限なのかは書かれていませんが、入口の金額としては明示されています。
後援会は10万円、5万円、3万円の3プラン。法人に限らず個人でも入会できます。会員期間は2026年2月1日から2027年1月31日まで。さらにアカデミーとブラインドサッカーチームを支援する「挑戦の芽 基金」は、法人1口1万円、個人1口3,000円です。
この連載で金額をページ上に明記していたのは浦和レッズ(年間500万円〜/レッズビジネスクラブ年間24万円〜)だけでした。ファジアーノ岡山や徳島ヴォルティスは法人会員の階層別金額を公開していましたが、上位のパートナー区分の下限まで書いているのは浦和と金沢の2クラブです。
Q. 協賛金は経費としてどう扱われますか。
国税庁は、不特定多数への宣伝的効果を意図した費用は広告宣伝費、特定の取引先などを接待・供応する費用は交際費等にあたるという区分を示しています。ツエーゲン金沢は共通メニューのうち「露出」「商標」「呼称権」「サンプリング」が前者に寄り、「社員招待」「来賓席利用」は後者に近づきます。クラブが権益を項目別に公開しているので、契約前に切り分けやすいのは利点です。実際の処理は顧問税理士に確認してください。
(参考)No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分 – 国税庁
カテゴリーの差は「活用できる頻度」だと明記されている
権益の説明が具体的です。
| メニュー | 内容 |
|---|---|
| 露出 | 公式サイト、各種制作物、スタジアム正面の看板に掲載 |
| 商標 | クラブエンブレムと公式マスコットを自社製品・広告制作物に利用できる |
| 呼称権 | 「ツエーゲン金沢を応援しています」とPR目的で表示できる |
| サンプリング | スタジアムで自社製品やチラシを配布できる |
| 社員招待 | 従業員を試合に招待、または優待価格でチケット購入 |
| 来賓席利用 | メインスタンド上部の来賓室・来賓席を利用できる |
| 選手のイベント参加 | 自社イベントに選手が参加(一部費用が発生) |
| パートナーサイト | パートナー企業向けの案内と、マーケティング施策例の紹介 |
出典:ツエーゲン金沢「パートナーメニュー」より筆者作成
注目したいのは、クラブが「カテゴリーにより上記共通メニューの活用可能な頻度が変化いたします」と書いている点です。区分によってできることの種類が変わるのではなく、回数が変わるという設計です。
この連載では、浦和レッズが「ユニフォーム広告はトップのみ、トレーニングウェア広告はオフィシャル以上」と項目ごとに対象を切り分けていました。金沢は種類ではなく頻度で差をつけるという逆の考え方になります。
さらに契約金額に応じて選べる「カスタマイズメニュー」があり、ユニフォームの掲出位置が胸、鎖骨、左袖、背中、背中裾、パンツと部位別に示されています。試合前練習ウェアも胸・鎖骨、袖、背中、パンツに分かれています。
Q. サプライヤーという枠は何ですか。
クラブの説明では、ドリンク、ウェア、スーツ、その他機材といった物品の提供によるパートナーシップです。金銭ではなく現物で支援する形で、実体は12社。アクアクララ北陸、金沢豆冨、第一三共ヘルスケア、ニチバン、ユニフォームレンタル金沢、オーダースーツSADA、薄井青果などが入っています。事業規模や業種に合わせた形が選べると案内されています。
後援会を加えると、協賛企業は387社になる
パートナーとは別に、後援会の協賛企業も一覧で公開されています。
| 区分 | 件数 |
|---|---|
| スペシャル会員 | 26 |
| プラチナ会員 | 33 |
| ゴールド会員 | 18 |
| 法人・団体の小計 | 77 |
| 個人会員 | 54 |
出典:ツエーゲン金沢「後援会」の協賛企業一覧(2026年度)より筆者集計。会員期間は2026年2月1日から2027年1月31日まで
法人・団体は77件。パートナー315社と重ねると、両方に載っているのは5件でした(北都鉄工、北本工業、コマツ石川、企業市民宣言の会、ブリヂストンタイヤソリューションジャパン)。
したがってパートナーと後援会を合わせた実数は387社。これに個人会員54人が加わります。
この連載では、クラブが2系統・3系統の協賛プログラムを持つ例を何度も見てきました。鹿島アントラーズはパートナー75枠+ビジネスクラブ123社、浦和レッズはパートナー112枠+ビジネスクラブ416社、川崎フロンターレはロゴ122枠+サポートカンパニー287社。金沢の387社はJ3のクラブとしては突出した数です。
Q. 後援会の3プランと3つの会員区分は対応しているのですか。
クラブは対応関係を明記していません。パートナーメニューのページに「10万円、5万円、3万円のプランをご用意しております」とあり、後援会のページにスペシャル・プラチナ・ゴールドの3区分があるので、順番に対応している可能性は高いと読めます。ただし断定できる記載がないため、この記事では別々に示しました。
決算は売上12億4000万円。営業利益800万円、当期純利益は0円
決算の主な項目をJ3平均と並べます。
| 項目 | ツエーゲン金沢 | J3平均 |
|---|---|---|
| 売上高 | 12億4000万円 | 8億8200万円 |
| スポンサー収入 | 5億6500万円 | 4億9800万円 |
| 入場料収入 | 1億6300万円 | 9100万円 |
| 物販収入 | 1億2000万円 | 7800万円 |
| Jリーグ配分金 | 2700万円 | 2800万円 |
| アカデミー関連収入 | 7200万円 | 5000万円 |
| その他収入 | 2億6100万円 | 9900万円 |
| トップチーム人件費 | 3億8900万円 | 2億7600万円 |
| 販売費および一般管理費 | 2億9800万円 | 2億3200万円 |
| 営業利益 | 800万円 | ▲3300万円 |
| 当期純利益 | 0円 | ▲2800万円 |
出典:公益社団法人日本プロサッカーリーグ「2025年度 J3 クラブ決算一覧」より筆者作成。対象期間は2025年2月から2026年1月。J3平均は数値を開示した16クラブの平均。金額は万円未満を四捨五入
売上高12億4000万円はJ3平均の140.6%。入場料収入1億6300万円は179.1%、その他収入2億6100万円は263.6%で、J3平均を大きく上回ります。
そして営業利益800万円の黒字です。J3平均が営業損失▲3300万円なので、赤字クラブが多いなかで黒字を確保しています。経常利益は300万円、法人税等300万円を差し引いて当期純利益はちょうど0円でした。
ただし累積では赤字です。利益剰余金は▲2億7400万円で、資本金3億3000万円がそれを上回るため純資産は5600万円のプラス。債務超過ではないものの、余裕は大きくありません。
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Q. アカデミーの収支はどうなっていますか。
アカデミー関連収入7200万円に対し、アカデミー関連経費は1億1300万円。差し引き4100万円の持ち出しです。J3平均は収入5000万円・経費6400万円ですから、収入も経費も平均より大きいことになります。前の見出しで触れた「挑戦の芽 基金」がアカデミーとブラインドサッカーチームの支援を目的としているのは、この構造と対応しています。
(参考)2025年度 J3 クラブ決算一覧(PDF) – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ
その他収入が売上の21.0%。J3で2番目に高い

決算のなかで、このクラブの性格がいちばん出ているのがその他収入2億6100万円です。
売上高に占める割合は21.0%。数値を開示した16クラブのなかで2番目に高い比率でした。1位がヴァンラーレ八戸の26.4%、3位がAC長野パルセイロの17.3%。J3平均は11.2%です。
Jリーグの資料はその他収入の内訳を示していないので、何が入っているのかは分かりません。ただしこのクラブには手がかりがあります。運営会社の株式会社石川ツエーゲンが、ホームスタジアムの指定管理者の代表を務めているのです。これは次の見出しで詳しく見ます。
一方でスポンサー収入5億6500万円が売上に占める割合は45.6%。これは開示16クラブのなかで3番目に低い数字です。SC相模原の83.5%、FC大阪の73.3%、テゲバジャーロ宮崎の71.1%とは対照的で、協賛だけに寄らない収入構造になっています。
Q. 入場料がJ3平均の1.8倍なのはなぜですか。
2024年2月に開業した専用スタジアムが効いていると考えられます。金沢市の資料によれば収容人数は10,444人(うちいす席約8,000席)で、北陸初のJリーグ規格を満たすフットボール専用スタジアムです。入場料収入1億6300万円はJ3平均9100万円の179.1%。ただしクラブが要因を説明しているわけではないので、これは推測です。
(参考)2025年度 J3 クラブ決算一覧(PDF) – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ
スポンサー1社あたりは約146万円

スポンサー収入5億6500万円を実数387社で割ると、単純平均で1社あたり約146万円です。
この連載で調べた27クラブのなかでは下から11番目。FC岐阜の約147万円とほぼ同じ水準で、J3・J2の下位規模のクラブが並ぶ帯に入ります。
後援会77社を除いてパートナー315社だけで割ると約179万円。差は小さく、1.2倍にとどまります。この連載では鹿島アントラーズが2.6倍、川崎フロンターレが3.3倍、浦和レッズが4.9倍の開きがありました。金沢は上下の格差が小さいということになります。
公開されている年間30万円という下限と照らすと、315社が全員30万円でも合計9450万円で、スポンサー収入5億6500万円の16.7%。上位カテゴリーの契約額は30万円をかなり上回ると読むのが自然です。
Q. 協賛を検討するなら、どこから入れますか。
金額が分かっている入口が3つあります。クラブパートナーの年間30万円から、後援会の3万円から、挑戦の芽 基金の法人1口1万円から。金額の刻みが公開されているぶん、予算に合わせて選びやすいクラブです。ロゴ掲出とユニフォームの部位まで案内されているので、何を得たいかが決まっていれば相談も具体的に進められます。
スタジアム名は年3,111万円。運営会社が指定管理者の代表でもある
ホームスタジアムは金沢スタジアム(金沢市民サッカー場)、愛称は金沢ゴーゴーカレースタジアムです。金沢市が詳細を公表しています。
ネーミングライツパートナーは株式会社ゴーゴーカレーグループ。契約金額は年額3,111万円、契約期間は令和6年2月18日から5年間です。金沢市は「施設の良好な管理・運営を維持するための新たな財源を確保するとともに、ホームタウンチームの支援や応援機運を高めることを目的として」導入したと説明しています。
この連載で確認してきた自治体の命名権と並べると、メルカリスタジアム(茨城県)の年1億5000万円、デンカビッグスワンスタジアム(新潟県)の年4730万円、ベスト電器スタジアム(福岡市)の年3600万円に次ぐ4番目の水準です。岡山県のJFE晴れの国スタジアム(年3000万円)、川崎市のUvanceとどろきスタジアム by Fujitsu(年2000万円)を上回ります。
そしてもうひとつ重要な事実があります。スタジアムの指定管理者は「金沢スタジアム共同事業体」で、その代表が株式会社石川ツエーゲン。つまりクラブの運営会社が、自分のホームスタジアムを管理していることになります。構成団体はケィ・シィ・エスと金沢市スポーツ事業団です。
スタジアム整備にはふるさと納税も使われました。金沢市のガバメントクラウドファンディングは観戦環境の向上を目的に目標1000万円で実施され、5,639万5,500円・1,650人の寄附が集まっています。目標の5.6倍で、トンネルラウンジやフィールドシート、キッズスペースの遊具などが整備されました。
Q. クラブが指定管理者だと協賛先として何が違いますか。
スタジアムの使い方をクラブ側で設計できる範囲が広がります。看板の位置、ブース出展、飲食、イベント利用などを一体で相談できる可能性があります。決算のその他収入2億6100万円がJ3平均の263.6%であることも、指定管理業務と無関係ではないかもしれません。ただしJリーグの資料は内訳を示しておらず、クラブも説明していないため、いくらが指定管理によるものかは分かりません。
(参考)金沢スタジアム(金沢市民サッカー場再整備事業) – 金沢市
顔ぶれから見えること
最後に、387社の顔ぶれから読めることを3つ書きます。
ユニフォームパートナー10社に北國銀行と北國新聞
ユニフォームパートナーは10社。システムサポート、北國新聞、北國銀行、米沢電気、求人アスコム、TSUKIBOSHI、中森かいてき薬局、AOC、KSD、hummel(サプライヤー)。石川県を代表する金融機関と地元紙が同じ区分に並んでいます。連載ではファジアーノ岡山が3行、徳島ヴォルティスが3行を上位に置いていましたが、金沢は1行に絞られています。
トップパートナー25社は地元の中堅企業が中心
ネスク、金沢ケーブル、大鉄工業、渋谷工業、北國観光、別川製作所、ホクスイ、セコム北陸、テレビ金沢、MRO、北陸電話工事、シーピーユー、石川日産・プリンス金沢など。全国企業は明治安田生命くらいで、地元企業の比率が高い構成です。地域連携パートナーにNTTドコモが1社入っています。
クラブが訴求データを公開している
パートナー募集のページには、来場者数推移、試合視聴数(約100,000回×年間40試合強)、公式サイトの平均月間PV数、ファンクラブ会員数、アカデミー・スクール生の人数、ホームタウン活動が年間222回・参加人数6,000名といった数字が並びます。この連載では浦和レッズが入場者数を前面に出していましたが、J3でここまで数字を出しているのは金沢だけでした。
Q. 結局、ツエーゲン金沢の協賛構造はどう見ればよいですか。
金額と権益が最も開かれているクラブのひとつです。パートナーは年間30万円から、後援会は3万円から、基金は1万円から。4カテゴリーの差は「できることの種類」ではなく「使える頻度」だと明記され、ユニフォームの部位まで一覧化されています。実数387社はJ3では突出した規模で、1社あたりの格差も1.2倍と小さい。スタジアム名は年3,111万円で、その管理はクラブの運営会社が代表を務める事業体が担っています。
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