目標管理(MBO)の目標が、期初に書いて期末に見るだけになっていませんか。スポーツ心理学の研究では、結果の目標よりも「何をどう行うか」を決めた目標のほうが、成績を大きく伸ばしていました。期の成果目標を、毎週の行動目標まで分けて書く形に組み直し、目標を現場の行動につなげます。
対象となるお客さま
- 目標管理制度を見直したい人事部・経営企画の担当者
- 目標が現場の動きにつながらないと感じている経営者・事業責任者
- 部下の目標設定と面談を担当している管理職
よくあるお悩み
- 目標シートが期初に書かれたまま、期中に開かれない
- 売上などの数字だけが目標で、日々何をすればよいかが書かれていない
- 期末の面談が、達成したかどうかの確認だけで終わる
課題|目標管理を実施する企業の半数以上が、意欲も成長も引き出せていない
目標管理は多くの企業で使われていますが、うまく回っているとは限りません。パーソル総合研究所が2021年に、従業員100人以上の企業800社と正社員8,000人に行った「人事評価制度と目標管理の実態調査」では、MBO・OKRなどの目標管理制度を実施している企業は53.8%でした。
そのうえで、目標管理の課題として「モチベーションを引き出せていない」「成長・能力開発につながっていない」「成果に報いる処遇が実現できない」を挙げた企業が、それぞれ半数を超えています。同研究所は、目標管理制度の多くが形骸化している様子がうかがえる、とまとめています。
原因|目標が期末の結果だけで、毎週の行動まで分かれていない
目標を書く人の意欲が低いわけではありません。原因は、目標の書き方と、目標を見る間隔にあります。
- 目標が結果の数字だけ:売上や受注件数は、市場や顧客の動きにも左右されます。自分で動かせる部分が書かれていないので、明日から何をすればよいかが決まりません。
- 見るのが期末だけ:半年に1度しか目標を開かないと、ずれに気づいたときには取り返せません。
- 書き方を教わっていない:目標の立て方を学ぶ機会がないまま、毎期同じ形のシートを埋めています。
同じ調査では、従業員の不満の上位に「目標を定量化するのが難しい」「個々人や部署により目標の難易度が違う」が約6割で並びました。評価のプロセスを制度どおりに行えている上司は3割前後にとどまり、部下の7割以上が目標設定に関する研修を受けたことがないと答えています。
スポーツ知見|スポーツ心理学では、行動を決めるプロセス目標の効果が最も大きい
スポーツ心理学では、目標を3つに分けて扱います。勝敗や順位のように相手にも左右される「結果目標」、自己記録やシュート成功率のように自分の基準で決める「パフォーマンス目標」、そして動作の中で何に気をつけるかを決める「プロセス目標」です。
オーストラリアのWilliamsonらは、スポーツでの目標設定の研究を系統的に集めて分析し、2022年に学術誌「International Review of Sport and Exercise Psychology」に発表しました。検索で見つかった17,841本の文献から条件に合う27本を選んでまとめた結果、成績を伸ばす効果の大きさ(効果量 d)は、プロセス目標が1.36、パフォーマンス目標が0.44、結果目標が0.09でした。プロセス目標は「自分ならできる」という感覚(自己効力感)も大きく高めていました(d=1.11)。
もう1つ分かったのは、目標を数字まで具体的にしたかどうかでは、成績にはっきりした差が出なかったことです。また、目標を立てたあと本人が進み具合を確かめて直す「自己調整」の考え方にもとづく研究(5本)で、成績の伸びが最も大きくなりました(d=1.53)。
ただし、試合と仕事は同じではありません。この研究はスポーツの課題に取り組む人を調べたもので、会社員の仕事で確かめたものではありません。成績が数週間で分かるスポーツと違い、仕事の成果は数か月かかって出ます。そのため、まず1つの部署で試し、行動目標の実施状況と成果の数字を自社のデータで確かめてから広げます。
解決策|目標を成果・水準・行動の3段に分けて書く
目標管理の制度をやめるのではなく、目標の書き方を変えます。期の成果目標はそのまま残し、その下に自分で動かせる目標を2段足します。
- 成果目標:期末に見る結果の数字(売上・受注・品質など)。1人1〜2個に絞り、人事評価の基準として残す
- 水準目標:成果目標につながる、自分で動かせる数字(商談の件数・提案書の提出数・納期を守った割合など)。月に1回見る
- 行動目標:毎週の仕事のやり方(「初回の商談で、顧客の困りごとを3つ聞く」など)。1人2〜3個まで
- 週1回の自己点検:行動目標を実行できたかを本人が週に1回つけ、月次レビューで上司と一緒に行動目標を直す
いちばん効くのに抜けやすいのが、週1回の自己点検です。行動目標を書いても、見返さなければ期初のシートと同じになります。本人が毎週つけ、月に1度上司と見直す。この流れを作ることで、目標が日々の仕事の中で使われるようになります。
進め方|1つの部署の目標シートから試し、評価制度とつなぐ
最初から全社の目標シートを変えると、書く量が増えただけの制度になりがちです。まず1つの部署で、3段の目標と週1回の自己点検が回るかを確かめてから広げます。
診断では、今期の目標シートを集め、書かれた目標を成果・水準・行動の3つに分けて数えます。あわせて管理職と社員に聞き取りを行い、目標が期中にどれだけ使われているかを確かめます。設計・試行では1つの部署で3段の目標シートと週次点検表を使い、月次レビューを回します。定着ではほかの部署に広げ、人事評価の手順とのつなぎ方を決めます。
期間は目安です。診断だけ、1つの部署だけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意・聞き取り・行動目標の例文づくり・月次レビューの進行を担い、御社には目標シートの共有と試す部署の決定をお願いします。
成果物|支援が終わっても社内で回せる4つの仕組み
成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の職種と実際の目標をもとに、一緒に作ります。
中心になるのが「3段の目標シート」です。期初に社員が成果目標・水準目標・行動目標を1枚に書き、上司との目標面談でそのまま使います。書き方に迷わないよう、職種ごとの「行動目標の例文集」も作ります。営業・開発・管理部門など、数字にしにくい仕事でも行動目標を書けるようにするためです。
運用に入ったら、社員は「週次点検表」に行動目標を実行できたかを毎週つけます。上司はその記録をもとに、月に1回、行動目標を続けるか直すかを部下と決めます。この進め方をまとめた「月次レビューの手引き」まで整えるので、支援が終わった後も社内だけで回し続けられます。
期待できる効果|経営・管理職・社員の3つが変わる
経営にとっては、期末を待たずに、現場で何が行われているかを毎月の記録で追えるようになります。管理職は、面談で話す材料が「達成したかどうか」から「どの行動を続け、どれを直すか」に変わります。社員は、明日から何をすればよいかが目標シートに書かれている状態になります。
見る数字は、目標の達成率だけではなく「行動目標を毎週点検できた人の割合」です。点検が続かなければ、3段に分けても期初のシートと同じです。もう1つ、水準目標の数字が月ごとにどう動いたかを見ると、行動目標が成果につながっているかが分かります。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、目標の書き方を見直す時期です。
Human Soarからのコメント
目標管理がうまくいかないとき、目標の数字の高さや評価の厳しさに目が向きがちです。けれども研究が示しているのは、結果を目標にするだけでは人の動きは変わりにくく、「何をどう行うか」まで決めたときに力が出るということでした。目標管理の制度はそのままに、目標の書き方と見返し方を、御社の仕事に合わせて一緒に組み直します。
よくあるご質問
Q. 行動目標を重視すると、成果が軽く見られませんか?
軽くはなりません。人事評価の基準は成果目標のまま残し、行動目標と水準目標は成果に近づくための道筋として使うためです。月次レビューで、行動目標が水準目標の数字を動かしているかを確かめ、動いていなければ行動目標のほうを直します。
Q. OKRを使っている会社でも取り入れられますか?
取り入れられます。OKRの成果指標を成果目標や水準目標にあて、その下に毎週の行動目標と自己点検を足す形にします。目標の枠組みを入れ替える必要はなく、今の制度に週1回の点検を加えるところから始められます。
Q. 管理部門のように数字にしにくい仕事でも使えますか?
使えます。行動目標は数字ではなく「何をどう行うか」を書く目標なので、管理部門でも書けます。スポーツ心理学の研究でも、目標を数字まで具体的にしたかどうかで成績にはっきりした差は出ていません。職種ごとの例文集を作り、書き方に迷わないようにします。
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