2025年9月、Jリーグ・ヴィッセル神戸に所属するゴールキーパー新井章太は、ルヴァンカップ準々決勝の一戦で左膝の前十字靭帯を断裂した。プロ16年目、37歳にして初めて経験する大怪我だった。本稿では、雑誌ターザンによる本人インタビューをもとに、新井が語ったリハビリの実態と、そこから見えてくる怪我からの復帰プロセスを一次情報として紹介する。
37歳ベテランGKを襲った前十字靭帯損傷
試合中、ゴール前に抜け出した相手選手のシュートを防ごうと間合いを詰めた瞬間、本来なら滑るはずの左足先が芝生に引っかかり、飛び出した勢いがそのまま左膝に加わった。何万回と繰り返してきた練習通りの動きだったにもかかわらず、その日のピッチのコンディションの違いがそのまま重傷につながった。
新井は当時をこう振り返る。「常に戦っていたいタイプだったから、直後にはちょっとずつリハビリをするなんて無理だと思いました。何ヶ月もサッカーしないなんて、無理だろって」。怪我から2週間後には、腸脛靭帯を部分的に摘出して前十字靭帯を補強する手術を受けている。手術という選択自体が、その後8カ月に及ぶ長期のリハビリの起点となった。
(参考)「何ヶ月もサッカーしないなんて、無理だろって」サッカー選手・新井章太 – Tarzan Web
「起きたことは仕方がない」新井章太が貫く受容の思考法
怪我をした直後、一瞬だけ引退が頭をよぎったという新井だが、精神的な落ち込みはわずか1週間ほどだったと語る。その背景には、若手時代に所属チームを解雇されトライアウトを受けていた経験がある。「あれが自分にとっての底辺で、怪我は、復帰したらプレーできるじゃんって」という言葉が、受容の速さを物語っている。
先を考えすぎず「今」に集中する
「年齢を重ねて思うのは、プレーをしていても1年ってあっという間なんですよ。リハビリの8カ月も、きっとすぐに過ぎるんですよ。だから、先のことは考えない」と新井は明かす。長期的な不安に押しつぶされるのではなく、目の前の課題に集中する姿勢が、地道なリハビリを継続する原動力になっている。試合に出られる保証がない復帰後のことまで考えれば気が滅入ってしまうが、「考えても、明日くらいまでかな」と割り切ることで、日々のリハビリメニューに集中できているという。
復帰へ向けた体づくりのプロセスと医学的な目安
新井は術後4カ月を過ぎた時点で軽いタッチでボールを蹴れるまで回復し、ストレッチなど「今できること」を一つずつ積み重ねながら、チームの練習にスムーズに合流できる体づくりを進めている。個人の努力に加えて、前十字靭帯損傷からの競技復帰には一般的な医学的目安も存在し、それを知ることでリハビリの現在地を客観的に把握しやすくなる。
前十字靭帯再建術後、競技復帰までの標準的な期間
整形外科領域の情報では、再建靭帯と骨の癒合には6〜8週間、移植腱が強度を回復するまでに3〜4カ月、そして競技復帰の目安とされるのは手術から6〜8カ月とされる。筋力については健側の80〜90%程度の回復が望ましいとされ、術後1年でのスポーツ復帰率は33〜92%、競技レベルの高い選手でも44%が受傷前のレベルに戻れていないという報告もある。新井が語る「先のことを考えない」という姿勢は、この長く不確実な回復過程を乗り切るための現実的な対処法とも重なる。復帰を阻害する要因として疼痛や心理的不安、筋力低下が挙げられており、メンタル面のコントロールが身体面の回復と同じくらい重要であることがうかがえる。
(参考)前十字靱帯(ACL)損傷後のリハビリテーション – 神戸大学医学部附属病院
チームスポーツだからこそ得られた支え
オフシーズンにクラブハウスで一人リハビリをしていた際、周囲がオフに入りやる気が出なかった経験から、新井は「サッカーがチームスポーツで良かった」と実感したという。いつも周囲に人がいて声をかけてくれる環境が、孤独になりがちなリハビリ期間を支えていた。
同じ怪我を経験した選手たちとのつながり
清水エスパルスの高橋祐治や、同時期に前十字靭帯を負傷したドイツ在籍の町田浩樹など、同じ怪我をした選手同士でやり取りを重ねているという。「同じ怪我をした者同士だから、リハビリについても『ああ、そうなんだ』って話せる」と新井は語り、経験者同士のネットワークが精神面の支えになっていることがうかがえる。さらに元日本代表の中村憲剛からも度々連絡があるといい、自身の怪我と復帰の経験をブログで共有してもらうなど、世代を超えた助言も新井の回復を後押ししている。
家族の存在とこれからの目標
四児の父である新井にとって、練習から帰宅した際に家族が迎えてくれる環境は、前を向く力の源になっている。小学3年生の息子には「高校卒業ぐらいまでやってやるよ」と話しており、「こんなに早く引退なんてできない」という思いが、地道なリハビリを支え続けている。
読者が今日から実践できること
プロアスリートでなくとも、怪我からの回復プロセスには学べる点が多い。新井の姿勢から読み取れるのは、回復の見通しが立たない不安な時期こそ、長期の結果ではなく「今日できる小さな一歩」に意識を向けることの大切さだ。ストレッチ一つ、可動域の少しの改善一つを積み重ねる姿勢は、競技レベルを問わず怪我からの復帰に共通するアプローチといえる。
また、一人で抱え込まずに周囲の力を借りることも重要だ。新井のように同じ経験をした人とつながる、家族やチームの支えを実感する、といった人間関係の要素は、身体的なリハビリと同じくらいメンタル面の回復に影響する。焦らず、しかし歩みを止めずに、今できることを積み重ねていく姿勢こそが、怪我という逆境を乗り越える鍵になる。
まとめ
- 新井章太は2025年9月に左膝前十字靭帯を損傷し、手術を経てリハビリに取り組んでいる。
- 怪我の受容が早かった背景には、若手時代の解雇経験という「底辺」を知っていたことがある。
- 「先を考えすぎない」という思考が、長期リハビリを継続する上での支えになっている。
- 前十字靭帯損傷からの競技復帰には一般に6〜8カ月、筋力は健側の80〜90%の回復が目安とされる。
- チームメイトや同じ怪我を経験した選手、家族とのつながりが、精神的な回復を後押ししている。
よくある質問
新井章太選手はどんな怪我をしたのか
2025年9月、試合中に左膝の前十字靭帯を損傷し、手術を受けた。プロ16年目にして初めての大怪我だったと本人が語っている。
前十字靭帯損傷からの競技復帰にはどれくらいかかるのか
一般的な目安として手術から6〜8カ月とされるが、筋力の回復度合いや心理的な準備状況によって個人差が大きい。
リハビリ期間中に大切な考え方は何か
新井選手のケースでは、先のことを考えすぎず「今できること」に集中する姿勢と、チームメイトなど周囲の支えを頼ることが重要な要素として語られている。
怪我を経験した選手同士のつながりにはどんな意味があるのか
同じ怪我を経験した者同士は感覚を共有しやすく、リハビリの不安や工夫について率直に話せる関係が精神的な支えになっている。
怪我からの復帰は選手個人の努力だけでなく、周囲との関わりや正しい医学的知識に支えられている。他の選手のケースはアスリート特集で、怪我からの復帰に関する記事は怪我からの復帰カテゴリーであわせて紹介している。
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