横浜F・マリノスに所属する宮市亮は、右足首の靭帯損傷を契機に、左太腿裏筋断裂、左膝前十字靭帯断裂、右膝前十字靭帯断裂、グロインペイン症候群、さらに右膝前十字靭帯断裂と、度重なる大怪我を乗り越えてきたJリーガーだ。本稿では雑誌ターザンによる本人インタビューをもとに、宮市が語った怪我との向き合い方と、そこから見えてくる復帰プロセスを一次情報として紹介する。
早熟のスピードスターを襲った怪我の連鎖
高校生でイングランド・プレミアリーグの名門アーセナルFCへ加入した宮市は、圧倒的なスピードで世界に衝撃を与えた選手だった。しかし期限付き移籍先のウィガン・アスレティックFCで対戦相手の悪質なタックルを受け、右足首前距腓靭帯を損傷。キャリア初の手術に踏み切った。
(参考)アスリートにとって、怪我とは何か。サッカー選手・宮市亮(前編) – Tarzan Web
足首手術という決断が後の膝の怪我につながった
宮市は当時を振り返り「今、思えばあの手術の判断が正しかったのかどうか」と語る。人工靭帯を入れて強度を高める手術を選んだ結果、足首の可動域が失われ、地面からの反発を吸収する役割が股関節と膝に偏るようになった。「股関節と足首が連動しないと、間にある膝がダメージを食らってしまう」という宮市自身の言葉が、後の前十字靭帯損傷の遠因を物語っている。
保存治療という選択肢との比較
「正直、保存治療で治せたのかなとは思います」と宮市は振り返る。セカンドオピニオンを含め複数の選択肢を検討すべきだったという後悔は、怪我の治療方針を決める際に一つの視点を検討することの重要性を示す実例といえる。
三度の前十字靭帯断裂とリハビリの現実
2014年、ドイツ・ザンクトパウリ移籍直後の練習試合で左膝前十字靭帯を断裂。2017年には右膝でも同様の怪我を負い、外側側副靭帯断裂、半月板損傷も併発した。全治8カ月の診断を受けた宮市は、著書で「『やめるかも』という感情が脳裏をよぎった」と当時の心境を明かしている。
前十字靭帯損傷の再受傷リスクと回復の目安
整形外科の情報によれば、前十字靭帯再建術後の競技復帰までの目安は手術から6〜8カ月とされ、筋力は健側の80〜90%程度の回復が望ましいとされる。術後1年時点のスポーツ復帰率は33〜92%にとどまり、競技レベルの高い選手でも44%が受傷前のレベルに戻れていないという報告もある。宮市が経験した複数回の断裂は、こうした統計が示す再受傷リスクの現実を体現しているといえる。
(参考)前十字靱帯(ACL)損傷後のリハビリテーション – 神戸大学医学部附属病院
メンタルトレーナーとの出会いが変えた考え方
怪我とリハビリを繰り返す中で、宮市はメンタル・トレーナーの森川陽太郎の著書に出会い、自ら連絡を取ってカウンセリングを受けるようになった。「理想が高くなりすぎていて、自分がいいプレーをしたときにも満足できなかった」という状態から、達成可能な目標設定へと意識を切り替えたことが、精神面の安定につながったという。
「ゼロに戻す」リハビリの心理的負荷
「怪我って、マイナスになって、リハビリでゼロに戻すまでに時間がかかって、なかなかプラスが積み上がっていかない」と宮市は表現する。怪我をしない選手が経験を積み重ねていく一方で、自分は常にゼロからのスタートを強いられるという焦燥感は、複数回の大怪我を経験したアスリートに特有の心理的負荷を浮き彫りにする。
家族との時間がリハビリを支えた
2014年の左膝、2017年の右膝、いずれも結婚や第一子誕生という人生の節目と重なった。「絶対にこのままでは日本に帰れない、終われないぞっていう思いだけでした」という宮市の言葉には、家族への責任感がリハビリを継続する原動力になっていたことがうかがえる。
怪我の経験から得た他者理解
複数回の大怪我を経験したことで、宮市は同じような境遇にある選手の気持ちに寄り添えるようになったと語る。怪我の痛みや不安は経験した者にしか分からない部分が大きく、リハビリ中の孤独感を和らげるには、同じ経験を持つ選手同士のつながりが大きな意味を持つ。宮市自身も、後進の選手たちにとってそうした存在になりつつある。
プレミアリーグの名門クラブから期待された若手時代と、度重なる怪我でキャリアが停滞した時期を経て、宮市は「理想と現実のギャップ」を受け入れることの難しさと大切さを繰り返し語っている。結果を出すことだけに囚われていた思考から、達成可能な目標を積み重ねる思考へと転換したことが、長期にわたるリハビリを継続する精神的な土台になったといえるだろう。
怪我なくシーズンを完走できた経験の意味
2018〜2019年シーズンには公式戦25試合、翌シーズンには30試合と、年間を通じて怪我なく戦い抜いた経験を宮市は持つ。度重なる怪我を経験してきたからこそ、怪我なくシーズンを終えられることの価値を誰よりも実感していると本人は語っている。この経験は、リハビリの先にある「怪我をしない体づくり」への意識にもつながっている。
読者が今日から実践できること
宮市のキャリアから学べるのは、怪我の治療方針を決める際に一つの選択肢だけで判断せず、複数の専門家の意見を聞くことの重要性だ。また、リハビリで思うように結果が出ない時期こそ、達成可能な小さな目標を積み重ねることが、精神的な消耗を防ぐ鍵になる。怪我からの復帰は身体面だけでなく、思考の持ち方によって大きく左右されることを、宮市の歩みは示している。また、怪我からの復帰後にキャリアを積み重ねていく選手たちの姿は、これから怪我を経験するかもしれない多くのアスリートやスポーツ愛好者にとって、大きな指針となるはずだ。
まとめ
- 宮市亮は右足首の靭帯損傷を契機に、左右の前十字靭帯断裂を含む度重なる大怪我を経験している。
- キャリア初期の手術という決断が、後の膝の怪我につながった可能性を本人が振り返っている。
- 前十字靭帯再建術後の競技復帰目安は6〜8カ月、筋力は健側の80〜90%の回復が一般的な指標とされる。
- メンタルトレーナーとの出会いが、達成可能な目標設定という思考の転換をもたらした。
- 家族への責任感が、繰り返すリハビリを乗り越える原動力になっている。
よくある質問
宮市亮選手はどんな怪我を経験してきたのか
右足首の靭帯損傷、左太腿裏筋断裂、左右の前十字靭帯断裂(計三度)、グロインペイン症候群など、キャリアを通じて度重なる大怪我を経験している。
なぜ足首の手術がその後の膝の怪我につながったのか
足首の可動域が失われたことで、走行時の衝撃吸収の負担が股関節と膝に偏ったためと本人が分析している。
前十字靭帯を複数回断裂するとどんなリスクがあるのか
再受傷率は個人差が大きいが、術後1年時点でも受傷前のレベルに戻れない選手が一定数いるとされ、心理的な不安や筋力低下が復帰を阻害する要因として挙げられている。
宮市選手がリハビリを乗り越えられた理由は何か
メンタルトレーナーとの対話による目標設定の見直しと、家族への責任感が大きな支えになったと語られている。
怪我からの復帰事例はアスリート特集で、リハビリや故障予防に関する記事は怪我からの復帰カテゴリーであわせて紹介している。
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