企業のウェアラブル導入|進め方3ステップ

企業がウェアラブルデバイスを導入する健康経営のイメージ スポーツ科学

「健康経営の一環でウェアラブルを配布したが、使われなくなってしまった」。そんな声を聞くことが少なくありません。デバイス選定だけでなく、運用設計まで含めて計画することが、企業導入を成功させる分かれ目です。

企業におけるウェアラブルデバイス導入の全体像

企業がウェアラブルデバイスを導入する目的は、社員の健康管理支援、部活動・スポーツ推進の一環、あるいは労務管理上の安全確認など多岐にわたります。目的が曖昧なまま配布すると、社員にとって「なぜ着けるのか」が伝わらず、利用が定着しません。

経済産業省の健康経営度調査でも、データに基づく健康施策の設計が企業評価の一項目として位置づけられており、ウェアラブル活用はその実践手段の一つとして注目されています。

導入形態の選択肢が広がったことで、以前は敬遠されがちだった現場作業員や高齢層の社員にも受け入れられやすくなっている点も、企業導入を後押ししています。

企業導入の進め方3ステップ

ウェアラブルデバイスの企業導入は、機器選定の前に目的と運用体制を固めることが成功の鍵になります。

1目的とKPIの設定:何を改善したいかを数値目標として言語化する
2試験導入:1部署で数か月試し、利用継続率を確認する
3全社展開とフォロー:定期的な振り返りの場を設け利用継続を支援する

①目的とKPIの設定|改善したい数値を先に決める

「歩数を増やしたい」「睡眠の質を改善したい」など、改善したい指標を先に決めることで、必要な機能と機種選定の基準が明確になります。目的が定まっていないと、機能の多さだけで機種を選び、実際の運用に合わないという失敗が起きがちです。

②試験導入|1部署で利用継続率を確認する

全社一斉配布ではなく、まず1部署・数十人規模で数か月間試験導入します。この段階で利用継続率やアプリの使い勝手への不満を洗い出し、全社展開前に改善しておくことで、配布後の形骸化を防げます。

③全社展開とフォロー|振り返りの場を継続的に設ける

配布して終わりにせず、定期的にデータを振り返る機会(例えば月1回のチーム内共有)を設けることで、利用の習慣化を後押しします。フォローがないと、多くの場合は数週間で利用が途絶えてしまいます。

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運用時に注意したい3つのポイント

導入後の運用フェーズでは、社員の心理的な負担やデータの取り扱いに配慮した設計が求められます。

論点 リスク 対応策
データの取扱範囲 監視されている感覚による不信感 利用目的と閲覧範囲の事前明示
任意性の担保 事実上の強制利用感 不参加を選べる制度設計
評価との連動 人事評価への懸念による離脱 評価と切り離した運用方針の明示

表:企業のウェアラブル運用で注意すべき3つの論点

データの取扱範囲|利用目的を事前に明示する

誰がどのデータをどこまで見られるのかが不明確だと、社員は監視されている感覚を持ちやすくなります。利用目的・閲覧範囲を人事部門と現場双方に事前説明し、透明性を確保することが不信感を防ぎます。

任意性の担保|不参加を選べる制度にする

健康経営の一環であっても、参加を事実上強制するような運用は避けるべきです。不参加を選んでも不利益がないことを明示し、あくまで希望者が使える制度として設計することが、心理的安全性を保つポイントです。

評価との連動|人事評価から切り離す方針を明示する

取得データが人事評価に直結すると社員は身構え、正確な計測を避ける行動(デバイスを外す等)につながりかねません。評価とは切り離した位置づけであることを明確に伝えることが、継続利用を支える前提になります。

(参考)これからの健康経営について(2025年4月) – 経済産業省

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経済産業省の健康経営度調査に見るウェアラブル活用の広がり

経済産業省は「健康経営」を経営的な視点で従業員の健康管理を戦略的に実践する取り組みと位置づけ、上場企業等を対象にした「健康経営度調査」を毎年実施しています。同省の調査整理では、国内のウェアラブルデバイス活用事例のうち、健康管理分野と現場作業管理分野に関するサービス事例が特に多く確認されており、なかでもリストバンド型デバイスを用いた労働災害防止のサービス事例が目立つとされています。

「福利厚生」ではなく「経営指標」として扱われ始めている

健康経営度調査という枠組み自体が、従業員の健康状態を人事評価や福利厚生の付随事項としてではなく、企業価値を測る経営指標の一部として扱う思想に基づいています。ウェアラブルデバイスの企業導入が労働災害防止という実務的な文脈で語られることが多いのは、経営層にとって投資対効果を説明しやすい切り口だからです。導入を検討する際は、まず自社にとって「健康管理」と「現場作業管理(安全管理)」のどちらの文脈で投資対効果を説明しやすいかを見極めることが、社内稟議を通す近道になります。

(参考)健康経営度調査 – 経済産業省

よくある質問

ウェアラブル導入の費用対効果はどう測ればよいですか

健康診断結果の改善傾向や、休職・欠勤率の変化など、既存の指標と組み合わせて中長期的に評価するのが現実的です。短期間で明確な費用対効果を求めすぎないことがポイントです。

希望者が少ない場合はどうすればよいですか

目的やメリットが伝わっていない可能性があります。全社告知だけでなく、試験導入部署の社員から実際の使用感を共有してもらうことで、参加へのハードルを下げられます。

複数部署で異なるニーズがある場合はどうすればよいですか

営業部門は歩数・活動量、開発部門は睡眠の質など、部署によって関心のある指標が異なることがあります。共通のKPIを1つ設定しつつ、部署ごとの副次的な関心指標も拾い上げると、参加意欲を高めやすくなります。

まとめ

  • ウェアラブル導入は機器選定の前に目的とKPIを明確にすることが重要
  • 試験導入で利用継続率を確認してから全社展開する
  • データの取扱範囲・任意性・評価との切り離しを事前に設計する
  • 定期的な振り返りの場が利用の習慣化を後押しする

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業にてメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。
現在は独立し、About The New株式会社を設立。教育コンテンツの研究・開発を行い、スポーツの知見を活かした人材育成プログラムを提供している。

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