「アスリート人材の採用は増えたが、その後のキャリア形成の仕組みがない」。人材戦略担当者からよく聞く悩みです。欧州では競技と学業・仕事を両立させる「デュアルキャリア」を国レベルで制度化しており、その基準は日本企業の人材戦略にも示唆を与えます。
欧州基準デュアルキャリアモデルとは
欧州連合(EU)は「EU Guidelines for Dual Careers of Athletes」を策定し、競技力向上と教育・キャリア形成を両立させるための最低基準を加盟国に示しています。単なる引退後の再就職支援ではなく、現役時代から並行してキャリア形成を進める点が特徴です。
この基準は、競技団体・教育機関・企業が連携し、アスリートの学業継続やインターンシップ参加を制度的に保障する仕組みを求めている点が、企業の人材戦略にとって参考になります。
卓越性を支える3つの仕組み
欧州のデュアルキャリア制度が機能している背景には、単発の支援ではなく仕組みとして継続的に機能する設計があります。
| 仕組み | 内容 | 担い手 |
|---|---|---|
| 柔軟な学業制度 | 競技優先期間の履修調整 | 教育機関 |
| 段階的キャリア接続 | 現役中からのインターン参加 | 企業 |
| 専門相談員の配置 | 個別キャリアプランの伴走支援 | 競技団体 |
表:欧州デュアルキャリア基準を支える3つの仕組み
柔軟な学業制度|競技優先期間の履修を調整する
大会シーズン中は学業の履修ペースを落とし、オフシーズンに集中して単位を取得できるような柔軟な制度が整備されています。この仕組みにより、競技を理由に学業を諦める選択を減らすことができます。
段階的キャリア接続|現役中からインターンに参加する
引退後にゼロからキャリアを探すのではなく、現役中から短期インターンなどで社会経験を積める制度が用意されています。企業側にとっても、競技で培った継続力や目標達成志向を持つ人材と早期に接点を持てる利点があります。
専門相談員の配置|個別のキャリアプランに伴走する
競技団体に専門の相談員を配置し、学業・競技・キャリアの3つを踏まえた個別プランをアスリートと一緒に設計します。日本ではこの役割が競技団体・企業・本人の間で分断されがちな点が、大きな違いです。
日本企業への応用の視点
企業にとっての利点は採用力だけではありません。競技経験を通じて培われた目標設定力・継続力・プレッシャー耐性は、通常の採用市場だけでは出会いにくい資質であり、人材ポートフォリオの多様化にも寄与します。
欧州の制度をそのまま輸入することはできませんが、企業単独でも取り入れられる要素はあります。国内の取り組みと組み合わせながら考えてみましょう。
日本では日本オリンピック委員会(JOC)が現役アスリートの就職支援を行う「アスナビ」を運営しており、企業がアスリートを雇用しながら競技を継続できる環境づくりを支援しています。欧州の「現役中からのキャリア接続」という発想は、このアスナビの枠組みとも親和性が高い考え方です。
現役中の接点づくり|インターン制度を検討する
引退を待たず、現役中から短期的な業務経験の機会を提供することで、企業とアスリート双方が早期に相性を確認できます。競技スケジュールに合わせた柔軟な勤務形態の設計が前提条件になります。
専門相談窓口の設置|キャリア形成を伴走支援する
人事部内、あるいは外部の専門家と連携し、アスリート社員のキャリアプランに継続的に伴走する窓口を設けることで、欧州の専門相談員に近い機能を企業単独でも部分的に再現できます。
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よくある質問
中小企業でもデュアルキャリア支援は可能ですか
大掛かりな制度でなくても、勤務時間の柔軟化や競技スケジュールへの理解を人事制度に反映するだけでも第一歩になります。まずは対象となる社員と個別に相談する形から始める企業も多くあります。
欧州と日本で最も違う点は何ですか
教育機関・競技団体・企業が連携する制度的な土台があるかどうかが大きな違いです。日本では各主体が個別に動くことが多く、企業側が積極的に橋渡し役を担う必要性が相対的に高いといえます。
デュアルキャリア支援は採用競争力にどう影響しますか
アスリート人材にとって、競技継続と将来のキャリア形成を両立できる環境は、企業選びの重要な判断材料になります。支援制度の有無は採用時の訴求ポイントとしても機能し、他社との差別化につながります。
まとめ
- 欧州はEU基準でデュアルキャリアを制度化し、現役中からのキャリア形成を重視する
- 柔軟な学業制度・段階的キャリア接続・専門相談員の3仕組みが機能を支える
- 日本企業はインターン制度や専門相談窓口の設置で部分的に応用できる
- JOCの「アスナビ」など国内の既存制度と組み合わせて考えることが現実的
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