試合前だからかつ丼という発想からの脱却
競泳で世界選手権や五輪の舞台に立ってきた松田丈志選手は、試合前にかつ丼を食べるといった縁起担ぎよりも、試合に必要な力を出すために何を食べるべきかを考えることの方が大切だと語っている。この発想を体系化したのが、味の素が掲げる「勝ち飯」という考え方だ。食事はトレーニングと同じくらい大切であり、食事が偏ればトレーニングの結果も出ず、試合でも十分な力を発揮できないという。
バランスよく食べるという基本の考え方
松田選手が合宿中に摂っていたという食事は、朝・昼・晩としっかり食べることを前提に、ご飯やパスタなどの炭水化物、味噌汁などの汁物、肉や魚といったタンパク質、副菜としての野菜、乳製品や果物までを揃えるという構成だった。どれか一つを極端に多くしたり、なくしたりせず、バランスよく食べることが重要だと強調している。
覚えやすい合言葉として、「まごにわやさしい」という頭文字を使う方法も紹介されている。豆、ごま、肉、乳製品、わかめなどの海藻、野菜、魚、しいたけなどのきのこ、いもという、バランスの取れた食材群を思い出すための工夫だ。特に汁物は最初に飲むことを習慣にしており、汁物が胃に入ることで消化の準備が始まるのだと説明している。
炭水化物、タンパク質、脂質といった専門的な栄養素の名称を並べられても、日々の食事作りに落とし込むのは難しい。松田選手が語るように、覚えやすい合言葉に置き換えることで、毎日の買い物や献立づくりの中で自然にバランスを意識できるようになるという工夫は、競技者に限らず参考になる考え方だ。
(参考)競泳 松田丈志選手の特別授業「食事編」 – 味トレONLINE
補食という考え方とトレーニング前後の栄養補給
競泳の練習は午前に2から3時間、午後にも同程度の時間を要する。松田選手は午前のトレーニング前にアミノ酸サプリメントを補食として摂り、トレーニング後にはプロテインを含むアミノ酸サプリメントを摂ることで、疲れが残りにくくなると実感しているという。この習慣は午後の練習でも同様に繰り返される。
スポーツ栄養の分野でも、補食を通じた栄養摂取のタイミングは重視されている。トレーニング前には炭水化物とタンパク質でエネルギーを確保し、トレーニング中は水分と電解質、アミノ酸で疲労を防ぎ、トレーニング後30分から60分は筋肉の合成効率が高まる「ゴールデンタイム」とされる。松田選手の実践は、こうした栄養摂取のタイミングの重要性を裏づけるものだといえる。
国立トレーニングセンターでも、日本代表クラスのアスリートに対して、1食あたり20グラム以上のタンパク質を3食にわたって摂ることに加え、必須アミノ酸やBCAAを補食で補うという「質」「量」「タイミング」を意識した栄養サポートが行われているとされる。競泳のように1日に複数回の練習をこなす競技では、こうしたタイミングを意識した栄養補給が回復の質を左右すると考えられる。
部活動をする学生にも応用できる考え方
プロのアスリートでなくても、部活動の前後にお腹が空くという経験は多くの人にあるはずだ。松田選手は、そうした場面でおにぎりやバナナなどの糖質、あるいはアミノ酸サプリメントを摂ることを勧めている。練習後にはプロテインを含むアミノ酸サプリメントを摂ることで、トレーニングの効果を高められるとも述べている。
特別なサプリメントを用意できない場合でも、おにぎりやバナナのような身近な食品で同様の役割を果たすことができる。大切なのは、空腹のまま練習に臨んだり、練習後に何も摂らずに次の食事まで長時間空けてしまったりすることを避け、こまめにエネルギーを補給する意識を持つことだ。
食事を絶対的な優先事項として捉える視点
松田選手が伝えたいメッセージの核心は、食事の大切さがまだ十分に理解されていないという現状認識にある。多くの選手が食事に気を使っている一方で、一般的にはその重要性が軽視されがちだという指摘は、競技レベルを問わず当てはまる視点だ。
「勝ち飯食堂」と呼ばれる味の素ナショナルトレーニングセンターの食堂では、こうしたバランスの良い食事が日常的に提供されているという。家庭で同じレベルを再現するのは難しくても、できる範囲でバランスを意識することには十分な価値があると松田選手は語っている。
忙しい毎日の中では、栄養バランスの取れた食事を毎食完璧に用意することは難しい場合もある。それでも、汁物を先に飲む、炭水化物とタンパク質と野菜をひと通り揃えるといった小さな工夫を積み重ねることが、長期的なコンディション維持につながっていく。


よくある質問
勝ち飯とはどのような考え方ですか
縁起担ぎで食べ物を選ぶのではなく、試合に必要な力を出すために何を食べるべきかを考えるという、味の素が提唱する食事の考え方を指す。
補食はどのタイミングで摂ればよいですか
トレーニング前はエネルギー確保のための炭水化物とタンパク質、トレーニング後30分から60分は筋肉の合成効率が高まるとされるタイミングとして、プロテインを含む補食が勧められている。
特別な食材を揃えないと実践できませんか
「まごにわやさしい」のような合言葉を使い、家庭にある食材でバランスを意識するだけでも実践の第一歩になる。特別な食材やサプリメントが必須というわけではない。
まとめ
- 松田丈志選手は試合前の縁起担ぎより、力を出すための食事選びを重視している
- 「まごにわやさしい」を目安に、バランスの良い食事を心がけることが基本になる
- 汁物を最初に飲むことで、消化の準備を整えるという工夫がある
- トレーニング前後の補食は、疲労回復とパフォーマンス維持に役立つとされる
- 食事の重要性は競技レベルを問わず、まだ十分に理解が浸透していない
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