「熱中症対策として水分補給を呼びかけているのに、体調を崩す社員や選手が後を絶たない」。スポーツ現場や健康経営に取り組む担当者からよく聞く悩みです。実は水分補給は、一律に「たくさん飲めばいい」というものではなく、発汗量の個人差を踏まえた個別化が欠かせません。アスリートの現場で培われてきた発汗科学の考え方は、そのまま職場の熱中症対策にも応用できます。
発汗量の個人差とスポーツ科学が示す基準
運動中に汗として失われる水分の量には個人差があり、同じ人でも暑さに慣れる前と後では変わります。体質・体格、暑熱順化の度合い、気温や湿度、運動強度、着用している服装など、さまざまな要因が発汗量に影響するため、「1時間に◯ミリリットル」という一律の目安だけでは実態に合わないケースが多くあります。スポーツ庁は、理想的には運動前後で体重を測定し、活動中の脱水を体重の2%以内に抑えることを目指すべきだとしています。体重計以外にも、アスリートの脱水を測るウェアラブル3選のような専用デバイスを使えば、より簡便に発汗・脱水の状態を継続的に把握できます。
(参考)運動・スポーツを実施する皆さまへ【資料2-1】 – スポーツ庁
体重別に見る許容脱水量の目安
スポーツ庁が示す「体重の2%以内」という基準を、実際の体重に当てはめて自分たちで計算してみると、必要な水分補給量のイメージがつかみやすくなります。体重帯ごとに許容される脱水量(=補給の目安となる水分減少量)を試算しました。
| 体重帯 | 体重の2%に相当する量 | 運用の目安 |
|---|---|---|
| 50〜60kg | 約1.0〜1.2kg | 活動後の体重減少がこの範囲を超えたら積極補給 |
| 61〜75kg | 約1.2〜1.5kg | 同上(体格が大きいほど許容量も比例して増える) |
| 76kg以上 | 約1.5kg以上 | 体重測定の頻度を増やし個人差を継続的に把握 |
Human Soarがスポーツ庁の「体重の2%以内」基準をもとに体重帯別に試算
50〜60kg帯|約1.0〜1.2kgが補給の目安
この体重帯では、活動前後の体重差が1.0〜1.2kgを超えたタイミングで積極的な水分・塩分補給が必要になります。小柄な社員・選手ほど絶対的な発汗量は少なくても、体重に占める割合としては大きな脱水になりやすいため、こまめな体重測定が特に有効です。
61〜75kg帯|約1.2〜1.5kgが補給の目安
成人男性に多い体重帯です。運動強度が高い日ほど発汗量も増えるため、同じ人でも日によって必要な補給量は変わります。目安の数値だけを覚えるのではなく、活動前後で実際に体重を測る習慣をセットにすることが重要です。
76kg以上|約1.5kg以上が補給の目安
体格が大きいほど許容される脱水量も比例して大きくなりますが、その分、汗として失われる塩分量も多くなる傾向があります。水だけを大量に飲むと体内の塩分濃度が薄まりすぎることがあるため、経口補水液やスポーツドリンクなど塩分を含む飲料と水を使い分けることが推奨されます。水分・塩分バランスの乱れは疲労回復の遅れにもつながるため、疲労回復への科学的アプローチ|現場での実践法もあわせて押さえておくと対策の幅が広がります。
個別水分補給を実践する3つのアプローチ
発汗量の個人差を踏まえた水分補給を職場やチームで実践するには、特別な機材がなくても始められる方法がいくつかあります。同じように個人差が大きく見落とされがちな要素として睡眠があり、睡眠追跡で回復を最適化する|スポーツ科学が示す方法論も水分補給と並行して取り組むと、コンディション管理の効果がより高まります。
Human Soarがスポーツ庁の脱水チェック項目をもとに整理した実践アプローチ
スポーツ庁は、体重の減少・濃い尿・喉の渇きのうち2つ以上に該当する場合は積極的に水分補給を行うべきだとしています。3つの指標のどれか1つだけで判断するのではなく、複数の指標を組み合わせて確認することが、見落としを防ぐポイントです。
導入企業の運用ポイント
健康経営の一環として熱中症対策を進める企業では、屋外作業や現場業務がある部署を中心に、朝礼時の体重測定や尿色チェックシートの掲示など、手軽に続けられる仕組みを取り入れる例が増えています。ウェアラブルデバイスを使えば、発汗量や心拍数をより細かく把握することも可能です。導入初期はコストを抑えるため、既存の体重計と記録シートだけで運用を始め、効果が確認できた段階でデバイス導入を検討するという段階的なアプローチも現実的です。デバイス選定の視点はウェアラブル×スポーツ科学の最前線で詳しく解説しています。
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健康経営担当者が始めやすい進め方
いきなり全社的な仕組みを整えるのではなく、まずは屋外作業や運動量の多い部署に絞って、体重測定と尿色チェックの2つだけを試験的に導入するのが現実的です。データを継続的に集めることで、部署ごと・季節ごとの傾向が見えてくるため、投資対効果を判断しやすくなります。特に夏場の繁忙期だけでなく、梅雨明け直後など体が暑さに慣れていない時期にもリスクが高まる点は、担当者があらかじめ社内に周知しておきたいポイントです。データの信頼性を確保する考え方はデータ品質が左右するスポーツ科学の意思決定も参考になります。
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まとめ
- 発汗量には個人差があり、体重の2%以内の脱水に抑えることが目安になる
- 体重帯別に許容脱水量を試算すると、必要な補給量のイメージがつかみやすい
- 体重測定・尿色チェック・喉の渇きの自覚のうち2つ以上該当したら積極的に補給する
- 塩分を含む飲料と水を使い分け、水だけの大量摂取に偏らないようにする
- 屋外作業の多い部署から小さく試験導入し、季節・部署ごとの傾向を継続的に把握する
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