部活動の後半、フォームが崩れ始めた選手に「大丈夫か」と聞いても、本人は「まだ動けます」と答えることがあります。実際には発汗によって水分と電解質が想定以上に失われていて、自覚が追いついていないだけかもしれません。
屋外の建設現場や倉庫作業でも同じことが起きます。気温や湿度が高い日でも、本人の「大丈夫」という感覚だけを頼りにすると、熱中症の初期サインを見逃してしまいます。
この記事では、汗や水分補給の状態を数値として可視化するデバイス・サービスを3つ取り上げ、それぞれの仕組みと選び方を紹介します。個人のスポーツ活動だけでなく、企業がチームや現場の熱中症対策に活用する視点でも解説します。
熱中症搬送が過去最多を更新|見えない脱水をどう可視化するか
総務省消防庁の集計によると、令和7年(2025年)5月から9月までの熱中症による救急搬送人員は全国で100,510人にのぼりました。これは統計を開始して以来の最多で、前年から2,932人増加しています。
年代別では65歳以上の高齢者が全体の約57%を占め、症状の程度別では入院を要する中等症以上が約36%、発生場所別では住居が約38%、道路が約20%を占めています。屋内外を問わず、日常の活動の中で脱水が進んでいる実態が読み取れます。
問題は、脱水やそれに伴う体調変化が「喉の渇き」として自覚される頃には、すでに軽度から中等度の脱水が進行しているケースが多いことです。体感に頼らず、発汗量や水分摂取量を数値で把握する仕組みが必要とされています。
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(参考)令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況 – 総務省消防庁
水分・脱水を測る3つの代表的な製品
ここでは、汗や水分補給の状態を計測する製品のうち、公式サイトで仕様が確認できる3製品を取り上げます。「発汗量そのものを測る」「1回の運動で汗の質を調べる」「飲んだ水分量を記録する」という異なるアプローチを比較できるように選びました。
| 製品名 | 提供企業・提供元 | 主な機能・特徴 | 対応プラットフォーム |
|---|---|---|---|
| Nix Hydration Biosensor | Nix Biosensors(米国) | 発汗・電解質ロスをリアルタイム計測し、飲むタイミングと量を通知 | スマートフォン・スマートウォッチ・バイクコンピュータ |
| Gatorade Gx Sweat Patch | Gatorade(PepsiCo) | 1回の運動で発汗量・水分ロス・ナトリウムロスを測定する使い捨てパッチ | Gx App、Smart Gx Bottle |
| HidrateSpark PRO 2 | HidrateSpark | SipSense技術で飲水量を自動記録し、Bluetoothで同期・リマインド通知 | iOS/Android、Apple Health・Fitbit・Health Connect連携 |
汗の量を測るデバイスと、飲んだ量を測るデバイスでは可視化するデータの種類が異なります(2026年8月時点、各社公式サイトの情報を基にHuman Soarが作成)
Nix Hydration Biosensor|発汗と電解質ロスをリアルタイムに追う
Nix Hydration Biosensorは、腕に装着した使い捨てのスウェットパッチに、再利用できる本体(ポッド)をクリップして使うタイプの発汗センサーです。公式サイトによると、運動中の発汗と電解質の損失を継続的に測定し、いつ・何を・どれだけ飲むべきかをスマートフォンやスマートウォッチにリアルタイムで通知します。
45分以上続く運動での使用が推奨されており、バッテリーは最大36時間もちます。本体・充電ケース・使い捨てパッチ4枚のセットが189ドル(執筆時点の公式サイト価格)で販売されています。
(参考)Hydration Biosensor – Nix Biosensors
Gatorade Gx Sweat Patch|1回の運動で汗の質を可視化する使い捨てパッチ
Gatorade Gx Sweat Patchは、腕の内側に貼って1回のワークアウトだけ使う使い捨てパッチです。公式サイトの説明によると、汗をかいた後にパッチをGxアプリでスキャンすると、発汗量・水分ロス・ナトリウムロスが解析され、個人に合わせた水分補給の提案が表示されます。
非毒性の食用色素と低刺激性の粘着剤を使用しており、Smart Gx Bottleなど同社のGxシステムと連携して使う設計です。2個入りパッケージは執筆時点で12.50ドル(通常価格24.99ドルからの割引価格)で販売されています。
(参考)Gx Sweat Patch (2-pack) – Gatorade Official Site
HidrateSpark PRO 2|飲んだ水分量を自動で記録するスマートボトル
HidrateSpark PRO 2は、発汗ではなく「飲んだ水分量」を測るスマートボトルです。公式サイトによると、ボトル底部のSipSenseセンサーが重量変化を検知して一口ごとの飲水量を記録し、Bluetoothでアプリに同期します。
目標に対して水分摂取が不足すると、ボトル本体が光って知らせる仕組みで、Apple Health・Fitbit・Health Connectとの連携にも対応しています。バッテリーは最大21日間持続し、32オンス(約946ml)モデルは執筆時点で84.99ドルです。
(参考)32 oz HidrateSpark PRO 2 – HidrateSpark
どのタイプを選ぶべきか|測定方法で見る3つのアプローチ
3製品を並べてみると、水分補給の状態を「発汗から測る」か「摂取量から測る」か、そして「継続的に使う」か「1回だけ使う」かという2つの視点で整理できることが分かります。Human Soarでは、この2つの視点を踏まえて3製品を次のように分類しました。

発汗損失センサー型とパッチ型はいずれも「体からどれだけ失われたか」を測るのに対し、摂取量トラッキング型は「どれだけ飲んだか」を測ります。運動強度が高く発汗量そのものが問題になる競技であれば前者、日常的な飲水習慣を整えたい場合は後者が向いています。
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導入までの3ステップ|個人からチーム展開へ
水分補給の可視化は、いきなり全員に導入するのではなく、個人での試用からチーム単位の運用へ段階的に広げると定着しやすくなります。

特にSTEP2の「基準値と照らす」段階では、前述の消防庁の搬送統計のように暑さと脱水リスクの関係を示すデータと自分たちの計測データを見比べることで、注意すべきタイミングを具体的に言語化できます。
企業がスポーツ現場や屋外作業の熱中症対策に活かす視点
学校の部活動や社会人スポーツチーム、建設・物流など屋外作業を伴う企業にとって、水分補給の状態を数値で把握できることには、選手や従業員の「体感」に頼らない安全管理という意味があります。
個人のデバイスから得たデータをそのまま経営指標にはできませんが、猛暑日の休憩タイミングや水分補給の呼びかけルールを見直す材料として使えます。健康経営やコンディション管理に取り組む企業にとっては、睡眠など他の指標と組み合わせて継続的に記録していくことが有効です。
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よくある質問
水分補給を測るデバイスはどんな人におすすめですか?
屋外での運動やトレーニングを日常的に行うアスリート、暑熱環境での作業が多い現場従業員、そして水分補給の習慣がつきにくい人におすすめです。特に発汗量が多い運動を45分以上続ける人は、発汗量そのものを測るタイプの恩恵を受けやすいです。
複数のデバイスを併用してもいいですか?
発汗量を測るデバイスと摂取量を測るデバイスは測定対象が異なるため、併用することで「失った量」と「補給した量」の両方を把握できます。ただし、まずは1つを使いこなしてから、必要に応じて追加する順番がおすすめです。
企業導入の費用はどのくらいかかりますか?
本記事で紹介した製品は、いずれも個人向けの価格設定(1万円台後半〜1万3千円程度、執筆時点)で購入できます。チーム・現場単位でまとめて導入する場合は、各社が提供する法人向けプログラムやボリュームディスカウントの有無を公式サイトや問い合わせ窓口で確認するとよいでしょう。
まとめ
水分補給の状態は「喉の渇き」という体感だけでは正確に把握できません。今回紹介した3製品を参考に、発汗量や飲水量を数値で可視化する仕組みを取り入れてみてください。
- 令和7年の熱中症による救急搬送は過去最多の100,510人(総務省消防庁調べ)
- Nix Hydration Biosensorは発汗・電解質ロスをリアルタイムに計測する装着型センサー
- Gatorade Gx Sweat Patchは1回の運動で使う使い捨てパッチ型
- HidrateSpark PRO 2は飲水量を自動記録するスマートボトル
- 個人利用から始め、チーム・現場単位へ段階的に展開すると定着しやすい
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