「最近、社員の集中力が続かない気がする」——その背景には、運動不足が隠れているかもしれません。スポーツ庁の令和7年度調査では、20歳以上の1週間あたりの運動・スポーツ実施時間の中央値は69分にとどまり、特に20〜50代の働き盛り世代でその時間が顕著に短いことが分かっています。この記事では、運動不足が企業の生産性に与える影響と、人事担当者・経営者が実際に打てる対策を、公的データに基づいて整理します。
働き盛り世代の運動不足は数字で裏付けられている
スポーツ庁が2026年3月に公表した最新の世論調査で、働き盛り世代の運動不足があらためて数値で裏付けられました。感覚的な話ではなく、まず実態を正確に把握することが対策の出発点になります。
20歳以上の週1日以上のスポーツ実施率は51.7%で、令和4年以降ほぼ横ばいです。男女別では男性55.0%、女性48.8%と男女差は過去最大に拡大しています。特に20〜50代の子育て・働き盛り世代では、運動・スポーツ実施時間が男女ともに短く、20〜50代女性では1週間あたり30〜40分程度と、同世代男性の半分程度にとどまっています。
(参考)令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の結果 – スポーツ庁
Q. 従業員の運動不足は本当に生産性を下げるのですか?
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも運動不足対策が健康施策の柱に位置づけられており、経済産業省の健康投資管理会計ガイドラインでは、体調不良を抱えたまま出社し生産性が下がる「プレゼンティーイズム」の損失をコストとして算定する手法が示されています。運動不足は間接的にこの損失を広げる要因の一つとされています。
運動不足は「見えないコスト」として生産性を下げる
運動不足が生産性に影響する経路は、欠勤(アブセンティーイズム)よりも「出社しているのに本来の能力を発揮できない状態」=プレゼンティーイズムとして表れることが多いとされています。経済産業省の健康投資管理会計ガイドラインでは、この生産性損失を企業のコストとして評価する枠組みが示されています。
プレゼンティーイズムという「見えにくい損失」
プレゼンティーイズムは、欠勤とは違って本人も周囲も気づきにくいのが特徴です。体調不良を抱えたまま出社し続けることで、集中力やミスの発生率に影響が出ても、それが「運動不足」由来だと結びつけて考えられることは多くありません。
経済産業省が示す2つの損失額算定方法
健康投資管理会計ガイドラインでは、「健康関連総コスト換算による評価」と「パフォーマンス低下度による損失額算定評価」という2つの手法が示されています。いずれも自社の従業員データをもとに算定する設計で、健康施策の投資対効果を経営層に説明する際の共通言語として使えます。
Q. スポーツ庁のスポーツエールカンパニーとはどんな制度ですか?
従業員のスポーツ活動を積極的に支援する企業をスポーツ庁が認定する制度です。2026年は過去最多の1,635団体が認定され、認定企業へのアンケートでは「休職率が減った」「採用の志望者数が増えた」という回答も出ています。
スポーツエールカンパニー認定数の推移から見える企業の本気度
Human Soarは、スポーツ庁が毎年公表してきた「スポーツエールカンパニー」の認定企業数を、8年分さかのぼって独自に時系列表にまとめました。認定数は年々増加しており、企業側の運動促進への関心が着実に高まっていることが分かります。
| 年度 | 認定団体数 |
|---|---|
| 平成29年(2017) | 217社 |
| 平成30年(2018) | 347社 |
| 令和元年(2019) | 533社 |
| 2021 | 623社 |
| 2022 | 685社 |
| 2023 | 910社 |
| 2024 | 1,246社 |
| 2025 | 1,491社 |
| 2026 | 1,635団体(過去最多) |
スポーツ庁の各年度報道発表資料をもとにHuman Soarが独自に集計・作成。2026年の認定団体には初めて大学・国の機関も加わった。
2023年|910社認定、働き盛り世代への着目が本格化
2023年は910社が認定され、前年の685社から大きく増加しました。スポーツ庁の調査で20〜50代の実施率の低さが指摘されたことを背景に、企業の関心が高まった時期です。
2025〜2026年|認定数が1,600団体を突破し大学・国の機関にも拡大
2026年には過去最多の1,635団体が認定され、初めて大学(大阪大学・芝浦工業大学)と国の機関(スポーツ庁自身)も認定対象に加わりました。認定企業へのアンケートでは「休職率が減った」「採用の志望者数が増えた」という回答が挙がっており、運動促進の取り組みが採用・定着にも波及し始めていることがうかがえます。
(参考)「スポーツエールカンパニー2026」過去最多の1,635団体を認定 – スポーツ庁
Q. 運動促進の施策を何から始めればよいですか?
まずは全社一律の「運動しましょう」という呼びかけではなく、就業時間内に無理なく取り入れられる短時間の施策(階段利用の推奨、始業前ストレッチ等)から始めるのが定着しやすい方法です。個人の目標を自己申告する「マイ健康宣言」のような仕組みも有効です。
健康経営の土台にある「ウェルビーイング」という考え方
運動促進の施策を場当たり的に導入する前に押さえておきたいのが、健康経営とウェルビーイングの関係です。運動はあくまで手段であり、目的化させないことが施策定着のポイントになります。
あわせて読みたいウェルビーイングとは?9割の企業が失敗する理由と成果につながる設計›
個人の健康データを活用したPHRの視点も取り入れる
運動促進施策の効果を継続的に把握するには、従業員本人が自分の健康データを管理・活用できる仕組みも重要になります。PHR(パーソナルヘルスレコード)の考え方を取り入れることで、施策の効果測定がしやすくなります。
あわせて読みたいPHRとは?導入判断から選び方まで|経産省指針に基づく実務ガイド›
Q. 健康経営における運動促進の効果はどう測定しますか?
経済産業省の健康投資管理会計ガイドラインでは「健康関連総コスト換算による評価」と「パフォーマンス低下度による損失額算定評価」の2つの評価方法が示されています。自社の休職率や欠勤率の推移とあわせて、簡易的なアンケートでプレゼンティーイズムの度合いを継続的に測定するのが実務的です。
人事担当者が今日から始められる3つの対策
大掛かりな制度改革をいきなり行う必要はありません。まずは無理なく続けられる範囲から着手し、効果測定の型を作ることが優先です。
あわせて読みたい健康経営の効果測定とKPI設計|投資対効果の示し方›
Q. 中小企業でもスポーツエールカンパニーに認定されますか?
認定されます。2026年の認定団体は従業員規模を問わず、300人未満の企業が最多の割合を占めています。取り組みの規模ではなく継続性が評価されるため、小規模な施策からでも申請可能です。
まとめ
- スポーツ庁の令和7年度調査で、働き盛り世代(20〜50代)の運動不足が数字で裏付けられている
- 運動不足は欠勤より「プレゼンティーイズム」という見えにくい生産性損失として表れやすい
- 経済産業省の健康投資管理会計ガイドラインには、損失額を算定する2つの評価手法がある
- スポーツエールカンパニーの認定数は8年で217社から1,635団体へ拡大し、大学・国の機関にも波及している
- 対策は短時間・低負荷の施策から始め、自己申告制度や外部認定と組み合わせるのが現実的
FREE DOCUMENT
関連する資料を無料でダウンロード
ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ
お問い合わせはこちら →




コメント