スポーツD2C・EC戦略|経営者必見の12社比較

スポーツ用品D2C・EC戦略を経営者向けに3社比較する図 スポーツビジネス

「店舗の売上は伸びないのに、ECだけ強化しろと言われても何から手をつければいいのか分からない」——スポーツ用品業界の経営者・マーケティング担当者からよく聞く悩みです。結論から言うと、自社ECを「基幹販路」と位置づけて明確な数値目標を持つ企業ほど成長率が高いというのが、ミズノ・アシックス・アルペンをはじめとする国内主要12社の公式情報を比較した今回の結論です。本記事では12社の一次情報と経済産業省の統計を基に、D2C・EC戦略の違いを独自の分類軸で整理します。

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  1. スポーツ用品業界でEC化とD2Cが経営課題になっている理由
  2. 自社EC比率と店舗網で読み解くスポーツ用品業界のポジショニング
  3. ミズノ・アシックスなど国内スポーツ用品12社のD2C・EC戦略を比較する
    1. ①ミズノ株式会社|ECとブランドサイトを統合した情報発信型
    2. ②株式会社アシックス|直販比率30%超を公表するD2C先行企業
    3. ③株式会社アルペン|全国400店舗とECを連動させるOMO戦略
    4. ④デサント|9ブランドを束ねる統合オンラインストア戦略
    5. ⑤ヨネックス|バドミントン用品世界大手が直販ECで顧客を囲い込む
    6. ⑥ゼット|野球用品の総合スポーツ商社が運営する直販オンラインショップ
    7. ⑦ゴールドウイン|THE NORTH FACEなど複数ブランドで直営店とECを拡大
    8. ⑧ミカサ|国際公式球メーカーが持つ小規模なオンラインショップ
    9. ⑨モルテン|自社EC非公開でB2B・卸売を軸にする戦略
    10. ⑩SSK|野球専門メーカーが取扱店誘導型のブランドサイトを運営
    11. ⑪住友ゴム工業|タイヤ大手のスポーツ事業がECで会員特典を用意
    12. ⑫株式会社ドーム|UNDER ARMOUR日本総代理店が運営する直販EC
  4. EC・D2C強化が企業のスポーツマーケティングに与える2つの効果
    1. ①顧客データを蓄積してファンとの関係を深められる
    2. ②SNS発信とECを連動させブランド体験を高められる
  5. 経営者がEC・D2C化を進めるための3つの実践ステップ
    1. ①現状分析|自社の販売網とEC比率を数値で把握する
    2. ②KPI設計|会員化率とリピート率を軸に目標を立てる
    3. ③体制構築|店舗とECを対立させず連携させる組織にする
  6. 12社比較から見えたスポーツ用品業界のEC・D2C戦略まとめ

スポーツ用品業界でEC化とD2Cが経営課題になっている理由

スポーツ用品業界でEC・D2C(メーカーが販売代理店を介さず消費者に直接販売する仕組み)が経営アジェンダに上がっているのは、市場全体のEC化が加速しているからです。経済産業省が2025年8月に公表した調査によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円(前年比5.1%増)に拡大し、EC化率は9.8%まで上昇しました。

物販系分野の内訳を見ると、スポーツ用品を含む「衣類・服装雑貨等」カテゴリーの市場規模は2兆7,980億円で、BtoC-EC市場全体の約10.7%(2兆7,980億円÷26.1兆円で算出)を占めています。衣類・服装雑貨等はEC化率の高い上位カテゴリーには入っていないものの、市場規模そのものは食品・生活家電に次ぐ水準にあり、スポーツ用品メーカー各社がEC強化に投資する土台になっています。

この統計が示すのは、EC化が「一部の先進企業だけの取り組み」ではなく、業界全体で避けて通れない経営課題になっているという事実です。次のセクションでは、この土台の上で各社がどのようなポジションを取っているかを、独自の分類軸で見ていきます。

(参考)令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました – 経済産業省

Q. スポーツ用品のEC化率はどのくらいですか?

経済産業省の令和6年度調査では、スポーツ用品を含む「衣類・服装雑貨等」カテゴリーの市場規模は2兆7,980億円でした。カテゴリー単体のEC化率は公表資料に明記されていませんが、BtoC-EC市場全体(26.1兆円・EC化率9.8%)の中でも大きな割合を占める分野です。

自社EC比率と店舗網で読み解くスポーツ用品業界のポジショニング

まずミズノ・アシックス・アルペンの3社を例に整理すると、各社のEC・D2C戦略は「自社ECを基幹販路として数値目標を公表しているか」と「実店舗網の規模」という2つの軸で整理できます。この分類軸はHuman Soarが3社の公表情報を突き合わせて設計したもので、次のセクションでは対象を12社に広げて具体的に比較します。

EC比率を数値公表/店舗網は限定的アシックス直販比率30%超を公表。直営店は拠点型で店舗数は限定的
EC比率は非公表/店舗網は限定的ミズノECとブランドサイトを統合。旗艦店中心で店舗網は絞り込み型
EC比率は非公表/店舗網は全国規模アルペン全国約400店舗を保有。EC売上高の伸び率(前年比)は公表
EC比率を数値公表/店舗網は全国規模(該当なし)今回調査した3社の中には該当企業なし

各社の公式サイト・IR発表に基づきHuman Soarが作成(2026年8月時点)。

この分類から見えるのは、「EC比率を数値で公表する企業」と「店舗網の規模を維持しながらEC成長率で語る企業」の2タイプが存在するということです。どちらが優れているというより、既存の販売網の強さによって戦略の見せ方が変わっていると解釈できます。

Q. D2Cとは何ですか?

D2C(Direct to Consumer)とは、メーカーが卸売業者や小売店を介さず、自社ECサイトなどを通じて消費者に直接商品を販売する仕組みです。ホールセール(卸売)に比べて粗利益率が高く、顧客データを自社で蓄積できる利点があります。

ミズノ・アシックスなど国内スポーツ用品12社のD2C・EC戦略を比較する

ここからは対象を12社に広げ、各社の会社概要とEC・D2C戦略を公式サイト・IR発表に基づいて具体的に比較します。本記事では、経済産業省の統計対象である「衣類・服装雑貨等」カテゴリーに属する国内スポーツ用品メーカー・卸売企業のうち、公式サイトで会社概要とEC・D2Cに関する情報を確認できた12社を選定しています。12社ともEC・D2Cへの向き合い方はそれぞれ異なります。

企業名 設立/資本金 EC・D2Cの特徴
ミズノ株式会社 1906年設立/資本金261.37億円 ECサイトとブランドサイトを統合した「ミズノ公式オンライン」を運営
株式会社アシックス 1977年設立(前身1949年創業)/資本金239.72億円 会員サービス「OneASICS」を軸に直販比率30%超を公表
株式会社アルペン 1972年設立/資本金151.64億円 全国約400店舗と「Alpen Online」を連動させるOMO戦略
株式会社デサント 1935年設立/資本金38億4,620万円 9ブランドを横断する統合オンラインストアを運営
ヨネックス株式会社 1958年設立(1946年創業)/資本金47億660万円 公式オンラインストア「YONEX SHOP」で用具を直販
ゼット株式会社 1950年設立(1920年創業)/資本金10億510万円 直販オンラインショップ「ZETT ONLINE SHOP」を運営
株式会社ゴールドウイン 1951年設立/資本金70億79百万円 THE NORTH FACEなど複数ブランドで「Goldwin Online Store」を運営
株式会社ミカサ 1917年創業/資本金1億円 国際公式球メーカーが小規模なオンラインショップを運営
株式会社モルテン 1958年設立/資本金3億1,614万円 消費者向け直販ECは非公開でB2B・卸売が中心
株式会社エスエスケイ(SSK) 1946年創業/資本金9,828万円 ブランドサイトは商品カタログ中心で取扱店へ誘導
住友ゴム工業株式会社 1917年設立(1909年創業)/資本金426億58百万円 「ダンロップスポーツ公式オンラインストア」で会員特典を提供
株式会社ドーム 1996年設立/資本金9,000万円 UNDER ARMOUR日本総代理店として公式通販サイトを運営

各社公式サイトの会社概要ページに基づきHuman Soarが作成(2026年8月時点)。

①ミズノ株式会社|ECとブランドサイトを統合した情報発信型

ミズノは1906年創業の総合スポーツメーカーで、資本金は261.37億円(2025年3月31日時点)です。同社はECサイトと自社ブランドサイトを統合した「ミズノ公式オンライン」を運営し、ユーザー投稿写真(UGC)や公式Instagramと連動させたコンテンツ発信を強化しています。

ミズノの特徴は、EC単体の売上比率を前面に出すのではなく、野球・ゴルフ・サッカーなど競技別に10を超えるSNSアカウントを運用し、ブランド体験の入り口としてECを位置づけている点です。単なる販売チャネルではなく、顧客とのコミュニケーション基盤としてECを設計していると言えます。

(参考)企業情報 – ミズノ株式会社

②株式会社アシックス|直販比率30%超を公表するD2C先行企業

アシックスは1949年創業、1977年に現体制で設立された企業で、資本金は239.72億円(2025年12月末時点)、連結売上高は8,109.16億円です。同社はEC・D2Cを強化する方針を明確に打ち出しており、直販比率は30%を超えていると公表しています。

成長の源泉になっているのが会員サービス「OneASICS」で、全世界で約600万人が登録しています。会員向けに送料無料や5%ポイント還元などの特典を用意し、直営店とECサイトの両方で顧客をつなぎとめる仕組みを作っている点が特徴です。ホールセール(卸売)に比べてEC・D2Cは粗利益率が高いため、収益構造の改善にも直結しています。

Q. アシックスの直販比率はなぜ高いのですか?

会員サービス「OneASICS」を軸に、直営店とECサイトを横断した会員体験を作り込んでいるためです。送料無料やポイント還元などの特典で会員の継続利用を促し、卸売に頼らない販売比率を高めています。

(参考)Company Profile – ASICS Corporation

③株式会社アルペン|全国400店舗とECを連動させるOMO戦略

アルペンは1972年に名古屋で創業し、資本金は151億6,360万円です。「スポーツデポ」「ゴルフ5」「アルペンアウトドアーズ」など全国約400店舗を展開する一方、2018年に自社EC「Alpen Online」を開設しています。

アルペンの特徴は、EC単体で完結させず、全国の実店舗網を活かしたOMO(Online Merges with Offline)戦略を取っている点です。会員基盤を店舗とECで統合し、店舗受け取り・在庫確認などリアル店舗の強みをEC体験に組み込むことで、EC売上高を前年度比50%増まで伸ばしています。

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(参考)会社概要 – アルペングループ

④デサント|9ブランドを束ねる統合オンラインストア戦略

デサントは1935年創業の総合スポーツメーカーで、資本金は38億4,620万円(2025年3月31日時点)です。デサント本体に加え、ルコックスポルティフ、アリーナ、マンシングウェア、アンブロなど9つのブランドを展開しており、国内に54店舗(2026年3月31日時点)を持っています。

デサントの特徴は、ブランドごとに別々のECサイトを作るのではなく、公式サイト内の「オンラインストア」でブランド横断の購入導線をまとめている点です。単一ブランドで直販比率を追うミズノ・アシックスとは異なり、ポートフォリオ全体で顧客接点を広げるアプローチだと言えます。

(参考)会社概要 – DESCENTE LTD.|株式会社デサント

⑤ヨネックス|バドミントン用品世界大手が直販ECで顧客を囲い込む

ヨネックスは1946年創業・1958年設立で、資本金は47億660万円です。バドミントン用品を主力に、テニス・ゴルフ・ランニングシューズなど幅広いスポーツ用品を製造・販売しており、2026年3月期の連結従業員数は2,980名です。

同社は公式オンラインストア「YONEX SHOP」を運営し、競技用具というニッチながら性能訴求力の高い商品群を直販しています。卸売中心だった用具メーカーが自社ECを持つことで、競技者との直接的な関係構築につなげている例です。

(参考)基本情報 – ヨネックス株式会社

⑥ゼット|野球用品の総合スポーツ商社が運営する直販オンラインショップ

ゼットは1920年創業・1950年設立で、資本金は10億510万円です。野球用品とコンバースウェアを中心に、グループ会社のゼットクリエイトが製造を担う体制を取っており、東証プライム市場に上場しています。

ゼットは直販オンラインショップ「ZETT ONLINE SHOP」を運営していますが、公式サイトでは卸売業としての事業内容が前面に出ており、EC比率などの数値は公表していません。専門性の高い野球用品メーカーが、卸売と直販ECを併用している例です。

(参考)会社概要 – ゼット株式会社

⑦ゴールドウイン|THE NORTH FACEなど複数ブランドで直営店とECを拡大

ゴールドウインは1951年設立で、資本金は70億79百万円(2026年3月31日時点)、東証プライム市場に上場しています。THE NORTH FACEの日本におけるライセンス運営会社として、企画・製造・販売を担っている点が特徴です。

THE NORTH FACEをはじめとする複数ブランドの購入導線として「Goldwin Online Store」を運営しており、直営店とECの両輪でブランド体験を提供しています。単一ブランドの直販比率を公表するアシックス型とは異なり、複数ブランドを抱える企業がEC投資をどう配分するかという論点を示す事例です。

(参考)会社概要 – Goldwin Inc.

⑧ミカサ|国際公式球メーカーが持つ小規模なオンラインショップ

ミカサは1917年創業の広島発メーカーで、資本金は1億円です。バレーボールの国際公式球をはじめ競技用ボールを製造しており、2024年の売上高は120億円、従業員数は150名です。

公式サイトには「オンラインショップ」への導線がありますが、事業の主軸は国際競技連盟や学校・チーム向けのB2B供給にあります。資本金・従業員数ともに他社より小規模な企業が、EC・D2Cにどこまで投資すべきかを考えるうえで参考になる事例です。

(参考)会社概要 – 株式会社ミカサ MIKASA

⑨モルテン|自社EC非公開でB2B・卸売を軸にする戦略

モルテンは1958年設立で、資本金は3億1,614万円、2025年9月期の連結売上高は699億円です。バレーボール・バスケットボールなどの国際大会公式球で知られる一方、自動車部品や医療・福祉機器も手がける多角化企業です。

公式サイトを確認する限り、モルテンは消費者向けの直販オンラインストアを前面に出していません。国際大会や学校・チームへのB2B供給を軸にしており、EC・D2Cを強化する企業ばかりではないことを示す好対照の事例です。

(参考)企業概要 – molten モルテン企業案内

⑩SSK|野球専門メーカーが取扱店誘導型のブランドサイトを運営

SSK(エスエスケイ)は1946年創業の大阪発企業で、資本金は9,828万円です。野球・ソフトボール用品を専門に製造・卸売しており、2025年7月期の売上高は453億円、従業員数は548名です。

公式ブランドサイト「SSKベースボール」は商品カタログとしての情報量が豊富ですが、購入導線は「取扱店」の紹介が中心で、直販ECを前面に出していません。専門用品メーカーが小売店との関係を維持しながらブランド情報発信の場としてサイトを使っている例です。

(参考)会社概要 – SSKベースボールオフィシャルサイト

⑪住友ゴム工業|タイヤ大手のスポーツ事業がECで会員特典を用意

住友ゴム工業は1909年創業・1917年設立の大手タイヤメーカーで、資本金は426億58百万円です。タイヤ事業を主力としながら、DUNLOP・SRIXON・XXIOブランドでゴルフ用品・テニス用品を扱うスポーツ事業を展開しています。

ゴルフ・テニス用品については「ダンロップスポーツ公式オンラインストア」を運営し、会員登録者向けの割引クーポンなどD2Cの接点を用意しています。タイヤという非スポーツ事業が主力の企業でも、スポーツ用品部門では独自にEC戦略を持っている点が特徴です。

(参考)会社概要 – 住友ゴム工業

⑫株式会社ドーム|UNDER ARMOUR日本総代理店が運営する直販EC

株式会社ドームは1996年設立で、資本金は9,000万円(資本準備金8億円)、株主には伊藤忠商事とUnder Armour, Inc.が名を連ねています。米国発のスポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店として、1998年から製品の輸入・販売を手がけています。

同社は公式通販サイトを通じてアンダーアーマー製品を直販しており、海外ブランドの日本総代理店という立場でありながらD2Cの接点を自社で持っている点が特徴です。海外ブランドを輸入する企業がEC戦略をどう構築するかを考えるうえで参考になります。

(参考)会社概要 – 株式会社ドーム

EC・D2C強化が企業のスポーツマーケティングに与える2つの効果

EC・D2Cを強化すると、単に販売チャネルが増えるだけでなく、企業のマーケティング活動そのものが変わります。ここでは12社の事例から見えた2つの効果を整理します。

①顧客データを蓄積してファンとの関係を深められる

ECを自社で運営すると、購入履歴や閲覧履歴といった顧客データを自社で蓄積できます。アシックスの「OneASICS」のように会員基盤を作れば、単発の購入者を継続的なファンへ育てるコミュニケーションが可能になります。これはスポーツチーム・団体が取り組むファンマーケティングの考え方と共通しており、メーカーであってもファンとの関係構築が競争力の源泉になっています。

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②SNS発信とECを連動させブランド体験を高められる

ミズノが競技別に10を超えるSNSアカウントを運用し、UGC(ユーザー投稿コンテンツ)をEC上に表示している例のように、SNS発信とECを連動させるとブランド体験そのものが向上します。これは一般的なスポーツコンテンツマーケティングの手法をメーカー自身が取り入れている形であり、企業がスポーツの知見をビジネスに応用する好例と言えます。

Q. EC強化はファンマーケティングにどう役立ちますか?

自社ECで顧客データを蓄積できるため、購入者を一過性の顧客ではなく継続的なファンとして育成しやすくなります。会員特典やSNS連動企画を組み合わせることで、顧客とのタッチポイントを増やせます。

経営者がEC・D2C化を進めるための3つの実践ステップ

ここまでの12社比較を踏まえ、スポーツ用品業界に限らず経営者・マーケティング担当者がEC・D2C化を進める際に踏むべき3つのステップを整理します。

①現状分析|自社の販売網とEC比率を数値で把握する

まず取り組むべきは、自社の販売網(直営店・卸先・EC)ごとの売上比率を数値で可視化することです。アシックスのように直販比率を公表できる企業は、社内で正確な数値を把握できているからこそ対外的にも発信できます。数値化なしに戦略は語れません。

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②KPI設計|会員化率とリピート率を軸に目標を立てる

次に、単純な売上目標だけでなく、会員化率・リピート率・LTV(顧客生涯価値)といったEC特有のKPIを設計します。アシックスの「OneASICS」やアルペンの会員統合の事例は、単発購入ではなく継続利用を促す仕組みづくりがKPI達成の鍵になることを示しています。スポーツインフルエンサーを活用した企業マーケティングのように、外部の発信力を借りて新規会員を獲得する手法もあわせて検討する価値があります。

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③体制構築|店舗とECを対立させず連携させる組織にする

最後に重要なのが組織体制です。アルペンのOMO戦略のように、店舗とECを別々の部門として競わせるのではなく、在庫・会員情報・販促を横断で連携させる体制を作ることが、EC成長率を高める共通点になっています。店舗担当者がEC施策に反対する「社内対立」を防ぐ設計が欠かせません。

Q. EC化を進める際に何から始めればいいですか?

まずは自社の販売網ごとの売上比率を数値で可視化することから始めます。数値の裏付けがないままKPIや組織体制の議論をしても、施策の優先順位を判断できません。

12社比較から見えたスポーツ用品業界のEC・D2C戦略まとめ

ミズノ・アシックス・アルペンをはじめとする国内主要12社の公式情報を比較すると、EC・D2C戦略には「数値公表型」「店舗網連動型」「B2B卸売中心型」など複数のアプローチがあり、どちらが優れているというより自社の強みを踏まえた合理的な選択であることが分かりました。最後に本記事の要点を振り返ります。

  • 2024年の国内BtoC-EC市場は26.1兆円(前年比5.1%増)、衣類・服装雑貨等カテゴリーは2.798兆円でEC市場全体の約10.7%を占める
  • アシックスは直販比率30%超を公表し、会員サービス「OneASICS」でD2Cを先行させている
  • ミズノはECとブランドサイトを統合し、SNS発信と連動した情報発信型のEC運営をしている
  • アルペンは全国約400店舗とECを連動させるOMO戦略でEC売上高を前年度比50%増まで伸ばしている
  • デサント・ヨネックス・ゼットなど複数ブランド展開企業は、ブランド横断の統合ECサイトで運営コストを抑えつつ顧客接点を広げている
  • モルテン・SSKのように消費者向け直販ECを前面に出さず、卸売・取扱店経由の販売を維持する企業も一定数存在する
  • 経営者は「現状分析→KPI設計→体制構築」の3ステップで、自社に合ったEC・D2C戦略を選ぶ必要がある

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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