及川瑞基の思考する卓球|データ分析で掴んだ初優勝

及川瑞基選手のデータ分析に基づく卓球戦術を紹介するアイキャッチ画像 スポーツアスリート

2021年全日本卓球選手権を制した及川瑞基選手の強さは、張本智和選手との準々決勝のデータにも明確に表れている。サービスエース数で劣りながらもラリーの主導権を握り続けた戦い方は、感覚だけでなくデータに裏付けられた「思考する卓球」の実践例といえる。

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格上・張本智和を破った及川瑞基の初優勝はデータにも表れていた

2021年全日本選手権男子シングルスは、宇田幸矢・吉村真晴・丹羽孝希・張本智和ら優勝経験者がベスト8までに姿を消す波乱の展開となった。準決勝に残った4選手の誰が勝っても初優勝という状況を制したのが及川瑞基選手だ。

特に張本智和選手に勝利した準々決勝は、及川選手自身が「勝てるとは思っていなかった」と語るほどの大金星だった。ゲームカウント4-1という結果は一方的にも見えるが、その中身をデータで見ると、及川選手の強さの本質がより鮮明になる。

(参考)卓球全日本新王者・及川瑞基のデータに表れた強さとは 張本智和戦を徹底分析 – 卓球メディア Rallys(ラリーズ)

及川瑞基のサーブ時ポイント獲得率が示す「思考する卓球」の強さ

及川選手の強さを裏付けるのが、自分のサーブから始まったラリーで得点した割合を示す「サーブ時ポイント獲得率」だ。次の表は、Tリーグでの通算成績と、格上との大一番だった全日本選手権準々決勝の数値を、及川選手自身のデータとして局面別に整理したものだ。

局面 及川瑞基選手のサーブ時ポイント獲得率 位置づけ
Tリーグ2020-21シーズン通算 56.8%(リーグ1位) リーグ平均53.0%を上回る安定した強み
2021年全日本選手権 準々決勝 61.9% 格上相手の大一番でむしろ数値を伸ばした

表:Tリーグ公式スタッツとRallysの試合データをもとに、及川瑞基選手自身のサーブ時ポイント獲得率を局面別に筆者が整理

Tリーグ通算でリーグ1位に立つ安定したサーブ時ポイント獲得率

2020-21シーズンのTリーグで、及川選手のサーブ時ポイント獲得率はリーグ全体で1位となる56.8%を記録している。リーグ平均の53.0%を上回る数字で、新加入ながらチームの主力として結果を残していたことがわかる。

格上相手の大一番でむしろ数値を伸ばした全日本準々決勝

2021年全日本選手権準々決勝、及川選手のサーブ時ポイント獲得率は61.9%まで上昇した。サービスエース数では対戦相手に及ばなかったものの(4本に対し相手は8本)、サーブ後のラリーで主導権を握り続けたことが、この数字に表れている。対戦相手が得意とするレシーブ技術「チキータ」もレシーブの45%で試みられたが得点には結びついておらず、及川選手がその対応に成功していたことがうかがえる。最終的にゲームカウント4-1で及川選手が快勝し、新王者の強さがデータにも明確に表れた一戦となった。

Q. サービスエースが少なくても勝てるのはなぜですか?

サーブで直接ポイントを取れなくても、その後のラリーで優位に立てれば勝率は上がります。及川選手の試合では、サーブ時のポイント獲得率がサービスエース数以上に勝敗を左右していました。

「思考する卓球」を支える判断の流れを図解する

及川選手の戦い方を整理すると、サーブを見てから得点までの判断が一つの流れとして機能していることが分かる。感覚に頼らず、相手の傾向を読んでから行動を選ぶプロセスが「思考する卓球」の核心だ。

及川瑞基選手の思考する卓球を支える判断の流れ図解

図:及川瑞基選手の試合データをもとに整理した判断の流れ

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Q. 「思考する卓球」とはどのような戦い方ですか?

相手の技術傾向をデータで把握したうえで、ラリーの組み立てを判断する戦い方です。及川選手は張本選手のチキータ傾向に対応し、感覚ではなくデータの裏付けをもとにラリーへ持ち込む戦術を徹底していました。

データ分析を戦術に落とし込む及川瑞基のTリーグでの実践

及川選手は全日本選手権優勝と同時期、Tリーグにも新加入という立場で参戦していた。厚い選手層を誇る木下マイスター東京の中で、シングルス成績はチーム2位につけるなど、加入初年度から主力として活躍している実績も、データに裏付けられた戦術眼の裏付けといえる。

データを武器にする発想は競技を問わず通じる部分がある。17歳という若さで実力を伸ばす成田実生選手のように、若手選手が自分なりの分析軸を持つことは、経験不足を補う有効な手段になる。疲労管理のデータと向き合う村松開人選手や、睡眠データを活用する比江島慎選手も、感覚だけに頼らずデータを判断材料にしている点で共通している。

Q. 及川瑞基選手のTリーグでの成績はどうでしたか?

新加入初年度からチーム2位のシングルス成績を残しています(水谷隼選手に次ぐ)。厚い選手層を誇るチームの中で主力として活躍しており、全日本選手権優勝と並行して結果を出していました。

及川瑞基の思考する卓球から学べる3つのポイント

  • サービスエース数などの派手な数字だけでなく、ラリー中のポイント獲得率にも強さは表れる
  • 相手の技術傾向をデータで把握し、感覚ではなく根拠を持ってラリーの組み立てを判断する
  • 格上相手にも、データに基づいた戦術があれば互角以上に戦える

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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