福井県の助成金には、他県ではあまり見ない仕組みがあります。国の業務改善助成金を受け取った企業に、県がその20%を上乗せするという制度です。さらに条件を満たせば、1人あたり10万円の奨励金が別に出ます。
この記事では、10月3日に期限が来る国の制度、それに重なる県の上乗せ、研修費用の補助、そして申請の前に済ませておくべき登録まで、福井労働局・福井県・県の補助金ポータルサイトの記載で確認して整理します。
福井県の最低賃金は10月4日から1,112円になる
福井労働局によると、福井県最低賃金は令和8年10月4日から時間額1,112円になります。令和7年10月8日発効の1,053円からの改定で、引上げ額は59円です。
| 区分 | 時間額 | 発効日 |
|---|---|---|
| 改定前 | 1,053円 | 令和7年10月8日 |
| 改定後 | 1,112円 | 令和8年10月4日 |
出典:福井労働局「地域別最低賃金 特定最低賃金 最低工賃」
発効日が10月4日という点は、実務上の意味があります。多くの都道府県は10月1日発効ですが、福井は3日遅れます。後述する業務改善助成金の申請期限が発効日の前日である以上、この3日はそのまま猶予の差になります。
特定(産業別)最低賃金は4つの業種に設定されています。紡績業・化学繊維・織物・染色整理業が830円、繊維機械・金属加工機械製造業が933円、電気機械器具製造業が857円、百貨店・総合スーパーが840円です。ただし労働局は、令和8年10月4日からこの4業種すべてに福井県最低賃金の1,112円が適用されると明記しています。個別に設定された額がいずれも地域別を下回るため、高いほうが適用される形です。
福井にはもうひとつ、他県ではあまり見ない制度があります。最低工賃です。衣服製造業最低工賃が令和7年4月5日発効、眼鏡製造業最低工賃が令和8年4月5日発効で設定されています。家内労働者に仕事を出している事業者は、こちらも確認が必要です。
Q. 福井県の最低賃金はいくらですか?
令和8年10月4日から1,112円です。改定前は1,053円だったので、59円の引上げになります。特定(産業別)最低賃金が設定されている4業種についても、10月4日からは1,112円が適用されます。
(参考)地域別最低賃金 特定最低賃金 最低工賃 – 福井労働局
業務改善助成金の申請期限は10月3日

賃上げと設備投資をセットで進める企業向けの国の制度が、業務改善助成金です。令和8年度分の受付は令和8年9月1日に始まりました。
厚生労働省は申請期間を「令和8年9月1日から、申請事業場の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または同年11月30日のいずれか早い日まで」としています。福井県の発効日は10月4日なので、前日の10月3日が申請期限です。
制度の内容は、生産性向上に資する設備投資等を行い、あわせて事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、設備投資にかかった費用の一部が助成されるというものです。助成額は、設備投資額に助成率をかけた金額と助成上限額を比べて安いほうになります。
注意点は2つあります。賃金の引上げも設備投資もこれから実施するものが対象で、すでに導入した設備は対象になりません。また、労働者がいない事業場は対象外です。
事業完了期限は、導入機器の納品日・支払完了日・賃金引上げ日のいずれか遅い日で判定され、令和8年度の申請分は交付決定の属する年度の1月31日までに全部を終える必要があります。やむを得ない理由があれば、あらかじめ理由書を出すことで3月31日まで延長される場合があります。
同じ国の制度でも発効日によって期限は変わります。新潟県は10月1日発効のため9月30日が期限で、福井のほうが3日長く取れます。
Q. 福井県で業務改善助成金はいつまでに申請すればよいですか?
10月3日までです。申請期間は令和8年9月1日から、地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日までと定められており、福井県の発効日が10月4日のため前日が期限になります。
福井県は国の助成金に20%を上乗せする
ここからが福井県独自の部分です。県は「ふくい業務改善・賃上げ応援事業」として、国の業務改善助成金を活用した事業者に県独自の上乗せを行っています。財源は国の重点支援地方交付金です。
(A)補助金の補助率は、国の業務改善助成金の支給決定額の5分の1です。県のポータルサイトはこれを20%と表記しています。国から100万円の助成を受けた企業なら、県から20万円が追加で入る計算になります。
対象は、国の業務改善助成金の交付額確定通知書を受け取った事業者です。条件として、福井労働局へ業務改善助成金の交付申請を行い、令和8年4月1日から令和9年2月26日までの期間に交付決定通知を受けていることが求められます。
県への申請受付期間は令和8年9月1日から令和9年2月26日までです。国の申請期限が10月3日であるのに対し、県側は翌年2月まで開いています。国の交付決定と交付額確定を待ってから県に申請する流れになるため、この期間差は制度設計上の必然です。
県は最低賃金の改定を「過去最大の上げ幅」と表現したうえで、この上乗せを「賃上げを行いやすい環境を整備する」ための措置と説明しています。
Q. 福井県は国の助成金にいくら上乗せしますか?
「ふくい業務改善・賃上げ応援事業(A)補助金」として、国の業務改善助成金の支給決定額の5分の1(20%)を上乗せします。対象は、令和8年4月1日から令和9年2月26日までに国の交付決定通知を受けた事業者です。
(参考)令和8年度ふくい業務改善・賃上げ応援事業~国の業務改善助成金の上乗せ+奨励金の支給~ – 福井県
90円以上の引上げなら1人あたり10万円の奨励金がつく

上乗せ補助金とは別に、奨励金も用意されています。「ふくい業務改善・賃上げ応援事業(B)奨励金」です。
支給の条件は、国の業務改善助成金の交付決定通知書を受け取った事業者で、福井県内の事業場において事業場内最低賃金を90円以上引き上げたことです。支給額は10万円に引き上げる労働者数を掛けた額で、1事業者あたり最大10人までが対象になります。上限は100万円という計算です。
ここで数えられる労働者は、国の業務改善助成金の「事業実施計画書」に基づく労働者とされています。国の申請書類がそのまま県の奨励金の根拠になる設計です。
申込受付期間は(A)補助金と同じく令和8年9月1日から令和9年2月26日までです。対象となる国の交付決定通知の時期も同じく令和8年4月1日から令和9年2月26日までです。
国の助成、県の20%上乗せ、そして1人10万円の奨励金。3つが重なると、賃上げに踏み切るときの原資の見え方はかなり変わります。ただし3つとも、起点は国の業務改善助成金の申請です。10月3日を逃すと、この重ね方は今年度は使えません。
Q. 福井県の賃上げ奨励金はいくらもらえますか?
事業場内最低賃金を90円以上引き上げた場合、10万円×引き上げる労働者数が支給されます。1事業者あたり最大10人までなので、上限は100万円です。国の業務改善助成金の交付決定通知を受けていることが前提になります。
(参考)ふくい業務改善・賃上げ応援事業(B)奨励金 – 福井県労働政策課 働く環境整備補助金・奨励金ポータルサイト
2つの「宣言」の登録を先に済ませておく
(A)補助金と(B)奨励金には、見落とされやすい共通の条件があります。申請時に2つの登録が必要だという点です。
ひとつは、県の「社員ファースト企業」宣言です。単に宣言するだけでなく、「賃金の引上げ」の取組を含む登録であることが求められます。もうひとつは、国の「パートナーシップ構築宣言」の登録です。
どちらも助成金そのものではなく、企業としての宣言を登録する制度です。申請書類を書き始めてから気づくと、登録が間に合わずに期限を逃すことになりかねません。国の業務改善助成金を申請する段階で、あわせて着手しておくのが安全です。
「社員ファースト企業」制度は、働きやすい職場環境づくりに取り組む企業を県が支援する仕組みで、宣言内容や優れた取組みの動画がポータルサイトで発信されます。賃上げの助成を取りにいく過程が、そのまま採用広報の材料にもなる構造です。
Q. 福井県の賃上げ補助金に事前準備は必要ですか?
申請時に、県の「社員ファースト企業」宣言(賃金の引上げの取組を含む登録)と、国の「パートナーシップ構築宣言」の登録が必要です。どちらも(A)補助金・(B)奨励金の共通条件なので、国の業務改善助成金を申請する段階で着手しておくのが安全です。
研修費用は「人への投資」支援事業補助金で戻る
賃上げとは別に、研修費用そのものを補助する県の制度もあります。「人への投資」支援事業補助金です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 県内に本社機能を有する中小企業者等 |
| 対象経費 | 社外の教育研修機関等で受ける研修等/自社独自の社内研修等のうち研修時間が10時間未満のもの |
| 補助率 | 1/2(要件を満たす場合は2/3) |
| 補助限度額 | 上限15万円/社(上乗せ等要件あり) |
| 申請受付期間 | 2026年4月1日~2027年2月26日(予算上限に達し次第終了) |
| 補助対象期間 | 交付決定日~2027年3月31日 |
出典:福井県労働政策課 働く環境整備補助金・奨励金ポータルサイト「「人への投資」支援事業補助金」
特徴は、対象がおおむね10時間未満の短い教育訓練だという点です。数日がかりの研修ではなく、半日や1日で終わる講座が想定されています。受講料だけでなく、訓練時間分の賃金なども経費の一部として補助対象になります。遠方で開催される研修に参加する場合は、一定の条件のもとで旅費や交通費も対象です。
社外の研修機関で受ける研修だけでなく、自社独自の社内研修も対象になります。ただし社内研修については研修時間が10時間未満であることが条件です。
注意点は、補助対象期間が交付決定日からであることです。受講料を払ってから、研修を実施してから申請しても対象になりません。予算上限に達した時点で受付が終わるため、使うつもりがあるなら早いほうが確実です。
あわせて読みたい人的資本投資とは?スポーツを活かした事例と効果を出す戦略›
Q. 福井県で社員研修の費用に使える補助金はありますか?
「人への投資」支援事業補助金があります。おおむね10時間未満の教育訓練が対象で、補助率は1/2(要件を満たす場合は2/3)、上限は15万円/社です。受付は2027年2月26日までですが、予算上限に達し次第終了します。
(参考)「人への投資」支援事業補助金 – 福井県労働政策課 働く環境整備補助金・奨励金ポータルサイト
労働政策課の制度は1つのサイトにまとまっている

福井県の特徴は、制度が散らばっていないことです。労働政策課が所管する補助金・奨励金は「働く環境整備補助金・奨励金ポータルサイト」に集約されています。
掲載されているのは、スポットワーカー活用支援事業補助金、外国人労働者受入環境整備事業補助金、副業・兼業マッチング支援事業補助金、ふくい採用力強化支援事業補助金、人手不足業就職チャレンジ応援事業奨励金、ふくい業務改善・賃上げ応援事業(A)補助金と(B)奨励金、「人への投資」支援事業補助金です。
それぞれの詳細ページに、対象者・補助率・限度額・申請受付期間・申請の流れ・募集要項と必要書類のダウンロードがまとまっています。申請書の提出はメールで行う方式です。
金額の目安としては、県の事業者向け支援制度の案内によれば、ふくい採用力強化補助金が上限60万円で補助率1/3、スポットワーカー活用支援事業補助金が上限10万円で補助率1/3、副業・兼業マッチング支援事業が上限20万円から50万円で補助率1/3から8/10、外国人労働者受入環境整備事業が上限30万円(住宅環境整備は100万円)で補助率1/3となっています。
問い合わせ先は、福井県労働政策課 働く環境整備補助金・奨励金 事務局(電話0776-36-9303、平日9時から17時)です。
Q. 福井県の企業向け補助金はどこで調べられますか?
労働政策課の「働く環境整備補助金・奨励金ポータルサイト」に8つの制度がまとめられています。対象者・補助率・限度額・申請受付期間・必要書類が制度ごとに整理されており、申請書はメールで提出します。
(参考)福井県労働政策課 働く環境整備補助金・奨励金ポータルサイト
目的別に、どこから当たるか
福井県の企業が9月下旬の時点で取れる選択肢を、目的別に並べます。
賃上げと設備投資を進めるなら、まず国の業務改善助成金です。期限は10月3日。ここを起点に、県の(A)補助金で20%が上乗せされ、事業場内最低賃金を90円以上引き上げれば(B)奨励金が1人10万円(最大10人)加わります。あわせて「社員ファースト企業」宣言と「パートナーシップ構築宣言」の登録を進めておきます。
短い研修を実施するなら、「人への投資」支援事業補助金です。おおむね10時間未満の訓練が対象で、上限15万円/社。交付決定前に着手すると対象外になるため、研修の日程を決める前に申請します。
まとまった訓練計画があるなら、国の人材開発支援助成金です。人材育成支援コース、教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースがあり、訓練開始前の計画届出が要件になります。
非正規社員の正社員化や処遇改善なら、キャリアアップ助成金です。こちらも取り組み前に計画の認定を受ける必要があります。
採用に課題があるなら、ふくい採用力強化支援事業補助金やスポットワーカー活用支援事業補助金です。いずれもポータルサイトから申請します。
どの制度にも共通するのは、実施してからでは使えないことです。設備を買ってから、研修を受けてから、賃金を上げてからでは対象になりません。他県でも同じ構造が繰り返されているので、制度名を調べるより先に、自社が次の半年で何をするかを決めておくほうが早く進みます。
Q. 国の助成金と県の補助金は併用できますか?
ふくい業務改善・賃上げ応援事業は、国の業務改善助成金を受け取ったことが前提の上乗せ制度なので、併用が前提です。一方で一般には、同一の経費に対して複数の補助金を重ねることはできません。制度ごとに確認が必要です。
FREE DOCUMENT
関連する資料を無料でダウンロード
ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ
お問い合わせはこちら →




コメント