剣道防具メーカー一覧12社|製造体制と企業の全体像

剣道防具メーカー一覧12社|製造体制と業界構造を解説する記事のアイキャッチ スポーツビジネス

剣道防具を作っている会社は、いわゆる「メーカー」だけではありません。全日本武道具協同組合の会員141社を業種の記載で分類し直すと、製造を手がける会社は47社、小売・販売が72社、材料・部品が11社でした。つまり業界の半分は売る側で、作る側は3社に1社です。

「剣道防具 一覧」という調べ方は、大きく2つに割れます。ひとつは剣道防具メーカー一覧、つまりどの会社が作っているのかを知りたい検索。もうひとつは剣道防具名前一覧、つまり面・小手・胴・垂という部位の名称を確かめたい検索です。この記事は前者に答えるもので、公式サイトで本社と事業内容を確認できた12社を一覧にしました。

あわせて、なぜ社名を並べるだけでは業界が見えないのかも説明します。剣道防具はスポーツ用品のなかでも分業の度合いが強く、材料を作る会社と防具を縫う会社と売る会社が、別々の地域に分かれて存在しているためです。

  1. 剣道防具の業界は材料・製造・卸・小売の4つの層でできている
    1. 材料・部品の11社が防具の性能を左右する
    2. 製造の47社が面・小手・胴・垂を縫い上げる
    3. 卸の8社が全国の武道具店へ橋渡しする
    4. 小売・販売の72社が剣士の窓口になる
  2. 組合員141社を業種で数え直すと製造は47社だった
    1. 小売・販売の72社|地域の武道具店が業界の半分を占める
    2. 製造の47社|3社に1社が自社で作っている
    3. 材料・部品の11社|面金・皮革・ゴムの専門業者
    4. 卸の8社|最も薄い層だが流通の要になる
    5. その他の3社|出版とソフトウェアが名簿に入っている
  3. 九州・山口は17社中11社が製造|地域で担う役割が違う
    1. 東日本支部は製造24社と小売28社がほぼ半々になる
    2. 西日本支部は64社中39社が小売・販売に寄っている
    3. 九州・山口支部は製造の比率が3支部で最も高い
  4. 剣道防具メーカー一覧12社の本社と業態
    1. 株式会社東山堂|国内に流通する防具セットの3分の1を作る
    2. 株式会社日本剣道具製作所|手刺からピッチ刺まで受注生産で作る
    3. 株式会社西日本武道具|竹刀メーカーから防具まで広げた会社
    4. 株式会社ミツボシ|東山堂グループの製造卸を担う
    5. 松勘工業株式会社|創業明治40年で硬式野球ボールも作る
    6. 株式会社三恵|経済産業省の地域未来牽引企業に選ばれた武道具メーカー
    7. 株式会社松興堂|銃剣道・逮捕術の防具まで手がける
    8. 株式会社タイヨー産業|竹刀に特化して若手職人を育てる
    9. 栄光武道具株式会社|自社ブランドと全額返金保証で売る
    10. 有限会社博多屋武道具店|長崎市築町で剣道具を製造販売する
    11. 信武商事株式会社|皮革の産地である姫路市花田町に立地する
    12. 株式会社荒牧武道具木工所|宮崎県都城市で木工から武道用品を作る
  5. 材料・部品11社のうち8社は大阪・千葉・奈良に集まる
    1. 大阪府の3社は面金と武道具材料を作る
    2. 千葉県の3社は皮革染色と樹脂部品を担う
    3. 奈良県宇陀市菟田野の2社は武道具材料の製造に特化する
  6. 防具の値段は刺し方で決まる|手刺・ミシン刺・ピッチ刺
    1. 手刺は職人が一針ずつ刺すため受注生産になる
    2. ミシン刺は刺し幅で価格が変わる
    3. ピッチ刺は量産と刺しの細かさを両立させる
  7. 需要を支えるのは武道必修化と208万人の有段者登録
    1. 中学校の保健体育で武道が必修になった
    2. 有段者登録は208万人で女子が63万人を占める
  8. まとめ|剣道防具の会社は層で見ると判断しやすくなる

剣道防具の業界は材料・製造・卸・小売の4つの層でできている

剣道防具の業界構造の図解|材料・部品11社から防具製造47社、卸8社、小売・販売72社へ至る4つの層
全日本武道具協同組合の会員141社を業種の記載で分類した4つの層

剣道防具は、1社が最初から最後まで作って売る商品ではありません。面金や革といった部品を作る会社、面・小手・胴・垂を縫い上げる会社、全国の武道具店へ届ける卸、そして剣士に手渡す小売。この4つの層が分かれているのが、この業界の基本構造です。

数字で見ると、層ごとの厚みがはっきり違います。全日本武道具協同組合の会員141社のうち、材料・部品は11社、製造は47社、卸は8社、小売・販売は72社。出口に近いほど社数が多く、材料に近づくほど少数の専門業者に集約されていきます。

この「上流ほど担い手が少ない」構造は、スポーツ業界の他の領域とも共通します。市場全体の課題整理は日本スポーツ業界の8つの課題で扱っています。

材料・部品の11社が防具の性能を左右する

面金(面の前面にある金属の格子)、革、竹、ゴム、フェルト、プラスチック。これらを専門に作る会社が11社あります。防具メーカーはここから部材を仕入れるため、材料の供給が止まれば完成品も作れません。

面白いのは、この11社の多くが防具メーカーとは別の地域に集まっている点です。大阪・千葉・奈良に8社が集中しており、革や金物の産地と重なっています。

製造の47社が面・小手・胴・垂を縫い上げる

刺し(防具の表面に走る縫い目)を入れ、部材を組み立てて完成品にする層です。141社のうち47社が業種欄に「製造」または「製作」を記載していました。ただし全部位を自社で作れる会社は少数で、多くは得意な部位や工程に特化しています。

卸の8社が全国の武道具店へ橋渡しする

製造と小売の間に立ち、全国の武道具店へ商品を供給する層です。8社と最も薄い層ですが、製造側が卸機能を兼ねる会社も多く、実際の流通量はこの数字以上になります。

小売・販売の72社が剣士の窓口になる

141社のうち過半数の72社がこの層です。地域の武道具店、オンラインストア、修理を請け負う専門店まで幅があります。剣士が最初に接するのはたいていこの層で、採寸や修理といった対面のサービスがここに集まります。

Q. 剣道防具は1社ですべて作られているのですか?

いいえ。材料・部品、防具製造、卸、小売の4つの層に分かれています。全日本武道具協同組合の会員141社のうち製造は47社で、残りは材料を供給する会社や販売する会社です。全部位を自社で製造できる会社は限られます。

組合員141社を業種で数え直すと製造は47社だった

剣道防具の会社を調べると社名の羅列にぶつかりますが、それぞれが何をしている会社なのかは分かりません。そこで全日本武道具協同組合が公開している会員名簿141社(令和4年1月10日現在)について、各社の「業種」欄の記載を読み、5つの分類に振り分けて集計しました。

分類 社数 構成比 業種欄の記載例
小売・販売 72社 51.1% 武道用品小売業/武道具販売・修理
製造 47社 33.3% 武道用品製造業/剣道具製造小売業
材料・部品 11社 7.8% 武道具材料面金製造業/剣道具用皮革染色
卸 8社 5.7% 武道用品卸売業/武道具卸売業
その他 3社 2.1% 剣道雑誌出版業/ソフトウェア開発

出典:全日本武道具協同組合「会員一覧」(会員数141社・令和4年1月10日現在)の業種欄の記載をHuman Soarが分類して集計。材料・染色・面金などの記載は「材料・部品」を優先した。

小売・販売の72社|地域の武道具店が業界の半分を占める

最も多いのがこの層です。業種欄には「武道用品小売業」「武道具販売・修理業」といった記載が並びます。剣道具は体格に合わせた採寸と、使い込んだあとの修理が前提の商品なので、対面で相談できる店が各地に必要になります。この構造が、小売が半分を占める理由です。

製造の47社|3社に1社が自社で作っている

「武道用品製造業」「剣道具製造小売業」のように、製造を業種に含む会社が47社ありました。このうち相当数が「製造小売業」「製造販売」と書いており、作って自分で売る形が一般的だと分かります。製造専業の会社はさらに少なくなります。

材料・部品の11社|面金・皮革・ゴムの専門業者

「武道具材料面金製造業」「剣道具用皮革染色」「武道材料製造業」といった記載の会社が11社です。剣道防具は革・竹・金属・布を組み合わせる製品で、それぞれに専門の供給元がいます。この11社が業界全体の性能と原価を下支えしています。

卸の8社|最も薄い層だが流通の要になる

製造を含まず「卸」だけを業種に記載しているのが8社でした。ただし「武道用品製造卸売業」のように製造と卸を兼ねる会社は製造に分類しているため、卸機能を持つ会社は実際にはもっと多くなります。

その他の3社|出版とソフトウェアが名簿に入っている

剣道雑誌の出版社、ソフトウェア開発を兼ねる会社、剣道のインバウンドツーリズムを手がける会社の3社です。防具そのものは作っていませんが、業界の情報流通や海外への普及を担う立場として組合に加わっています。

(参考)会員一覧(会員数141社・令和4年1月10日現在) – 全日本武道具協同組合

九州・山口は17社中11社が製造|地域で担う役割が違う

同じ141社を支部ごとに分けると、地域によって役割がはっきり分かれていました。九州・山口支部は17社のうち11社(64.7%)が製造で、東日本の40.0%、西日本の18.8%を大きく上回ります。西日本は逆に小売・卸が中心でした。

東日本支部 60社製造24社(40.0%)/小売・販売28社/材料・部品5社/その他3社
西日本支部 64社製造12社(18.8%)/小売・販売39社/卸7社/材料・部品6社
九州・山口支部 17社製造11社(64.7%)/小売・販売5社/卸1社

出典:全日本武道具協同組合「会員一覧」の支部別名簿をHuman Soarが業種欄の記載で分類して集計。

東日本支部は製造24社と小売28社がほぼ半々になる

60社のうち製造が24社、小売・販売が28社と、作る側と売る側が拮抗しています。埼玉・東京・千葉に製造会社が固まっており、皮革の染色業者や樹脂部品メーカーも同じ圏内にいます。作る機能と売る機能が近い距離にそろっている点が、この支部の特徴です。

西日本支部は64社中39社が小売・販売に寄っている

製造は12社(18.8%)にとどまり、小売・販売が39社と過半を占めます。一方で材料・部品が6社あり、大阪の面金製造や奈良の材料製造が含まれます。作るのは材料まで、完成品は他地域から仕入れて売る、という役割分担が読み取れます。

九州・山口支部は製造の比率が3支部で最も高い

17社と会員数は最も少ないものの、11社が製造で、比率は64.7%と突出しています。宮崎・熊本・長崎・鹿児島に製造会社が並び、木刀や竹刀といった木工・竹材の加工も含まれます。九州は完成品を作って全国へ送り出す側にいる、と言えます。

Q. 剣道防具のメーカーはどの地域に多いのですか?

製造の比率が最も高いのは九州・山口支部で、17社中11社(64.7%)が製造です。東日本支部は60社中24社(40.0%)、西日本支部は64社中12社(18.8%)でした。西日本は小売・卸の会社が多く、地域によって担う役割が違います。

あわせて読みたいスポーツ用品卸売10社比較|仕入れ担当者の選び方›

(参考)会員一覧(東日本支部60社・西日本支部64社・九州山口支部17社) – 全日本武道具協同組合

剣道防具メーカー一覧12社の本社と業態

ここからは個別の会社を見ていきます。全日本武道具協同組合の会員名簿に剣道具・武道具の製造または販売が業種として記載されている会社、および公式サイトで剣道防具の取り扱いを確認できた会社のうち、本社所在地と事業内容を一次情報で確認できた12社を掲載しました。

社名 本社 業態 確認できた特徴
株式会社東山堂 京都市上京区 製造卸+自社小売 国内に流通する年間防具セット数の3分の1の製造能力
株式会社日本剣道具製作所 宮崎県西都市 製造+卸+直販 手刺・ミシン刺・ピッチ刺を扱う受注生産
株式会社西日本武道具 福岡県春日市 製造卸+直営店 竹刀メーカーとして創業・従業員30名
松勘工業株式会社 埼玉県加須市 製造 創業明治40年・硬式野球ボールと学販も展開
株式会社ミツボシ 滋賀県大津市 製造卸 東山堂グループ・武道具および武道衣の製造卸
株式会社三恵 長崎県諫早市 製造販売 1955年創業・資本金1,500万円・ブランド「禅」
株式会社松興堂 東京都渋谷区 製造販売+ショールーム 創立1953年・資本金6,500万円・銃剣道防具も
株式会社タイヨー産業 鹿児島県薩摩川内市 製造卸 竹刀専門・自社工場で1本ずつ選別加工
栄光武道具株式会社 埼玉県越谷市 販売 自社ブランド「蜻蛉」「櫻扇」・全額返金保証
有限会社博多屋武道具店 長崎県長崎市 製造販売 長崎市築町の剣道具製造販売
信武商事株式会社 兵庫県姫路市 販売 皮革の産地である姫路市花田町に立地
株式会社荒牧武道具木工所 宮崎県都城市 製造 木工を軸にした武道用品製造

出典:各社の公式サイトおよび全日本武道具協同組合「会員一覧」より、Human Soarが本社所在地・業種の記載を確認して作成。

株式会社東山堂|国内に流通する防具セットの3分の1を作る

京都市上京区に本社を置き、創業は1989年。社員130名、グループ合計178名の体制で、京都・名古屋・岩手・北海道の工場に100名近い職人を抱えています。公式サイトでは、日本国内に流通する年間の防具セット数の3分の1を占める製造能力があると説明しています。

製造から卸、販売、物流までを自社で持つのがこの会社の形です。滋賀県の比叡山物流センターは床面積5,000平方メートル超で、世界70か国以上へ年間10万個以上を出荷しています。剣道以外に居合道・合気道・柔道・空手・弓道・薙刀・銃剣道の用具も扱う総合武道具メーカーです。

(参考)会社概要 – 株式会社東山堂

株式会社日本剣道具製作所|手刺からピッチ刺まで受注生産で作る

宮崎県西都市下三財に本社工場を構える、国産高級剣道具の製造元です。公式サイトでは手刺防具・ミシン刺防具・ピッチ刺防具を取り扱うと明記しており、取り扱う商品はすべて受注生産と案内しています。

自社の通販に加えて各県の武道具店への卸販売も行っており、電話で最寄りの取扱店を紹介する運用をとっています。作る会社が直販と卸の両方を持つ、この業界に典型的な形です。

(参考)国産高級剣道具製造元 – 株式会社日本剣道具製作所

株式会社西日本武道具|竹刀メーカーから防具まで広げた会社

福岡県春日市に本社を置き、設立は昭和58年12月。資本金1,000万円、従業員30名で、事業内容は剣道具全般の製造卸です。竹刀メーカーとして創業し、その後に防具や剣道着まで取り扱いを広げました。

福岡市南区に柳瀬本店という直営店を持ち、本社・EC事業部と店舗で営業日を分けて運営しています。製造卸と自社小売の両輪を持つ点は東山堂と共通しますが、規模は一桁小さく、竹刀という起点の違いが品揃えにも表れています。

(参考)会社概要 – 株式会社西日本武道具

株式会社ミツボシ|東山堂グループの製造卸を担う

滋賀県大津市山百合の丘に本社を置き、事業内容は武道具および武道衣の製造卸です。東山堂のグループ企業として位置づけられており、同グループは2025年11月時点で東京都台東区に株式会社東山堂ミツボシグローバルも構えています。

(参考)グループ会社 – 株式会社東山堂

松勘工業株式会社|創業明治40年で硬式野球ボールも作る

埼玉県加須市土手に本社を置く武道用品の製造会社で、創業は明治40年(1907年)です。公式サイトでは剣道具をはじめとした武道具に加え、硬式野球ボール、学販(体操着やシューズ)を展開していると説明しています。革の加工技術を別の製品へ広げた例です。

(参考)松勘工業株式会社 – 公式サイト

株式会社三恵|経済産業省の地域未来牽引企業に選ばれた武道具メーカー

長崎県諫早市久山町に本社を置き、1955年1月に「喜々津化成工業」として創業、1991年6月に現社名へ変更しました。資本金1,500万円で、業務内容は武道具用品の製造および販売です。剣道具ブランド「禅」を展開し、経済産業省の地域未来牽引企業に選定されています。

(参考)会社案内 – 株式会社三恵

(参考)地域未来牽引企業 – 経済産業省

株式会社松興堂|銃剣道・逮捕術の防具まで手がける

東京都渋谷区道玄坂に本社を置き、創立は昭和28年3月11日、資本金6,500万円です。公式サイトの事業の目的には、剣道具に加えて柔道衣、銃剣道防具、逮捕術防具の製造および販売と記載されています。渋谷駅から徒歩数分のショールームを構えているのも特徴です。

(参考)会社概要 – 株式会社松興堂

株式会社タイヨー産業|竹刀に特化して若手職人を育てる

鹿児島県薩摩川内市小倉町に本社を置く、竹刀専門の剣道具製造・卸の会社です。公式サイトでは自社工場で1本ずつ選別・加工してオーダー竹刀を届けること、次代を担う若手職人の育成に取り組むことを掲げています。

(参考)株式会社タイヨー産業 – 公式サイト

栄光武道具株式会社|自社ブランドと全額返金保証で売る

埼玉県越谷市千間台東に本社を置く販売会社です。手刺の「蜻蛉」「玄」、ミシン刺の「櫻扇」「TONBO air」といった自社ブランドを展開し、品質に満足できない場合は全額返金すると公式サイトで明示しています。作らずに売る層でも、ブランドを持てば価格を自分で決められることを示す例です。

(参考)剣道防具・剣道具の通販 – 栄光武道具株式会社

有限会社博多屋武道具店|長崎市築町で剣道具を製造販売する

長崎県長崎市築町に所在し、全日本武道具協同組合の会員名簿では業種を「剣道具製造販売」と記載しています。地域に根ざしながら製造機能も持つ、九州に多いタイプの会社です。

信武商事株式会社|皮革の産地である姫路市花田町に立地する

兵庫県姫路市花田町に所在する武道用品の販売会社です。同じ花田町には武道具材料や革材の製造会社も所在しており、皮革産業の集積地に販売会社が置かれている形になります。材料の産地と商流が近いことが、この地域の特徴です。

株式会社荒牧武道具木工所|宮崎県都城市で木工から武道用品を作る

宮崎県都城市早鈴町に所在する武道用品の製造会社です。都城市には木刀製造の会社も複数あり、木工の技能が集まった地域として武道具の供給を支えています。

(参考)会員一覧(博多屋武道具店・信武商事・荒牧武道具木工所の業種と所在地) – 全日本武道具協同組合

材料・部品11社のうち8社は大阪・千葉・奈良に集まる

材料・部品の11社を所在地で見ると、8社が大阪府・千葉県・奈良県の3府県に集まっていました。残りは東京都2社と兵庫県姫路市1社です。防具メーカーの分布とは重ならず、材料には材料の産地があることが分かります。

この「部材の産地が完成品の産地と別にある」構造は、他のスポーツ用品でも見られます。素材と製造の関係についてはスポーツシューズ業界を支える3社の強みでも触れています。

大阪府の3社は面金と武道具材料を作る

東大阪市の大阪面金製作所と高井武道具株式会社は、いずれも業種を「武道具材料面金製造業」と記載しています。面金は面の前面を守る金属の格子で、強度と視界を左右する部品です。大阪市西成区の橋本武道具材料店も武道具材料の製造業で、金物加工の集積地に3社が並んでいます。

千葉県の3社は皮革染色と樹脂部品を担う

松戸市幸田の中村重男商店と中村福松商店は、それぞれ「武道具用皮革染色」「剣道具用皮革染色」を業種としています。同じ町内に染色業者が2社並ぶ形です。八千代市の長谷川化学工業株式会社は剣道具製造とプラスチック製品を手がけ、樹脂部品の供給を担っています。

奈良県宇陀市菟田野の2社は武道具材料の製造に特化する

宇陀市菟田野の株式会社藤岡勇吉本店と株式会社丸新産業は、いずれも業種が「武道具材料製造業」です。菟田野は古くから毛皮・革の加工で知られる地域で、その技能が武道具の材料供給につながっています。

(参考)会員一覧(材料・部品会社の所在地と業種) – 全日本武道具協同組合

防具の値段は刺し方で決まる|手刺・ミシン刺・ピッチ刺

剣道防具の価格差は、素材よりも「刺し」の工法で決まります。刺しとは防具の表面に走る縫い目のことで、株式会社日本剣道具製作所は取扱商品として手刺防具・ミシン刺防具・ピッチ刺防具の3種類を挙げています。手がかかる順に値段が上がる、と考えると分かりやすくなります。

手刺は職人が一針ずつ刺すため受注生産になる

職人が針で刺していく工法で、1組あたりの製作時間が長くなります。栄光武道具株式会社の公式サイトでは、手刺の剣道具はいずれも受注生産として扱われており、在庫から選ぶ商品ではありません。納期と価格の両方が、この工程に引っ張られます。

ミシン刺は刺し幅で価格が変わる

ミシンで刺す工法で、刺し幅(ピッチ)が細かいほど手間と強度が上がります。栄光武道具の公式サイトでは、8ミリ織刺の防具セット「櫻扇」が150,700円(税込)、ジャージ素材の少年用セット「TONBO air」が55,000円(税込)で販売されています。同じミシン刺でも3倍近い開きがあります。

ピッチ刺は量産と刺しの細かさを両立させる

ミシン刺のなかでも刺し幅をさらに細かくした工法で、手刺に近い見た目を量産で実現するために使われます。日本剣道具製作所のように手刺からピッチ刺までを一社で扱うメーカーは、同じ素材で価格帯を段階的に用意できます。

Q. 剣道防具の値段はなぜこれほど差があるのですか?

主な理由は刺しの工法です。職人が手で刺す手刺、ミシンで刺すミシン刺、刺し幅を細かくしたピッチ刺の順に手間が変わります。栄光武道具の公式サイトでは、8ミリ織刺の防具セットが150,700円(税込)、少年用のジャージ素材セットが55,000円(税込)で販売されています。

あわせて読みたいスポーツ用品小売10社比較|専門店が生き残る条件›

(参考)剣道防具・剣道具の通販(手刺・ミシン刺の価格) – 栄光武道具株式会社

(参考)取扱商品(手刺防具・ミシン刺防具・ピッチ刺防具) – 株式会社日本剣道具製作所

需要を支えるのは武道必修化と208万人の有段者登録

これだけの会社が存続している背景には、安定した需要があります。ひとつは学校の授業で武道が必修になったこと、もうひとつは200万人を超える有段者登録です。どちらも一過性のブームではなく、毎年新しい使い手が入ってくる仕組みになっています。

中学校の保健体育で武道が必修になった

文部科学省は平成20年3月28日に中学校学習指導要領の改訂を告示し、中学校保健体育において武道・ダンスを含めたすべての領域を必修とすることとしました。学校単位で防具をそろえる必要が生まれ、個人向けとは別に学校向けの需要が立ち上がっています。

有段者登録は208万人で女子が63万人を占める

全日本剣道連盟によると、2025年3月末日現在の剣道有段者登録数は2,081,669人で、このうち女子は631,545人です。同じ時点で居合道は98,685人、杖道は25,744人が登録されています。女子が全体の3割を占めることは、サイズ展開や配色の幅にも影響します。

Q. 剣道の競技人口はどれくらいですか?

全日本剣道連盟によると、2025年3月末日現在の剣道有段者登録数は2,081,669人で、うち女子は631,545人です。同じ時点で居合道は98,685人、杖道は25,744人が登録されています。

(参考)武道・ダンス必修化 – 文部科学省

(参考)剣道・居合道・杖道(2025年3月末日現在の有段者登録数) – 公益財団法人全日本剣道連盟

まとめ|剣道防具の会社は層で見ると判断しやすくなる

最後に、この記事で確認したことを振り返ります。

  • 全日本武道具協同組合の会員141社を業種で分類すると、小売・販売72社、製造47社、材料・部品11社、卸8社、その他3社だった
  • 支部別では九州・山口が17社中11社(64.7%)と製造の比率が最も高く、西日本は64社中39社が小売・販売に寄っていた
  • 公式サイトで確認できた12社のうち、東山堂は国内に流通する年間防具セット数の3分の1の製造能力を持ち、日本剣道具製作所は手刺からピッチ刺までを受注生産で扱う
  • 材料・部品の11社は大阪・千葉・奈良に8社が集中し、完成品メーカーとは別の地域に産地がある
  • 価格差は刺しの工法で決まり、同じミシン刺でも55,000円から150,700円まで幅がある

会社を選ぶときは、社名だけでなく「どの層にいるか」を見ると判断しやすくなります。作る会社に直接頼めば仕様の自由度が上がり、売る会社を通せば比較と採寸がしやすくなるためです。用具の選び方という観点ではスポーツ発コンディショニング用品の主要3社もあわせて参考になります。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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