プレイングマネージャーの限界|選手兼任監督に学ぶ組織設計

プレイングマネージャーの限界|選手兼任監督に学ぶ組織設計 ソリューション

「今日こそ部下とじっくり話そう」と手帳に書いたのに、気づけば自分の見積書づくりと顧客対応で夕方になっている。部下の相談には「あとで聞くね」と返し、1on1は月1回がやっと。プレイヤーとして数字を求められながらチームも預かる課長は、そんな毎日を送っていないでしょうか。

これは個人の段取りの問題ではありません。日本経営協会(NOMA)が2025年10月29日〜11月5日に、課長級・次長級・部長級のミドルマネジャー539人へ行ったWeb調査では、プレイヤーとして実務を兼ねるプレイングマネジャーが86.8%、マネジメントに専念できている人は13.2%でした。業務時間の7割以上をマネジメントに充てている割合は、民間企業等で39.0%、行政・自治体で50.0%にとどまります。

生産年齢人口が減り、人を増やして管理職の負担を軽くする道が細くなるなかで、プレイングマネージャーの兼務は「一時的な事情」ではなく、組織に固定された構造になりつつあります。だからこそ、気合いや時間管理術ではなく、役割の設計そのものを見直す必要があります。

スポーツの世界は、この問題に早くから向き合ってきました。選手兼任監督は、戦略戦術が高度になった今のプロ野球では「非常に困難な職務」と見なされ、珍しい存在になっています。本記事では、その分業の知恵を企業の管理職に移し、プレイとマネジメントを「個人の頑張り」ではなく「役割の設計」で分ける導入プランを提案します。

(参考)管理職は本当に罰ゲーム? ~約9割が現場の実務も担う「プレイングマネジャー」~ – 日本経営協会(NOMA)

  1. プランの概要|選手兼任監督の分業に学び「プレイ」と「マネジメント」を役割で切り分ける
  2. 課題解決の流れ|管理職の86.8%が兼務する組織で、マネジメントが後回しになる構造
    1. 現状の課題|1on1が「余った時間」に回され、育成と調整が回らない
    2. 問題の要因|兼務が「個人の努力」に任され、組織として設計されていない
    3. 解決策|プレイの量・渡す先・マネジメントの固定枠を先に決める
  3. 選手兼任監督が減った分業の知恵が、管理職の兼務を支える3つの理由
    1. 理由1|プレイと判断を別の人に持たせると、チーム全体が見える
    2. 理由2|役割の線引きは組織ごとの設計になり、研修や制度の横並びと競合しにくい
    3. 理由3|提供主体の強み|スポーツ現場の一次情報と組織設計の両方に日常的に接している
  4. プランの具体的な内容|ベンチ分業を実現する3つのフォーマット
    1. フォーマット1|ベンチ席の固定|マネジメントの時間を予定として先に押さえる
    2. フォーマット2|コーチ制の分担|サブリーダーに判断と調整の一部を渡す
    3. フォーマット3|出場枠の設計|プレイ業務の上限と引き受け基準を決める
  5. 導入ロードマップ|検証・標準化・成果連動の3フェーズで12ヶ月かけて定着させる
    1. 0〜3ヶ月|検証|1〜2チームで業務を棚卸しし、固定枠を試す
    2. 3〜6ヶ月|標準化|サブリーダーの任命基準と判断範囲を文書にそろえる
    3. 6〜12ヶ月|成果連動|指標の改善と運用を結びつけ、自走できる状態にする
  6. 兼務の負担を減らす効果が出る経路とKPI・リスク|続行か見直しかを数字で決める
    1. 効果が効いてくる経路|マネジメント時間の確保から、部下の定着までの連鎖
    2. KPIの設計|フェーズごとに見る指標を決める(仮説としての目安)
    3. リスクと対応策|負担の移動と形骸化を先回りして防ぐ
    4. 続行・撤退の判断基準|どの数値で見直すかを事前に決めておく
  7. 料金モデルという選択肢|成果連動で「設計して終わり」をなくす
    1. 買い切り型の限界|効果が出るまでの時間と費用の発生が噛み合わない
    2. 新モデルの仕組み|設計費は固定、運用の支援は改善指標に連動する
    3. 導入時の注意点|指標の測り方と上限を契約前に決める
  8. 対象となる組織・読者|兼務の重さで3タイプに分けて考える
    1. タイプ1|営業・開発の現場で数字を持つ課長を抱える経営者
    2. タイプ2|管理職の疲弊を数字で把握したい人事・組織開発の担当者
    3. タイプ3|兼務に限界を感じている部長級・事業責任者本人
  9. 期待できる効果|管理職・部下・経営の3つの変化
    1. 管理職の変化|時間外労働が減り、判断に使う余裕が生まれる
    2. 部下の変化|相談の待ち時間が減り、成長の機会が増える
    3. 経営の変化|管理職の疲弊を指標で追えるようになる
  10. まとめ|兼務を前提に、役割で支える

プランの概要|選手兼任監督の分業に学び「プレイ」と「マネジメント」を役割で切り分ける

プレイングマネージャーの限界を越える 管理職の配分4類型 プレイ比重×マネジメント時間のマトリックス図
  • 対象:管理職の大半がプレイヤーを兼ねている、従業員30〜300名規模の企業の経営者・人事担当・事業責任者
  • 課題:プレイ業務に時間を奪われ、1on1・育成・調整が後回しになり、管理職も部下も消耗する
  • 導入期間(目安):初期設計に約3ヶ月、全社展開と定着まで含めて約12ヶ月

本プランは、管理職の兼務をやめさせるものではありません。「どこまでをプレイとして持ち、どこからを他者に渡し、マネジメントに週何時間を固定で確保するか」を、役割・時間・判断基準の3点で設計し直します。スポーツで監督の下に領域ごとの専門コーチが置かれてきた分業の考え方を、企業の課長・部長に当てはめるプランです。

課題解決の流れ|管理職の86.8%が兼務する組織で、マネジメントが後回しになる構造

まず、冒頭の調査結果を表で整理します。兼務が少数派ではなく多数派であること、そしてマネジメントに時間を回せている管理職が限られることが読み取れます。

ミドルマネジャーの兼務状況(NOMA第8回調査)
項目 結果 対象・補足
プレイングマネジャーの割合 86.8% 課長級・次長級・部長級(有効回答539人)
マネジメントに専念できている割合 13.2% 同上
業務時間の7割以上をマネジメントに充てる割合(民間企業等) 39.0% 同調査
同(行政・自治体) 50.0% 同調査

出典:日本経営協会(NOMA)第8回「日本のミドルマネジャー意識調査」(2025年10月29日〜11月5日実施・Web調査)の公表内容をもとに作成

民間企業等で7割以上を充てられている管理職が39.0%ということは、単純に差し引くと約61.0%(筆者計算)は7割に届いていません。行政・自治体との差は11.0ポイントあり、営業目標や顧客対応を自分の仕事として持つ度合いが強い民間ほど、マネジメントに回す時間が削られやすいと考えられます。

現状の課題|1on1が「余った時間」に回され、育成と調整が回らない

  • 【育成の先送り】部下の相談や1on1が、自分の案件が片づいてからの「余った時間」に回され、若手ほど放置される
  • 【判断の渋滞】管理職自身が現場の担当者でもあるため、決裁や調整の待ち時間が部下の側に生まれる
  • 【管理職の消耗】プレイとマネジメントの両方で期待され、残業と心理的な負担が積み上がる

問題の要因|兼務が「個人の努力」に任され、組織として設計されていない

  • 【役割の境界がない】どこまでがプレイでどこからが管理かが決まっておらず、忙しい週ほどプレイが勝つ
  • 【渡す先がいない】部下の業務を肩代わりする一方、判断を委ねられる相手が育っていない
  • 【時間が確保されていない】マネジメントの時間が予定表に入っておらず、突発対応に押し出される

労働政策研究・研修機構(JILPT)の労働政策研究報告書No.217「労働時間の研究―個人調査結果の分析―」(2022年3月31日公表)は、マネジメント時間が足りなくなる要因として、業務量の多さ、業務量に対する人員配置の不足、上司による業務量調整の不足、部下の業務の肩代わり、管理職自身の時間制約の意識を挙げています。同機構が管理職50人に行ったヒアリング(2019年3月〜2020年1月実施)でも、管理職の労働時間は長い傾向にあったと報告されています。

(参考)労働政策研究報告書No.217 労働時間の研究―個人調査結果の分析― – 労働政策研究・研修機構

(参考)資料シリーズNo.254 管理職ヒアリング調査結果―管理職の働き方と職場マネジメント― – 労働政策研究・研修機構

解決策|プレイの量・渡す先・マネジメントの固定枠を先に決める

  • 【役割の棚卸し】管理職の業務をプレイ領域とマネジメント領域に分け、プレイとして持つ上限を決める
  • 【渡す先の設計】部下の中からサブリーダーを置き、判断と調整の一部を委ねる
  • 【固定枠の確保】マネジメントの時間を週の予定として先に押さえ、突発対応より優先させる

この3点をスポーツの分業になぞらえて運用に落とすのが、後述の3つのフォーマットです。

Q. プレイングマネージャーの限界は、どこに表れますか?

マネジメントの時間が「余った時間」に回され、1on1や育成が後回しになる形で表れます。NOMAの調査では、管理職の86.8%が実務を兼ねており、業務時間の7割以上をマネジメントに充てているのは民間企業等で39.0%でした。

選手兼任監督が減った分業の知恵が、管理職の兼務を支える3つの理由

選手兼任監督は、戦前の人材難の時代には珍しくなく、鶴岡一人氏、藤村富美男氏、中西太氏らも兼任していました。その後、戦略戦術が高度になった現在のプロ野球では「非常に困難な職務」と考えられるようになり、2005年10月にヤクルトが古田敦也氏へ監督就任を要請した際も、受諾すれば野村克也氏以来約30年ぶりの選手兼任監督になると報じられました。今のチームは、監督の下に投手・打撃・守備など領域ごとのコーチを置いて役割を分けるのが一般的です。

理由1|プレイと判断を別の人に持たせると、チーム全体が見える

自分の打席に集中している選手は、ベンチ全体の流れを見渡せません。管理職も同じで、自分の案件に没頭している間は、部下の停滞や顧客の変化に気づけなくなります。プレイの一部をサブリーダーに渡すと、管理職の視野が現場の外に開き、問題を早く見つけられるようになります。

これは能力の問題ではなく、注意力という限られた資源の配分の問題です。役割で配分を決めてしまえば、本人の意思の強さに頼らず、マネジメントに注意を向けられます。

理由2|役割の線引きは組織ごとの設計になり、研修や制度の横並びと競合しにくい

マネジメント研修やツールの導入は、どの会社でも似た内容になりやすく、価格での比較にさらされます。一方、プレイとマネジメントの境界は、事業の性質、チームの人数、部下の習熟度で変わります。営業組織と開発組織では、渡すべき業務も、サブリーダーに求める力も違います。

現場ごとに線を引き、運用して直す設計は、型の販売ではなく伴走の仕事です。模倣されにくいのは、この「自社の現場に合わせた調整の積み重ね」にあります。

理由3|提供主体の強み|スポーツ現場の一次情報と組織設計の両方に日常的に接している

分業の知恵を企業へ移すには、競技の現場で役割がどう分かれ、どこで混乱が起きるかを知っている必要があります。同時に、評価制度や権限規程といった企業側の仕組みにも手を入れなければ、設計は絵に描いた餅で終わります。

スポーツの現場の一次情報と、組織・人事の設計の両方に日常的に接している主体であれば、競技の比喩で終わらせず、企業の制度に落とした形で提案できます。この二つがそろっていることが、本プランを実行できる裏付けです。

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(参考)選手兼任監督として古田が成功するカギとは。 – Number Web(矢崎良一)

Q. プレイングマネージャーは、やめて専任のマネージャーにすべきですか?

全員を専任にする必要はありません。プレイを持つことには、現場の感覚を保てる利点があります。大切なのは、プレイの上限とマネジメントの固定時間を役割として決め、突発対応で押し出されない状態をつくることです。

プランの具体的な内容|ベンチ分業を実現する3つのフォーマット

本プランは、次の3つのフォーマットを組み合わせて運用します。どれから着手するかは、管理職の兼務の重さと、部下の習熟度で決めます。

ベンチ分業を実現する3つのフォーマット(設計案)
フォーマット 内容 向く組織
ベンチ席の固定 マネジメントの時間を週の予定として先に確保する 突発対応が多く、1on1が後回しになっている組織
コーチ制の分担 部下1〜2人をサブリーダーに置き、判断と調整の一部を委ねる 部下が5人以上いて、管理職に判断が集中している組織
出場枠の設計 プレイ業務の上限と、引き受け・断りの基準を決める 管理職が最も数字を持つ営業・開発の現場

出典:Human Soar作成(本プランの設計案。導入前に自社の業務量の実測で調整する)

フォーマット1|ベンチ席の固定|マネジメントの時間を予定として先に押さえる

毎週、同じ曜日と時間にマネジメントの枠を置きます。初期は週あたり約2時間、1on1と部下の相談対応だけに使い、会議の資料づくりなど自分の作業は入れません。枠が予定表に載ることで、突発対応は「枠の外」で処理する習慣ができます。

枠を守れたかどうかは、週末に管理職本人が「実施/未実施」で記録します。数字の目標は置かず、まず守れた週の割合を見ます。

フォーマット2|コーチ制の分担|サブリーダーに判断と調整の一部を渡す

監督の下に専門コーチが置かれるように、部下の中から1〜2人をサブリーダーに指名します。渡す範囲は、日々の進捗確認、新人の相談窓口、案件の割り振りの一次判断といった、判断の基準を言葉にできる業務からです。

サブリーダーを置くときは、役割と判断してよい範囲を文書にし、本人の評価面談でも扱います。「頼まれたから手伝う」では、負担が移るだけで終わります。評価と結びつけた設計が欠かせません。当サイトのスポーツ審判式人事評価プランも、評価基準を言葉にする手順の参考になります。

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フォーマット3|出場枠の設計|プレイ業務の上限と引き受け基準を決める

試合に出られる選手の数に上限があるように、管理職がプレイとして持つ業務にも上限を置きます。たとえば「自分が担当する顧客は上位の数社まで」「新規提案は月2件まで」のように、自分にしかできない業務を選び、残りは部下かサブリーダーに回します。

追加の依頼が来たときは、「自分が出るか、誰かに出てもらうか」を判断する基準を事前に決めておきます。この基準が、忙しい週にプレイが勝ってしまう流れを止めます。役割の再配置という意味では、介護現場の多能工化で使う配置転換の考え方とも通じます。

Q. プレイングマネージャーの負担を減らす対策は、何から始めればよいですか?

マネジメントに充てる時間を週の予定へ固定する対策から始めます。初期は週あたり約2時間を1on1と相談対応に限って確保し、守れた週の割合を記録します。そのうえで、サブリーダーの任命とプレイ業務の上限設定へ進みます。

導入ロードマップ|検証・標準化・成果連動の3フェーズで12ヶ月かけて定着させる

プレイングマネージャーの役割分担 導入ロードマップ 検証・標準化・成果連動の3フェーズ

順番を守る理由は、設計を先に全社へ広げると、現場の実態に合わない線引きが固定されてしまうためです。まず小さく検証し、使える型にそろえてから、成果と報酬を結びつけます。

0〜3ヶ月|検証|1〜2チームで業務を棚卸しし、固定枠を試す

対象を1〜2チームに絞り、管理職の業務を2週間かけてプレイとマネジメントに仕分けます。ベースラインとして、マネジメントに充てている時間、1on1の実施率、時間外労働を測り、ベンチ席の固定を試します。この段階では報酬を成果に連動させず、設計と測定の精度を上げることに集中します。

3〜6ヶ月|標準化|サブリーダーの任命基準と判断範囲を文書にそろえる

検証で見えた「渡せる業務」と「渡せない業務」をもとに、サブリーダーの任命基準、判断してよい範囲、評価への反映方法を文書にします。対象を3〜5チームに広げ、チームごとの差を確認しながら、現場の実態に合わない部分を直します。

6〜12ヶ月|成果連動|指標の改善と運用を結びつけ、自走できる状態にする

標準化した型を全社の管理職に展開し、運用の担い手を社内に移します。KPIの改善に応じて支援の報酬が変動する設計に切り替え、指標が改善しない部署は原因を分けて対応を見直します。12ヶ月の終わりには、外部の支援がなくても枠が守られる状態を目指します。

兼務の負担を減らす効果が出る経路とKPI・リスク|続行か見直しかを数字で決める

効果が出る道筋、確認する指標、起きやすいリスク、そして見直しの条件を、一続きで設計します。

効果が効いてくる経路|マネジメント時間の確保から、部下の定着までの連鎖

固定枠でマネジメント時間が確保され、1on1が回り始めると、部下の停滞が早く見つかります。サブリーダーが判断を担えば、決裁の待ち時間が減り、管理職の残業が下がります。この連鎖の結果として、部下の定着と管理職の疲弊の軽減につながります。

注意したいのは、効果が出るのは制度を入れた瞬間ではなく、枠が守られる週が積み重なってからだという時間軸です。早い組織でも、変化が数字に表れるまでに数ヶ月はかかります。

KPIの設計|フェーズごとに見る指標を決める(仮説としての目安)

指標は「行動が変わったか」から「成果が変わったか」の順に見ます。行動の指標は早く動き、成果の指標は遅れて動くためです。自社のベースラインの把握が前提であり、下の数値はあくまで仮説です。

フェーズごとのKPIと目安(仮説)
フェーズ 見る指標 目安
0〜3ヶ月 固定枠を守れた週の割合 6割以上
3〜6ヶ月 1on1の実施率/サブリーダー任命チーム数 8割以上/対象チームの7割
6〜12ヶ月 管理職の時間外労働/部下のエンゲージメント ベースライン比で10%減/同5ポイント改善

出典:Human Soar作成(目安は仮説。導入前の実測値を基準に再設定する)

最も重視するのは、最初の「固定枠を守れた週の割合」です。ここが6割を下回るなら、後の指標を見る前に、枠そのものが現場の突発対応と衝突していないかを疑います。成果の指標は、この行動指標が安定してから評価してください。

リスクと対応策|負担の移動と形骸化を先回りして防ぐ

分業の導入で起きやすいリスクは、負担が別の人に移るだけで終わることと、運用が形だけになることです。対応を表にします。

導入時に起きやすいリスクと対応策
リスク 起きやすい場面 対応策
サブリーダーに負担が移る 任命が善意の依頼で行われる 役割と判断範囲を文書にし、評価に反映する
プレイ業務の質が下がる 上限が低すぎる 上限を段階的に調整し、重要顧客は管理職が持つ
固定枠が形骸化する 繁忙期に枠が崩れる 崩れた枠は同じ週内に振り替え、未実施の理由を記録する

出典:Human Soar作成(導入時に想定されるリスクの整理)

とくに、サブリーダーへの負担移動は見落とされがちです。任命して終わりにせず、本人の業務量を月1回確認し、増えすぎていれば元の管理職か別のメンバーへ戻す余地を残してください。

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続行・撤退の判断基準|どの数値で見直すかを事前に決めておく

6ヶ月経っても固定枠を守れた週の割合が5割に届かない場合は、枠の置き方か業務量を見直します。12ヶ月でも1on1の実施率が7割に達しない場合は、対象の範囲を絞って再設計するか、支援を終了します。基準を先に決めておくことは、リスクを制御できる設計力の表れです。

料金モデルという選択肢|成果連動で「設計して終わり」をなくす

本プランの効果は、枠が守られ続けて初めて表れます。そのため、納品で終わる契約より、運用期間の成果と結びつく料金の形が噛み合います。

買い切り型の限界|効果が出るまでの時間と費用の発生が噛み合わない

固定報酬の買い切り型は、設計の納品で支援が終わります。しかし本テーマの効果は、枠が守られ続けて初めて表れるため、納品の時点では価値が確認できません。

新モデルの仕組み|設計費は固定、運用の支援は改善指標に連動する

初期の設計費は固定とし、運用期間の報酬は、1on1の実施率や固定枠の遵守率などの改善に応じて変動させます。導入側は成果が見えない支出を抑えられ、提供側は定着まで伴走する動機を持てます。

導入時の注意点|指標の測り方と上限を契約前に決める

成果連動は、ベースラインの測定方法と報酬の上限を事前に合意しないと、解釈の違いで揉めます。まず3ヶ月の検証期間だけ固定報酬で始め、測定の精度を確認してから切り替える段階移行が現実的です。

Q. 成果連動型の支援では、何を成果の指標にしますか?

1on1の実施率、固定枠を守れた週の割合、管理職の時間外労働など、現場で計測できる行動と労務の指標を使います。導入前のベースラインを測り、改善幅に応じて報酬が変動する形にします。

対象となる組織・読者|兼務の重さで3タイプに分けて考える

管理職の兼務は、立場によって悩みの形が異なります。当てはまるタイプから確認してください。

タイプ1|営業・開発の現場で数字を持つ課長を抱える経営者

課長が最大の売り手でもあり、育成まで手が回らない組織です。本プランは、課長の「出場枠」を決め、育成の時間を確保することで、属人的な売上依存を和らげます。営業組織の考え方はスポーツ流チームビルディングプランとも重なります。

タイプ2|管理職の疲弊を数字で把握したい人事・組織開発の担当者

離職や休職の相談が増え、原因が管理職の過負荷にあると感じているものの、根拠となる指標がない状況です。固定枠の遵守率や1on1の実施率を測ることで、感覚だった課題を数字で経営に示せます。

タイプ3|兼務に限界を感じている部長級・事業責任者本人

自分が抜けると現場が止まる状態が続き、権限を渡す先も見えていない方です。サブリーダーの任命と判断範囲の文書化により、「自分にしかできない業務」を絞り込めます。

期待できる効果|管理職・部下・経営の3つの変化

分業が定着すると、変化は管理職本人、部下、経営の3つの層に順に表れます。

管理職の変化|時間外労働が減り、判断に使う余裕が生まれる

マネジメントの時間が固定され、判断の一部が分担されることで、突発対応に追われる感覚が和らぎます。結果として、時間外労働の減少と、判断の質の安定が期待できます。

部下の変化|相談の待ち時間が減り、成長の機会が増える

1on1が定期的に回ると、若手の停滞が早く見つかります。サブリーダーに任命された部下は、判断を担う経験を積めます。

経営の変化|管理職の疲弊を指標で追えるようになる

固定枠の遵守率、1on1の実施率、時間外労働といった指標が揃うと、管理職の負荷を数字で経営会議に出せます。人員配置や採用の判断が、感覚ではなくデータに基づくものになります。

Q. プレイングマネージャーの限界を放置すると、何が起きますか?

1on1と育成が後回しになる状態が続き、部下の停滞や離職が見えにくくなります。管理職自身も、プレイとマネジメントの両方で消耗し、判断の質が落ちるおそれがあります。

まとめ|兼務を前提に、役割で支える

  • 管理職の86.8%が実務を兼ねており(NOMA、2025年調査)、兼務は個人の努力で解く問題ではない
  • 選手兼任監督が減ったように、プレイとマネジメントは「役割の分業」で支える
  • ベンチ席の固定、コーチ制の分担、出場枠の設計の3つのフォーマットで運用する
  • 12ヶ月かけて検証・標準化・成果連動へ進み、KPIと見直し基準を先に決める
  • 料金は設計費を固定、運用は改善指標に連動させる形が噛み合う

「自分の組織の管理職は、マネジメントに週何時間を使えているだろう」という疑問が浮かんだ時点が、相談のタイミングです。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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