スポーツスポンサー契約とは|企業が確かめる6項目と印紙・法律

スポーツスポンサー契約とは|企業が確かめる6項目と印紙・法律 スポーツマーケティング

クラブから契約書の案が届いた。金額と期間は合っているが、ほかに何を確かめればよいのかがわからない。印紙は要るのか、選手個人と結ぶときは何が違うのか。初めてスポンサーになる企業の担当者が、必ず立ち止まる場面です。

結論から言うと、スポーツスポンサー契約とは、企業がチームや選手に資金や物品を提供し、その対価として広告の掲出や、ロゴ・肖像を使う権利などを得る契約です。法律に「スポンサー契約」という決まった型はなく、国や競技団体が公表するひな形も確認できませんでした。だからこそ、何を得て、何が起きたらどうするかを、契約書に自分たちで書く必要があります。この記事では、契約書に入れる6つの項目、印紙税、電子契約、個人の選手と結ぶときの法律を、国税庁や公正取引委員会などの資料で整理します。

※この記事は、公的な資料にもとづく一般的な取扱いの紹介です。印紙税や契約の内容は、契約書の中身によって判断が変わります。実際の契約では、税務署・税理士・弁護士に確認してください。

スポンサー契約とは資金の対価として広告や肖像の権利を得る契約

スポンサー契約では、企業が協賛金や自社の製品を提供し、チームや選手は、その対価として企業に権利を与えます。権利の中身は、ユニフォームや看板への社名の掲出、ロゴやチーム名の使用、選手の写真の使用、イベントへの出演、観戦チケットなどです。

名前は「スポンサー契約」「協賛契約」「パートナー契約」とさまざまですが、名前で扱いが決まるわけではありません。国税庁の印紙税の事例にも「スポンサー契約書」という項目はなく、契約書に書かれた中身で判断されます。

スポーツ庁や公正取引委員会、日本スポーツ仲裁機構などが公表するスポンサー契約のひな形は、2026年10月の時点で見つかりませんでした。クラブから届く契約書は、クラブが自分で作ったものです。内容を変えてほしいときは、相談できます。スポンサーの種類と仕組みはスポーツスポンサーとはで整理しています。

Q. スポンサー契約とは何ですか?

企業がチームや選手に資金や物品を提供し、その対価として広告の掲出や、ロゴ・肖像を使う権利などを得る契約です。法律に決まった型はなく、協賛契約やパートナー契約と呼ばれることもあります。印紙税などの扱いは、名前ではなく契約書の中身で決まります。

スポンサー契約書に入れる主な項目は6つ

契約書で決めておく項目を、6つにまとめました。それぞれに、手がかりになる公的な資料があります。

項目 契約書で決めること 手がかりになる資料
権利の内容 社名を出す場所・大きさ・回数、呼称、チケットの枚数 広告契約書の取扱い(国税庁)
ロゴ・チーム名 使える媒体、商品、期間 商標法 第31条
選手の肖像 使える写真、媒体、期間、事前の確認の方法 最高裁 平成24年2月2日判決
金額と支払い 金額、税の扱い、支払期日 フリーランス法(相手が個人の場合)
期間・解除 契約期間、更新、途中でやめる条件、不祥事があったときの扱い 公的な定めは確認できず
反社会的勢力の排除 該当したときに催告なしで解除できること 政府の指針、暴力団排除条例

スポンサー契約書に入れる主な項目(各資料をもとにHuman Soarが整理。2026年10月時点)

ロゴやチーム名|使える範囲を契約で特定する

チームのロゴや名前の多くは、商標として登録されています。商標法は、商標権を持つ者が他人に使用を許すことができ、許された側は「設定行為で定めた範囲内において」使えると定めています。つまり、スポンサーが使える範囲は、契約で決めた範囲までです。

自社のサイト、名刺、商品のパッケージ、テレビCMなど、使いたい場面を先に書き出し、契約書に入れておきます。書いていない使い方は、後から別に相談することになります。

(参考)商標法 – e-Gov法令検索

選手の肖像|広告に使うには許諾が要る

選手の名前や写真には、商品の販売を後押しする力があります。最高裁判所は2012年の判決で、この力を独占的に利用する権利をパブリシティ権と呼び、肖像を商品の広告として無断で使う場合などは違法になると示しました。

チームと契約しても、選手個人の写真を自由に使えるとは限りません。肖像をクラブがまとめて管理している場合もあれば、選手本人や所属事務所が管理している場合もあります。誰の許諾が要るのかを、契約の前に確かめます。大会の期間中は別の決まりがあり、ルール40とはで紹介しています。

(参考)最高裁判所第一小法廷 平成24年2月2日判決(平成21年(受)第2056号) – 裁判所

(参考)人材と競争政策に関する検討会 報告書(2018年2月15日) – 公正取引委員会 競争政策研究センター

期間・解除|不祥事があったときの扱いを書いておく

契約の期間、途中でやめる条件、選手やチームに不祥事があったときの扱いについて、スポンサー契約に向けた公的な定めは確認できませんでした。何も書いていなければ、問題が起きてから話し合うことになります。

どんなことが起きたら、掲出を止めるのか、契約を解除するのか、支払った金額をどう扱うのか。チームの降格や昇格で金額が変わるのかも含めて、書いておくと安心です。金額の目安はスポンサー料の相場で整理しています。

反社会的勢力の排除|催告なしで解除できる条項を入れる

政府は2007年の指針で、企業に対し、契約書や取引約款に暴力団排除条項を入れるよう求めています。相手が反社会的勢力だと判明したときに、契約を解除できるようにしておくための条項です。

東京都の暴力団排除条例も、事業者が書面で契約を結ぶときは、相手が暴力団関係者だと判明した場合に催告なしで解除できる特約を定めるよう努める、としています。クラブの契約書の案に入っているかを確かめてください。

(参考)企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について – 法務省

(参考)東京都暴力団排除条例 – 警視庁

あわせて読みたいスポンサー料の相場|スポーツ29クラブの公表料金と企業の目安›

スポンサー契約書の印紙は広告の内容があれば請負の契約書として扱う

紙で契約書を作るときは、印紙税を確かめます。国税庁は、広告契約書について、広告という仕事を行い、それに報酬を支払う契約なので請負契約にあたり、第2号文書(請負に関する契約書)になると説明しています。

スポンサー契約書そのものについての国税庁の説明は、見つかりませんでした。ただ、看板やユニフォームに社名を出すといった、広告を行って対価を払う内容が含まれていれば、この取扱いの対象になりえます。税額は、契約書に書いた金額で決まります。

契約書に書いた金額 印紙税の額
1万円未満 非課税
1万円以上100万円以下 200円
100万円を超え200万円以下 400円
200万円を超え300万円以下 1,000円
300万円を超え500万円以下 2,000円
500万円を超え1,000万円以下 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下 2万円
5,000万円を超え1億円以下 6万円
金額の記載がないもの 200円

第2号文書(請負に関する契約書)の印紙税額(1億円以下の区分を抜粋。出典:国税庁 タックスアンサー No.7102)

金額を書かずに、これから行う複数の広告に共通する条件だけを決める基本契約の形にすると、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)にあたる場合があります。こちらは1通4,000円です。契約期間が3か月以内で、更新の定めがないものは除かれます。

選手個人との契約は、競技や内容によって扱いが変わりえます。どの区分になるかは契約書の中身で決まるので、金額の大きい契約は、税務署か税理士に確認してから印紙を貼ってください。支払った協賛金の経理は、スポンサー料の勘定科目で扱っています。

(参考)質疑応答事例(印紙税)広告契約書 – 国税庁

(参考)タックスアンサー No.7102 請負に関する契約書 – 国税庁

(参考)タックスアンサー No.7104 継続的取引の基本となる契約書 – 国税庁

Q. スポンサー契約書に収入印紙は必要ですか?

紙の契約書に、広告を行って対価を払う内容があれば、請負に関する契約書(第2号文書)として印紙税がかかる可能性があります。税額は契約書に書いた金額で決まり、100万円以下なら200円、500万円を超え1,000万円以下なら1万円です。電子契約には印紙税がかかりません。判断は契約書の中身によるので、税務署や税理士に確認してください。

電子契約のスポンサー契約は印紙税がかからない

スポンサー契約を電子契約で結んだときの印紙税と保存の流れ図

契約を電子契約で結ぶと、印紙税はかかりません。国税庁は、印紙税の対象は文書であり、電磁的記録は文書に含まれないと説明しています。協賛金が1,000万円を超える契約なら、紙では2万円の印紙が要るので、差は小さくありません。

気をつけたいのは、電子で結んだあとに、紙の原本を別に作って渡す場合です。その紙は、課税の対象になる可能性があります。電子で結ぶと決めたら、紙の原本は作らない運用にそろえます。

電子で結んだ契約書は、データのまま保存する必要があります。電子帳簿保存法は、電子取引でやりとりした契約書などのデータを保存するよう求めています。改ざんを防ぐ措置をとり、日付・金額・取引先で検索できるようにしておきます。保存する期間は、法人の場合、原則として7年間です。

(参考)質疑応答事例(印紙税)取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い – 国税庁

(参考)電子取引データの保存方法をご確認ください【令和6年1月以降用】 – 国税庁

(参考)タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間 – 国税庁

個人の選手とのスポンサー契約はフリーランス法を確かめる

個人の選手とスポンサー契約を結ぶときに確かめる4点のチェックリスト

選手個人と契約を結ぶときは、2024年11月に始まったフリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)を確かめます。従業員を使っていない個人に、企業が自社の事業のために仕事を頼む取引が対象です。

スポーツ選手との契約について、国がこの法律の対象だと直接説明した資料は見つかりませんでした。ただ、選手個人にイベントへの出演や広告の撮影、SNSへの投稿を頼む契約は、法律の定義にあてはまる可能性があります。対象になる場合に、企業が守ることは次のとおりです。

取引の条件を書面かメールで明示する

仕事を頼んだら、すぐに、頼む内容、報酬の額、支払期日などを、書面かメールなどで示します。公正取引委員会は、口頭で伝えることは認められないとしています。選手の写真や動画を使う権利をもらう場合は、その範囲も、頼む内容の一部として書いておきます。

報酬は仕事を受けた日から60日以内に支払う

支払期日は、仕事を受けた日から数えて60日以内の、できるだけ短い期間で決めます。月末締めの翌々月末払いといった社内の決まりがある会社は、60日を超えていないかを確かめてください。

6か月以上の契約をやめるときは30日前までに予告する

6か月以上続く契約を途中でやめる場合や、更新しない場合は、少なくとも30日前までに予告します。1か月以上の契約では、報酬を一方的に減らすことなど、7つの行為が禁じられています。

なお、従業員のいるマネジメント会社を通して契約する場合は、この法律でいうフリーランスにあたりません。相手が誰なのかで、守る決まりが変わります。

(参考)フリーランス法 特設サイト – 公正取引委員会

(参考)ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法(パンフレット) – 公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省

Q. 個人の選手とスポンサー契約を結ぶときの注意点は?

従業員を使っていない個人の選手に出演や撮影などを頼む場合、フリーランス法の対象になる可能性があります。対象になるときは、取引の条件を書面かメールなどで示し、報酬は仕事を受けた日から60日以内に支払います。選手の写真を使う範囲と、肖像を誰が管理しているかも、契約の前に確かめてください。

スポンサー契約を結ぶ前に確かめる3つのこと

契約書を読む前に、確かめておくと行き違いを防げる点が3つあります。

肖像を管理しているのは誰か

選手の肖像は、クラブがまとめて管理している場合があります。公正取引委員会の検討会の報告書も、クラブに所属する選手の肖像について、権利の処理をまとめて行うことで利用が進む場合があると述べています。チームとの契約でどこまで使えるのか、選手個人の許諾が別に要るのかを、最初に聞いておきます。

(参考)人材と競争政策に関する検討会 報告書(2018年2月15日) – 公正取引委員会 競争政策研究センター

自社の役員が相手の団体の役員を兼ねていないか

スポーツ庁のスポーツ団体ガバナンスコードは、競技団体の理事が代表を務める企業と、その団体がスポンサー契約を結ぶ場合を、利益相反の例に挙げ、慎重な判断が求められるとしています。禁止ではありませんが、団体の側で承認の手続きが必要になる可能性があります。当てはまる場合は、時間に余裕を持って進めます。

(参考)スポーツ団体ガバナンスコード – スポーツ庁

何を得たいのかが契約書に書かれているか

社名を広めたいのか、採用につなげたいのか、取引先を招きたいのか。目的によって、契約書で確かめる権利は変わります。目的と権利が合っているかを、契約の前に見直してください。目的の整理はスポーツスポンサーになる理由が参考になります。

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まとめ|スポンサー契約は権利と万一の扱いを書面にする

スポンサー契約には、決まった型がありません。要点を振り返ります。

  • スポンサー契約は、資金や物品の対価として、広告の掲出やロゴ・肖像を使う権利を得る契約
  • 契約書には、権利の内容、ロゴ、肖像、金額と支払い、期間・解除、反社会的勢力の排除の6つを入れる
  • 紙の契約書に広告の内容があれば、請負の契約書として印紙税がかかる可能性がある
  • 電子契約なら印紙税はかからず、データを原則7年間保存する
  • 個人の選手に仕事を頼むときは、条件の明示と60日以内の支払いを確かめる

まずは、手元の契約書の案を6つの項目と照らし、書かれていない項目に印を付けてみてください。印の付いたところが、クラブに相談する点になります。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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