リカバリーウェアの効果と選び方|スポーツ・法人導入前の3点

リカバリーウェアの効果と選び方|スポーツ・法人導入前に確かめる3点 スポーツ科学

リカバリーウェアで公的に認められている効果は、「疲労の回復」「血行促進」「筋肉の疲れを軽減」といった範囲です。腰痛や冷え性の改善、競技パフォーマンスの向上はその範囲に入らず、研究も11件のレビューで結論が出ていません。

福利厚生の見直しで、あるいは試合が続くチームの回復策として、「着て寝るだけで疲れが取れる」をうたうウェアが候補に上がることがあります。ただ、同じ「リカバリーウェア」という名前でも、国に届出をした一般医療機器と、ふつうの衣類とでは、言える効果の範囲がまったく違います。この記事では、厚生労働省のQ&Aと研究レビューをもとに、効果の範囲、選び方、導入前に確かめたい点を整理します。

リカバリーウェアの仕組みと2022年に生まれた一般医療機器の区分

リカバリーウェアに関する制度の流れ|2022年の区分新設から2025年のQ&A改訂と自主回収まで

国の定義では、リカバリーウェアに当たる医療機器は「家庭用遠赤外線血行促進用衣」です。生地に鉱物などの特殊な加工を施して一定程度の遠赤外線を放射させ、その血行促進作用で疲労や筋肉のこりといった症状の改善を目的にした、衣類形状の器具とされています。上半身用と下半身用があり、それぞれ少なくとも上腕部と大腿部を覆うものが対象で、パーツ形状の製品は含まれません。

この区分が生まれたのは2022年10月です。同月14日には日本医療機器工業会がまとめた自主基準が厚生労働省の事務連絡で周知され、同年12月14日の通知(薬生機審発1214第1号)で、それまで衣類を「温熱用パック」として届け出ていた既存品目の扱いが整理されました。定義に当てはまり自主基準を満たす製品は新しい区分で届け直し、当てはまらない製品は温熱用パックの届出を廃止する流れで、手続きは通知から遅くとも1年以内に終えると定められています。

区分の線引きが細かく示されたのは2025年です。厚生労働省は2025年3月10日に取扱いのQ&Aを出し、同年8月18日に一部を改訂しました。改訂では、衣類の一部分だけが遠赤外線を放射する製品や、その機能を持つプリントやシールを部分的に施した製品は、血行促進用衣として認めないと明記されています。そして2025年11月5日、株式会社りらいぶは「リライブシャツα」「リライブスパッツα」について、家庭用遠赤外線血行促進用衣の定義に合致しないことが確認されたとして、約48万着の自主回収を発表しました。同社は、現時点で健康被害等の報告はないとしています。

運動後の回復をどう設計するかという全体像は、スポーツ科学の全体像でも整理しています。リカバリーウェアは、その中の道具の一つという位置づけです。

(参考)一般的名称「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の新設に伴う既存品目等の取扱いについて(令和4年12月14日 薬生機審発1214第1号) – 厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課(沖縄県ウェブサイト掲載)

(参考)一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)の一部改訂について(令和7年8月18日事務連絡) – 厚生労働省医薬局医療機器審査管理課・監視指導・麻薬対策課

(参考)弊社一部製品に関する自主回収のお知らせ(2025年11月5日) – 株式会社りらいぶ

Q. リカバリーウェアは医療機器ですか?

国に「家庭用遠赤外線血行促進用衣」として届出をした製品は、一般医療機器(クラスⅠ)として扱われます。通知やQ&Aで使われている名称は「家庭用遠赤外線血行促進用衣」で、「リカバリーウェア」という商品名だけでは届出の有無を判断できません。購入前に、届出番号と形状を確認してください。

表示できる効果は疲労回復と血行促進の範囲|腰痛・冷え性は別の承認が必要

一般医療機器の血行促進用衣が表示できるのは、「疲労の回復」「筋肉のこりの症状改善」「血行促進」「筋肉の疲れを軽減」といった範囲です。厚生労働省のQ&Aは、一般医療機器(クラスⅠ)が人体への影響がごく軽微なものを対象にした分類であり、使用目的や効果もごく限定された範囲に収まることが前提だと整理しています。Q&Aの内容を、表現ごとに表にまとめました。

区分 該当する表現の例 Q&Aでの扱い
認められる表現 疲労の回復/筋肉のこりの症状改善/血行促進/筋肉の疲れを軽減 血流量の変化に関する自主基準の試験で基準値を満たし、専門家が効果を評価していることが前提
認められない表現(症状の改善) 筋肉痛・腰痛・生理痛・神経痛・関節炎などの症状改善や消炎効果、むくみの改善 特定の疾病の治療や人体の深部への影響を示唆する効果として認められない
認められない表現(体質・運動) 代謝の促進、運動効率の向上、冷え性の改善、体質改善 一般医療機器の定義から逸脱する可能性が高く、記載できない

出典:厚生労働省「一般医療機器『家庭用遠赤外線血行促進用衣』の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)の一部改訂について」(令和7年8月18日事務連絡)Q1〜Q4をもとに、Human Soarが表現別に整理した表。

認められる表現|疲労の回復と血行促進

Q&Aが例に挙げているのは、「疲労の回復」「筋肉のこりの症状改善」「血行促進」「筋肉の疲れを軽減」です。製造販売の届出書にある「使用目的又は効果」の欄に、遠赤外線の血行促進効果によることを書いたうえで、これらを箇条書きにする書き方が示されています。

ただし、書けば済むわけではありません。届出の前に、自主基準の附属書にある血流量の変化の評価試験を行って基準値を満たすこと、そして試験データをもとに専門家が疲労や筋肉のこりへの効果を評価していることが前提です。つまりこの4つの表現は、試験と専門家の評価を経た製品だけが使える言葉になります。

認められない表現|筋肉痛・腰痛など症状の改善

筋肉痛、腰痛、生理痛、神経痛、関節炎などの症状改善や消炎効果、むくみの改善は、血行促進用衣の目的や効果として書けません。Q&Aは理由を、一般医療機器が「人体への影響がごく軽微なもの」を対象にした分類だからだと説明しています。特定の疾病の治療や、人体の深部への影響を思わせる効果は、この分類から外れる可能性が高いという整理です。

広告にも同じ縛りがあります。Q&Aは、こうした効果を広告や営業資料(インターネット掲載を含む)で表示して販売すると、法令違反の疑いが生じると注意しています。「筋肉痛が和らぐ」と書かれた商品を見かけたら、少なくとも一般医療機器の表示としては認められない言葉だと知っておくと、判断がしやすくなります。

認められない表現|代謝・運動効率・冷え性の改善

代謝の促進、運動効率の向上、冷え性の改善、体質改善に役立つといった表現も認められていません。アスリートや指導者が気になる「運動効率の向上」が入っている点は、押さえておきたいところです。

厚生労働省は、こうした効果を表示したい場合の道筋も示しています。一般医療機器の範囲を超えるため、「法令上の位置づけがない新たな医療機器」として承認申請することを前提に、実際に効果があることを示す臨床試験データを集め、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の「全般相談」を受ける、という手順です。表示の根拠を確かめるときは、この手順を経ているかどうかが一つの目安になります。

なお、2022年12月14日の別の通知には、医療機器的な効果の例として腰痛・関節痛の改善などが挙がっています。Q&Aはこれについて、医療機器に当たるかを判断するための例示であり、血行促進用衣にそれらの効果があることを示すものではない、と念を押しています。

(参考)一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)の一部改訂について(令和7年8月18日事務連絡) – 厚生労働省医薬局医療機器審査管理課・監視指導・麻薬対策課

Q. リカバリーウェアで筋肉痛や腰痛は良くなりますか?

筋肉痛や腰痛などの症状改善は、一般医療機器の血行促進用衣として表示できない効果とされています。厚生労働省のQ&Aは、一般医療機器が人体への影響がごく軽微なものを対象にした分類であることを理由に挙げています。痛みが続くときは、ウェアで様子を見続けず、医療機関に相談してください。

競技パフォーマンスへの効果は研究11件でも結論が出ていない

スポーツでの回復や競技力に対する効果は、現時点で確立していません。遠赤外線を放射する衣類をスポーツで使う研究をまとめた2021年のシステマティックレビュー(Bontemps氏らがPLOS ONEに発表)は11件の研究を対象にしましたが、同じ指標を調べた研究が少なく、結果も一定しないとまとめています。

一方で、体温調節や血行動態(血液の流れ方)への作用を通じて、パフォーマンスや回復に役立つ可能性がある、という初期の示唆もあります。「効く」とも「効かない」とも断定できない段階で、今後の研究を待つというのがレビュー著者の立場です。

日本の区分が認めているのは、あくまで血行促進による疲労や筋肉のこりの症状改善です。「運動効率の向上」は前の章のとおり認められない表現ですから、公的な表示と研究の両面から見て、競技成績を直接引き上げる道具として期待するのは慎重にしたほうがよさそうです。

チームで試すなら、期待は「疲労感のケアの選択肢の一つ」にとどめ、睡眠、栄養、練習量の調整といった土台は変えずに併用する位置づけが現実的です。土台の考え方は、一流アスリートのコンディショニング完全ガイドと、休息を「投資」と捉えるリカバリー術が参考になります。

(参考)Utilisation of far infrared-emitting garments for optimising performance and recovery in sport: Real potential or new fad? A systematic review(2021年) – Bontemps氏ら、PLOS ONE 16(5)

Q. リカバリーウェアでスポーツのパフォーマンスは上がりますか?

上がると言える根拠は、現時点で確立していません。2021年のシステマティックレビューは11件の研究を対象にしましたが、結果は一定していませんでした。日本の一般医療機器の表示でも、「運動効率の向上」は認められない表現です。

届出品かどうかは番号・形状・加工範囲で見分ける

リカバリーウェアが一般医療機器の届出品に当たるかを見分ける流れ|届出番号・形状・加工範囲

届出品かどうかは、商品名ではなく、届出番号と形状、遠赤外線を放射する加工の範囲で判断します。通知やQ&Aの名称は「家庭用遠赤外線血行促進用衣」で、「リカバリーウェア」は商品の呼び名にすぎないためです。

形状は、長袖シャツ、長ズボン、半袖シャツ、半ズボンのいずれかに限られます。半袖シャツは使う人の上腕部を覆える袖丈、半ズボンは大腿部を覆える股下丈が必要で、製造販売の届出書でも、この呼称で明確に書ける製品だけが血行促進用衣として認められます。

加工の範囲は、2025年8月の改訂で明確になりました。血行促進用衣に当たるのは、衣類の全体で遠赤外線を放射する機能を持つ製品です。一部分だけに機能がある製品や、プリントやシールを部分的に施した製品は認められません。機能を持つ部分だけを取り出したときに、前の形状の要件を満たしている必要もあります。

さらに、原材料、組成、加工方法(編み方を含む)が異なる製品は、別品目として個別に試験をして届け出る決まりです。同じブランドでも素材や加工が違うモデルは届出が別になるため、モデルごとに確認します。添付文書が公開されている品目は、PMDAの検索で調べられます。

あわせて読みたいコンプレッションウェア比較12選|企業の暑熱・疲労対策›

(参考)一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)の一部改訂について(令和7年8月18日事務連絡) – 厚生労働省医薬局医療機器審査管理課・監視指導・麻薬対策課

(参考)医療機器 添付文書等情報検索 – 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)

着るタイミングは添付文書で決まる|肌着の上か素肌か

厚生労働省のQ&Aを確認した範囲では、「運動後に着る」「就寝時に着る」といった時間帯の指定はありません。決まっているのは着用方法で、自主基準は添付文書の使用方法に、肌着の上に重ねて着る製品なのか、素肌に直接着る製品なのかを具体的に明記するよう求めています。

肌着の上でも素肌でも着られる製品は、両方の着方で血流量の試験を行い、データに有意差がなく基準値を満たしていることを確かめておく必要があります。試験も添付文書に書かれた使い方で行うことが求められているので、添付文書どおりに着ると、試験で確かめられた条件に近い使い方になります。

夜の就寝時に着るのか、練習後のクールダウンで着るのかは、まず添付文書の指示を守ったうえで選びます。続けやすい試し方としては、1〜2週間は同じ条件で着て、朝の疲労感を毎日メモしておく方法があります(Human Soarの提案です)。睡眠そのものを整える考え方は、スポーツ・運動で睡眠の質を高める企業の施策や従業員の睡眠改善を企業が支援する方法で解説しています。

一般医療機器は人体への影響がごく軽微なものを対象にした分類なので、ウェアは治療の代わりにはなりません。痛みやだるさが長引くときは、医療機関への相談を優先してください。

あわせて読みたい疲労回復デバイス3選|健康経営担当者向け比較ガイド›

(参考)一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)の一部改訂について(令和7年8月18日事務連絡) – 厚生労働省医薬局医療機器審査管理課・監視指導・麻薬対策課

Q. リカバリーウェアはいつ着ればよいですか?

厚生労働省のQ&Aに、着る時間帯の指定はありません。決まっているのは着用方法で、肌着の上に重ねるのか素肌に直接着るのかを、製品の添付文書に明記することが自主基準で求められています。まずは添付文書の指示どおりに着てください。

福利厚生で導入する前に確かめる3点|届出・表示・測り方

リカバリーウェアを福利厚生で導入する前に確かめる3点|届出と形状・表示の言葉・測り方

社員に配る福利厚生でも、チームの備品でも、購入前に確かめたいのは、届出と形状、表示の言葉、導入後の測り方の3点です。順に見ていきます。

届出番号と形状・加工範囲を確認する

前の章の見分け方を、購入前のチェック項目に置き換えると、届出番号があること、長袖シャツなど4つの形状のいずれかであること、衣類全体に機能があることの確認になります。見積書や商品ページに届出番号が見当たらないときは、販売元に確認するのが早道です。

届出品でも、後から定義に合致しないと確認される場合があります。2025年11月の自主回収では、メーカーは製品を返送した人にクーポンの発行か購入金額の返金で対応するとしています。法人で買う場合は、契約の前に、回収や返品が起きたときの対応方針を聞いておくと安心です(Human Soarの提案です)。

(参考)弊社一部製品に関する自主回収のお知らせ(2025年11月5日) – 株式会社りらいぶ

(参考)医療機器 添付文書等情報検索 – 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)

広告の言葉が認められる範囲かを読む

商品ページや営業資料の「効果」の言葉を、先ほどの表と照らし合わせます。「腰痛の改善」「冷え性の改善」「運動効率の向上」のように、認められない表現が並んでいる場合は、根拠をメーカーに尋ねる材料になります。

景品表示法では、消費者庁が優良誤認表示かどうかを判断する必要があるとき、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められます。期間内に出さない場合や、資料が合理的な根拠と認められない場合は、措置命令との関係では不当表示とみなされます。社内向けの案内文でも、メーカーの根拠資料の範囲を超えた言い方は避けておくと安心です。

(参考)不実証広告規制 – 消費者庁

(参考)一般医療機器「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の取扱いに係る質疑応答集(Q&A)の一部改訂について(令和7年8月18日事務連絡) – 厚生労働省医薬局医療機器審査管理課・監視指導・麻薬対策課

導入後の測り方を先に決める

研究の結論が出ていない以上、自社やチームで何が変わったかは、自分たちで測るしかありません。配る前に、朝の疲労感や睡眠の満足度を0〜10点で、週1回、同じ質問で記録しておきます。着る人と着ない人に分ける、あるいは着る期間と着ない期間を交互に設ける形にできれば、比較がしやすくなります(Human Soarの提案です)。

「着ていると思うだけで楽に感じる」という気持ちの影響も入るため、アンケートの数字は参考値として扱い、数か月たった時点で続けるかを判断します。休息や睡眠が生産性にどう影響するかは、休息・睡眠が生産性に与える影響の記事にまとめています。

まとめ|リカバリーウェアの効果と選び方の要点

ここまでの要点を振り返ります。

  • 公的に表示できる効果は、疲労の回復、筋肉のこりの症状改善、血行促進、筋肉の疲れの軽減の範囲で、腰痛・冷え性・運動効率の向上は対象外です。
  • 競技パフォーマンスへの効果は、2021年のレビュー(11件)でも結論が出ていないため、疲労感のケアの選択肢の一つとして位置づけます。
  • 届出品かどうかは、商品名ではなく、届出番号、長袖シャツなどの形状、衣類全体への加工で見分けます。
  • 導入前に、届出と形状、表示の言葉、導入後の測り方の3点を確かめます。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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